乙妻山(おとづまやま)

2000年4月8−9日

妙高や白馬の山に登ると、すっきりとした独立峰として望まれる乙妻山と高妻山。長い間懸案でしたがやっと登ってきました。


 ルートは、戸隠の大橋から佐渡山の尾根を越えて氷沢に降り、乙妻山の北東の谷をつめるという一般的なもの。途中で一泊なので、土曜の朝、岡崎の自宅を出た。もう何年前になるのか、まだ中央道が豊科で終わりだったころ、大橋をベースに黒姫山の外輪山や佐渡山をうろうろしたことがあるが、そのころは、夕方に出て山中の曲がりくねった道を延々とたどって、午前4時頃にようやくたどり着いた記憶がある。今では信濃町インターでおりて20分ほどで到着。山屋らしい車数台あり。午前11時頃出発。

 大橋からの林道は途中標高1200mぐらいで左に枝分かれする。今回はこちらを辿ってみたが、途中で藪歩きになる。そのまま本道を行っても、ちゃんと橋はあるし、尾根にとりつきやすいところに出るので、その方が正解だ。本屋で新しい2万5千図を見てもこの辺の林道はあまり書かれていなかった。更新がちょっと遅いらしい。佐渡山からの尾根上のコルから派生する細い尾根上を辿り、最後は斜面をトラバースしながらコルに出た。広々としたおだやかなコルだ。木の間越しに高妻山がずいぶん高く見える。このあたり、ミニ徳本峠の趣。

 ブナ林のなだらかな斜面をちょっと降りたらもう氷沢源頭。氷沢の割れ方に気を遣うが、今回はシールなしで流れに沿って乙妻の谷の出合い近くまで行けた。帰りは左岸の高巻きのトレースを通ったが、こっちの方が確実だろう。高巻きといっても、おおむね林道のような段の上を歩くので、危険な感じはない。乙妻の谷のすぐ手前で、結構大きなデブリを越える。隣には、今にも落ちてきそうな斜面もあり、かなり恐ろしい。朝早く出たのだろうか、山スキーのパーティーがもう帰って来ていた。空荷で素早く往復というのも、日の長いこの時期では良い作戦だろう。

ブナ林の中のキャンプサイト

 乙妻の谷に入ってすぐのところで、テントを張る。重い荷物を背負って歩く距離をなるべく節約するためだ。雪洞という手もあるが、日の長いこの時期に、暗い洞窟に早々と入るのはなんだか気が進まない。雪もしまって掘りにくそうだし。のんびりと夕方の時間を過ごす。地形図を見ると、氷沢の左岸一帯は、スノーモービルで近づくことができないようだ。この時期の笹ヶ峰では、スノモに乗った釣り人が結構多くて落ち着かないが、その点、ここいらは別天地だ。


乙妻山を見上げる(1550mぐらい)
振り返ると左に三田原と妙高

 翌朝は、雪が少し緩んでからとか思いながら、ゆっくりと準備をして8時頃出発。しかし、さすがに4月で太陽も北よりから昇るらしく、北東向きの谷とはいえ既に全面に陽を浴びて、雪はどんどんゆるくなっていく。もっと早く出た方が良かったかもしれない。標高1600m付近では、セオリー通りテントおよび雪洞あり。乙妻山への登路が、一望の元に見渡せる。ちょっと針葉樹の生えたあの小さなでっぱりが標高2000mで山頂は2300mぐらいか。なんだかすぐにでも手が届きそうだ。でも登り出すと、やはり標高差が身にしみる。地形の緩急を見分けながら、ライン取りを楽しんでジグザグと登る。昨夜晴れていたので、表面の雪が昇華したのかフワフワで崩れやすいところも多々ある。非常にオープンな斜面で、傾斜も結構あるので、ズリっとくると結構こわい。ふりかえると三田原山と妙高山がきれいだ。


おもしろい形の黒姫山
山頂から見たおとなりの高妻山

 最後は山頂に直登できそうにも見えたが、デブリも多いので定石どおり、左に大きく振って高妻山との鞍部にあがる。あとは稜線を少々歩いてついに登頂。大渚山のように大きすぎる山頂は感動に乏しいし、小さすぎても危なっかしい。この山頂は本当に手頃なサイズだ。周囲は遮る物のないパノラマ。この日は、黄砂の影響で下界はかすんでおり、山々だけが浮かび上がって見える。やはり高い山は気持ちがいい。

 下りは文字通りあっという間(登り3時間半、下り30分)だった。この辺がスキーの快感なのでしょうがない。後半では、登りの途中で流してしまったスタッフバッグを捜しながら滑ったが、ほぼあきらめた後、標高1650m付近の沢筋で無事発見。ふつうは森のなかに入ったりして見つからないのですが、ここはそれほど明るく開けた谷なのです。テントサイトに戻って、お茶を大量に作って水分補給。またずっしり重くなったザックをかついで、来た道を帰った。

 今回は、新しく買ったAPSの小型カメラを用いたが、セミパノラマという感じの横に広い画面が新鮮で良かった。掲載した写真は、フィルムスキャナで読みとったものを、あまりトリミングせずに使用しました。



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