Hanimex Hanimar

Hanimexというブランドのカメラは、一時日本でも販売されていた。しかし、その生産国はいくつもあるようで、どういう会社なのかなと思っていた。ものの本によると、これはオーストラリアの会社で、もともと輸出入の会社(Hannesさんのimport と export の会社)だったが、自社ブランドのカメラを他社に生産してもらいオーストラリアで販売をするようになり、後には他国でも販売したとのことだ。このHanimarというカメラは、かなり初期のもので、ドイツのFinettaという会社が製造したものだ。同型のカメラがFinetta 88という名前でも出ている。ちょっとHanimarという名前が気に入って、米国の通販会社Pacific Rim Cameraから他のカメラのついでに購入した。この会社のウェブページに載っているカタログは、結構ディープなもので、日本ではとても売り物にならないようなものも平気で載っていておもしろい。「シャッターは不動。フォーカスリングは固い。レンズにキズアリ。そのほかはExcellent。」などと書いてあったりする。このカメラも「Excellent-」だったが、この会社のExcellentだから相当ボロかもと覚悟していたが、意外にきれいなものだったので驚いた。



スペック的には、35ミリ版、距離計露出計なし、シャッター速度B/25/50/100/250、シンクロM接点(たぶん)付きとかなり地味だ。ちょっと変わっている点としては、ビハインドレンズシャッターを使っていて、レンズ交換が可能になっている。FINETARというレンズ(45mm F2.8)がついていたが、他に望遠レンズがあったようだ。一応バヨネット式だが、バネやストッパーの仕組みはなく、摩擦で止まっているだけ(笑)。後のHanimexのカメラのレンズは、Hanimarという名前のことが多いのだが、ここでは製造元の名前がそのまま使われている。レンズボードの四隅のネジをはずすと、平面に展開されたシャッターが丸見えになり、大変メインテナンス性がよい。シャッターは、フィルムの巻き上げとともにチャージされる、いわゆるセルフコッキングだが、ちょっとバネが弱っているのか、巻き上げ時にカメラを逆さまにしないと、うまくチャージされない。重力の助けが必要なわけだ。

シャッター閉 シャッター開(右端が少しケラレているのは工作精度のせい?)
裏蓋&底をはずしたところ。左上には、はずしたレンズを
マウント面を上にしておいてある。

底のネジを時計方向に回すと、底と裏蓋が一緒にはずれる。このときプレッシャープレートは、本体側に残る「ローライ35式」だ。このプレッシャープレートが「おろし金」みたいで、なかなか迫力がある。巻き上げの量の調節には、ふつう35ミリフィルムの両脇の穴(パーフォレーション)にかみ合う歯車を設置し、穴の個数を機械的に数えることで、一定の長さのフィルム送りを実現している場合が多いが、このカメラではそのようなものはなく、巻き上げ軸の角度で決めている。当然、フィルムが巻かれていって巻き上げ軸が太くなると、それだけ巻き上げ量が多くなってしまい、フィルムの終わりに近づくほどコマの間隔が広がってしまう。それを少しでも緩和するために、もともと巻き上げ軸が大変太くなっている。ボディーが厚いのは、このせいらしい。写真屋さんは一応うまく対応してくれているが、迷惑な客かもしれない。


上から見たところ。ファインダー上のロゴの
SARABERは創業者の名前、GOSLARは地名。
出生証明。左上はパトローネを押さえる手動式「掛けがね」。

上から見ると、けっこうずんぐりした形をしている。かさばるが結構ホールド感はよい。外装は、皮ではなく細かい縄目状(というかヘリンボーン)模様のビニールレザーのようなものが貼ってある。あまり安っぽい感じはなくきれいだ。ファインダーは単純な逆ガリレイ式で、もちろんブライトフレームなどないが、写る範囲の外側まで少し見え、外側がグレイに着色してあるのが、ちょっと気が利いている。巻き上げノブ、巻き戻しノブはアルミニウム製。レンズもほとんどアルミニウム製のようだ。ちょっと磨くと大変きれいだ。ふつうのカメラでは、巻き上げたフィルムが後戻りしないように歯止めがついていて、巻き戻しのときにはこれを解除する仕組みになっているが、このカメラでは、そもそも歯止めがないので、いつでも巻き戻しノブを回せば巻き戻せる。かなり手抜き設計。

写りは全然期待していなかったが、意外と健闘する。名前とグレード感からして、テッサー属かと思うが、かっちりした写りだ。絞りを開き気味にしたときの背景のボケが、少し渦巻き的になるのがクセといえばクセだ。できれば、望遠の交換レンズなども探してみたい。



ファインダー像のイメージ

2000.4.23 記す


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