ダメな子?(2004/11) 

 「K君この頃よくお話しするようになったね。」

「そうそう、さっきなんて○○ちゃんが困っているのを教えに来てくれたし、ほんと、急に言葉がいっぱい出るようになった。


「いつからだったっけ」


子どものお昼寝中、記録を書きながら、 保育者同士でふと、こんな会話が始まりました。

K君は1歳児で入園した時から、 保育者に世話をされるのを全くいやがることなく受け入れる代わりに、

自分からは何もしようとしない、どちらかというと過保護的に育てられたタイプでした。

他児との『トラブル』も
自分の中での思うように出来ない『パニック』もないかわりに、

そういった『葛藤』を経験することにより
他児がどんどん成長していく一方で、

K君は2歳児クラスに進級しても、
生活やあそびの中で相変わらず依存心の強いままでした。

お母さんも送り迎えの時、
他の子たちが靴をはいたりする様子を見て感じるものがあったのか「いつまでかかってるの」

「もう、ダメだねえ」を連発するようになりました。

ある日、
お母さんがK君に向かってきついことを言っているのをあまりに見かねた保育者が、

「お母さん、K君は頑張っています。
だからK君のことをダメな子って言わないでください。」と、ちょっと強めの一言。

どうやらそのあたりかららしいのです。


K君が自分からお便所で排泄をしたり、 みんなと一緒に食事をしようとしたりする姿を見るようになったのは。

「せんせー、食べたよー。」「○○君たたいたー。」
K君から言葉があふれ出しました。

あの時、保育者が母親に言ってしまった場面にいたKくん。

言葉の意味は分からなくても、
先生は自分を認めてくれているという思いを感じとったのかもしれません。

そしてあの時、ムッとして帰っていったお母さん。

自分なりに頑張って子育てをしているのにというプライドと、でも、うまくいかない焦りから、

ついつい自分の子をけなすことにマヒしてしまった自分に気がつき、かなり揺れ動いたことだと思います。

でも翌日からは、少なくとも送り迎えの時、今までのようなきつい言葉は言わず、


K君が靴をはくのをじっと待つようになりました。


K君の今の活発な姿は、それがきっかけだったのか、たまたま時期が来ただけなのか、はっきりとは分かりません。

でもあの小さな事件によって、その後お母さんと保育者がひとつ歩み寄って、本音で話が出来るようになったことは確かです。

園と家庭が、役割分担ではなく、
共に子育てをし、成長を喜び合える仲間になることの大切さを感じました。