マスコミ報道に見る私たちが気をつけたいこと
                                        
1 授業時数は不足していないか? 
 
廿日市中校長ら処分 授業時数の大幅不足偽る 
 県教委は十日、安易な授業カットで昨年度の授業時数が大幅に不足する事態を招いたとして、廿日市市立廿日市中学校の斉藤正美校長(五七)を三ヶ月間、減給十分の一とする懲戒処分にした。
 県教委によると、同校では昨年度、学校教育法施行規則が定めた標準の年間授業時数千五十コマに対し、最大の三年生で百六十ニコマの不足が生じた。さらに県教委の調査に対し、実態とは違う報告をしていた。
 一方、廿日市市教委は同日、平野幸三教育長(六ニ)を懲戒処分にするなど三人の処分を発表した。虚偽報告をチェックできなかった監督責任を理由に、平野教育長は一カ月間の減給十分の一、教育部長と学校教育課長を文書訓告とした。
 平野教育長は「教育の根幹にかかわる深刻な問題で厳粛に受け止めている。信頼回復に向けて、研修会の徹底など再発防止に努めたい」とあらためて陳謝した。
 授業時数が五十七から六十六時限足りなかった現ニ、三年生には夏休みなどを利用して一年間で不足分を補充、百六十二時限足りなかった今春の卒業生には校長名で謝罪文を送付したことも明らかにした。(5/11中国)
 先に同様な事態を招いたとして、福山市立東朋中学校の岩本校長が戒告処分を受けたが(2/8)、今回の廿日市中の問題では県教委の調査に対し、実態とは異なる虚偽の報告をしていたことと、三年生については不足分の補充なく卒業させたことが、より悪質と判断されたものとみられる。また同校について、報告と異なる実態を日常、何の学科をどのように隠蔽していたのか実態を明らかにする必要がある。

 問題点を整理してみる。
1 授業時数不足
   162時間の不足は問題外だが、台風による休校の時数減があるため、特に卒業式が早い  愛知県の中学校3年生の時数不足は注意する必要がある。
2 虚偽報告
   公文書が実態と合っていないということで虚偽報告とされている。
3 不足分の補充がされたていない
   逆に言えば、不足する場合は補充しろという意味である。
 
 
2 5分短縮授業は違反
県東部の公立中学校の授業短縮・カット問題
    教育を受ける権利の侵害 「悪しき慣行」継続、単位時間確保できず
                          産経新聞(平成13年12月25日付)より
 福山市立東朋中学校での度重なる「45分授業」実施の発覚を機に、次々と明るみに出た県東部の公立中学校の授業短縮・カット。旧文部省の是正指導で、こうした「悪しき慣行」は撤廃されたことになっていたはずだった。今回の問題を振り返り、課題を整理した。
◆ 短縮は悪?
 中学校学習指導要領は「授業の1単位時間は50分を常例とし」、年間授業時数を1050単位時間とすることを定めている。
 反面、「教育効果を高めることができる場合には、各教科等の年間授業時数を確保しつつ、適切な計画の下に授業の1単位時間を弾力的に運用することができる」とも規定。諸条件をクリアすれば、授業短縮の実施を認めている。
 その意味では、福山市立中学校全校で実施されていたことが分かった45分授業それ自体が、学習指導要領に違反しているわけではない。
 問題は、東朋中のように45分授業が”常態化”したことにある。それによって、同中では短縮分の「5分」が積もり積もって23単位時間分(1150分)にものぼり、「1050単位時間の確保」ができなくなった。
◆ 授業カット
 授業そのものを中止する「授業カット」は、授業短縮とは似て非なる問題だ。
 東朋中のカットは47単位時間、「トビ」と呼ばれる時間割操作を恒常的に繰り返した府中市立第一中では約60単位時間にものぼったことが判明。両校を除く福山・府中両市の25校でも、約70〜10単位時間のカットが明るみに出ている。
 いずれも「1050単位時間の確保」ができない状態で、福山市では、3年生の不足授業分について、卒業式を延期して、授業を行い、1050時間を確保する異常事態に追い込まれている。
◆ 目的のはき違え
 各校の短縮やカットの主な目的は、クラブ活動や学校行事、職員会議などの時間確保だった。「長時間の授業では生徒がもたない」という校長もいた。
 これに対し、ある県教委職員は「授業を軽視したのではないか」と指摘。「厳しい言い方をすれば、教員が授業の方法を研究し、生徒に興味を持たせない限り、短縮やカットは、逃げ道といわざるをえない」と話す。
 さらに、府中第一中が市教委の調査に対し、「授業時数は確保できている」と、繰り返し虚偽の報告をしていたことが、市議会で明らかになった。生徒の範となる教育者が「うそ」をついていた、その罪の重大さに関係者は気付いているのだろうか。
 子供には教育を受ける権利があり、大人には教育を受けさせる義務がある。関係者には、このことを再認識してほしい。

