上條晴夫先生を迎えてのスキルアップセミナー
総合的な学習のための教育技術〜作文的方法によるアプローチとそのヒント〜
2002.9.16 江南市民文化会館 文責 土井
主催 教師力向上委員会 企画 ひだまりの会 協賛 児童理解の会
※ この記録の文責は土井にあります。ワークが中心であったため、(メモする余裕がなく)記録は全体に及ぶものではありません。また、部分的に土井が補足した部分もあります。
今日のテーマは、この本(『 』)から取ったのではないかと思う。
総合的な学習には、書くことが必要だ。そのことについて書いてある本がありそうでないのでこの本は貴重である。
今日はワークショップを中心に行いたい。先生方も実際に書く経験が必要。今日で子どもの気持ちを体験してもらいたい。
総合的な学習の特徴は教科書がないことだ。
これまでには教科書があった。それをわかりやすく伝えたるのが基本であり、それができるのがよい先生だった。
ところが、総合は教科書がない。子供たちに対して調べたいと思ったことを調べたり体験させるのを作法とする授業である。
講 義 対 追究・体験
指示・発問型 作文
1997年から学級崩壊の取材をした。子供は先生の話が嫌い。追究・体験は好きだが講義が嫌いなのだ。総合では、体験のさせっぱなしがすごく多い。作文をさせることによって追究や体験をすくいとる作業をしないと何をやったのかわからない。
総合は、追究・体験と作文というセットで勉強を考える必要がある。
腕のある先生は、講義で身につけた技術をつい使ってしまう。そのような先生は次のような過ちを犯す。
1 課題発見の代わりに発問をする。
そこでどうしたらよいか?
資料2枚目を見てほしい。課題づくりの方法はこの2つ。
@ はてなづくり、 A 浴びるような観察と体験 である。
2 小さく区切ってテンポよく教える
総合は失敗が起こるのが特徴。しかし、講義は失敗をしないように短く区切る。発問をし、確認をし、次の発問をする。総合はもっと自由が必要。
朝の10分間読書というのが増えてきた。読みたい本を読むのは自由だ。指導の構造が違うので、教師の働きかけ方が違う。
3 正解を向かって言葉かけをする
これら3つとも、教科では正しい方法だが、総合ではよくない。
総合は、枠だけ決まったら子供たちに自由にさせることが多い。ある程度の枠は必要だ。
総合をやっていると「力つきますか?」という質問が多い。講義の方は、力がつくように効率よく構成されている。しかし、総合は、同じようなことを3回くらいやって、その中で自分なりに気づきを生み出す。
そのことが資料1の前半に書いてある。
総合の、じわじわするところを判断しなければならない
総合を講義型にしないためのための対策は2つある。
1 15分の講義 + 質問
コツは質問を書かせることだ。教科では、40分授業をやって5分の質問を受ける。総合は、講義はせいぜい15分。その後は、質問に当てるべき。
ゲストティーチャー をよんだ時も、15分を講義、残りを質問にすればよい。質問が出なくて困るのは方法がまずい。質問は、まず個々に書かせる、それを順に読ませればよいのである。これにより子供たちのおしゃべり欲求が満足する。
学級崩壊で子供がノーといったのは、コミュニケーションがないことなのだ。やりとりがしたいのが子供の声である。
総合的な学習も追究・体験だけではつぶれる。それだけでは学力にならない。言語化するから学力になる。
2 体験・追究+作文
追究・体験には必ず作文を書く。課題設定をして、追究して、成果発表をする。たとえば、成果発表を5・7・5ぐらいにしすると書きやすく、発表しやすい。
作文教育は、読者意識が大切。読者が目の前にいる形=対話型作文 がよい
質問に対して短く応えさせるのも作文。それが積み重なると独演型作文になる。
小学校2年生10月ぐらいまで対話型作文をみっちり指導すると、一人で書けるようになる。話し言葉で書く方が書き言葉で書くより書きやすい。トレーニングの過程としては、話し言葉も許す。
拘束の中の自由と言う言葉がある。学校教育の中の自由はフレームを与えること。全く自由では、子どもは書けない。
Q 入門期指導はいつまで? :A 対話型から独演型へ は、順序性ぐらいに考えた方がよい。とくに、いつまでということはない。
番号作文(何かを見て10気づいたことを書きなさい・・・など)
(この日は「1000円札を見て何か気づいたことを10書きなさい」)
まず書き上げることが大切。
スピードに個人差が大きいので、そこがポイントになる。
この方法は、見学・観察の場合に応用が広い。初めは、10に限らず、7でも、3分でもよい。
10の中には、断定、推測、予想がでるので、その後の課題を作りやすい。また、この10個に始めと終わりにつけると作文になる。10個選んだうちから、特に課題になりそうなのを3つほど選んで書いてもよい。一つでもよい。まずたくさん書いた後なら書きやすい。
鉛筆対談
2人で交互に文で対談するもの。課題追究に使える。もっとも初歩的な指導の方法である。論理的な文は余分なことを書かないが、この鉛筆対談は認める。
テーマの設定がポイント。主張と根拠のある問いが大切。時間ももう少し短くくぎってもよい。
【土井の感想】
上條先生はやはり現場の人だ。学者ではわからない現場ならではのコツをよくつかんでいる。細かなテクニックだが、知ると知らないとでは雲泥の違いがある。
内容は、かつて野口芳宏先生に教えていただき、実践してきた内容だった。その効果など、上條先生の考えは全面的に賛成である。今回は、比較的入門期に作文の抵抗感をなくすためのトレーニングが多かったが、中級・上級の指導と評価についても話を聞いてみたいところである。
学習のまとめとして、また評価のためにも、さらに思考力を高めるためにも作文は必要不可欠なもっとも基礎的な学習である。上條先生には、作文のスペシャリストとして作文の効用を広めてもらいたい。
土井個人としては、作文の重要性と共に、「話す」重要性にもこだわりたいと思っている。しかし、上條先生はそこまでは考えていないようであった。「書けること」と「話せること」は裏表である。ぜひとも「話す」トレーニング方法の開発にも挑んでもらいたい。 今回は、この記録の他にも有意義なヒントがたくさんいただいたが、メモしきれなかったのが残念である。