親御さんへの対応

日々の送り迎えから園への要望など、親御さんとの対応は大切ですよね。

この時の対応の仕方で、その園の評判が決まってしまうこともあるくらいです。

でも、子どもにとってよかれと思ってやったことが、うまく伝わらなかったり、誤解されてしまうこともありますよね。

そんなことから、「今の親はわがままだから、一つ要望を聞くと、次から次へと要求をしてきて園の運営が成り立たなくなる」と公言?

している園長先生もいます。

それでは、いろいろ言ってくる親に問題があるのでしょうか?

以前、転園してきたお母さんが、あまりに高圧的な態度なのでびっくりしたことがありました。

しかし、半年もするとそんな態度はなくなり、親しく話してくれるようになりました。

そして、理由が分かりました。

前の園では、親と園(先生)が、隙を見せないように警戒しあい、お互いの要求だけを言い合っていたそうです。

当園でも、親御さんからのご意見やご要望を受けることもたびたびありますが、これは本音で話し合えるチャンスだと考えています。

園としても出来るだけ親御さんの考え、意見を吸い上げるようにしています。

ですから、年3回の「げんきっ子ビデオ」の無料貸出・ダビングの時にアンケート用紙を入れて、

幸福のアンケート箱 (アンケートを入れると良いことが起こると僕が言いふらしています)に入れて貰っています。

なぜか石や女性用下着のカタログなどが入っていることもありますが、毎日その中を除くのが日課になっています。

おやつに出すお菓子の種類から、園に置いてある絵本の種類・園でへの疑問など多くのご意見を頂きます。

中には、B5のアンケート用紙の裏表だけでは足りず、レポート用紙をつけてくる人もいます。

僕は、このアンケートに記名があればすべて回答します。

園としては、こういう考えでやっている、ただいま先生と話し合い中、次回の職員会議の議題に入れる予定等、

一つ一つの事についてレポート用紙に書いて封筒に入れて渡します。

分量も頂いたものの何倍かになります。 これを名古屋の嫁入りにちなんで「アンケートの三倍返し」と呼んでいます。

(やはり一年を通じて4〜6月、それに初めて園に入られた方が一番多いです。しかし、この時期を過ぎると、激減してしまいます。)

大変な労力だとお思いの方もいると思いますが、これをやっておくと後は驚くほど協力的になってくれる親御さんが多いのも事実です。

後々のトラブルを考えれば、簡単なことです。

最初のボタンの掛け違いが、どれほど事を大きくするかはみなさん分かっているのではないでしょうか。

いろいろと園に言ってくる親御さんは、園や子育てについての関心が高い証拠です。

この機会に、理解し合った方が後の父母の会の会長、役員になってくれることも実際多いことです。

今、思い返しても、親御さんのご要望通りしたことよりも、園の考えや思いを伝えたことの方が遙かに多い気がします。

大切なのは、ご意見ご要望に対して、 どこまで園が真剣に考えたかが伝わるかどうかではないでしょうか。

親御さんは、自分の思い通りしたくて言っているわけではないように思います。

園として、親御さんの意見を吸い上げる機会を作らずにいると、結局、園の見えないところで言っているだけになります。

それでも、園や先生が知らない方が無難と考えるのか、 子育てを親御さんと園、みんなで本気で考えていこうとするのか、

園自身が今問われているように思えて仕方ありません。

園の常識や思いを押しつけるだけでなく、 常に子どもや親御さんの気持ちを思いやる優しさが必要になってきていると思います。

保育園に勤めて良かったと思うことは、 子どもたちの育ちを楽しむことはもちろんですが、

多くの親御さんたちと知り合え、そしてその成長も見られることです。

以前にも書きましたが、 入園式より卒園式のほうがお母さん方がきれいになっているのです。

化粧の仕方が上手くなったとか、僕が熟女好みとかではありません。

単なる勘違いでもありません。 これは3年〜6年前の「げんきっ子ビデオ」を見ても明らかです。

きれいになっているのです。表情が良くなっているのです。

きっと子どもと経験したこの何年かが、お母さん方を人間的に成長させ、それが表面にまであふれ出していると思うのです。

このような、親御さんと子どもたちの成長を間近に見ていけるのが保育者の最大の喜びです。