生きる力を育てる学校づくりと校務主任のあり方
            −身のまわりに安全上の課題を見つけ,進んで解決する子の育成−
                                                                 岩倉・葉栗地区
はじめに
 学校現場や地域社会において,子どもたちの健康や生命を脅かすさまざまな出来事が起きている。予想さえしなかった事故や大規模災害,心の病に起因する痛ましい事件等,まさに予知できない危険が子どもたちの身の回りにあふれているといえる。
 今後もいっそう複雑,かつ深刻化するであろうこうした状況において,自分の健康や生命を守るための能力や資質を身につけることは,何よりも優先されるべき学習活動であると言える。そのためには,安全に生活するための知識や行動様式を身につけることはもちろんのこと,日常生活に潜む危険を発見したり予測したりする学習経験を通して,生涯にわたって「自分の身は自分で守る」という安全に対する意識を高めることが大きな課題になってくると考えられる。
 岩倉・葉栗地区校務主任会では,自分の健康や生命を守るための能力と資質を身につけることが生きる力につながると考え,上記テーマを設定した。
 
1 基本的な考え方
(1) 子どもたち自らが安全上の課題を見つけ,そこで生じた問題を積極的に解決する場を設ける。
(2) 教師間の協力体制を確立し,指導・管理できるようにする。
(3) 家庭・地域と連携し,安全に生活するための環境づくりに努める。
2 各学校による実践例
(1) 子どもたちによる活動
 通学班による通学路点検 
 通学路の安全点検は,今までは教師が登下校の指導時に行ってきた。しかし,実際に毎日通うのは子どもたちであり,子どもたちでないと気づかない危険もある。そこで,各通学班の班長に呼びかけ,毎月1回班長の目で見た安全点検を実施することにした。交通量の多いところや安全施設が不十分なところは,子どもたちから歩行者用信号の設置など,施設改善の要望があがっており,学校から町に改善を要望した。
 子どもたちが参画する安全点検
  職員が毎月行う安全点検に加え,子どもたちによる校内の安全点検も実施した。これには,次の三つの意味がある。
 
@ 子どもたち独自の視点から見た危険個所を発見すること。
A 発見した危険個所を全校に知らせること。
B 自分たちで身の回りの危険を見つけ、それに対処しようとする意識を育てること。
 安全点検は,生活安全委員会を中心にして行っている。子どもたちが,デジタルカメラで日頃危ないと感じている物や場所,改めて危ないと感じたところなどを撮影し,その映像をもとに全校に紹介している。校内の危険をどのように知らせたら効果的か,子どもの視点から意見を出し合っている。
 子どもたちが発見した危険個所は,「安全コーナー」に,場所とどのような危険が予想されるのかを示した。それとともに,その危険個所への対処も子どもと話し合い,修繕や改良を進めている。
 集会委員会の安全集会
 集会委員会では,子どもたちの安全に関する意識の向上を図るために,児童集会で安全クイズを行った。このクイズは,子どもたちが日常の生活の中で危険と感じることについてアンケートをとり,その結果から問題を作成し実施した。
 集会委員会の他,給食委員会は食器の返却,保健委員会はけがの発生,美化委員会は掃除道具の安全な使い方などを集会で訴えた。





(2) 教師間の協力
  教師は,毎月重点箇所を決めて安全点検を行うなど,安全管理面で の協力体制をとっているが,そのほかにも次のような取り組みを行っている。
 日常生活に生きる「安全コーナー」
 単なる飾りではなく,日常生活に生きる掲示板にするために,教師が協力して「安全コーナー」の充実を図った。
 岩倉市の中学校では,校区の地図に通学路を,通学団担当者と協力して作成をし,廊下等に掲示した。地図中には,登下校上危険な道路,通行禁止箇所等を記入し,交通事故等(火災,変質者,樹木の消毒)の問題が発生した際には,その位置・範囲に印をつけ,教師・生徒ともに確認できるようにした。また,軽量のパネルにし,教室での指導や授業にも使えるようにした。
 岩倉・葉栗地区防災対策情報交換会 
 岩倉・葉栗地区校務主任会では,各学校での防災対策の情報交換会を行った。互いの防災計画を持ち寄り,比較検討することで,それぞれの長所や問題点が明確になってきた。今後は,学校が避難所になった場合も含めて,より具体的な行動計画を協力して作成していきたいと考えている。
 
(3) 家庭・地域との連携
  子どもたちの安全について,家庭と次のような連携を図っている。
●PTAによる登校時の立ち番指導 ●PTAによる通学路点検 
●家庭と連携した自転車点検    ●PTA新聞での「こども110番の家」の紹介 ●こども110番の旗の設置    ●PTA広報紙の安全コーナー
●PTA救急法講習会        ●交通少年団の活動
●家庭・地域と協力して行う自転車教室 ●保護者が参加する緊急下校訓練 など
ここでは,地域での活動の一つとして,交通少年団の活動について紹介する。
 交通少年団は,子どもの交通事故防止を目的として設立されたもので,岩倉市・市交通指導員・江南警察署・校区子ども会世話人・PTA・学校職員・通学班長(6年)で組織している。交通安全立て看板つくりや校区の交通安全パトロール,校区高齢者宅訪問,七夕飾りの江南署寄贈,夏休み水禍事故防止パトロール,市民体育祭における交通安全宣言,年末交通安全街頭啓発活動などの活動を行っている。
 交通少年団に参加することにより,登下校時や下校後の交通安全意識が高まり,また,地域の高齢者の学校行事への参加が促進されるなどの成果が現れている。
 
3 取り組みの成果と課題
  各校の校務主任が率先して安全教育に取り組んできた成果として,次の点が明らかになってきた。
・子どもたちによる安全点検が定着し,安全に対する意識が高まってきた。
・子どもたちが「自分自身で判断して行動する大切さ」を学びつつある。
・地域全体で子どもを守ろうという考えが,地域に芽生えつつある。
 
おわりに
 子どもたちの安全を守ることは,教員の最も重要な責務であり,そのなかでも校務主任がきわめて大きな役割をもつ。今後,総合的な学習の進展にともない,子どもたちの学習の場はますます拡大していくことが予想される。こうしたなか,校務主任が中心となり,職員が協力して,子どもたち一人一人が安全に生きる力を育てていかなければならないと考える。