毛布が好き?(2004/11) 

 保育園に勤めているといろいろな素晴らしいことやビックリすることに出会います。

まさにワンダーランドです。


2歳で入園したアヤノさんは、いつも大きな毛布を抱いていました。

トイレに行くときも給食の時も遊ぶときさも両手でしっかり抱いていました。

家では、その毛布が近くにあれば大丈夫のようでしたが、園では抱いていないとダメなようです。

お母さんも心配して何とか違うものでごまかそうとしましたが、その毛布がないと大変なことになるようでした。

それは、アヤノさんが生まれたときからずっと使ってきたものだそうです。

それなら無理に手放すこともないと考えていましたが、いつも両手がふさがっているので、自分でも大変なようでした。

(これで体操なんかもやるのですから、その姿には楽しませてもらいました)


ある日、先生がアヤノさんに提案しました。

「この毛布をくるくる巻いてリュックのようにしてあげようか?」アヤノさんは「うん」と頷いてくれました。

毛布のリュックを背負ったアヤノさんはとても嬉しそうでした。

両手を使える喜びに満ちているようでした。


そして、芝刈りに行ったおばあさんのように毛布を背負っていつも体操やお絵かきをやっていました。

そして、毛布女のアヤノさんは、3歳になる頃には毛布を背負わなくなりました。

心配して聞いてみたら、嬉しそうに「ここにあるじゃんね」と教えてくれました。

そこにはパンパンに張った園の鞄がありました。お母さんが毛布を半分に切ってくれたそうです。

年長さんの頃にはすっかり毛布の存在を忘れていましたが、ふと聞いてみました。


アヤノさんはニコニコしながら「ここだよ」とポケットから手のひらぐらいに切った毛布を見せてくれました。

「いつも持っているんだよ、寝るときもね」と話してくれました。


今ではアヤノさんは小学校4年生になりました。もう立派なお姉さんです。

でも、今度会ったらまた聞いてみようかな「あの毛布どうした?」って。