小方君よー(2)
小方君、小方君よー。 1戦は(3月7日)は、父ちゃんの完敗であった。
君にモトクロスの厳しさとレースの奥深さを教えるつもりであったが、反対にスタートの大切さを教えてもらったよ。
ありがとう。
そして第2戦が5月9日にあったのだ。
父ちゃんはこのレースに掛けていた。フ・フ・フ!この間、何もしなくてボーとしていたわけではないのだよ。
第1戦の反省点を見いだし、その対策も立ててきたのだよ。
そして、月に2,3回の血の滲むような練習をしていたのだ。(マメが潰れたのだが・・)
父ちゃんが血の滲むような練習をしていたとき、小方君、君は世界一速い畳職人、石井正美師匠に教えを受けていたな。
雑誌で見たぞ。ずるいぞ、小方君!
しかし、父ちゃんはそんなことを根に持つ人間ではない、安心したまえ。(でもやっぱり羨ましいぞ)
ちょうど、この日は中部選手権第4戦と重なっていたんだ。
しかし、それを蹴って、父ちゃんはこのレース(多度チャンピョンシップ)を選んだんだ。
それというのも、全日本に行ったときに、パドックで隣の姫路の人にこう言われたからだ。
「子どもの頃は練習よりレースですよ、レースには出れば出るだけ上手くなりますよ、うちの子もそうでした」
父ちゃんは、少し考えた。やはり、うちは父ちゃんのことが一番だ。
36歳からモトクロスの世界に帰ってきた父ちゃんには、そんなに時間がない、
それに比べれば子どもたちには有り余るほどの時間があるではないか。
だが、小方君との勝負もあるし(今度はラップはさせないぜ!)
子どもたちにもレースに出させてやりたくて、こちらを選んだのだ。
(正直に言うと、速い子たちが中部選手権に行っているだろうという読みも長年の経験から少しはあった。)
第2戦はスタートにすべてをかけた。
やはりスタートがベリではあの80ccチャンピョンの小方君には勝てない。
(注:ここで勝つという意味は、ラップされないの意)
ほとんどやったことのないスタートの練習もやってきたのだよ。
(クラッチが減りそうで、あまり好きではないのだが・・)
スタートといえば、父ちゃんは、ここで(多度)で始めてスターティングマシンでスタートしたのだ。
父ちゃんが14.5年前にモトクロスをやっていたときには、中部選手権にはそんな「すぐれもの」はなかったのだ。
いつもヘルメットスタートだったのだ。
だから、4年前に始めてスターティングマシンの前に立ったときは緊張した。
当時はKDX220だったんだが、気合いを入れすぎ、見事な竿立ちウィリーで転倒してしまったんだ。
でも、第1コーナーはベリではなかったぞ。
隣のやつがビビってエンストしたんだ。根性のないやつだ。
あれ以来、子どもたちは、スタートでウィリーして遅れるやつを見るたびに、
「父ちゃんといっしょのお馬さんパカパカだー」と喜んでいる。
そして第2戦が始まった。
やはり父ちゃんの思惑通りにエントリー台数も少なく、いつものトップクラスもいない。
父ちゃんの計画は完璧だった。
しかし、あの小方君もいなかった。(関東選手権と重なったそうだ)
まあいい、勝負は次にお預けじゃ。(注:ここで勝負という意味は、ラップされないの意)
そしていよいよ、IB・NAクラスだ。
父ちゃんは、スターティングバーを睨み付けた。そしてバーが動いた瞬間にクラッチを繋いだ。
フロントタイヤが少し浮いた状態で、第一コーナーに飛び込んでいった。
前には誰もいなかった。 静かなコーナーはまるで父ちゃんを呼んでいるようだった。
第2ヒートでも、2番手で第一コーナーを回れた。
クラッチを減らしながら練習した甲斐があった。うん、満足じゃ。
え!結果はどうだったか?
結果なんてどうだって良いのだ、だって今回の課題はスタートだったのだから。
一つ言っておこう、
父ちゃんはスタートで、全エネルギーを使い切ってしまったんだ。