保育園に行くと乱暴になる?(2001.9)

ちょっと古い話題なのですが 4月頃の新聞に以下のような記事が掲載されました。

「託児時間長い子は攻撃的」 働くママに不安 米で10年間追跡調査 (http://www.asahi.com/life/child/0428a.html#top)

保育施設に預けられる時間が長いほど子供は攻撃的な性格になる。

そんな調査結果が米国で発表され、母親たちを不安にさせている。

米国立衛生研究所が研究費用を拠出し、 米10都市の乳幼児1364人の育っていく過程を10年間にわたって追跡調査した。

公的な保育調査としては最大規模だった。

生後3カ月から4歳半までの時期に、保育園などに週30時間以上預けられた子供の17%は、

幼稚園でほかの子に乱暴に振る舞ったり、先生に反抗したりする傾向が強かった。

週10時間以下の子供が幼稚園で問題行動に走るケースは6%以下だった。

対象となった子供の託児時間は平均で週26時間。

預ける先が保育園でも託児所でも、 自宅でベビーシッターに見てもらった場合でも結果は同じ。

子供の性別や家計も結論に影響しなかった。

研究を率いた英ロンドン大のジェイ・ベルスキー博士(48)は

「週何時間までなら大丈夫という線引きはだれにもできない。

ただ託児時間をなるべく短くした方が子供によい結果を生むとは言える」と学会で発表した。

米国では6歳以下の子供を持つ母親の65%、父親の96%が職を持っている。


そんな中、次のようなインタビュー記事がアエラに載っていました。

「国立精神・神経センター精神保健研究所の菅原ますみさんに聞く」

「幼児期に母親が働いていたことと、 その後子どもが問題行動を起こすかどうかについては、何の関係もない。」

これが我々の調査で得られた結果です。

神奈川県内の病院で出産した母子1260組の協力を得て、

14歳まで、最終的には270世帯を追跡調査したもので、 母親の就労形態と、児童・思春期の問題行動とされる、

反社会的行動傾向と、 引きこもりなど抑鬱傾向との関係を調べました。

生後6ヶ月、18ヶ月、5歳の時点での問題行動とその萌芽を調べましたが、

3歳未満の時に母親が働いていたグループの方が 働いていなかったグループよりむしろ問題傾向が少なかった。

これは、乳幼児期は、働く母親の子どもの方が集団の中で育てられる機会が多く、

ルールを学びやすい環境にあるからだと思われますが、

8歳以上の調査では、問題行動、抑鬱傾向ともに差はなくなり、 母親の就労形態の影響は見られなかったのです。


興味深いのは、母親のキャリアパターンとの関連で、

一貫して働いている場合は、子どもの問題行動のレベルはどの時期でも低い。

ところが、途中で仕事に就いたグループは一貫して問題行動レベルが高めなのです。

ただ、これはもともと夫婦関係や家庭に問題があり、 活路を見いだそうと母親が働きに出たケースが考えられ、

なお因果関係の特定が求められるところです。

思春期の子への関わり方で、面白いデータがあります。

「自分の行動をコントロールできない」という問題行動の萌芽があったのが、

10歳時の調査では消えていたグループに、共通の条件があるのです。

まず、父子関係が良好であること。

母親だけでは煮詰まる育児も、余裕のある父親がフォローすることで好転するのです。

次に、夫婦関係が良好であること。

母親が父親に愛情と信頼関係を抱けるかどうかで、家庭の空気ががらっと変わるものなのです。

やはり母親はキーパーソンですね。 母親が家庭の中で生き生きいしていれば、家庭も生き生きする。

思春期の子を持つ母親は、働くと子どもに子どもに悪影響が出るのではなどど悩むより、

夫婦関係や家庭生活の充足度をチェックした方がいいと思います。


日米の研究でまったく違う結果?が出ました。

それぞれの社会環境などの違いも影響していると思われますが みなさんは、どのように考えていますか?

よろしければご意見をお願いします。


○○先生

米国の場合、、、、、 日本のような保育園の形態ではなく、 託児(それぞれの家庭内で保育する)という形や、

保育園に公的なお金があまりながれず、経営自体に余裕がないなど、 保育園の在り方がずいぶん違うような気がする。

(ほとんど、聞いたような話で実際は???)

