3歳児(年少さん)のリカちゃんは、なかなか園に慣れることが出来ませんでした。
一歳半の妹といつも登園してくるんですが、
お母さんと別れる時はいつも下を向いたままです。
別に、お母さんを困らせるわけでもないんですが、その表情はくもっています。
僕は、「げんきっ子ビデオ」(ビデオによる園だより)を撮っているんですが、
あることに気づきました。
リカちゃんが友達と遊んでいるところを撮ろうとすると
必ず下を向いて暗い顔になるんです。
体操をしているときでも、ビデオカメラを見つけると急に止めてしまって、
暗い顔になります。
写真を見ても、ピースをしている友達の横で、うつむいているリカちゃんがいます。
担任の先生にも相談してみましたが、 「あの子は、頭のいい子です。心配しなくても良いですよ。」と一言。
何か、釈然としないまま、7月に「げんきっ子ビデオ1」の貸し出しが始まりました。
この時に、いつも園やビデオについてのアンケートを取っています。
幸福のアンケート箱 (アンケートを入れると幸せになれると僕が言いふらしています)の
何通かのアンケートの中に
「普段の子どもの様子が分かって良かったです。・・・
早く、うちの子もみんなみたいな笑顔で遊んでくれたらいいのになー」
というのがありました。
お名前はありませんでしたが、すぐにリカちゃんのお母さんだと思いました。
その後、徐々にビデオを向けても表情が変わらなくなり、
次の「げんきっ子ビデオ2」にはリカちゃんの笑顔をお母さんに見せられるなと
思っていた10月頃又、カメラを向けると暗い表情になりだしました
。
さすがにこの時は、先生も理由が分からず ずいぶんと心配をしましたが、やがてリカちゃんのお母さんのおなかを見て
納得しました。
ちょっと出てきたおなかには、3人目がいたのです。
リカちゃんは、すでに、この3人目が生まれれば、
お母さんは赤ちゃんにかかりきりになってしまい、
自分のことなどかまってもらえないことを感じていたのです。
先生の一言の意味がやっと分かりました。
リカちゃんは、ビデオカメラを向けられた時に、
すでにそのビデオを見るお母さんを思い描いていたのです。
そして、もっと自分のことを心配してよと必死に訴えていたのです。
年少さんとはいえ、その能力の高さには驚かされました。
その後、二度と暗い表情になることはありませんでしたが、
(笑ってはいけないんですが)年長さんの時には4人目が出来ました。
もうすっかり立派なお姉さんになったリカちゃん、
毎朝、大きなおなかをしたお母さんといっしょに、妹と弟の手を引いて登園してきます。
でも、僕には、カメラを向けると 急に表情をくもらしていた頃のリカちゃんが忘れられません。