ディスクフィルムとは、遮光性の黒いプラスチックケースに入った円盤状のフィルムで、円周に沿って8mm x 10mmの画面を15コマ撮影するようになっています。1コマ撮影するごとに、カメラの内蔵モーターによって360/15=24度ずつフィルムが回転する仕掛けです。フィルムの装填はカートリッジを入れるだけ、撮影途中でもフィルムを取り出したり取り替えたりできるなど、APSと同じような特徴があります。このカメラは知人から譲り受けたのですが、近所の写真店ではもうフィルムは買えないといわれあきらめていました。ところが、米国を訪れたときに観光地の売店で、35mmフィルムや110フィルム(これも日本ではあまり見かけなくなりました)とともに普通に売っておりました。箱には「New Improved=新しく改良した」などと書かれており、バリバリの現行商品のようです。日本で現像してもらえるかどうかわかりませんが、ともかく買って来ました。(注:その後99年半ばには入手できなくなりました)
カメラの裏蓋を開けると、まるでCD-ROMドライブのような構造になっており、四角く見えるのがレーザーピックアップならぬ撮影レンズの後ろの面です。ふたを閉めると、キーンというストロボの充電音やブーンというモーターのうなりは聞こえるものの、シャッターは作動せず。いろいろやってみましたが、どうやら「カメラが壊れている」らしい。がっかり。ちなみにこのカメラ、電池交換のための開口部がありません。5年間保証のリチウム電池が内蔵されており、メンテナンスフリーとか。どうもアメリカ人の発想は、ちょっと違います。
使えないのならば、というわけで撮影はあきらめて、カートリッジをこじ開けてフィルムを出してみたのが左の図です。フィルムはISO200のネガカラー。結局、フィルムはこの一種類しか発売されなかったようです。APSの方は、最近リバーサルまで登場しましたから、ちょっと「先輩」の上をいっています。
カメラとしても固定焦点、自動露出で、その薄型の携帯性のいい形とあいまって、徹底したメモカメラとしてちょっと魅力的ですが、フィルムサイズが35mmの10分の1以下というサイズはさすがに画質の点でつらかったのではないでしょうか。歴史のはざまで消えていったカメラです。
(この形式のカメラについての、もう少し詳しい情報は、毎日グラフ別冊「'93 カメラこだわり読本」175頁−181頁に掲載されています。)