Voigtlaender(フォクトレンダー)Bessa I

 ウィーンの伝統ある光学機器メーカー、フォクトレンダー社のブランド名を冠した新製品が、日本のカメラ会社コシナの製造で発売されるというのが、1999年初頭の大きな話題だった。「ベッサL」という名前で、ライカLマウント広角レンズ専用のフォーカルプレーンシャッター付きボディーといえば、クラシックカメラマニアがなになにと聞き返さずにはいられないというか、これまで中古市場でほそぼそと取り引きされてきたようなスペックをもつカメラが、新製品として登場というなにやら怪しい事態で、世紀末には確かに不思議なことがおこるものである。

 「ベッサ」というのは、フォクトレンダー社の伝統あるカメラの名前で、ここに紹介するように6X9cmのフィルムサイズの蛇腹式カメラに用いられていた名前だ。もっとも一般的に使われる「35mm」フィルムと違って、「ブローニー」と呼ばれるフィルムを使う。一本のフィルムで8枚しかとれないが、これだけ大きいとスライド用フィルム(リバーサル)を使うと、そのまま見ても結構見応えがある。ベッサI(アイではなく、I, II, IIIなどのイチ)は、ベッサのシリーズの中でもシンプルな作りで、露出計も距離計もなし。

 昔のカメラの世界にはレンズにもブランド名があって、フォクトレンダー社ではスコパーとかヘリアー、ウルトロンなどというのが有名どころだが、このべッサIについているのは、Vaskar(ドイツ風にはファスカーか)105mm F4.5というトリプレット形式(3枚玉)で、前玉回転による焦点調節のものだ。素朴な写りだが解像感はあまりなく、周辺部などあまりシャープではない。


 あまりいいことがなさそうだが、このカメラで気に入ったのは、裏蓋をあけたときの蛇腹の畳まれた様子がきれいだったことだ。真ん中のレンズの絞りとあわせてみると、なかなかの美しさ。意外に安い値段を見てつい買ってきてしまったのでした(名古屋市、今池にて)。畳むとコンパクトで軽いので山にも向いている。また、持っていってやるかな。

99.2.11 記す


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