とは言っても、なにせ海の向こうの話なので、日本にいる私達が調査の前提(趣旨)や 取り巻く状況の把握は難しい。

つまり、このふたつの調査を比較する事は、無理があると思う。

似たような調査ですが、全く違う調査とおもう。

それよりなにより、「預ける時間と子どもの問題行動」を結びつけたところに 無理があるような気がする。

調査結果としては、、、統計学的な思考過程は間違いないとしても、 この博士の結論には納得がいかない。短絡的すぎる。

預ける時間と言う要素の裏側にもう一つ何かある気がする。

う〜〜ん、腹立たしい。こんな調査は、母親に混乱を招くだけ。

この博士は、この調査結果と結論を発表する事で何がしたいのかわからない。

何が専門かしらないが、子育て中の母親を、よく知らないのではないか。

(これだけの文章でしか、ものが言えないのですが、これ以外のところで  母親にエールを送っている部分があれば、別の話…)

百歩譲って、、、、 というか、この結果を鵜呑みにしてでも、 もう一度、『保育とは何ぞや』ということを考える事には意味がある。

>そんな中、次のようなインタビュー記事がアエラに載っていました。

>「国立精神・神経センター精神保健研究所の菅原ますみさんに聞く」

>「幼児期に母親が働いていたことと、

>その後子どもが問題行動を起こすかどうかについては、何の関係もない。」

>これが我々の調査で得られた結果です。

こちらは、すんなり入ってきます。

「示唆に富んだもの」といえると思う。 久しぶりに「大阪レポート」を思い出します。

>やはり母親はキーパーソンですね。

>母親が家庭の中で生き生きいしていれば、家庭も生き生きする。

>思春期の子を持つ母親は、働くと子どもに子どもに悪影響が出るのではなどど悩むより、

>夫婦関係や家庭生活の充足度をチェックした方がいいと思います。

うん、うん。(我が家は、大丈夫か・・・・)


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最初に、このこと(託児時間長い子は攻撃的)を知ったのは、 インターネット上の「保育の掲示板」でした。

「こんな事が新聞に書いてあった」から 「子育ての不安」へと一人歩きをしていました。

僕は、この記事自体を知らなかったので、 検索してなんとかasahi.comにたどり着きました。

そうこうしている内に園児のお母さんから

「友達から(専業主婦)保育園に預けていると 子どもが乱暴になると言われた」と相談を受けました。

そのお母さんには、僕が知っている情報や保育園での様子、 集団生活の大切さを話し、安心して帰ってもらいましたが・・。


この手の話を聞くとすぐに「3歳育自神話」を思い出します。

ご存知のように 3歳までは、母親の手で育てた方が良いというものなんですが、 これも根拠のまったくないものだったんです。

(2,3年前に当時の厚生省がやっと否定した)

戦後すぐに、欧米の乳児院 (かなり劣悪な環境だったらしい)の子ども達の問題を指摘した 児童心理学の論文が発表され、

心理的、知的発達の遅れや情緒障害などがみられ 「養育者の愛情が必要」と結論付けられました。

これが「母の愛情が必要」と強調されて輸入され 幼稚園前の年齢と「三つ子の魂百まで」とが合わさって

和洋折衷の「神話」となったようですが、 このことが、どれほど働くお母さんたちを苦しめたか分かりません。

(実は、まだまだ信じている人も多い)

この記事「託児時間長い子は攻撃的」 については出所を検索したのですが なかなか原文にたどり着けませんでした。

他のMLで、下記のような情報を得ましたので 紹介させていただきます。

******************************

変興味深かったので原文を読むべく朝日新聞社に 問い合わせましたところ、

原文はなく、ニューヨークからの配信だということでした。

米国の公の調査結果にしては出所がはっきりしていません

(大抵この種の記事は AP やUPI という通信社からの ものなのですが、、、)し、

文脈から察するに「もらい記事」

(※外信部記者が取材ではなく、 現地の新聞や雑誌から興味のある記事を翻訳して 日本の本社に送ることが良くあります。

ただし「○月○日付けロサンゼルスタイムズによると、、、」 と但し書きするのがマナーです)のようでしたので

ネット検索してみました。

原文は4/21付けニューヨークタイムズ紙にワシントン発で掲載 された記事ですが、

残念ながら前後の文が割愛されているため に朝日の掲載文(和文)の場合はいささか誇張された感がなき にしもあらずです。

この原文記事を書いた同じ記者が 翌日の4/22付け紙面で研究報告に再度触れ、

「国の優れた研究機関が費用を拠出し、 最も信頼されている研究者らが調査に携わったからといって決定的なものではない。

研究結果は、単に託児施設に預けられた時間数と 子ども達が攻撃的で反抗的であることに

何らかの関連性があるように見えるというだけで、

託児施設に長く入れらた子ども達が反抗的で 攻撃的になるという説明付けにはならず、

かつまた託児施設自体が子ども達のそういう行動を起す原因に なっているという証明では決してない」

と書いていますし、ハーバードのロビンス疫学博士の談話もあり、

「託児施設に子どもを預ける母親にストレスが多く、子どもが それを感じとっているからかもしれないし、

多分に女性は手に おえない子どもを託児施設に預けたがり、

託児施設が問題児を 生んだというよりも問題児が託児施設に集まっってしまったか らかもしれないが、

そんなことは観察結果から分かることではない」 というように書かれています。

(以上意訳です。あしからず。原文は、 http://crab.rutgers.edu/~goertzel/daycare.htm で読めます)


○○先生

やっぱ! 海の向こうの話は、あまり引き合いに出さないほうが無難ですね。

「距離が離れれば(物理的な距離です)離れるほど、情報には、尾ひれがつく」 ということかな、、