蓮華温泉から朝日岳(への途中)

2000年4月2日

春の山スキーの定番といえば蓮華温泉。スキー場からほどほどの距離で来られて、メシ付き温泉付きの宿というのは、そうそうあるものではない。大変ありがたい存在だ。今回は、蓮華温泉から朝日岳への途中まで行って来た。


蓮華温泉付近から見た朝日岳(A)。Bが白高地沢で、Cが五輪尾根。

 蓮華温泉から朝日岳といえば有名なロングコース。温泉からまず標高差300mを下って瀬戸川を渡ったところから標高差1300mほど登り返す、しかも水平距離も結構長いというしろものである。われわれのように、宿の朝飯をのんびり食って、他の人がみんな出発してから出かける人々にはとてもこなせるコースではない。ま、今回は多くをのぞまず、午後1時まで前進という方針にして、標高2000mの白高地沢源頭部まで行ってみた。何しろ、帰りにまた標高差300m登るわけだから、余裕を持った行動が必要になる。意外とクロカンぽい軽い道具がいいかもと思い、革の紐靴にセントエライアス&スリーピンビンディングという、ちょっとナメた道具立てを用意した。

 平馬の平までは、夏道に沿ったトレースがついていたので、これを辿った。あとから地図を見ると、もう少し徐々に高度を下げた方が楽なように思うのだが、どうだろうか。林の濃さなどの事情もあるだろうが、次に行くことがあれば別のライン取りを試してみたい。平馬の平の末端から瀬戸川に向けて急降下。朝のうちで、まだ少しバリバリしていたので、今回のようにヤワな道具にはちょっとつらかった。

瀬戸川を渡って少し登ったあたりから、遙か遠くに朝日岳を見る。

 鉄の橋のすぐ下流のスノーブリッジを渡って、小尾根に沿ってしばらく行くと、広い谷のようなところに出る。地図では、ここの右端のあたりを登ると、ヒョウタン池に出るはずだが、昨日のトレースは頑固に左端の尾根を直登していく。今朝、先行している人のトレースはしばらく左を行ったが途中でやめて右に転進している。ちょっと迷ったが、うまい高巻きがあるのかもと昨日のトレースに賭けて、苦労して直登したが何の甲斐もなかった。ここは素直に右端の方を登るべし。


真っ黒な大岩が白い尾根にポツンと乗っている

 朝日岳につづく沢筋の単純なコースと思っていたが、なかなか細かい起伏が多く、先を見通せない。ヒョウタン池のちょっと先から、巨大な黒い岩が尾根上にあるのが見えたので、とりあえずこれを目指して登った。どうもこの岩は、2万5千図で小さな2重マルで表現されている場所らしい。こんな岩を等高線で表現するのは、ちょっと珍しい。でも、なかなかいい目印だ。朝から高曇りで太陽が暈をかぶっていたが、だんだんと曇ってときおり冷たい風も吹いてくる。ちょっと不安な感じ。

 この大岩を過ぎて少し行くと、二股の上流を渡る場所だ。左手には赤男山からの尾根が大きくのびて来ている。この先は小尾根にとりついたが、ちょっと地形がゴチャゴチャしているので、その左の沢筋を単純につめたほうが楽そうだ。小尾根が終わったところにダケカバが数本並んで門のように生えており、そこをくぐると白高地沢源流部が真っ白に広がっている。わ、でっかい犬、と思ったらカモシカがノソノソ逃げていった。カモシカの糞はドングリ大のコロコロだった。おどかしてすみません。曇り空の下の真っ白な斜面というのは、本当に起伏が見えない。大きな段差があるのかと思ったら、平面の一部がクラストしただけだったりする。朝日岳に突き上げる急な沢筋に向いつつある先行者の姿が小さく見えた。


真っ白な白高地沢源頭。青が正しいルート。赤は間違い(Xが到達点)

 朝日岳への山スキールートは、ここで大きく右に曲がって左岸の段の上に上がり、カール状になったところを山頂まで詰めるのだが、予習不足でわれわれもこの直登ルンゼ(仮称)がルートだと思いこんでしまった。思いこみはおそろしい物で、白い平原をひたすらまっすぐ登った。午後1時前に右図のX地点、標高2000mに到着してここを限界とする。先行者は逆八の字のあたりに見えるが、登ったりやめたりしている様子。後で聞いたら雪は深くなるし傾斜は急だし、困っていた由。結局彼もそのあたりから引き返していた。

 上の方は少しクラストしていたが、下の方はまずまず。ほぼ登路を引き返した。ヒョウタン池の下でまたカモシカと遭遇。雪から顔を出している木の樹皮を食べている様子で、他でもかじられた木をたくさん見かけた。春にたくさん雪が降ると、山スキー屋はよろこぶけど獣たちは苦労しているのだなと、しばししみじみする。


 瀬戸川を渡ってからの標高差250mの登りは、どこまで行っても先があるように見えて、大変。最後は、おきまりの「温泉、ビール、メシ」というかけ声を頼りにヨロヨロ歩いて、4時頃帰着した。日曜夜の宿はさすがに空いている。部屋におかれた豆炭こたつにあたりながらのんびりしたり、湯治をしたりで静かな夜が更けていった。


ツアー一覧に戻る