御嶽山(おんたけさん)

2000年4月16日

久しぶりに名古屋のテレマーク仲間「ベアバレークロスカントリースキークラブ(BVXC)」の面々と、木曽御岳王滝頂上をめざした。


話の発端は、この1月にBVXCの仲間と、御岳の北東麓の開田高原にあるロッジ上天気に泊まってゲレンデスキーを楽しんだおり、もと名古屋在住でBVXC関係者であるオーナー寺本氏が、4月にはぜひ御岳ツアーをしましょうという提案をしたことにあった。地の利を生かして、最近めきめきウデを上げている彼だが、いかんせんまだスキーツアーの経験が浅い、というかほとんどないらしい。4月の御岳といえば、うらうらと陽のあたる田の原とか、気持ちよいザラメ雪とか、行き帰りの19号線ぞいのサクラや梅の花盛りとか、いいイメージがあるので、是非皆で行こうということになった。ロープウェイスキー場からというコースも考えたが、慣れていて安心ということで、今回は田の原から王滝山頂へのコースを採用した。ロープウェイからのルートは、以前3月はじめにトライして、ずいぶんハードバーンが続いていた記憶がある。先週のビルケバイナーの記録によれば、春はまた事情が違うようなので、次の機会に試してみたい。

一日中雨の降った土曜日、三々五々上天気に向かう。この日、上天気は、スキーシーズンあけの1週間あまりのお休み中(だから、オーナーが遊びに行けるわけだが)。シュラフ・食料持参で前夜から集まって宴会をしていると、ふだんはおしゃれな上天気のリビングも、あっというまに冬季山小屋の様相を呈してくるからおもしろい(京子ちゃん、留守をおそってすみません)。寝る前に窓の外を見ると、なんとこの時期に雪が降っている。今年の冬は本当に雪の多い年だ。

こまめに衣類の調節をする。天気がいいので機嫌もいい。

翌朝、小一時間かかって王滝村の上にあるおんたけスキー場に移動。朝到着の3名と合流したが、彼らは体調などの理由により、ゲレンデスキーヤーとなることにし、田の原まで見送ってくれた。結局、総勢7名でガシガシと登り始める。朝のうちは、ゲレンデも田の原も濃いガスにつつまれていたが、田の原を歩くうちに、サーっと左右に幕を引くように御岳が姿を現した。やはり予想通り雪が多い。ハイマツがほとんど隠れていて、斜面は真っ白だ。昨日降った雪が、それまでの汚れて固まった雪の層の上に、20cmぐらい積もっている。ときおり表面の新雪がずれるが、シール登高には大変楽な条件だ。斜度もそれほどないので、新雪表層雪崩のおそれは小さいだろうと判断して、頂上に続くルンゼをジグザグに登る。ハイマツがまだ露出していないので、相当幅の広いジグザグが切れる。スノーボードを担いだボーダー達は、夏道を登っていく。この日の登山者は40名ぐらいというところか。


各自のペースでジグザグを切って登る

昨夜低気圧が通過したので、一時的に西高東低の気圧配置となり、北西の風が吹いているはずだが、田の原からの道は風下となっていてほとんど風がなく暑い。まだ冬羽の雷鳥がゲゲーと鳴きながら遠くを飛んでいく。結局王滝頂上まで快適なシール登高ができた。夏山と違って、各自の好みにあわせて好きな傾斜のジグザグが切れるのが、シール登高のよいところだ。斜面はかなりきたなくなるが、滑るときには一瞬に通り過ぎるので、あまり気にならないものだ。むしろ先に滑った人のシュプールの方が邪魔になる。


王滝頂上から剣が峰を望む

王滝頂上の左手向こう側から、右手手前にかけて猛烈な風が吹いている。その風の中に突入して、山頂の神社にお参りする。石囲いはあるものの相当寒い。あたりはエビのしっぽだらけだ。気温が相当高いので、耐えられないほどの寒さにはならない。これもいい経験と、シールをはがしたりパンを食べたりしながら寒さを味わう。でもやはり落ち着かないので頂上直下にもどって休憩の続きをする。そこは風もなく春の暖かさ。この温度差が結構からだにこたえる。


王滝頂上直下を攻める上天気テラモト氏

雪の状態は、ちょっと重めの新雪。快適というほどではないが、そこそこターンはできる。標高2600mあたりまでくだると、途中ゆっくりして時間がたっていたせいで、一度融けた表面の雪が堅く凍っている。いわゆるブレーカブルクラストだ。得難い悪雪修行の機会と前向きにとらえて、せいぜい修行に励む。やはりポイントは、後ろ足のようだ。後ろ足を体の真下において、強く体重を掛け、小指側のエッジング(および横ズレ)を常に効かせてスピードをコントロールする。このエッジングがないと、急に加速してしまい、それを押さえようと無理に板を横に向けてエッジングをしようとする結果、バランスをくずしてしまう。雪が柔らかい時やゲレンデでは、前後の板が自然に横ズレしてくれるのだが、このような状況ではよほど意識的かつ強い姿勢をとらないと、スピードコントロールができない。


標高2400mぐらいから、夏道の左側の小さな谷に入る。谷の中は、少しだけましで、横滑りやボーゲンがかろうじてできる程度。途中、前方の藪が濃くなるあたりから、右手の田の原にあがるというコース取りは、いつもの通り。田の原で振り返ると、一時ガスに隠れていた御岳が、また姿を現していた。ザラメ雪の快適な滑りができるのは、まだ少し先のようだ。


ツアー一覧に戻る