研究発表校リポート
2000年12月2日に行われた総合的な学習の研究発表会のリポートを簡単にします。
東京都新宿区立四谷第六小学校
〒160-0015 新宿区大京町30 TEL 03-3358-3767
JR中央線を挟んで国立競技場と向かい合う、10学級、児童数258名の学校である。
「活力にあふれ、よりよく生きようとする児童−互いのよさを認め、人と人とのかかわりを拓く総合的な学習−」
このテーマをもとに、「知る力」「創る力」「表す力」「かかわる力」「評価する力」の5つの学ぶ力の習得を目指している。
@ 知る力とは、知的好奇心や興味・関心、問題発見力、目的・課題意識、情報収集力、選択力、判断力である。低学年は直接体験活動を重視し、学年が上がるにつれて、メディアからの学習の割合を増やしている。
A 創る力とは、計画性、独創性、自己統率力、思考力、表現力、情報活用能力である。
絵や文でまとめる → 自分の考えをまとめる → 相手にわかるようにまとめる と学年と共に目標が上がっていく。
B 表す力とは、コミュニケーション能力、自己表現力、達成感と成就感、新たな課題、進歩・変容である。
低学年「楽しんで」スピーチ、対話、○○ごっこ、ゲーム、発表会
中学年「分かりやすく」話し合い、ポスターセッション、ロールプレイ、交流会、発表会
高学年「効果的に」話し合い、ポスターセッション、ワークショップ、交流会、発表会
C かかわる力とは、対話・討論能力、相互理解・相互啓発、柔らかな感性である。
知る力、創る力、表す力 それぞれに目標が設定されている。
D 評価する力とは、ものの見方や考え方、問題解決力、自己の生き方(行動・実践力)である。知る力、創る力、表す力のそれぞれに評価方法が示されている。
以下は、土井の印象である。
課題づくり ← 体験・交流イベント
↓
追 究 ← 体験・交流イベント
↓
発 表 ← 体験・交流イベント
↓
生かす ← 体験・交流イベント
このように、それぞれの段階でイベント的な活動を大切にしているような気がした。ただ、
やりっ放しでなく、毎回の自己評価・相互評価がしっかりしているので、散漫になっていない。
公開授業は、4・5・6年はポスターセッションだった。児童は慣れている。各学年で型が違っており、4・5年はグループ研究、6年は個人研究の発表だった。
総合的な学習の内容は何でもよいようで、3年−まちの音探し、4年−福祉のまちづくり、5年−エコ・クッキング、6年−各地の料理、すなわち音楽科・社会科・家庭科・家庭科の関連が強く、系統性は感じられなかった。学び方重視と言えよう。
共通して言えるのは、表現力と自己評価を重視していることだ。
ちなみに、1年生は伝承遊び、2年生は命の学習だった。2年生の充実ぶりが印象的だった。
次山信夫先生(学芸大学教授)講評
4つの視点
1 一人ひとりの子どもに即すること(児童理解)
これまで有能生に目を当てて,数字や記号に置き換えてきた
↓
誠実さ,やさしさ,責任感,・・・人間性,その子らしさにまなざしをむけること 2 多くを望まず徹底する(教材研究)
テーマは入り口,狭い入り口から,奥行きを探っていた。
一人ひとりが持っている糸をよりあわせて,布にしていく,総合していくのも子どもたち。仮の課題から真の課題へ
3 機動性と柔軟性の発揮(支援)
ハプニングが足腰を強くする。計画は修正すればよい。教師は,コーディネータでありアドバイザーである。
4 粘り強さをもつこと(学習評価)
評価の問題は,子どもたちをどう見取っていくかの問題。
長い目で,幅の広い目で
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東京都渋谷区立神南小学校
〒142-0042 渋谷区宇田川町5-1 TEL 03-3464-0659
土井は実際に見ていないので、紀要から判断する。
NHKのすぐ南に位置する学校である。
「自ら考え、意欲をもって活動する神南の子−生活科・総合的な学習の時間を通して−」
をテーマに,次のように考えて実践している。
『主体的に問題を解決する力』を養うために「出会う→課題を発見する→活動する→まとめる→生活に生かす」の5つのステップで取り組んでいる。さらに、そのそれぞれで「人と豊かにかかわる力」を育てる手立てを設定している。別紙資料参照
総合的な学習(生活科)としては、各学年が次のようなテーマを設定している。
1・2年生 公園で遊ぼう
3年生 大きくなろう神南の子(保健体育分野,栄養と成長)
お話ししてね,あなたの国のこと
タイムスリップ,昔体験
4年生 山中博士になろう(自然教室に関連した課題学習)
めざそう つくろう やさしいまち
からすって悪者?
