’04全日本第1戦(2004/4)

  ’04年、最初の全日本は、4月10〜11日の名阪スポーツランドで始まった。

CRF250Rで参戦の父ちゃんは、125クラスとオープンクラスに出場だ。

今年から250クラスがオープンになったので1台のバイクでダブルエントリーが出来て何か得した気分なのだが、

考えてみれば、スタートでは2サイクル250ccや4サイクル450ccに比べて明らかに不利だ。

ましてやたった4周の予選なのだからスタートの重要性は尚更だ。

でも、やっぱりなんか得した気分でウキウキしてしまう父ちゃんだったのだ。

しかし、やはり現実は厳しいのだ。予選は125クラスで6組、250クラスで5組もあった。

まずは、練習走行だ。この練習走行ほど気持ちの良いものはない。

全日本では、だいたいIBクラスから練習が始まる。

全日本のために何日も前から整備されたコースを走るのは、何とも言えず気持ちの良いものだ。

ジャンプだって綺麗に飛べるし、何か自分が上手くなった気さえしてしまうのだ。

2年前の関東大会では、自動車安全運転センターを全日本の時だけ使ったものだから真っ平らな草原にコーステープだけが張ってあると

ころもあり、

朝一の練習走行では、モトクロッサーで生まれて初めて草原を全開で走ったのだ。

あんな事はもう二度とないと思うぞ。

そして、IBの練習が終わる頃には、すっかりモトクロスコースになってしまっていた。(笑)

これがIAの練習走行が終わる頃には、もうコースのあちこちはデコボコでワダチだらけになってしまう。

でも、そこは全日本。予選が始まる前には、ブルが入って結構直してくれる。

125クラスになって何が良かったって、IB125クラスの予選がスケジュールではだいたい一番最初の点だ。

コースがまだ人間が走れるレベルなのだ。

IB250クラスの予選など、だいたい最後の方なのでもう大変だ。

全日本のコースを歩いた事がある人なら分かってもらえると思うが、はっきり言って危ないのだ。

あんな荒れたところを250や450が、たった4周を掛けて全開でぶつかり合いながら走るのだ。

はっきり言って怖いのだ。

ただでさえ重たい450ccだったので自ずと安全運転になってしまっていた。

回りでは痛そうな転び方をしているヤツがたくさんいるし・・。

だから父ちゃんは、125クラスに掛けていたのだった。

今回は、125も250クラスもA組の予選だった。

しかし、ここで問題発生だ。

クジを引こうとした父ちゃんは、受付がされていないと待機させられてしまったのだ。

でも、受付もちゃんとしたし、車検だって受けたのだ。

やっと疑惑が晴れて(何故かゼッケン番号が削除されていたそうだ)クジを引いた。

このクジを引く時、いつも「私を引いて」とばかりに父ちゃんの指にしだれかかってくるヤツがいるのだ。

初めはウジウジとどれを引こうかと悩んでしまうのだが「よし、その意気に答えてやるぞ!」とばかりに引くとそいつは大抵悪い番号なのだ。

でも、何回裏切られてもついつい引いてしまうのだ。裏切られれば裏切られるほど惹かれてしまう女のようだ。

今度もそうだった。父ちゃんが指を伸ばすと、またまた「私を引いて」とばかりに倒れかかってきたクジがあった。

迷わず引けば20番。また裏切られてしまった。

でもかわいいヤツ!なんて考えていたが、中央インよりからドンドンとスタート位置が取られていくと気分がドンヨリと沈んでいく。

案の定、父ちゃんの番では、イン側5台分とアウト側5台分しか残っていなかった。

第1コーナーまで距離が短く尚かつそこからきつい登りの名阪では、イン側5台は、そこでレースは終わりだ。

迷わずアウト側を取った。

父ちゃんには、秘策があった。イン側に殺到して何台かが必ず絡む。

そこで、みんながモタモタしているうちにアウトから全開でまくる父ちゃんの姿が見えていたのだった。

30秒前のボードが出るとワクワクした。15秒前のボードでは、ドキドキだ。5秒前では、スーと気が集中するのが分かる。

そしてスタート。

スタートこそ良かったがやはりツッコミで負けてしまう。

しかし、この日の父ちゃんは違った。第1コーナーを一番アウト全開で回って最初の2連が見えれば、前には5,6台しかいない。

目論見通りだー!父ちゃんは叫んだ。

こんな事は初めてだった。いつもは、第1コーナーを抜ければそこには数え切れないくらいのバイクが見える。

ついに春が来た!と思った瞬間、一番アウトの父ちゃんよりまたまたアウトからスゴイ勢いでバイクが突っ込んできた。

父ちゃんが一番アウトのラインなのでそいつの行き場所はない。

その瞬間だった。グッと父ちゃんに寄ったバイクが父ちゃんのハンドルに絡んだ。

こんな場所で転んだらどんな恐ろしいことが起きるか分からない。

いつもと違い、父ちゃんの後ろには沢山の野獣たちがいるのだ。

父ちゃんは堪えた。自分でも良くできたと思えるくらい耐えた。

転ぶと思った瞬間にハンドルが外れて何とか転倒だけは免れた。

5,6台には抜かれたがこれからだ。これでもいつもよりはずっと良い。

父ちゃんはクラッチを握り・・・。あれクラッチがない?

見ればクラッチは見事に逆くの字に曲がっていた。4周を何とかクラッチ抜きで走ったダントツのベリだった。

250クラス予選は、案の定スタートで遅れて終わった。

こうして、’04全日本第1戦は終わってしまったのだ。