チクショー(2)(2005/8)  

 2年以上前に“(39)チクショー!”を書いた。

内容は、ガミガミオヤジが小学校にも上がってないような小さな自分の子を蹴倒したので、注意をした父ちゃんと睨み合いになっってしまったという話だった。

(注意をしたと書いたが、実際は、キレた父ちゃんは、ほとんど臨戦態勢に入っていた)

その後も同じ中部地方でモトクロスをやっているので、たまにモトクロス場で出会うことがあった。

こういう時は、やはりバツが悪いものでお互いに近寄らない感じだった。

実はあの事件依頼、このオヤジが子どもを蹴倒す姿は見たことがなかった。

本当にたまにしか合わないので実情は分からないが少なくとも怒鳴り散らしたり、蹴倒したりということはなかったのだ。

以前は、怯えるような目でオヤジを見ていた子どもの表情も穏やかになったように感じている。

このオヤジもきっと子どもに教えられたのではないか?と思っているのだ。

乗りたい時にだけバイクに乗っているうちのナホに比べ、このオヤジの子どもはドンドン速くなっていた。

成長する子どもに比べて大人というものは、なかなか成長出来ない。

もう、わだかまりもないのだからこの辺で手打ちをしなければいけないのだが、以前のような緊張感こそないものの挨拶さえも出来ない有様だった。

子どもがモトクロスをやっている限りこの狭い世界で出会っていくのだから、いつまでも昔のいきさつを引きずっていてはいけないと考えてはいるのだが・・。

しかし、ケンカしてもすぐに仲良くなって笑い合いながら遊べる子どもと比べて大人というものは、情けないものだ。

「よし、今度こそ挨拶しよう!」と何回か思っていたのだが、目があった時にちょこんと会釈するのが精一杯という時期がしばらく続いていた。

先日のあるレースでもこのオヤジと一緒になった。

レースの朝の父ちゃんは忙しい。回りに目もくれる暇もない。

レンチを取ろうと振り返った瞬間、このオヤジがちょうど後ろを通りかかっていて目があった。

あまりに急なことだったので心構えも出来ていなくて、父ちゃんは一瞬固まってしまった。

このオヤジもビックリした目をしていたが、すかさず「おはようございます!」と挨拶してれた。

父ちゃんは、またまた一瞬固まってしまったが、ぎこちなく挨拶を返すことが出来た。

本来なら、このような機会に「明日のモトクロス界のために一緒に頑張りましょう!」とガッチリと握手をして抱擁したいものなのだが、

意外と恥ずかしがり屋な父ちゃんは、自分の気持ちを上手く表現出来ない。

毎日子どもたちと関わっていると“笑いたい時に笑い、泣きたい時に泣ける”子どもたちが本当に羨ましくなる。

これこそが本来の人間の姿だと思う。
大人になるに従って知恵も付くが、変なプライドや見栄も付く。

子ども時代の何に対しても素直な気持ちもどこかに飛んでいってしまった。

でも、子どもって時には素直に意地悪したり、本能のままケンカしたりするから良いことばかりではないがな(笑)。

しかし、せっかくこのオヤジとも挨拶することが出来たのだから、この機会を生かしていこうと思っている。

もし、中部地方のモトクロス場でごついオヤジと小汚いオヤジが見つめ合って抱擁していたら父ちゃんたちだと思って暖かいまなざしで見守ってくれ。

きっと目をキラキラさせて明日のモトクロス界について語り合っていると思うから・・。