くだらない記録?(2004/1) 

 
 父ちゃんは常々思っている。世の中で最もくだらない記録は「最年少記録」ってやつだと。
ところがマスコミを始めどうもこの「最年少記録」をありがたがるヤツらがいる。
卓球の愛ちゃんを始めすぐに「最年少で・・・」と報道している。
でも、子どもというものは個性豊かで早咲きの子もいれば遅咲きの子もいる。
ましてや最年少記録を打ち立てるような子たちは、初めからそんなところに目標を持っているわけではなく、
一番上のクラスで活躍する事を目標としているものだ。
きっと愛ちゃんだって、最年少で全日本に選ばれる事なんかよりも早く世界で通用するようになりたいと思っているはずだ。
我がライバル?の小方君だって最年少でIAになることよりも世界で通用するライダーになりたいと思っていたはずだ。
13歳の時の多度のプログラムには「世界チャンピョンになる」って書いてあったしな。
(ちなみにその時の父ちゃんはマスターズクラスで「国際A級になる」と書いて大恥をかいたが・・)
バルセロナオリンピック200m平泳ぎで
オリンピック新記録を更新して五輪競泳史上最年少金メダリスト(14歳と7日)に
なった岩崎恭子ちゃん(「今まで生きてきた中で一番幸せ!」という名言を残した)は、生涯その記録を抜く事は出来なかった。
その時が彼女のピークだったんだな。そして、その後の4年間は苦しいものだったようだ。

飛行機でのアメリカ横断の最年少記録を目指して墜落して死んでしまった少女もいるが、こんなことをやらした親は犯罪だぞ。

親が最年少記録を狙いだしたら、悲劇が待っている。

子どもを無理矢理早咲きさせても、ピークが早くなるだけだ。
競技人生で最も記録が良いのが男子なら25歳、女子なら20歳くらいだと聞いた事がある。
その頃が肉体と精神のバランスが良いようだ。もちろん個人差が大きいので、30歳で自己ベストなんて事もあるのだが・・。

本来なら学校で友達と遊んでいるような年齢の子が、学校にも行かずに練習に明け暮れているのは異常だと思うぞ。
あまり学校に行けない卓球の愛ちゃんだって「学校に行って友達とおしゃべりしている時が一番楽しい」って言っていたし・・。
もし、モノにならなかったら、もし、怪我でもしたら・・、例えそれなりの成績を残したとしても競技生活は意外と短いものだ。
その後の人生の方が遙かに長い場合がほとんどだ。
その後を生き抜いていく知識や知恵がどのくらいついているかも心配だぞ。


最年少記録だなんてチヤホヤされても良い事はひとつもないと思う。
そんな記録に振り回されていると、結局子どもの成長にとってもマイナスだと思う。
子どもというのは、伸びる時期とじっと溜め込む時があるのだよ。
身長だってそうだろ。小学校で伸びるヤツもいれば、高校になっても伸びているヤツもいるんだ。
実際、どのスポーツや競技でも最年少記録を作った子がその後活躍するよりも伸び悩んだり潰れてしまう事も多いのだ。


「自分の子には才能がある!」と多くの親が思う。
また、子どもというもにはスゴイものでいくら無理矢理やらしてもやらしただけ速くなってしまう。
だから親は、自分のやり方が正しいと勘違いし益々助長してしまう。
回りから自分の子どもが褒められて悪い気がする親はいない。
子どもが認められる事が即、自分が認められていると勘違いする親もいる。
しかし、子どもの一番近くにいる親こそが、そんな事に振り回されずに子どもなりのペースで伸びていく姿を応援してやって欲しいのだ。
あの岩崎恭子ちゃんは、苦しい4年間を家族に支えてもらい、後進の指導に道を見つけようと頑張っているそうだ。


子どもの人生は長い。当たり前だが親よりも長い。
親は自分の満足よりも自分の子どもが大人になり、家族を持ち生きていく姿を思い描きながら付き合って欲しいと願っている。

そうそう言い忘れていた。
最年少記録はくだらないが、“最年長記録”は偉大なのだと
時に全日本参加者最年長の父ちゃんは自分に言い聞かせているのだった。
(それしか心の支えがない?)