もっとくろうするぞ(2004/12)  

 知り合いのオヤジ(子どもは、85と65クラス)が多度の掲示板に書いた文章だ。

父ちゃんもグッとくるものがあったので、了解の元、紹介したいと思う。

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「もっとくろうするぞ」

怪我をさせてしまった。

名阪の全日本にて前車の転倒に巻き込まれて、足と手の端っこの骨を骨折してしまいました。

腕の方はことのほか長くかかりましたが、軽い骨折で何とかなりました。

その1ヶ月後、弟のタッツーが左肩の下の骨を見事にぽきっと骨折。

骨折ブラザーズと呼ばれていました。2人ともバイクに乗れない時期が来ました。

思い切ってここらでやめようとまで思った時期です。

こんなにしてまでやるものではないよな。怪我までしてやらせることはないよな。

親がやらせているのならこれは虐待だよな。闘犬の犬を調教しているわけではないんだから、おかしいよな。

こいつらの人生をもっと大事にしなくてはいけないよな。

この時期にいろいろ考えさせられました。

「何でもっとアクセルを開けないんだ、何やっとるんだ」

やらせているのは親なんだからそんなこと言っていいんだろうか?

冗談ならともかく、本気で言っちゃあいけない言葉だよな。

「あの子より速く走れ、なんで抜けんかったんだ」本人のレースに口をつっこみすぎだよな。

もし、レーサーとメカニックの関係でもそんなことは言わないよな。

親子だからこそ言えるんだけれども、それはホントの親子じゃあないよな。飼い主と犬の関係だよな。

メカニックならもっと言葉があるよな。そうだ、これからはメカニックになろう。

メンタル面でも、技術面でも、そして人間同士の関係の中でもメカニックになって応援や支援をしていこう。

そう決めた時期でした。

2003年1月5日生駒に練習に行きました。

ヨッシーが、まだコースも凍っていたのにもかかわらず大きい2連ジャンプを飛ぼうとして、

着地の衝撃で左足首の圧迫骨折をしてしまいました。

骨がのびる部分(コッタンセン)をつぶしてしまいました。

「このままでは骨がのびないかも知れません」という医者の言葉で目の前真っ暗、

これから成長をしていくのに片方の足が伸びないとなれば、

ランニングもウオーキングもままならないかも知れないと言うことです。

このままでは一生スポーツができないかも知れない体になってしまった、ということになります。

すべて親の責任です。親はしばらく立ち直れませんでした。

それを立ち直らせてくれたのはヨッシーの言葉でした。

「手術でもなんでもするからもう1度バイクに乗りたい。どんなに痛くても我慢する」でした。

こんな思いにさせたのは親のせいだよな。病室でも色々と話ができました。

バイクは親の趣味で始めたこと、やってなかったら他の楽しみを知っていたことだろう。

こうなったらやれること全てやってやろうと、全身麻酔の手術も2回、

そしてスポーツ医科学研究所で6ヶ月のほぼ毎日のリハビリ、家での筋力トレーニング。

骨を強くする、骨をのばす食品は必ず食べる。などありとあらゆる手を尽くしました。

我が家もサラリーマンですので財政は乏しい中で全財産をつぎ込んで復活にかけてきました。

バイクをやるためではなくこれからの長いヨッシーの人生のために。

もう2度とバイクは乗せないでいよう。

しかし、「どうしてもやりたい・・・」

他にやりたいことができるからといくらいっても言うことを聞かないヨッシー。

こんなヨッシーにしてしまったのも軽い気持ちでバイクに乗せた親の責任であった。

小さい頃からのスピード狂で部屋の中を電動バイクで乗り回していたおむつの取れないヨッシー。

自転車を買ってやれば暑い夏の日でも1日中乗り回しているヨッシー。

2ヶ月でタイヤがすり切れてチューブがむき出しになってしまった。

子供用の自転車でこんなになっているのは見たことなかった。

こいつはただ者じゃあないなあ。

3才には補助輪無しでジャンプをしている。

バイクに乗せれば目つきが変わるのも当然ですね。

結局親が説得をされてまたリハビリをかねてまたバイクに。

驚くほどゆっくりでした。

でも、絶対にもっと速く走れよとは言わないと決めていました。

これからはあいつのペースについていこう、そう決めたおやじでした。

バイクに乗るときは親子じゃあない。1人のレーサー。そしてメカニック。

お金を少しも出してやれないメカニックだけれども、精神的な支えにはなってやれるだろう。

でも、レースの世界ではマシンの性能が大きな精神的な支えになるのは仕方ないこと、

でも、このおやじじゃあお金をかけてやれない。

これ以上こいつの成長に伴ったバイクを提供してやれなくなった。

ヨッシーはもうそこまで来ている。

後少しでこんなメカニックとはおさらばしなくてはいけないだろう。

でも、それができないから頭と生活を悩ます日々が続いている。

“もっとくろうするぞ”、もうこれ以上苦労のしようがないかな・・・。

こまったなあ。

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うちの長男よりひとつ年下のヨッシーは常々「天才だなー」と思っていたが、才能だけではなかったんだな。

やっぱり人間だったんだな(笑)

怪我しても不死鳥のように甦るヨッシーを見ていると本人の頑張りもあるがそれ以上に家族の愛情があるんだな〜。

いい話をありがとうございました。

父ちゃんも長男もヨッシーの足元にも及ばなくなってしまったけれど、これからも一緒に走っていこうな。

お互い怪我には気をつけてな。

まずは、次回の多度で勝負だ!IB5年の老練なテクニックでブロックだぜ!(速さなら負けるからな)

前回は、これでリョウスケの自滅を生んだんだぞ。今度は、ヨッシーの番だぜ。ハッハッハー。

PS

員弁では、転倒したとはいえ、ついにあの岡野君に勝ったヨッシー。

フープスの速さはピカ一だったな。

どうしたらあんな風に走れるか今度おじさんに教えてね。

<ヨッシーの父ちゃんからの返事>

フープスの走り方なんですが、ヨッシー曰く。

「ういーういーういーーーーー」と行くと走りやすいそうです。

彼ら特定の人類にしかわからない言葉でした。おやじもさっぱりです。

<父ちゃんの返事>

一度、リョウスケにも聞いたのだが

「ブィー!でブィ!ブィ!ブィ!ブィ!」言っていたぞ。

「あのでかい2連ジャンプは?」には一言「全開!」の答え。

お前らに聞いたオレが悪かった(笑)

でも、また教えてな。