ロシアのBeLOMO製のハーフサイズカメラChaika IIでは、レンズがライカLマウントと同じネジマウントになっているのだが、カメラのフランジバックがライカより短いのでLマウントのカメラに取り付けても無限遠が出ないと言われている()。しかしLマウント(つまりNEX)専用として使うなら無限遠に焦点が合うように調整できることが分かった。レンズの鏡胴の周囲、距離目盛りのところに3カ所ある小さなマイナスネジをゆるめると、レンズの先端部カバーがはずれる。中はたいへんシンプルな構造だ。レンズ部分をつまんで、回すことが出来る。(反時計方向いっぱいに回すとレンズ部分がはずれるので、グリス調整ができる。)カバーをはずしたままの状態でLマウントアダプタを介してNEXに取り付け、レンズ部分を回してなるべく遠いものに焦点を合わせる。そのままレンズを回さないようにして、距離指標に∞が合う位置にカバーをかぶせ、鏡胴周囲のネジをしめる。これでおしまい。絞りの指標(小さな赤い点)が本来の位置からずれてしまうので、開放状態で2.8の位置に新しくマーカーなどで点を打てばよい。チャイカでの正しい状態から少しねじ込んだ状態になるので、レンズの厚みが更に薄くなって格好も良くなる。簡単な調整なので、またChaikaで使うときには元に戻せば良い(Chaikaのフィルムゲートにすりガラスや一眼レフのピントグラスなどをあてがって焦点調節をする)。

念のため、「chaika NEX industar」で検索してみると、Lマウントで無限遠を出すためにヤスリで削ったり、無限遠制限ネジをはずしたり、果てはLマウントアダプタの方を削ったり、いろいろ荒技を繰り広げている人が結構いた。少なくとも手元の個体では、そんなたいへんな作業は必要なかったが、ロシアもののことだから個体によっていろいろ事情が違っているのかもしれない。カバーをはずして、レンズ部分を時計方向にいっぱいネジこんだときに、無限遠を通り過ぎるまで回るならば、この方法が使えるはずだ(ちなみにここで使ったカメラは、MMZ工場(このマーク)で1972年に製造されたものと思われる)。

このレンズでは、焦点調節範囲が∞から0.8mに制限されているのだが、カバーをはずしたときに見える2本のネジがカバー裏のネジと当たることで、この制限がかかるようになっている。短距離側のネジをゆるめてはずせば、0.8mの目盛りを通り過ぎて約一周回せるようになる(無限遠制限ネジの逆側に当たるので)。このときの最短撮影距離は約0.45mなので、NEXで使うにはまことに手頃だ。