South-East Valley of Kashima-yari

鹿島槍南東部偵察

1997年4月13日


 手近で行ったことのない山域はないかと、記録を読んでいると、スキーアルピニズム研究会(RSSA)の機関誌「ベルクシーロイファー」のなかに、鹿島槍周辺の谷を滑った記録があった。また、最近出版されたヤマケイ登山学校の「スキー登山」のなかに、著者の一人の柳澤氏が好む山域として、「鹿島槍の春スキー」が紹介され、添えられた地図にはあちこちの谷にウネウネの線がいっぱい描かれていた。昨年の夏に、このあたりの山に登り地形も何となくイメージできるので、一度行ってみるかと重い腰を上げた。

 当初の目標は、爺ヶ岳の北東面に突き上げる西沢をいけるところまでつめて、できれば主稜線まであがり、そのまま降りてくるというものだった。信濃大町から大町温泉郷・爺ヶ岳スキー場を経て、大谷原というところで道路にはゲートが閉ざされており、後は板をかついで歩きだ。前述の西沢が、鹿島槍南東面から流れ出る北股本谷と合流する西俣出合まで約1時間。後半はシール歩きができた。西俣出合で何と!西沢の出口は大規模な雪崩のデブリで完璧に埋まっている。それもかなり新鮮なデブリだ。

Huge debris at the mouth of Nishizawa西俣出合の大デブリ

 乗り越えていくのもなかなか大変そうだし、狭い西沢のなかでこんなのにやられたらオシマイかと思うと気が進まず、計画変更して北俣本谷を行けるところまで行ってみることにする。雪面には薄いシュプールが一つだけ。帰りの跡がないので、まだ先行中か。北股本谷は広く平らだ。ほとんどクロカンのようだ。二股(鹿島槍に突き上げる谷と、冷池山荘に突き上げる谷の合流点)付近では、左右に岩壁がそそり立ってミニ「ヨセミテ」のよう(本物を見たことはないが)。

Panorama at Futamata二股の手前からパノラマ

 二股を過ぎたところで、先行者のテントを発見。どうやら昨日ここまで来て、朝からスキーをかついで登っているらしい。地図を検討すると、この辺でスキーが使えそうなのは2万5千図上の布引尾根ないしそのとなりのカール状の谷ぐらいなので、ここに取り付いてみる。雪の表面が好天のために柔らかく、ちょっとずりおちたりしながら、ツボ足でスキーを引きずって尾根の末端にあがる。

On the Nunobiki-one 尾根の上もやはりデブリ。谷をほぼつめきったあたりに小さく動く人影が見える。こう天気がいいところへ、デブリばかり見せられると、どうも戦意を喪失してしまう。今日はここまでとして昼飯にした。後から来た3人組の山スキーヤーは、デブリを乗り越えて行ってしまう。どうやら、こういう地域でのスキーツアーとは、雪崩の可能性のある地形を避けてコース取りをする、といったものではないらしい(そんなことをしていたら通るところがない)。季節を選んで、もっと雪崩が落ちきった時期をねらえばいいのだろうか。どうも勉強がたりない。また修行を積んで出直そう。

Hontani leading to Mt. Kashimayari 本谷の奥をのぞく。鹿島槍の北峰・南峰間の吊り尾根から滑降するとここにくる。コース取りが難しそうだ。上向き矢印は鶴、下向き矢印は獅子の頭、のように麓から見える雪形の場所。ここからは鶴ではなく鴨に見える。

 帰りに近くの大町山岳博物館に寄ってみた。ここは、大町の東の斜面にあるので、爺ヶ岳や鹿島槍がよく見える。テラスでコーヒーを飲みながら、さっきまであの辺でうろついていたのかと思うと、不思議な気分だった。

 家に帰ってから、以前カナダの雪崩協会がつくったビデオ「Beating the Odds」が買ってあったので、見てみた。内容はまた稿を改めて紹介したいが、なんだか身につまされた。また山野井センセにいろいろ教わろう。


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