[週刊現代への反論]('13/09)
 
「また始まった働くお母さんバッシング」

 一部週刊誌(週刊現代)でまた働くお母さんへのバッシング記事が掲載されています。
曽野綾子氏の「出産したらお辞めなさい」
「会社に迷惑をかけてまで、なぜ女性は会社を辞めたがらないのでしょうか」
という主張に賛否両論のようです。
(http://www.bitway.ne.jp/kodansha/wgendai/scoopengine/article/130819/top_02_01.html)

日常的に多くの子どもたちや保護者を見てきた立場から言わせてもらうと、
現代の子どもたちを取り巻く環境をまるで理解されていないとしか思えません。

少子化や核家族化が進み、家庭や地域からも子育て力が落ちてきている中、
家庭の中で母親だけと長時間いた子たちが集団生活に馴染めないでいる姿があります。
おもちゃを取られただけでパニックになったり、
自分の思い通りにならないと回りの子に当たり散らす子もいます。
このような子たちに共通していることは、
赤ちゃんの頃からあまりにも同年齢や異年齢の子たちと関わる経験が少なく、
母親がひとりで育児をしていることです。

また、発達障害や配慮を必要としている子も多くなってきており、
母親だけでの対応には無理がある場合も多いのです。
「もう一年早く入園してくれたらこの子や親もこんなに苦労することはないの
に・・」と保育士が思うことは珍しいことではありません。
子どもを産んだら母親が育児に専念すれば解決出来る問題ではないのです。

働きながら子育てしている母親よりも専業主婦の方が
子育てへの負担感がだいぶ高いことは、各種調査でも分かっています。
それゆえに、共働き世帯児率が高い県ほど、
乳幼児の虐待被害率が低いという相関関係も分かっています。
誤解を恐れずに言うと
子どもの成長を考えれば、母親だけで育児をして良いことはありません。
(もちろん、子どもにとって親が大切なのは言うまでもないのですが・・)

経済面から考えてもIMF(国際通貨基金)が発表したように
女性が家庭と仕事を両立しながら能力を発揮することで、
労働力の減少を補うだけでなく、新たなイノベーションを生み出し、
男性も働きやすい組織に変わっていきます。
ほかの先進国並みに女性が働けば、労働力不足に歯止めがかかり1人当たりの
GDPが4%増えるとも推計されています。

子どもの立場と経済の立場。
どちらから考えても曽野綾子氏の主張は間違っています。



以下が週刊現代での曽野綾子氏の発言概要です。
出産したらお辞めなさい
 最近、マタニティ・ハラスメントという言葉をよく耳にするようになりました。
マタハラとか セクハラとか、汚い表現ですね。妊娠・出産した女性社員に対する嫌がらせやいじめを指す言葉ですが、
この問題に対し、企業側は、反対意見を言えないよう言 論を封じ込められているようです。

 しかし、このような問題の現実を正視しないでいるようでは、女性は本当の意味で社会進出できないでしょう。
経済の単位である会社には、男も女もないんですから。

 そもそも実際的に考えて、女性は赤ちゃんが生まれたら、それまでと同じように仕事を続けるのは無理なんです。
なぜなら、赤ちゃんは始終熱を出す。大抵は たいしたことないですけど、母親としては心配です。
その場合、「すみません、早退させてください」となるのは無理もありません。
でも、そのたびに「どう ぞ、急いで帰りなさい」と快く送り出せる会社ばかりではないはずです。

 ですから、女性は赤ちゃんが生まれたら、いったん退職してもらう。
そして、何年か子育てをし、子どもが大きくなったら、また再就職できる道を確保すればいいんです。

 私の家では今までに女性秘書が3人勤めてくれましたが、全員が今うちに「再就職」をしているんです。
結婚と同時に辞め、子どもが中学にあがるくらいになった頃、復帰してもらいました。
お互いに相手のことがわかっていますから、雇うほうも楽ですしね。

 それにしても、会社に迷惑をかけてまで、なぜ女性は会社を辞めたがらないのでしょうか――。
子どもができたら、共働きをしないと生活が苦しくなってしまう、という心配は出てくるでしょうね。

 この考え方が、私とは少し違うんです。というのも、私たちが若くして子育てをした頃は、みんな貧乏暮らしをするものでした。
6畳一間のアパートで新婚生活を始めて、子どもが生まれて手狭になると、やっとローンを組んで家を買う。これが当たり前でした。

 本来、子どもができたら自分勝手なことに使えるお金が減るのは当然なんです。
それを、「子どもは国の宝なんだから、国がちゃんと面倒をみろ」と主張する のは、少し考え違いだと思います。
子どもは、貯金を減らすなり、ほかのことに使っていたお金を減らすなりして、育てるものです。

 同じような観点から考えると、ふくれ上がる保育所の待機児童の問題も異常だと思うのです。
子どもは、自分の家で育てるものです。だから昔は、みんな親と 同居していたでしょう。
そうすれば、おばあちゃんに子どもをみてもらって、お母さんは買い物にだって行ける。
事実、私自身もそうやって仕事をしながら子供 を育てました。

 ところが、いまの若い人は親と同居したくないし、収入が減るのも嫌だから、保育所に子どもを預けて働くのが当然というわけです。
そして、「働く母親のた めにもっと保育所を増やせ、待機児童をなんとかしろ」とおっしゃる。
国家もその方向で動くでしょうが、本来子どもを育てるのは親個人です。
保育所はあった 方がいい。けれど、できるだけ長い時間、親は子どもと一緒にいるべきなんです。

 また、彼女たちは会社に産休制度を要求なさる。
しかし、あれは会社にしてみれば、本当に迷惑千万な制度だと思いますよ。

 産休は、いつからいつまでと期間を決めて、会社を休みます。
辞めてしまって、ずっといなくなるというのなら新しい人材を補填すれば済むけれど、そういうわけにもいかない。
結局、産休で抜けた人の仕事を職場のみんなでやりくりしてカバーしないといけません。
こんなことでは、女性を責任あるポストに置くわけにいかないのも当然でしょう。