2歳児の様子(6月)

「K君この頃よくお話しするようになったね。」

「そうそう、さっきなんて○○ちゃんが困っているのを教えに来てくれたし、 ほんと、急に言葉がいっぱい出るようになった。」

「いつからだったっけ」 子どものお昼寝中、記録を書きながら、 保育者同士でふと、こんな会話が始まりました。

K君は1歳児で入園した時から、 保育者に世話をされるのを全くいやがることなく受け入れる代わりに、

自分からは何もしようとしない、 どちらかというと過保護的に育てられたタイプでした。

入園式の日は、お母さんよりも、 一緒に参加されたお父さんの方がこまめにK君の世話をしているようにも 見受けられました。

1歳児クラスの頃から、 他の子が、保育者に世話されるのを時には嫌がったり、

他児とトラブルを起こしたりして自己主張をしているその横で、 K君はおだやかに保育者にやってもらうのを待っていました。

他児との『トラブル』も 自分の中での思うように出来ない『パニック』もないかわりに、

そういった『葛藤』を経験することにより 他児がどんどん成長していく一方で、

K君は2歳児クラスに進級しても、 生活やあそびの中で相変わらず依存心の強いままでした。

保育者が、少しずつ手をかけるのを減らし、 言葉で励ましたり誘ったりしても、

例えば排泄の時には、「ズボン下げようね」 「パンツも下ろしてね」 「(便器のところに)立って」 「さあ出るかな」・・・。

ひとつひとつの細かい動作でも保育者の指示を待ち、 言われてからやる、という状態でした。

お母さんも送り迎えの時、 他の子たちが靴をはいたりする様子を見て感じるものがあったのか、

「いつまでかかってるの」「もう、ダメだねえ」を連発するようになりました。

「先生、この子ちっともしゃべらないでしょう、困っちゃう」 「保育園にいれば出来ると思ったのに」とももらされていました。

いろいろなタイプがあるし、 K君なりに頑張っていることを伝えていたのですが、

6月の初め頃、 お母さんがK君に向かってきついことを言っているのを あまりに見かねた保育者が、

「お母さん、K君は頑張っています。 だからK君のことをダメな子って言わないでください。」と、ちょっと強めの一言。

どうやらそのあたりかららしいのです。

K君が自分からお便所で排泄をしたり、 みんなと一緒に食事をしようとしたりする姿を見るようになったのは。

「せんせー、食べたよー。」 「ウルトラマン、怪獣やっつける。」 「○○君たたいたー。」 K君から言葉があふれ出しました。

あの時、保育者が母親に言ってしまった場面にいたKくん。

言葉の意味は分からなくても、 先生は自分を認めてくれているという思いを感じとったのかもしれません。

そしてあの時、ムッとして帰っていったお母さん。

自分なりに頑張って子育てをしているのにというプライドと、

でも、うまくいかない焦りから、 ついつい自分の子をけなすことにマヒしてしまった自分に気がつき、 かなり揺れ動いたことだと思います。

でも翌日からは、少なくとも送り迎えの時、 今までのようなきつい言葉は言わず、 K君が靴をはくのをじっと待つようになりました。

K君の今の活発な姿は、それがきっかけだったのか、 たまたま時期が来ただけなのか、はっきりとは分かりません。

でもあの小さな事件によって、 その後お母さんと保育者がひとつ歩み寄って、 本音で話が出来るようになったことは確かです。

園と家庭が、役割分担ではなく、 共に子育てをし、成長を喜び合える仲間になることの大切さを感じました。

【7月の様子】


ギラギラ照りつける暑い夏。

園庭、屋上やテラスをところ狭しと、 あちこちで学年ごとにプール、どろんこあそび、

シャボン玉、 色水あそび等、夏のあそびに夢中になる子どもたちです。

そして2歳児のテラスにずらりと並んだ5〜6個のビニールプール。

プールの大きさも、水の深さもいろいろで、あとは子どもたちを待つばかり。

そこへ目を輝かせた子どもたちがやってきました。

普段なら、保育者に手助けしてもらうまで待っている子も、 なんとか自分で水着に着替え、

気に入ったプールをみつけて、 さっそく水あそびを始めました。

その様子をよく見ていると・・・

「水に触れたり、飛び込んだりして、水そのものの動きや感触を自分の身体で味わう 子」

「おもちゃや牛乳パックなどの容器を使って、水とかかわることを楽しむ子」

「水あそびを通して、保育者や友だちとふれあうことをよろこぶ子」 と、

水に対するイメージや楽しみ方は、 一人ひとりほんとに個性的なことに気づきました。

自分の身体で水の感触を味わい、楽しみたい時には、 おもちゃなどはかえって不必要なのかもしれません。

あそびに夢中になるために、 あそびのために準備したものが余分になることもあることを学びました。

つめたい水、パシャパシャ、ザーザー音のする水、 飛び跳ねたり、流れたりする水・・・。

水そのものの魅力や不思議さが2歳児なりに満喫できるよう、

保育者は感性豊かに、一人ひとりの水へのイメージや思いを推察し、 共感していくことの大切さを感じました。

自分なりの楽しみ方で充分満足し、保育者や友だちから刺激を受け、 共感する喜びが味わえると、

子どもたちの思いは、2歳児とはいえだんだんまとまってくるようです。

時には、「ゆかいなかえる」のような絵本やお話にふれ、

共通のイメージを持ってプールに入り、ごっこあそびを楽しむこともいいですね。