5年生 生命・ふしぎ発見 パート1(虫の観察,植物の栽培など)
君が主役だ!神南キッズニュース パートU
生命・ふしぎ発見 パート2
6年生 君が主役だ!神南キッズニュース パートU(ニューズづくり)
思いでいっぱい卒業だ
全校活動 縦割り班をつくろう(毎週金曜日の全校活動,班別対抗ゲーム大会)
神南ラリーを楽しくしよう
子ども広場を成功させよう
内容の大枠は,学校として固定しているようである。行事との関係(4年生),地域性(6年生),子どもの思いから(5年生),全校活動の準備(6年生)など,内容は多岐にわたっており,環境や福祉,国際理解などもちりばめている。育てたい資質・能力の設定など,理論面はまだまだ考える余地があるが,総合的な学習の計画は現実的な取り組みだと言える。
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東京都中野区立啓明小学校
〒165-0034 中野区大和町1−18−1 TEL
03-3330-2325 (資料は黒田小で保管)
ここも土井は行っていないので資料から判断する。学級数12,児童数286名の学校である。
テーマ「心豊かで主体的な児童の育成−生活科・総合的な学習の時間を通して−」
豊かな心とは,感じる心,思いやりの心,自然を愛する心,たくましい心
主体的な児童とは,関心をもつ,かかわる,追究する,広げる,活用する
研究仮説は「心豊かで主体的に活動する児童は,教師が児童の感じる心に共感し,一人一人が課題に取り組む課程を大切にすれば育つであろう。」
研究内容は次の3点である。
1 単元を,関心をもつ,かかわる,追究する,広げる,活用する
で構成する。
2 気づき,自分の思いや願いをもってからの課題づくり
3 それぞれの課程で評価規準を明確にした評価
まずできるところから始めようという学校には参考になる。年間活動計画もよい。
※ 葛飾区立東綾瀬小学校(フェスティバル参観報告)
〒124-0006 葛飾区堀切6−21−1 TEL 03-3602-8123
12学級,児童数255名
平成12,13年度 葛飾区研究実験校
研究発表ではないが,児童会主催の「夢いっぱいワールド」を見せていただいた。
全校を12の縦割りグループに分け,グループごとに出し物を企画し,活動していた。
印象に残った点
・ 交流している盲学校も参加し,「ゴムジャングル」の部屋をつくっていた。アイマスクを付けて,ゴムジャングルと段ボールの迷路を通過してもらうものである。
・ 教師の姿が見えない。どの部屋も,児童だけで生き生きと活動しており,教師の存在が分からないほどだった。時折,「○○の部屋がすいています」という放送が入る程度だった。それも,子どもがやるともっとよかったのに・・・
・ たとえばキックターゲットでは,ゴールにはいると音楽がかかり,チアガールチームがお祝いの踊りを踊ってくれる・・・など,発想豊かに,どの子も動いていた。ろうかでは,「○○は楽しいよ!ぜひ来てください」という宣伝マンがたくさん回っていた。親の参加がもっとあれば,さらに盛り上がったのに・・・
・ 全体に生き生きと活動する児童の姿と,あたたかく見守ろうとする先生方の姿が,強く印象に残った。