スコップオヤジ(2)(2004/4)
この頃、ついにホームコースである河原のコースでは、ショウゴ(長男)にかなわなくなってきてしまった。
特に、コースが荒れてきたらもうダメだ。
リアを振られながらもアクセルを戻さず突っ走るショウゴを見ていると「荒れた路面では、もうダメだ」と思ってしまう。
しかし、こいつは根性無しなのでホームコースでは、自信を持って走っているが、
他のコースでは“借りてきた猫”のようになってしまう。
実際、美杉や名阪ではまだまだ父ちゃんの方が速いのだった。
しかし、いくらホームコースの河原だけといっても気持ちの良いものではない。
手をこまねいて抜かれているわけにはいかないのだよ。
内緒の話しだが、父ちゃんは密かに“秘密のライン”を作っているのだ。
父ちゃんは、河原のコースに着いたらまずコース整備から始める。
リアが跳ね上げられるジャンプや尖った石などが出ているところを直すのだが、
その時に分からないように“秘密のライン”をせっせと作っているのだ。
嬉々としてスコップを振っているオヤジを見て「すっかりスコップオヤジに成り下がったな」とバカにしているショウゴだが、
オヤジというものは奥深いものなのだよ。
だからショウゴと走る時は、後ろについて走っていく事が多い。
「よくあんなに振られても怖くないな」と感心する事が多くなってしまったが、秘密のラインのおかげでなんとかついて行ける。
尚かつ長男というものはお人好しなので「父ちゃん、速いラインを見つけたから教えてやる」とすぐに自分の手の内を教えてく
れる。
レースでは、このお人好しがマイナスに出る場面もあるかもしれないが、
人生ではプラスになる事もあるから「まぁいいか」と考えている。
ショウゴはお人好しのあげくに面倒見も良い。
ついついタカ(次男)にも「ここはこうしろ、あそこはこう走れ」と細々(こまごま)と教えている。
しかしタカにとってはありがた迷惑だ。「うるさい!もう一人で走らせてくれ」と疎まれている。
だいたい、次男というのは長男と違って好き勝手にやりたいものなのだ。
人に教えられるより自分で自分なりのやり方を探し出していく人種なのだ。
お人好しで面倒見が良く、尚かつうっかりさんのショウゴだが、
もしモトクロスのインストラクターにでもなればきっとそれが生きると思うぞ。
その時までは、タカやナホに疎まれながらも良い兄ちゃんでいてくれ。
このお人好しでお間抜けな性格のおかげで、父ちゃんはスコップオヤジと笑われながらも
今日もせっせと秘密のラインを作り、ショウゴを追いかけ回しているのだった。