 45分授業(中学校における5分短縮授業)そのものが違反しているわけではない。
 問題は次の点にある。
1 クラブ活動(部活動)、学校行事、職員会議など時間確保のために”常態化”したこと
2 短縮した5分の回復が図れなかったこと
 これは愛知県でもあり得ることである。卒業式を延期して時間を確保した学校もある。5分短縮授業を行う時は、慎重を期するべきだ。
 
 
3 教科書を使わず授業
 教諭を空き教室に隔離して研修させていたことで問題となった福山市の通信制県立東高校(岸本敬三校長)が、教科書を使わず、自主教材だけで生徒に教えていたことが、五日までに、県教委の調査でわかった。県教委は六日に校長を処分する方針を固めた。
 同校は通信添削を主とし、週に二度のスクーリングと呼ばれる授業を行っている。ところが、通信添削や授業の教材に、高校通信教育規程に合った教科書や教科書準拠の通信教育用学習書を使わず、独自に制作。学習指導要領で定めた指導内容を満たしていなかった。さらに高校通信教育規程で定められている試験を全く実施せずに、生徒に単位を与えていた。
 五日午前の県議会文教委員会で、県教委はこの実態を報告。六日の臨時教育委員会会議で岸本校長を処分する考えを明らかにしている。

 この報道からは、教科書を使わなかったことが問題なのか、学習指導要領で定めた指導内容を満たしていないことが問題なのかがよくわからない。
 これも逆に言えば、@ 教科書を使うこと、A 学習指導要領の指導内容を満たすこと を守らないと校長が処分されるほどの事件であることを認識しなければならない。
 
 
4 夏休みの勤務は?
夏休みの学校訪問
 学校は完全週五日制になり、これまで教職員が隔週土曜日に出勤した分(年間十四日)を夏休みにまとめて取る慣行が廃止され、「自宅研修」を使った休暇確保が大幅に増える懸念が出ている。「自宅研修」は「運用が不透明」「サボリではないか」などと批判があり、文部科学省は不明朗な運用がないよう二度にわたって異例の通知を出すとともに、「自宅研修」の実態調査を夏休み後に実施する方針である。
 そこで「広島県の教育を正す会」(「広島県の教育を考える会」のほか有志の集まり)では、夏休み中の教職員の勤務実態を調査した。訪問したのは広島市、廿日市市、呉市、東広島市内の小中高16校である。調査は早朝から教職員の出勤状況をチェック。そのあと校長などからヒアリングを行い、数校については許可を得て校内をみてまわった。その結果を集約すると次のようなことがわかった。
 
○ 恒常的な遅刻、早退(外出先からの帰宅なども含む)がある。夏休み中は9時から〜9時30分 までに登校すればよい、などという「遅刻公認」もあった。
○ 出勤簿への押印を、後日まとめて処理する者がおり、年休取得などが不正確になる実態がある。 (東京都ではその為もあり、タイムレコードを導入した)
○ 承認や連絡なしに年休をとり、管理者も黙認している。
○ 朝礼により勤務状況が把握できるが、朝礼を「普段もやる」「夏休みはやらない」「普段もやら ない」というように学校により格差がある。また、朝礼後は目が届かなければ早退などわからない。
○自宅研修はなかった。
 
