アスパラパワー(2004/4)
4月の24,25日には全日本第2戦関東大会があった。
性懲りもなくノコノコと出かけていった父ちゃんは、相変わらずのくじ運で125クラスでは22番を引き当てた。
これまた名阪のようにアウトから3番目のスタートだった。
スタート自体は悪くはなかったが、これまた第1コーナーのツッコミでみんなに突っ込まれてあたふたしている間にほとんどベリに。
3台くらい転んでいる子を抜けば、前の子が最終コーナー手前のちっさな2連を飛び損ねて転倒。
そこにツッコンでまたまたほとんどベリ。
リタイヤした子もいたので結果は、23台中19位ぐらい?なんかスッキリしない父ちゃんであった。
「何で運がないんだろう?」自分の実力を運のせいに出来るのも年のなせる技だ。
そんなことを考えているとふと思い当たる節があった。
父ちゃんは、第1.2戦の125クラス予選の直前、アスパラドリンクを断っていたのだった。
こう書いてもほとんどの方が分からないと思うので説明しよう。
今年の全日本にもアスパラドリンクがスポンサーになっていていつも本部近くに出店している。
そこでは、なんとタダでアスパラドリンクを配っているのだ!太っ腹だろ。
だが、土曜日の観客(それもIB125クラスの予選ぐらい)は、ライダー関係者が多くみんなこのブースに寄りつかない。
アスパラドリンクのジャケットを着たお姉ちゃんや兄ちゃんは、通り過ぎゆく人々に「いかがですか?」と丁寧に勧めているのにだ。
予選直前のコース下見をしている父ちゃんも、良く声を掛けられる。
しょぼくれた小汚いオヤジが、ライダーの格好をしてボーと歩いているものだからお店の人もついつい声を掛けずにはいられないのだろう。
「どうです景気付けに一本!」となかばヤケになっている兄ちゃんは名阪でも勧めてくれた。
しかし、父ちゃんは、こう見えても結構恥ずかしがり屋さんなので本当は「アスパラパワーで予選突破じゃ!」と思ってはいるのだが
「あ、いいです、いいです」とすごすごと逃げてしまうのだ。
この関東大会でもそうだった。
「一本いかがですか?」とお姉ちゃんが優しく言ってくれたのにもかかわらず顔を赤らめて「いいです」と断ってしまった。
きっとこのオヤジは、小汚いのでお金が掛かると思って逃げているのだと思ったのか「無料ですよ」と追い打ちを掛けるように微笑んでくれ
たのだがもう遅い。
父ちゃんは、そそくさとその場を離れてしまった。
どうもこの事が心に引っかかっていたのだった。そんな精神状態でクジを引けば良い結果が出るはずはない。
アスパラの神様も怒っているのだろう。
もうそうとしか考えられない!(こう思い込めるのも年の功だ!)
250クラス予選の前に父ちゃんは、一人では恥ずかしいので次男を連れてアスパラのブースに行った。
その時お姉ちゃんと目があった。
「この小汚いオヤジが今度は貧相な子どもを連れてまた来たわ」と考えていると思うのだがそこはプロだ。
微笑みながら「どうですか?」と言ってくれた。
「お前、呑みたいんだろ?」父ちゃんは、次男の背中を押した。
何か良いものを買ってやると騙されて連れてこられた次男は、戸惑っていた。
父ちゃんはお姉ちゃんに微笑み返しながら次男の背中をぐいぐい押して前に出た。
そして念願のアスパラドリンクをゲットした。一気に飲み干して「プハッ!」と言っている横で次男は恐る恐る呑んでいた。
「どうだ、旨いだろ、お前が好きなオロナミンCと一緒だ」
そう聞いて次男もグイッと呑んだ。「あ、ホントだ、結構旨いじゃん、おれアスパラガスの味がするかと思っていた」
二人はこれで良いのだと見つめ合って笑った。
もう思い残すことはない。父ちゃんは正々堂々と250クラス予選に臨んだ。
いつもはどれを引こうかとウジウジしているのだが今回は違った。
迷いなくエイっと引けばそこには“9”と書かれていた。「アスパラの神様ありがとう!」父ちゃんは、感謝を忘れなかった。
ほぼベストなボジションに陣取った父ちゃんは燃えていた。スタートも悪くなかった。
しかし、父ちゃんは43歳間近になって教えてもらったよ。
アスパラの神様とくじ運だけではこの世界通用しないって事を!!
PS
もし全日本のアスパラのブースの前で、小汚いオヤジと貧相な子どもがウロウロしていたら
父ちゃん一家だと思ってくれ。
味をしめた父ちゃんたちは、日曜日も朝早くから飲みに行ったのだが、
まだ準備が出来ていなくてウロウロしたあげくに帰ってきてしまったのだった。