[ゆとり教育のせい?]('10/8.20)
 
あるメーリングリストでのやりとりです。

ある人の投稿です。

と、ここまで書いて、そもそも自分が「学力テスト」に疑問だったことを思い出しました。

各国の比較調査で、日本の小中学校生が、自尊感情が低く、
将来に夢をもっていないなどの結果が出ています。
こちらの点をもっと深刻に考えたほうがよいのではないでしょうか。

総合的な適応力や学ぶ意欲が育つ環境をつくることが第一で、
学力はその結果としてあるものではないか、と思っています。

学力テストの結果で、大人たちが騒ぎ、子どもを追い立てることは、
本当によいことなのか・・・といつも思ってニュースを見ています。


僕の投稿です。

> そもそも自分が「学力テスト」に疑問だったことを思い出しました。

年間60億の費用を掛けて始めた全国学力調査。
ホントに何だったのでしょうか?
現在は抽出でやっていますが、
そもそもPISA調査で学力低下が言われてドタバタで始めた経緯があり、
目的や結果を生かす方法が確立していなかったことが大きいですね。
*(PISA調査:OECDによる国際的な生徒の学習到達度調査)

> 各国の比較調査で、日本の小中学校生が、自尊感情が低く、
> 将来に夢をもっていないなどの結果が出ています。

いろいろな調査でもこの傾向は出ています。
それも各国と比べてもきわめて低いんですよね。

> 総合的な適応力や学ぶ意欲が育つ環境をつくることが第一で、
> 学力はその結果としてあるものではないか、と思っています。

その通りだと思います。
現在の学力低下を「ゆとり教育」のせいにして満足している人もいますが、
そもそも、学力って何でしょうか?
PISAや学力テストでは測れない学力だってあると思います。

だいたい、「ゆとり教育」を始めたのだって、
管理教育や詰め込み教育への画一的な学力に対しての反省からでしょう?
「偏差値世代は、想像力がない」とか「言われたことしかできない!」って散々批判してましたよね?

その管理教育だって、学校が荒れててどうしようもない時代に愛知県の岡崎市から始まりました。
(あの当時の中学校の窓ガラスは、どこもバリバリでした。
高校の廊下をバイクが走り回っていた!という実話もありました)

これを厳しい校則(毎日、持ち物検査から服装検査まであった)と体育会系教師の威圧(暴力)で治め、
その後、荒れはなくなっていったのですが、今度は見えない場所でのいじめが横行しました。
(愛知県西尾市の大河内くんの事件を覚えている人もいるのでは?)

当時は、七五三と言って、小学校で授業を理解している子の割合が7割、
中学校で5割、高校で3割って言われた時代でした。
その反省から、授業時間を減らして、子どもたちや先生に余裕を与え、
「生きる力」や「自分で考える力」を重視するゆとり教育が始まったのでした。

いつの時代も教育に悩みを抱え、試行錯誤してきたのです。
その時に真の原因を見つけ出さずに、
安易は犯人捜しに終始するとろくな結果にならない事は、歴史が証明しています。

現在のゆとり教育批判だって的外れも良いところです。
僕は、真の原因は少子化と価値観の多様化だと考えています。

1999年に『分数ができない大学生』という本が発売されて話題になり
大学生の学力低下が問題になりました。
(本が出たのは、99年ですが実際の教育現場では、その前から指摘されていた)
その後のPISAでも学力低下がはっきりして
いっきにゆとり教育への批判へとなだれ込んでいきました。

でも、よく考えてみるとゆとり教育の根本である完全学校週5日制がスタートしたのは、2002年なんです。
その後に続くPISAの調査でもそうでしたが、
本当のゆとり教育世代よりも前の世代からすでに学力は低下していたのです。

どうしてか?
少子化と価値観の多様化だからです。

生まれる子どもの数がドンドン減っているのに、
反対に大学数(大学の定員)が増え、進学率も伸びました。
僕(49歳)が高校生の頃の大学進学率は確か25%ないくらいでした。
今は、50%を超えています。
それも子どもの数自体が少ない中でです。
言うなれば、100人のうちの25人が大学に行っていたのに、
今は、60人くらいのうちの30人が大学に行っているわけです。
どう考えたってレベルが下がるのは当たり前でしょう。

そして、もっとも大きな影響が価値観の多様化です。
僕達の時代は、良い高校に入ることが良い大学に入ることで、
良い大学に入れば良い会社に入れ、良い人生が送れると誰もが信じていた、超学歴社会だったのです。
現在のキャリア官僚システムにもその名残が残っています。
大学卒業時の公務員試験の結果だけでその後の出世街道が決まってしまうのです。
「良い学校」という価値観だけを信じて、一心不乱にみんなが努力できた時代なのです。

勉強について行けないものは、「落ちこぼれ」というレッテルを貼られ、
中卒で働くか、嫌々農業系や工業系の高校にいくしかなかったんです。
(だから暴走族とかも凄かった!)

それが今では、カリスマ定員にカリスマ美容師ですよ。
良い時代になったものです(笑)
学力だけでは、幸せになれないと気づいてしまったんですね。

価値観の多様化って良い言葉ですが、学力って分かりやすい指標がなくなってしまい、
何を信じて良いのか?どう生きて良いのか?
分かりにくい時代になってしまったんです。
「多様な価値観」は「多様な言い訳」にもなり「多様な迷い」にも繋がります。

勉強しなくても自分らしい生き方があると思える時代なんですよ。
でも、その自分らしい生き方が見つからず、自分探しの旅に出てしまうのですが・・。

学力検査等でも分かるのは、出来る子と出来ない子の差が大きいことです。
そして、出来ない(勉強を諦めている)層が増えているために、
その結果、平均点を下げているのです。

皮肉なことに多様な生き方こそが、
PISAを初めとした学力試験の平均点を下げているのです。

ゆとり教育に話を戻しますが、
ゆとり教育で身につけた学力もあると思います。
その辺もしっかりと検証しないといけないと思いますよ。
(総合的な学習で身につけたことだって多いのに!
偏差値教育で育った先生たちが戸惑ってしまったのが残念だった)

「テレビばかり見ているとバカになる」と言われた世代が、
「日本のアニメはクール!」と世界中で評価され、
「ファミコン世代」が世界中のゲーム市場を席巻しているんですからね。

それでは。