 「広島県の教育を正す会」のメンバーらは、9/6、県教委に下崎邦明教職員課長を、広島市教 委に尾形完治教職員課長らを尋ね、勤務の正常化を申し入れた。これに対して両課長は、「調査結 果の趣旨は今後の指導に生かしたい。アクションについては後日報告する」と答えた。

 愛知県ではどうか。学校によっては、ないとは言えないというのが実態ではないだろうか。夏休みの勤務について、社会は厳しい目を光らせていることは知っておかなければならない。
 
 
以下おまけ
 
「出席簿改ざん」事件で週刊誌の報道
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 府中二中の「出席簿改ざん」事件について、6月13日号の「週刊新潮」が次のように報道している。
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 公立学校が刑事事犯で告発されるとは、実に前代未聞の出来事である。しかも出席簿を改ざんした公文書偽造罪の容疑だというから、あまりにも情けなさすぎる。告発に踏み切った『広島県の教育を正す会』の坂本忠美代表も言う。
 「ただ呆れるばかりです。それでなくても広島県の教育界は文部科学省から是正指導を受けている最中で、私達も何とかしなくてはと目を光らせていた矢先の不祥事だった」
 発端は昨年末。広島県下の公立小中学校で、慢性的な授業時間カットが行われているのが露見したのだ。何しろ1学期と2学期だけで50〜60時間も不足している学校はザラだったという。坂本代表が苦い口調でこう続ける。 「その内、たった2校の校長が戒告などの処分を受けただけ。3学期の時間割に不足分を加えて授業を消化する事でウヤムヤにされたのです」
 この時の府中ニ中が市教委に届け出た授業不足は38時間だけだったので、当時の本宮達弘校長も処分を免れた。「しかしニ中に入学以来、長くて5時間授業しか受けたことのない子を持つ母親が、これはおかしいと疑い、市教委に出席簿の公開を申請。そのコピーを手に入れました」
 すると、この出席簿にはなぜか55日間だけは、6時間日の授業が行われたことになっており、毎月末には担任印と校長印までが捺されていたのである。今度は府中ニ中の元PTA役員が話す。 「これには思わず笑ってしまいました。だって、うちの子供と担任の先生との間で毎日交わされてきた連絡帳『しらゆり』には一度たりとも、6時間日の授業が行われたという記述がなかったのです」
 この連絡帳には担任印まであって、自ら、出席簿の方を学校ぐるみで改ざんした事を証拠付けていたのだ。しかも府中ニ中では、50分授業を45分に短縮したり、授業を早めに切り上げて教師だけの忘年会をやったりするのが、数年前から、ほとんど慣習化されていた事実まで判明する。「5時間授業というのが定着していたので、保護者も生徒も全く気づきませんでした。うちの子なんか、学校での授業が少ないので喜んでいたくらいです」(前出)
 
 しかし、出席簿改ざんという事実を突きつけられても、肝心の市教委のほうは、未だに信じたくないようなのだ。 「学校側は、学習プリントによる25分授業を毎日行い、その2回分50分を6時間月の授業として、誤って記入してしまったと言っている。つまり改ざんではなく、思い込みによる不始末ということだったのです」(前原昭総務課長) 刑事告発なんかされる事柄ではないと言うのだが、大原一人・府中市議はこう憤る。
 「プリントによる授業は、高校受験を控えた3年生のためにやるものです。市教委は、なぜ生徒達から直接、聞かないのか。そうすれば学校側の嘘はすぐに分かるし、処分だって出来たはずだった。こんな対応ぶりだから相手にされず、警察の調査権を頼りにする刑事告発までされるのです」
 
 今回の刑事告発は、この大原市議も含めて一種のショック療法と見る関係者が少なくないが、告発団の代理人・南出幸久泊弁護士は否定する。
 「出席簿の改ざんをする教職員が本当に存在したというのが、私にはショックです。虚偽公文書作成罪または公文書偽造に該当する行為で、とても許せることではないのです」
 もっと許せないのは、授業カットで犠牲になった府中市内の生徒達が、高校進学にも支障を来たしていることだ。 「ここでは数年も前から賢明な親は、我が子を私立中学に通わせる″と、真顔で言われてきたのです」(大原市議)