この感じ?(2005/10)  

来年もタレパイ号と生きていく(いかざる得ない)決心をした父ちゃんは、改めてタレパイ号を見た。

見た目は、シートが破れている程度だと考えていたが、やはり1年間レースにでたり練習したりで、

よく見ればあちこち直さなければならないところがいっぱいあるではないか。

いつもバイクのための時間がなかなかとれない状態なので、乗ることを最優先にしてきたツケだ。

もっとこまめに整備してやればいいのだが、もともとバイクをいじることより乗る方が好きなのでしかたないか。

タレパイ号よ、シーズンオフになったら一度ちゃんと整備してやるぞ。

よく見ると、細かな傷もたくさん付いているし、スイングアームにも大きな傷が見える。

よく一年間頑張ってくれたなとナデナデしてやるとザラザラとした感触になっている。

新車の時は、ピカピカツルツルプルルンだったのにな。

でも、このザラザラ感が、鮫肌のようで気持ちが良いぞ。

この頃では、家族で練習に行っても、もうショウゴは父ちゃんを相手にしてくれないようになってきた。

もう自分の世界で走っている。

「父ちゃん、あのジャンプが飛べたよ」「父ちゃん、あのコーナーは、オレの方が速いよ」「父ちゃん・・・・」

今まで何回「父ちゃん、父ちゃん・・・」と言ってくれただろうか。

ここ2年ほどは、いつも一緒に走りながら競争していた。

ちょっと手を抜いて走ってやると真剣に追いかけてきた。

「ショウゴ、ストレートが速くなったな〜」なんて言ってやると大喜びで練習していた。

CRFに乗り換えた時も「父ちゃん、4サイクルの乗り方が分からん」と聞いてくれた。

そのたびに顔では「しょうがないなぁ〜」って感じだったが内心は嬉しかったぞ。

それがどうだ。ここ数ヶ月で一気に速くなってしまい、もう父ちゃんと競争することもなくなってしまったし、

アドバイスを求めることもない。
もう、このオヤジに教わることはないと思っているのか?

この辺が、バイクに乗っているオヤジの悲しさだ。

一緒に走れる楽しさもある代わりに、子どもに抜かれたあげくに力でねじ伏せられるような感じも味わう。

レースって厳しいものだな。一緒に乗ってなかったらある程度までならオヤジの威厳を守れたかも知れない。

しかし、仕方がない。父ちゃんは子どもと一緒にバイクに乗ることを選んだのだから・・。

やっぱり、オヤジが出来ないことを子どもに言っても聞いてくれないものだ。

ショウゴにも相手にされず、一人トボトボと走っていたらタカの姿が見えた。

そして、追い掛けてきた。どうやら父ちゃんを待ち伏せしていて、後ろから抜こうと思っているようだ。

「この父ちゃんを抜こうとは10年早いわ!

落ちぶれたと言ってもまだまだ根性のかけらもないタカは相手にもならん!!」

父ちゃんは、アクセルをちょっと開けた。これでタカは遙か後ろだろう。

「ビビビビー」2サイクルの小気味いい音が聞こえた。

「あれ、まだ着いてくるの?」もうちょっとアクセルを開けた。

コーナーで振り返れば、少し離れたがまだ着いてきている。

この時、確信した。
「タカが速くなっている」それもなんとか父ちゃんに着いてこられるまで。

そこそこのペースで走っては、たまにゆっくり走る。そんな父ちゃんをタカは必死に追い掛ける。

4,5周走ったところで休んでいると


「なんだ、父ちゃんもう疲れたのか、もう少しで抜けたのに!」と生意気なことを言っている。

「父ちゃんは、コーナーがヘタだな」と目をキラキラさせている。

あれ?この感じは2年前のショウゴと一緒ではないか!

子ども心にも父ちゃんをなんとかなる存在と思い始めたようだ。

よし、この勝負受けて立とう!

ショウゴでも父ちゃんを抜くのに2年掛かったのだから
根性なしのタカなら3年か?ヘタしたら4年だな。

フッフッフー。

また、楽しませてもらうぞ。フォッフォッフォッフォー!!!