妙高・前山滝沢尾根

1998年2月

妙高新赤倉のゲレンデから見上げると、妙高山の手前に小さなピークが見える。これが前山だ。わかりやすいネーミングである。ガイドブック文体の試み。


 前山から伸びる尾根がいくつかある中で、新赤倉スキー場がある尾根の左側(南側)に、谷(滝沢)を隔てて平行に走っている尾根が滝沢尾根である。新赤倉スキー場の最上部から前山山頂まで登り、滝沢尾根を下ってまたゲレンデに戻るというのがここで紹介するコースだ。ガイドブックでは、ゲレンデに戻らずに反対側に白田切川を渡ってゴルフ場のほうに降りてくるコースとして紹介されることもあるが(例えば「クロカンマップ1・白山書房」)、白田切川は水量が多い上に堰堤工事が行われていて渡りにくいらしい。実際何年か前に川が渡れずに遭難しかけた人もいると聞いた。私は渡ったことがないが、対岸にわたっても緩斜面でそれほど魅力がありそうにもない。ゲレンデに戻るコースをとっても、やはり滝沢を渡らねばならないが、小さな谷だしこの季節には雪に覆われていてリスクは少ないと思う。地図を見れば分かるが、いずれにせよ滝沢尾根は末端まで行ってしまうと他に逃げ道がない。現地での情報収集も必要だし、ゲレンデへの帰り道を確認してから登るぐらいの慎重さもほしい。

climbing up Mt. Maeyama ゴンドラとリフトを一本ずつ乗り継いで標高1500m地点まで上がる。最後の前山第3リフトの乗り場に登山届のノートがあるので記入しておこう。ブナ林の中に入り込み、適当にジグザグと登り始める(右図)。古い標識がところどころの木に打ち付けてあるが、特に迷うところではないだろう。1600m付近から林がまばらになり、前方に真っ白い斜面が見えてくる。状況によっては雪崩の危険があるので、あまり真ん中を何度もトラバースしたくないところだ。また左側の滝沢源頭部は、表層雪崩の発生点となっているのを一度見たことがある。といって右に寄りすぎると傾斜が急になり、また北向きで凍りがちなので、コースどりはなかなか気を使う。右手に外輪山の北端の神奈山を眺めながらジグザグと登る。

view of Mt. Mitahara  主稜線は手前側(東側)に雪庇が出来ていることが多い。雪庇が大きい時は早めに雪庇の上に出たほうがいいだろう。今回は雪庇が小さかったので山頂近くまでいってからでも簡単にこえることが出来た。山頂からは妙高山が間近にそびえるが潅木の向こうですっきりとは見えない。むしろ外輪山の南端の赤倉山や南地獄谷から上がる蒸気の眺めが楽しい。左図は、遠くに黒姫山、その手前に三田原山の斜面、右手中程の尾根上の小さな黒点は大谷ヒュッテ(避難小屋)だ。

begining of Takisawa-one  滝沢尾根は山頂から南東方向に真っ直ぐのびる細い尾根だ。出だしはかなり痩せていて雪面が硬いと緊張するだろう(右図)。潅木が現れ始める頃、尾根が左右に広がってくる。地図で見るよりも顕著に二本に別れていくように見える。ここは右方向へ進むのが正解だ。左よりに進むとだんだん細く急になってちょっと苦労する。また滝沢源頭部に迷い込むおそれもある。滝沢源頭はかなり急斜面で前述のように雪崩のリスクもあるので避けたほうが無難だ。

skiing through Buna woods  滑るにつれて潅木が少なくなり、太いブナが適当な間隔をおいて並ぶ快適な林間滑降が楽しめるようになる。今回は、硬い雪面の上にクリーミーな層が重なってなかなか気持ちよく滑れた。斜面の微妙な凹凸を選びながら、木々の間を縫ってどこまでも滑っていく。こういう滑りは、テレマークスキーらしい楽しみと言えるだろう。滝沢の横断点は標高1000mなので高度計をときどきチェックしながら滑ろう。

map of crossing point of Takisawa gorge  滝沢の横断点の目印は、地図のPの黒丸の位置にある小さなピークだ。2万5千図の等高線ではピークに見えないが、現場ではなかなか目立つ。ピークの根元まで短い急斜面を滑り降りたところが(矢印1)滝沢だ。シールをつけて対岸の斜面を登り返して(矢印2)、赤倉第2高速リフト(赤倉観光ホテルの横を通るリフト)の終点にでる。このコースどりは、前回滝沢尾根を滑った時に、前後して滑っていたガイドさんの取っていたコースを見習ったものだ。


 リフト終点から400mの登りで、900mの滑降を楽しめるのだから能率的だし、ブナ林の滑りを楽しむにはもってこいのコースだ。しかし、前山までの登りで状況をよく判断して、雪が悪かったり天候の悪化が心配な時は、前山往復にとどめておいてほしい。
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