第5学年1組 国語科学習指導案
対話力を育てる『伝えること』『話し合うこと』の指導
平成13年6月14日(木) 5の1教室 指導者 高 橋 宏 滋
1 本時の教材

 死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞ゆる
                  斎藤茂吉『赤光』

 
 老いた母は、まもなく最期の時を迎えようとしている。母のかすかな寝息を聞きながら、話者は、幼い日の母との思い出に浸っているのかもしれない。しんと静まりかえった部屋にただ聞こえてくるのは、無数に群がる遠田のかはづの鳴き声である。天に昇ろうとする母の魂と、天にまで響くかはづの声。生命力にあふれるその声に、話者は、消えゆこうとする母の命をいっそう哀れに思い、深い悲しみにくれていたことだろう。
 この短歌の魅力は、対比の見事さである。まもなく死を迎えようとする母の命と、天にまで届く声で鳴く力強いかはづの命との対比。たった一人の老母と田んぼで無数に群がるかはづとの対比。話者のすぐそばで静かに寝息をたてる母と、かはづの声にあふれる遠くの田んぼとの対比。これらの対比がつくりだすこの短歌の世界に迫ることが、本時のねらいとなる。
 
2 本時のポイント
(1)言葉から気づき、気づいたことを自分の言葉で伝えるための指導の方法
   まず、言葉から何かを気づかせるためには、切り込み口が必要である。その切り込み口として、  今回は、時・場・人・もの・数・音を子どもたちに提示する。これらの視点を与えることで、子  どもたちに、この短歌の情景を具体的にイメージさせたい。
(2)異なる意見とのずれに気づき、表現に寄り添って話し合うための指導の方法
   子どもたちが発表した気づきの中から、解釈のずれを取り上げ、話し合う課題としたい。話し  合いは、『書く』→『発表する』→『話し合う』という手順で進める。この時、それぞれの活動  でどの子にも参加させるための指示や発問を行っていきたい。
 
3 授業の展開
(1)教材を提示する。
   死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞ゆる
(2)音読する。
  ※ 何度か声を出して読ませたい。
(3)難しい言葉の意味を確認する。
  ※ あまり時間をかけず、手際よく進めたい。
(4)気づいたことを書く。

 この短歌を読んで、気づいたこと・思ったこと・考えたことを、ノートに箇条書きで、5個以上書きなさい。この時、時・場・人・もの・数・音から浮かんでくる映像を言葉にしていきなさい。時間は5分間です。
 




 

@ 「5個以上」と数を示すことで意欲を高める。
A 時・場・人・もの・数・音の視点を示すことで具体的にイメージさせる。
B 「5分間」と時間を示すことで、意欲を高める。

 

(5)気づいたことを発表する。



 

@ 無指名で次々に意見を発表する。
A 進んで発表できない子には、起立させて発表を促す。

 

(6)具体的なイメージをつくる。
  ※ 子どもたちの発表の中から、いくつかを取り上げ、全体に発問することで、具体的なイメー   ジを持たせたい。
  例 ○ 季節はいつ頃ですか。
    ○ 母は何歳くらいですか。
    ○ 時刻はいつごろですか。
    ○ どんな音が聞こえてきますか。
    ○ 田んぼはどれくらい離れていますか。

(7)「かはづ」の数を考える。

 かはづは1匹ですか。それともたくさんですか。
 





 

@ 二者択一の発問で、子どもたちの思考を限定する。
A 人数確認をする。
B 理由をノートに書かせ、一つ書けたごとに教師に見せに来させる。
C ノートに○を付けてやることで意欲を高める。

 

(8)意見を発表する。



 

@ 人数の少ない方の意見から発表させる。
A 相互指名で次々と発表を進めさせる。

 

(9)反対意見をノートに書く。



 

@ 反対意見を書かせることで、自分の意見とのずれを明確にさせる。
A ノートに書かせることで、話し合いに備えさせる。

 

(10)話し合う。

話し合います。誰からでもどうぞ。
 




 

@ 机の向きをコの字型に変えさせる。
A 相互指名で進めさせる。
 (発言の少ない人を優先して指名させたい。)

 

(11)対比されている言葉を考える。

 この短歌の中で、対比されている言葉は何と何ですか。
 
  「母」と「かはづ」
  「死」と「天」
  「しんしん」と「聞ゆる」
  「添寝」と「遠田」

「母」と「かはづ」は、どういう意味で対比されているのですか。
 
  ※ 残りわずかな母の命と生命力あふれるかはづの対比、一人の母と無数のかはづの対比に気づ   かせていきたい。

(12)自分の考えを文章にまとめる。





 

@ 気づいたこと
A 対比されている言葉
B かはづはどれくらいいるのか
C 解釈

 
 
※1時間では終えられない内容なので、残りは次時に回すことにする。