小方君よー(1)
3月7日に父ちゃんは、ダートスポーツ杯多度チャンピョンシップというレースに出た。
今年IBに昇格し、中部選手権がメインの父ちゃんにとっては、子どもたちと出られる楽しみな大会なのだ。
子どもたちは、Kid50.60,そして80などに出ていて、それぞれ楽しんでいる。
もちろん父ちゃんは、IB・NAオープンクラスだ。
ライダーズミーティングで、編集長がチームダートスポーツの子どもたちを紹介していた。
その中に80ccチャンピョンの小方君(13歳)もいた。
雑誌で見たことがあるその少年は、IB・NAオープンクラスにも、乗り始めたぶんの125で出るといっていた。
父ちゃんは、考えた。 慣れない125,そして始めてのコース。
いくら80のチャンピョンであっても、250にずっと乗っている父ちゃんが、このホームコースで老体にムチを入れれば
一泡ぐらいふかせてやれるかもしれない。
ここは一つ、人生の先輩としてモトクロスの奥深さやレースの厳しさを知らせておくのも必要なことだと思ったぞ。
80では、やはり1番であったな。序盤こそ地元の子たちもがんばっていたが、やはりかなわなかったようだ。
そして、いよいよ父ちゃんの出番が来た。
5秒前のボードが出た。父ちゃんは、この瞬間が大好きなのだ。
まずは、自慢のロケットスタートでビビらせてやるかと思って、クラッチをミート。
リヤが少し滑ったが、気を取り直して第一コーナーへ。
「いかん、目の前には数え切れない台数がいるではないか!」
後から聞いた話では、父ちゃんの後は一台だけだったそうだ。
(どうもIBになってからは、こうなのだ)
しかし、ここから父ちゃんはがんばった。
練習の時とは気合いが違う。
未来ある少年にモトクロスの奥深さ、レースの厳しさを教えるという大事な任務もある。
次々と転んでいる子たちを抜き去り、レースも終盤にさしかかった。
後ろかから、少し速い子の気配がした。さっき、転んでいたやつがゾンビのように復活してきたか。
一生懸命にがんばったが、また抜かれてしまった。
後ろについていきながら、「もう一回転んでくれないかなー」と願ったがだんだん離されてしまった。
また、気配を感じた。しかも今度は速い!。
「トップ集団が来た!」と瞬時に感じた。
最終ジャンプのところではブルーフラッグを振っているではないか。
「やはりそうか」父ちゃんは少しラインを明けた。
凄い勢いで3台が抜いていった。 その中に、小方君の姿があった。
急に任務を思い出し、最後の力を振り絞ったが、あっという間に見えなくなってしまった。
そして、その後ろ姿に父ちゃんはつぶやいた。
「きれい!!」。
その走りは、無駄がなくしなやかであった。
あんなふうに乗ってもらえればバイクもしあわせだろう。
暴れるRMをなだめながら父ちゃんはゴールした。
後で結果を見たら小方君は1位だった。たいしたものだ。
しかし、ここで人生の先輩として、レースを長年戦ってきたものとして、未来ある少年に一言、言わせてもらうぞ。
「今度会ったら、サインちょうだいね」