月食

 月が地球の影になる現象.日本では昔は忌み嫌われた.しかし観測技術の進歩により.正しく予報できるようになると,それほどでもなくなる.「暦便覧」(1787,天明7)によると,「月は太陰の精にて光明なし、太陽のひかりをうけて明をなす。月ごとに月のなかばに相のぞむといへ共、交にあたらざる時は、月南北にさって食せず。たまたま両度の交にあたる時は月は中天の交にあり。日は地下の交にあり。かるがゆへに地、日光をへだてて食す。望にあらざれば月そくせざるゆへに月そくは月の半ばなり。」訳すと次のようになる。「月は恒星ではないので自ら光ることはない。太陽の光を反射して光る。旧暦の一ヶ月の半ばに、太陽と月はほぼ一直線上に並ぶが、完全に一直線になることはまれで、普通は月食にはならない。たまたま黄道と白道の交点にあたる時は、月は太陽と反対側の交点にあり、このとき地球の影になり、月食となる。満月のときでなければ月食にならないので、月食は、必ず一ヶ月の半ばである。」つまり、江戸時代も後半に入ると、このようにかなり正確に把握されていた。しかしこの同じ暦にも「別にどうということはないが,一応おとなしくしておれ」と,いまだ迷信をぬぐいきれない記述もある.現在は天文学的に全く重要ではない.
 日食と月食をみると,両方の起こる頻度はそれほど,差はない.しかし日食のほうが珍しく感じ,実際同じ地点で見れば,明らかに日食が少ない.これは,日食は見られる地域が限られているからである.一方,月食は,夜であればどこからでも見られる.
 皆既日食は非常に珍しいが,皆既月食は全く珍しくない.