生き残るヤツは・・(2004/4)
先日、二人の子どもが、二人ともIAになり活躍していたオヤジと話し込む機会があった。
そのオヤジが良いことを言っていたので書きたいと思う。
そのヤジが言うのだ。「この世界で生き残っているヤツは、どんなヤツだと思う?」
自慢じゃないが父ちゃんだって、この世界は長い。キッズ時代から知っている何人かのIAもいる。
乗り始めたばかりの80の下敷きになり半ベソかいている小僧を助けてやったら、数年後には父ちゃんに泥をまき散らしながら抜いていくの
も何回か経験した。
バイクのエンジンが掛けられず、コースの奥で困っているのを助けてやったのに、数年後には、ラップしていく時に「どいてくれー」と叫んで
いく小僧も知っている。
みんなバイクを降りると良いヤツらなのだが、どうもレースになると年寄りを思いやる気持ちというものがない。
やはり、43歳以上は、スターティングマシンの前からスタートするとか、ショートカットが許されるとかの配慮が欲しいものだ。(笑)
ついつい愚痴になってしまった、話しを戻そう。
「あまりに英才教育したり、親が入れ込みすぎている子は、意外と生き残っていないでしょう」と父ちゃんは、答えた。
「そうやね」と頷くと、そのオヤジはニヤリとして言った。
「ワシも、多くのライダーやその親たちを見てきたが、生き残っているヤツらは、ガンガンに育てられたヤツらは少ないな。
かといって、ほっとかれたヤツらでもないんよ。○○(某有名ライダー)のオヤジも、子どもにガミガミ言うタイプじゃなかったが、
いつもその子の走りはちゃんと見とったな。
手取り足取り教え込む感じではないが、子どもが聞いてきた時には、ちゃんと答えていたな〜、
子どもが走っているのを見もせずにゴルフの素振りをしているような親子は、ダメだったな〜」
要約すると、やりすぎてもダメだけど、かといって放任でもダメと言うことだった。
そういえば、保育業界にも似たような言い回しがあるのだ。
“保育(子育て)というのは、水に浮かんだ船のおもちゃを押すのと同じ。”ってヤツだ。
どういう事かというと“水に浮かんだ船のおもちゃは、押す力が弱いと進まない。
けど、押す力が強過ぎると曲がってしまう。そのあんばいが難しい・・・。”ということなのだ。
お風呂などで船のおもちゃを押して遊んだ覚えがあれば納得いくと思う。
本当に押し過ぎると曲がってしまうのだ・・・。
子どもたちへのあと押し、強過ぎてませんか?(過度な期待、過干渉)
子どもたちへのあと押し、弱過ぎてませんか?(無関心、育児拒否)
いろいろな理由で余裕が無くなるとそのあんばいを見失う事があるのだ。
そういえばこのオヤジはこんな事も言っていた。
「お金も掛ければいいってものじゃない、キッズ時代からお金を大分掛けた子は、考え方が雑になる、レースでも諦めが早くなる。
でも、消耗品も交換してないようなボロボロバイクばかり乗っているようでも速くなれない、
トランスポーターもそれなりのお金を掛けないと、レースにちゃんとした状態で望めないし、練習する以前に疲れてしまうこともある」
やっぱり、お金も掛けすぎてもいけないし、掛けすぎないのもいけないということか・・。
そして、最後にこう言った。
「幸い、うちの子は二人ともIAに上がり、そこそこ活躍してくれた、
でも、何が嬉しかったって、親子で一緒の夢に向かって走れ、家族で一緒にいられた時間かな」
もうこの頃では全日本にも応援に行かなくなってしまったというオヤジは、遠くを見ながら言った。