友の会?(2004/4)

 これも全日本第1戦の話だ。

IBクラスの公式練習をウェティングエリアで待っている時の事だ。

父ちゃんのHPを見てメールをくれた人が応援に来てくれたのだ。ありがたいものだ。

第1戦という事もあり気合いが入りまくっていた父ちゃんは、年甲斐もなく燃えさかってしまったのだ。

そんな時、どうも隣のライダーの視線が先ほどから気になっていた。

ゼッケン98番のそのライダーは、どう見てもオヤジで父ちゃんもちょっと気になっていたのだ。

この若者の祭典の全日本ではどうしても浮いてしまっていた。

「お幾つですか?」そのライダーがにこやかに聞いてきた。

「え?」唐突な質問に父ちゃんは少し戸惑った。

「42歳です。5月で43になってしまいますが・・」

「やっぱりそうでしたか、私も42歳です。10月で43ですわ」

「そうですか}二人は、見つめ合って笑っていた。

しかし、フルフェイスのヘルメットを被っていても分かってしまうくらい年寄りというのは、悲しいものがある。

「私たちが予選通ったらニュースになりますな」そのオヤジは、的確だが悲しい現実をニコニコしながら言っている。

「でも、富山の得地さんは、たまに通っていますよ」

この頃でこそ予選落ちが多いがちょっと前までは、結構予選を通っていてポイントも取っていた得地さんは、年寄りの星だ。

「知っています、知っています、あの人は速いですわ」

その後もこの大会では珍しく42歳のライダーが4人もエントリーしている事、

「全日本年寄り友の会を作りたいですな」等と話しが盛り上がってしまった。

公式練習とはいえ、ピント張りつめた空気の中でこのオヤジたちの回りだけがやけに和んでいた。

父ちゃんが最年長なんて事も多いのでこうやって年寄りライダーが全日本に挑戦している事は嬉しいものだ。

その人のホームコースは、広島の弘楽園なので、ラムソンジャンプや勝負所の情報を教えてもらい、第3戦での再開を約束した。

回りの若者たちは、突然現れたこの茶飲み友達のようなオヤジたちを怪訝そうな目で見ていたが、

何かほんわかな気持ちになってしまったのだった。

「待っていろよ弘楽園、待っていろよラムソンジャンプ!」とすでに父ちゃんの心は、初めて行く後楽園に向かっていくのだった。