古知野東小学校教育課程研究発表会 記念講演
「総合的学習と教科学習等との関係について」名古屋大学教授 安彦忠彦氏
当日配布されたレジメにこだわらない、奥村先生自身のまとめです。
はじめに
教育課程全体の研究ではあったが、「総合的な学習の時間」(以下「総合」)が中心になっていた。日常的に教師は多忙だが、研究はそれに輪をかける。しかし、そういう場でこそ教師の力量が高まるのもまた事実である。
1 総合的な学習の時間について
(1)ねらいと授業時間数以外は学校に任された
「総合」は目標と時数しか示されていない。これまでの教科・領域とは別の次元のものとして考えられている。自主性・主体性が生きる力の中心。 (2)体験的・問題解決的活動を主に
これまでの教科学習の中に体験が少なかったという反省があり、「総合」では体験的な活動の他、問題解決的な学習、討論、ディベート、話し合いといった活動が主になる。
(3)第4領域でもないし、教科でもない。
三つの領域の発展や、基礎や、横断的なものである。評価については、活動がどんな視点でなされていたかということがポイントになる。評定はしない。質的な学習活動である。
「総合」の実態は、様々。ねらうべき「総合」とは何か。どこまで総合が実現したのか。大学講座の総合のテーマには、例えば「心と体」「男と女」などがあるが、思ったような「総合」はできていない。せいぜい多面的な見方ぐらいか。安易に「総合」という言葉は使わない方がよい。
2 「総合的な学習」と「総合学習」
(1)総合的な学習とは
横断的・総合的な学習として、広い範囲のものを含む大きな概念である。
(2)教育史上の「総合学習」
経験主義、大正自由教育運動、戦後の経験主義。これらは教科の枠を外し、一つのテーマのもとに、子どもの生活経験を中心に学習を構成した。
日教組の「総合学習」(1976)は教科であり、個々の教科で学習した能力を総合して、地域的、現実的諸課題(今日的課題と同義)の解決を図るものであった。
(3)教科等を横断する学習(クロスカリキュラム)
・ トピック中心→イギリス
・ テーマ学習→アメリカ型
教師の力量に左右される。
3 各教科・道徳・特別活動との関係
(1)「各教科」との関係・・・・・相互補強関係が望ましい。
・ 「総合」は各教科の基礎・基本、発展、全体を横断(串刺し)するもの
・ 合科学習との違いがふまえられていない。合科だと子どもの生活にアプローチしやすい。合科でも各教科のねらいは明確でなければならないし、それを達成しなければならない。
・ 総合は体験だけではいけない。教師の役目は、体験と理論を結びつけることにある。これができない教師は、その力量に疑問。
※ 「理論」と「体験」との「往復運動」を絶やさないこと。
(2) 「道徳」との関係・・・・「生き方」
・ 道徳的価値に重点を置いて学活も含めたクロスカリキュラムを組む。これまでの道徳の時間は、資料偏重であったという反省がある。そこで、体験的な道徳も考える必要がある。
・ 道徳の時間は、道徳教育を補充・進化・統合する総合的な時間なので、体験やボランティア、進路、生き方学習等により、「総合的な」ものに変えることを試みてもよい。
(3) 「特別活動」との関係
・ すべての学校行事とは無理だが、一部とならリンク可能。部活動は、一つのことを立てに深くする。「総合」は横へ。両方やることがよく、矛盾しない。
(4) 1・2年生の「生活科」との関係
・ 連続したものと考えているが、つなげてもいいし、つなげなくてもいい。
・ 低・中学年・・・子どもの興味・関心で総合化していく学習
・ 高学年・中学生・・・トピック(環境・福祉・国際理解など)を総合化した学習
おわりに
類型 @手段型、A横断型・・・クロスカリキュラム、B総合型・・・教科の目標は押さえて、C分業型・・・教科で学んだことを演繹する時間として
D並立型・・・相互補完
理論知と体験知を結びつけることが大切。