琵琶湖とその保全 授業記録

1 授業日  平成10年6月12日(金)第1時 8:48〜9:30(42分間)
2 授業者  土井 謙次  於 布袋中学校2年6組教室
3 授業記録

OHCで写真提示
T「どこかわかる?」
挙手 5,6名
S「琵琶湖?」
T「そう、何県にあるの?」
多数「滋賀県」
T「漢字で書けるか?」
S「かける」
T「じゃここに書いてみて」黒板に書く場所を指示。
 その間にワークシートを配布。
T「琵琶湖、滋賀県と何も見ないで漢字で記入してみよう」
その間に琵琶湖の絵を黒板に貼る
T「広さは?   671平法キロメートル。江南市が約30だから…何倍?」
多数「22倍」
T「そう、これくらい」琵琶湖の絵の上に同縮尺の江南市を貼る
T「ついでに、布袋中の校区はこれくらい」校区の大きさを貼る
T「学校から、真西へちょうど50qほど行くとこの辺(東海岸を指さす)
  真北へちょうど50q行くと?」
S「自然園」
T「そう」黒板に図示

T「琵琶湖には、滋賀県の93%の地域の雨、排水などが流れ込んでいるんだ。大小合わせて何本くらいの川から流れ込むかわかる?」
S「460本」
T「よく知っているね。その通り。でも流れ込むばかりじゃ溢れちゃうね。では、何本の川から海へ流れ出るのかな?」
「100本」「200本」「2本」「1本」
T「実は、1本だけなんだ」  
多くは驚いている。
T「どこから流れ出るかというと?」
S「瀬田川」
T「そう、地図帳82ページを見ながら、海までたどってみよう」
S「先生、なくなるよ。」「名前が変わるんだ」
T「京都にはいると」
S「宇治川」
 板書
T「藤原頼道がつくった宇治の平等院の横を流れているんだ」
T「大阪にはいると?」
S「淀川」
T「秀吉の女、淀君っていたね。秀頼の母ちゃんだ」といいながら淀川と板書。大阪湾 も図示。もう一度、瀬田川から大阪湾まで確認
T「琵琶湖は、近畿の水がめといわれています。なぜ?」
S「みんなの生活用水になっている」
T「そう、この滋賀県、京都府、大阪府 1,400万人の命の水の水源なんだ。」
ここで、中学生時代に毎年夏休みに京都にいたこと、麦茶がまずかったことを紹介

T「その1,400万人の命の水は、今はきれいなんだろうか?」
T「それでは、教科書211ページのグラフを読みとってもらおう。」
(ここで9:00)
1979年は南北で、1983年は79年と、93年は83年と比較するように順に指示。
 M,T,Kを順に個別指導。読みとりの仕方を教える。

T「では、発表してもらおう」
79年「北に比べて南が汚い」
T「なぜ、南が汚いの?」
S「水が瀬田川から流れ出るから、汚れが集まるから」
T「もっとはっきりとした理由があるんだ」
S「工場などが南部に集中しているから」
T「そう、地図帳79ページを見て。黄色いのが都市だから…」
S「南部に人口が集中している」
T「それが、南部が汚い原因だろうね」

 83年「中部を中心に、かなり改善されている」
 93年「79年ほどではないが、また少し汚れている。」
ここで、最近の琵琶湖の写真を見せる。きれいなところもあるが、汚れもあることがわかる。

(ここで9:09)
T「一体、どうして汚れるのか。また、どうやって滋賀県の人は琵琶湖をきれいにして きたのか、リサーチグループに発表してもらおう。必要なことは、ノートの裏にメモ して下さい。」
           
S ぼくたちは、琵琶湖の水が汚れる原因について調べました。調査方法は、滋賀県琵琶湖研究所、滋賀県庁琵琶湖環境部環境製作課、滋賀県琵琶湖博物館への手紙の問い合わせです。                     
(滋賀の環境P13を映す)このグラフを見てください。
 汚れにはチッソやリンなどいろいろあります。CODというのは、数値が高いほど汚れていることを示すものです。いずれも、プランクトンや藻がふえる、富栄養化(黒板にカードを貼る)の原因となるものです。
 その原因は大きく分けて家庭、工場、農家、自然の4つに分けられます。
 家庭は、もちろん家庭排水です。洗濯や炊事、風呂・トイレの排水 です。
 工場からは工場排水が出されます。
 農家からは、田や畑の農薬、畜産農家からでる糞や尿などです。魚の養殖のえさも水を汚します。
 自然とは、雨水がほとんどですが、ゴルフ場建設に伴う土砂も流入しています。水草が茂ると、枯れて腐って汚れも増えます。

