[しつけは親がやるもの?]('10/12)
 
 保護者の方より「しつけが上手くできない!」というご相談を受けることがあります。
保育園で頑張っている子どもの姿を見ていると保護者の方がそんなに心配する必要などないと思うのですが、
「言うことを聞いてくれなくて感情的に叱ってしまうことも多い」と悩んでいる姿があります。

しつけとは、「社会的ルールや立ち振る舞いを身につけさせること」ですが、「親がやるもの!」と思い込みすぎている人も多いと感じています。
“良い親に見られたい!”ために、必要以上に頑張っているのでは?とさえ思うこともあります。
こうなると“誰のためのしつけ?”か分からなくなってきます。

叱られすぎた子どもは、自己肯定感も下がってきます。
厳しく叱られ続けることによって「自分が悪い子だから叱られる・・」と思い続け、
その結果、自尊感情が薄れ、自己肯定感の低い子に育ってしまいます。
こうなると自分も愛せず、ひいては他人も愛せなくなります。

また、他人の評価に過敏になり、自分という人間は存在して良いものか?という不安を抱いたまま成長することにも繋がります。
叱り方によっては、子どものプライドを著しく傷つけることもあります。
自己肯定感は、将来子どもたちが生きていく上でのエネルギー源であり、不安感を克服する原動力になり得る大切なものなのです。

ただし、子どもの行為(結果)ばかりを褒めすぎることにより、子どもの心の負担になってしまう場合もあるので気をつけてください。
金メダルを期待されたスポーツ選手が期待へのプレッシャーに押しつぶされてしまうように、
褒められすぎた子どもも「もっと親の期待に応えねば!」と思い込み、常にプレッシャーを背負いながら生きていくことにもなります。

他人の評価ばかりを気にする結果志向に陥ると、「失敗することはいけないことだ!」と失敗することを恐れ、挑戦できない子に育つ心配もあります。
また、「親が喜ぶからやる!」「お母さんの為にやる!」となると“誰のための人生?”とさえ思います。
行為や結果よりもやる気やプロセス(過程)を認めてあげたり、一緒になって喜んだり悔しがったりするような“共感する心”が必要なのではないでしょうか。

子育てで最も大切なことは、上手く褒めたり叱ったりすることよりも、その子の自己肯定感を伸ばしてやることだと思います。
民俗学者の柳田国男によれば、昔の日本人は、子どもを叱る代わりに「だからそうなるんだよ」とみんなで笑ってやったそうです。
ことわざや昔話を使って言い聞かせたりもしていたようです。
みなさんは、“三年寝太郎”という昔話を知っていますか?
今で言えば、ひきこもりかニートのような話なのですが、日本中に似たような昔話があるようです。 寝ちゃ食っちゃしているだけの三年寝太郎が、村が危機になった時にむくっと起き上がり、村を助けるという話なのですが、
これは、「どんな子でも良いところはある、今だけで判断してはダメだよ」というメッセージが隠れているようです。
言うなれば「あなたはあなたでいいんだよ」と自己肯定感を培う子育てを奨励していたんですね。
子どもが問題を起こした時には、すぐに親や家庭のせいにされる殺伐とした現代から見ると、
何ともおおらかな子育てをしていたものだと感心します。
「わらしべ長者」だって、ワラが、ミカンになり、布になり、馬になり・・、 最後に長者(お金持ち)になるという話なのですが、
これも「子どもは一気に成長するものではなく、ひとつひとつの段階を経て成長するもんだよ、
いくらあせってもワラから急に馬にはならないんだよ」というメッセージがあるようですよ。 秋田の“なまはげ”も「泣ぐ子はいねがー」という荒々しい声を発しながら怠け者や子どもを探して暴れまわりますが、 昔の人は、神様(なまはげ)まで上手に使って、子育てをしていたようですね。 もちろん、強く叱ることもあったと思いますが、それでも出来るだけ子どものプライドを尊重しながら育てていく方法を知っていたのでしょう。 追い詰められるようにしつけをしたり、親のエゴを押しつけるよりも、思い悩みながらしつけをするくらいの方が、しつけの根本を押さえられるのでは?と思います。 しつけは、親だけでやると考えるよりも子どもの回りにいる人たちが、それぞれの立場からそれぞれの言葉や態度で関わり、 時には、ことわざや昔話、神様までも動員して?やった方が子どもたちの心にも届くのではないでしょうか。 ○H14年の文科省委託調査「中学生の生活と意識に関する調査」では、   「時々自分が役に立たない人間だと思う」 と答えた子どもの割合は、日本 56.4%  米国 32.0%  中国 25.4%     「自分は他の人に劣らず価値のある人間である」 と答えた子どもは、日本 31.5%  米国 81.5%  中国 86.6% です。  ○『日本の子供は「先進国の中で最も孤独」−  国連児童基金(ユニセフ)が発表した先進国に住む子供たちの「幸福度」に関する調査報告書で、こんな実態が浮き彫りになった。  報告書は経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち25カ国について各種指標を比較。  子供の意識に関する項目の中で「孤独 を感じる」と答えた日本の15歳の割合は29.8%で、  2位のアイスランド(10.3%)以下、フランス(6.4%)や英国(5.4%)などに比べ飛び抜 けて高かった。 「自分が気まずく感じる」との回答も、日本が18.1%とトップだった。