日秘露(ペルー)友好?(2005/5)  

この東海地方は、全国的に見ても外国人が多い。多くは日系ブラジル人やペルー人だ。

そして、彼らはモータースポーツが大好きだ。だからモトクロスをやっているヤツも多い。

この河原にも多くのブラジル人が練習にやってくる。

(その日のことしか考えられないラテン系?の父ちゃんとは、意外と気があってしまうのだが・・)


ある日曜日の朝、父ちゃんたちは、いつものように河原でバイクに乗っていた。


そこにやけにガタイの良い外国人が日系らしき女の人とやってきた。

他にも何人か練習していたのに、何故かその外国人は父ちゃんの所に来て話しかけてきた。

(やはりラテン系の匂いがするのか?聞けばペルー“秘露”から来たとか)

「チョット ミセテモラッテ イイデスカ?」「もちろん良いですよ」

「トシ イクツデスカ?」「43歳です」

「オー トシヨリデスネ」言いたいことを言う外人だ。

「ワタシ イクツニ ミエマスカ?」

父ちゃんは考えた。この変な外国人はどう見ても父ちゃんに近い。


しかし、もし本当の年より上に言ってしまえば日本との友好の問題もある。

父ちゃんは、こういう気遣いの出来る男なのだ。

「35歳ぐらいですか?」

本当は「40歳」と言いたいところだったが日秘露友好のことを考えて答えた。

「オーノー シンジラレナイ ワタシ25デス!」

オーノー!は、こちらが言いたいぐらいだぞ。

こんな老けた顔をした25歳なんて日本にはいないぞ。

「ジツハ、ワタシモ、ペルーデ モトクロス ヤッテマシタ」

そうか!それでわざわざ見に来たんだな。

「デモ ニホンデハ ケガ コワイカラ イマヤッテナイ」

そう言うと右の足首を指さした。

そこには、あきらかに複雑骨折をしたであろう傷跡があった。

「ペルーノヒト ミンナ バイク スキネ コドモノコロカラ ノッテイルヨ

ミチダッテ コノコースト オンナジ デコボコネ」

そう言われて見ればこの若オヤジがとてつもなくバイクが速そうな気がしてきた。

よく見れば分厚い胸板に引き締まった腹筋、足だって凄い筋肉だ。

「ペルーデハ コドモノコロカラ バイクヲ シゴトニ ツカッテルネ

ダカラ コドモノコロ カラバイクノウラニ ブタノセテ ハシッテイタネ」

「ブタ ブヒブヒイッテ アバレルケド シッポモッテ ハシルネ」

「オマワリサン タマニクルケド スグニゲルネ」

子どもの頃からバイクの裏にブタを乗せてビヒブヒ言わせてデコボコ道を走っていれば上手くなるはずだ!

その上、ブタを乗せたままおまわりさんから逃げるのか。

いったいペルーという国は、どんな国なのだろうと思って聞けばアマゾン川で泳いでいたと言うではないか。

う〜ん、子どもの頃からブタ乗せて走ってアマゾン川でワニと格闘していればバイクも上手くなるはずだ。

(父ちゃんの瞑そうは勝手にふくらんでいった)

「ワタシ ヤスミニナルト イツモコウヤッテ ヤマイッタリ カワニイッタリシテルネ」

そりゃ〜毎日ブタ乗せてワニと格闘してゴリラと決闘していれば自然が恋しいだろう。

「デモ ドウリョウ ミンナ ヤスミニナルト パチンコネ シンジラレナイヨ」

「ドウシテ ニホンジン シゴトオワッテモ イエニカエラナイカモ ワカリマセン」

そうだな、この若オヤジの言っていることにも一理ある。

「ボクノ カノジョ ショウカイスルネ スズキサン」

え!さっきから一言もしゃべらずにこの若オヤジの言うことに頷いていたこの人は日本人だったのか!!

「スズキサンニ キョウ キテモラッタノハ ボクノスキナモノヲ ミテホシカッタカラ」

「ボク アト3カゲツデ ペルーニ カエリマス スズキサンニモ イッショニ キテホシイ」

おいおい、この若オヤジ、何を言い出すんだ、日本人を拉致する気か?

そう思って鈴木さんを見れば何やら嬉しそうに頷いているのではないか!

父ちゃんは日本の危機を感じて思わず聞いてみた。

「鈴木さん、本当に良いんですか?ペルーに行ったらバイクの後ろにブタ乗せてブヒブヒ言わせなければいけないんですよ!」

鈴木さんは笑いながら「ブタを乗せることは出来ないと思いますが、バイクくらいになら乗れると思います」と答えた。


この時に初めて鈴木さんの声を聞いた。本当に日本人だったんだ!

「ウレシイデス コンド ボクノ リョウシンニ ショウカイシマス」

この二人は父ちゃんの存在なんか忘れて盛り上がっていた。

「チュウコノ モトクロッサー 3ダイクライカッテ バラシテ コンテナニイレテ ペルーニ ハコボウト オモイマス 

ペルーノヒト ブヒンナイカラ ミンナ ジブンデ バラシタリ ツクッタリスルノ トクイネ」

「僕は、あんまり整備は好きではないんですよ」と言えば

すかさず「コウグバコ ミレバ ワカルネ ハッハッハー」と笑いやがった。

そして、この失礼な若オヤジと鈴木さんは、手を繋いで幸せそうな顔をして帰って行った。

あれからもう半年ぐらい経つであろうか。


今頃鈴木さんは、遙か彼方の地ペルーでバイクにブタを乗せてブヒブヒ言わせているのだろうか?

とちょっと心配になる父ちゃんであった。