 次に、滋賀県の人々の水質改善の努力について発表します。(プリント配布)  
(前掲 P12)このグラフを見てください。
 1979年には、大きくリンの量が減っています。それは、プリントにあるように、全国に先がけて、チッソ、リンの排水を条例で規制したからです。条例というのは、滋賀県内で通用する法律みたいなものです。滋賀県内では、このような(前掲 P25)びわこ石鹸エコクリーンというのもつくられました。
 このほかにも、プリントにあるように何回も条例が作られました。
 また、(前掲 P18)生活排水が直接びわこに流れないように、下水道を急ピッチでつくっています。赤が全国平均の普及率、青が滋賀県で、急速に普及していることがわかります。
このほか、滋賀県琵琶湖研究所、滋賀県立大学、琵琶湖博物館などもつくられ、水をきれいにする研究が続けられています。
 滋賀県の学校では、(『あおい琵琶湖』提示)このような本が配られ、小・中学校のうちから水を汚さないように勉強しています。
 ノートまであります。
 これは小学生用です。
このように、滋賀県の人はいろいろな努力をしているのです。
 これで発表を終わります。

S 拍手
T「ありがとう、汚れの原因、滋賀県民の努力がわかりました。」
T「6月10日に、先生に届いた滋賀県の人からの電子メールを紹介します。」

送信日時: 1998年6月10日水曜日 22:26
件名: 琵琶湖の水質について
 メールありがとうございました。
 ご指摘の通り、琵琶湖の水は、また汚れているかもしれません。周辺の公園が整備され、観光客も以前の何倍も増えたように思います。
  一度は店先から消えた合成洗剤も、今は当たり前のように見かけることができます。20年前の住民の気持ちは、今は、かなりうすくなっているのかもしれません。当時は、米のとぎ汁でさえ、けっして流すことはありませんでした。あまったみそ汁も、庭の
隅の穴に捨てていました。
 今はどうでしょう…
 工場などの排水は、かなり厳しく規制されているのですが、新しい人も増え、家庭からでる排水は厳しいものがあります。
 琵琶湖は、小さな海です。
 でも、大きな海の太平洋や日本海でも同じことです。
 日本中の人たちが、自分の出す排水に気をつけてほしいと思います。


(9:15)
T「ここで問題。琵琶湖の瀬田の唐橋付近(地図で確認、写真映写)、ここは琵琶湖で 一番汚れているところなんだけど、ここと、青木川・五条川と、どちらの汚れがひど いでしょう。予想してみよう。 ノートに丸打って。」
T「琵琶湖だと思う人」    S約半数
T「青木川・五条川だと思う人」S約半数
T「水質を検査した結果があります。COD、亜硝酸とも色が濃いほど汚れていると思っ てください。まず、琵琶湖と青木川」
S「青木川の方が亜硝酸が汚い」
T「琵琶湖と五条川では?」
S「五条川の方がCODが汚い」
T「結局、どっちが汚い」
S「青木川」「五条川」
T「青木川や五条川はまだいいぞ。これは中奈良の用水だ」
S「えー」
T「このように、青木川や五条川を汚しているのはだれだ?」
S「私たち」
T「これを見てください。江南市の排水系統図です。布袋のすべての排水は、青木川か 五条川のどちらかに流れ込むんだ。琵琶湖の問題は、同時に布袋に住むみんなの問題 でもあるんだ。」
T「先生は関係ないよ。先生の家の排水は日光川に流れるから」
S 笑「同じだ」の声も
T「では、琵琶湖がきれいになった滋賀県の人の知恵を参考にして、これから青木川・ 五条川浄化大作戦を考えてもらおう。班机、用意!はじめ」

 下水道を早くつくる、合成洗剤禁止、合成洗剤に税金をかける、米のとぎ汁を木に
 みそ汁などは計画的につくる、釣りをやったらゴミを拾う、条例で規制、
 ラーメンの汁は薄めて庭へ、川の水質を研究する研究所をつくる、青木川石鹸を作る
  など
 
T「生活排水については、水をきれいにする達人がいます。誰かわかる?」
S「郡上の人」
T「そう、郡上の人を師匠として、野外学習を機会に学んでこよう。1日目には、郡上 の水をきれいにつかう専門家の三島さん、3日目には実際に郡上の町へ出かけて取材 します。ぜひ郡上の人の知恵を盗んでこよう!
  では、今日の授業の感想を書こう」
(9:26)
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