入園拒否?(2003/12)

先日、友人の園長先生より以下のメールが来ました。

http://www.kofu.hoikuen.mia.ne.jp/he/aikawa/

〉ここの掲示板を一度ご覧ください。

甲府市の私立保育園が親がHIV感染で幼児の入園を拒否した問題で

その園の掲示板がほとんど無政府?状態になっているという指摘でした。

昼間見た時には、掲示板が読めたのですが、

先ほどもう一度覗こう(投稿しよう)としたら閉鎖されたようです。

昼食時に少し見た時には、凄いことになっていまして

ここの園長先生は、余程肝っ玉の据わった方か?

業者にHPを丸投げで作ったのでどう対処して良いのか分からない方か?って感じでした。

HPの掲示板を作って3年以上経っても投稿数が40くらい?(ほとんどが園長)が、ここ2,3日で400以上ですからね。

ちょっと読んだ感じでは、ほとんど2ちゃんねる?化していました。(^^;)

で、相川保育園の掲示板に先ほど投稿しようとした内容をコピーしておきます。

みなさんならどのようにお考えになりますか?

始めまして。

保育園では何故か子どもたちに“隊長”と呼ばれている新米園長です。

賛否両論が渦巻いていますが、保育関係者の方のご意見がほとんどないようなので

私立保育園を運営している身として一言言わせてください。

まず、事実関係がマスコミによってニュアンスが違い、一方的に保育園を攻めればいいとも思いませんでした。

市や県ともちゃんと協議した結果、公立に入れたようですし・・。

ただし、保育園のとった行動がベストかと言われれば???と感じています。

ちなみにこんな感じです。↓

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031129-00000013-kyodo-soci

3月初旬、保育園側が幼児の関係者に対し、親がHIV感染者であることを指摘した上で「もう来ないでほしい」と通告した。(共同通信)

http://www.asahi.com/national/update/1129/014.html

同園は「他の園児の親が不安に思うかもしれないと思ったが、HIVを理由に拒否した事実はない」と話している。

http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20031129k0000m040139000c.html

園側は数日間、子供を預かったが、親がHIVに感染していることから、「今後は預かることはできない」と入園を断った。

もし当園にこの親子が来たらどうするか?

やっぱり受け入れると思いますよ。

だって、子どもには感染してないのに何を心配するの?って感じです。

ましてや、エイズウイルスは、感染力自体は非常に弱く

親がいくらHIV感染者でも子どもに感染する確率も非常に低いことを考え合わせると

入園を拒否することでの親子や園側の不利益の方が遙かに大きいと考えるからです。

きっと、当園の保護者の方ならご理解が得られるでしょうし、それだけの信頼関係を築くべく努力もしてきました。

でも「万が一子どもが感染し、万が一それを知らずにその子と遊んでいたら他の園児に感染したらどう責任をとる気だ!」

って意見の人もいると思います。

特に、HIVに感染し発病すれば死の危険性が非常に高く、

完治する方法も現在の所ないわけですからご心配のお気持ちもよく分かります。

しかし、考えてみれば保育園での危険は、もちろんHIVだけではありません。

遊具、階段、プール、園外保育・・・。

おそらくHIVに感染する確率以上に他の事故の死亡事故の方が多いでしょう。

もちろん、こんな事は起こってはいけないことですが

現実問題として、いくら気をつけても“0”には出来ないと言うことです。

危険性を如何に少なくし、子どもにより良い環境を如何に用意してあげられるか?を

どう総合的に判断すべきかと言うことです。

そして、保育園の死亡事故より遙かに多く家庭での子どもの死亡事故があると思われます。

(お風呂、階段、コンロ、やかん、交通事故、虐待・・)

でも、保育園側の思いや方針を一方的に押しつける気はありません。

どちらが上でどちらが下という関係ではなく、お互いが子どものためを考え合うパートナーだと思うからです。

もし、誠意を持ってお話ししてもどうしてもご理解が得られなく転園したいという

お申し出があればそれは仕方がないと考えています。

やはり、最終的な選択権は、保護者の方が持っていますし、

選択する余地が保護者の方にあることはとても大切だと思います。

ただ、子どもがHIV感染者だったとしても同じように対応できるか?

と問われれば、自信がありません。

普段の生活をしていれば、感染することはないと分かっていても子ども同士の関わり合いの中では

どんなことが起こるか分かりません。

このような場合には、当園の保護者の方の中にも反対する人が増えると思います。

しかし、その子の利益と他の園児や保護者の方の思いも大切にしながら

出来うる限りのことはしたいと考えています。
「まずは知ること、そして共生へ」
今回の件でも思ったことなのですが、事実を知る事って難しいですね。

常にアンテナを張り巡らし、そして、如何に理性的でいられるか。

閉鎖された保育園の掲示板には、報道日から凄い数のスレが立っていました。

「たったこれだけの情報で良くこれだけ決め付けられるな〜」って

もう、怒りを通り越して呆れてしまう意見もありましたから。

熊本の元ハンセン病患者宿泊拒否事件もあり、マスコミ等もセンセーショナルに反応したのかな?

ちなみに、卒園児の意見も乗っていたのですが、(ビックリして困惑していた)

「他の園で断られた自分を入れてくれて良い思い出が詰まった保育園生活だった」ってな事が書いてありました。

園長先生も一部マスコミが報道しているような差別主義者?という感じでもないようですよ。

(某都知事よりはマシなのでは?)

ただし、同地区の公立園が受け入れ出来たのですから、せめて保護者への対応も含めてもう少し努力すべきだったとは思います。

やはり今回の件は、“エイズ”という言葉が一人歩きをしていると思います。

だって、唾液等でも感染すると言われているウィルス性急性肝炎等については、

「親が感染者かどうか調べろ!」なんて事は聞いたことがありませんし・・。

しかし、一度劇症化すれば(確率は低いようですが)死亡率は、80%を超えると言われています。

園や家庭で起こる他の事故の確率も考えれば、いかにエイズに関して過剰に反応しているかが分かります。

閉鎖された掲示板での子どもを持っている親たちの意見を読んでいたら、

「例え子どもがHIV感染者だったとしても当園の保護者なら大丈夫、理解してくれる」

と初めは考えていた僕ですが、ちょっと自信がなくなりましたよ。

まずはエイズについて「知ること」から始まると思います。

そして、知った上で感情をコントロールする理性も必要です。

一度「怖い」とインプットされた感情は、理性で消化するしかありません。

そして、本当に辛いのは、幼い子を残し、いつ発病するか分からない恐怖と直面している母親と差別されるかもしれない子どもなのではな
いでしょうか。

同じ子育てをしている親として

死に直面するということはどういうことか、

そして、その子どもの気持ちを少しでも分かってあげて、

その上で、判断してあげて欲しいと願って止みません。

心配なのは、今回の件が、HIV感染者だけの問題では無く、

別の病気や、ハンディキャップ、国籍等に関することなども同じようなことが

起きているのではないかということです。

みなさんのお気持ちの中で「排除すること、差別すること」で安心していることってありませんか?

子どもたちには、絶対持って欲しくない心ですよね。