[学力テスト、幼稚園出身の正答率高い傾向?という記事への反論]('10/8.4)
 
 文化省の全国学力テストの結果が7月30日に発表されて、
幼稚園出身者のほうが保育所出身者よりも全国平均が高かったという集計結果が話題になっています。
といっても小6と中3だけを単純比較して、3%〜6%くらいの差って、そんなに有意な差なんでしょうか?

朝日新聞はこちら
http://www.asahi.com/edu/news/TKY201007300598.html

毎日新聞はこちら
http://mainichi.jp/life/edu/news/20100731k0000m040077000c.html

幼保一体化が進められている中、何か意図でもあるのでしょうか?
(噂によると幼保一体化をにらんだ、文科省と厚労省の覇権争いという説もあり)

保育園には、幼稚園に比べてより幅の広い家庭の子達が集まっているので、
単に平均点だけを取ったら、こういう結果になる可能性はあります。
また、発達障害の子や気になる子(手を掛けてあげたい子)を保育園は積極的に受け入れている事実もあります。
(私は、乳幼児期にこそ、この幅広い人間関係が必要だと考えています)

だから保育園の教育部分が幼稚園より劣っているということではなく、
この結果を持って「幼稚園の方が、保育園よりちゃんとしている」とか
「保育園は所詮預かりだ!」とか短絡的に考えてしまう人が多いことも心配しています。

現実問題として家庭環境の差が教育格差として跳ね返っていることも多く、

全国国公立幼稚園長会の「幼稚園は、充実した遊具や広い運動場で体験を通して
主体的な学びを積み重ねている。勉強が難しくなる6年生ごろから学習意欲で差
が出るのでは」と言う。

と記事にあるような短絡的な話でもない気がします。
(この人は、私立幼稚園の実態を把握していないのでは?)

そもそも早期教育(やはり私立幼稚園が多い)の効果は、限定的な場合が多く、
行き過ぎた早期教育には、害もあることも分かっています。
(九州大学の藤野武彦名誉教授は、早期教育が小児鬱に関連していると警鐘しています)

近年の医学の進歩から子どもの脳の発達についてもずいぶんと分かってきて、
知能を総括的にコントロールする前頭連合野や物体認識をつかさどる側頭連合野などは、
5才の頃では、まだ成熟度が低いままで、
それに比べて運動野・体性感覚野のあたりは、成熟度が高いのです。
このような脳の発達過程を考えれば、幼児期は、「知能」偏重にならず、
「運動能力的」な発育も大切である事が分かっています。

だからこそ保育園では、遊びを通した教育に力を入れていますし、
“だるまさんがころんだ”や缶蹴りのような遊びそのものが、
とても良い脳のトレーニングにもなっているのです。

そもそも「保育」というのは、「擁護と教育」のことであって、
保育所保育指針は、幼稚園教育要領の教育部分を網羅しているものであり、
教育部分だけを取って優劣を付ける方がおかしいのです。

だいたい、幼稚園でも遊び重視の園もあるし、
保育園でもドリルをやっているところもあるのですから、
本来、幼稚園だ保育園だというより、園の個性の方が強い気がします。


実は、お泊まり保育開けの7月31日(土)に
「すこやかな子どもを育てる親と教師の集い」(後援:豊橋市教育委員会)というのがありまして、
助言者という形で参加してきました。
小学校の先生たちには、保育園の良さを分かっている先生も多いのですが、
(実際に保育園出身者と幼稚園出身者を見ているので)
これが中学校の先生になると「保育園は預かりしかやっていないから・・」という意見が平気で出てきます。
また、幼稚園の一年目の先生が
「幼稚園の保護者の方が(あえて保育園よりという言葉は使わず)
子どもをしっかりと見ている人が多い」という発言をしていて
「まだ、4ヶ月しか勤めてないのにどうして分かるの?」と突っ込みを入れたくなる場面もありました。

もちろん、しっかりと反論させていただきましたが(笑)
まだまだ保育園やお母さんが働くことに対する偏見は、多いんだな〜と改めて感じました。