岐阜市立長良東小学校平成18年度校内拡大研究会参観報告
 
 平成18年10月28日(土)に行われた岐阜市立長良東小学校の校内拡大研究会の参加報告をします。今回報告する学習公開1・2は、どの授業も数分見ただけ、しかもその場でモバイルで打った感想なので、誤解や曲解もあるかもしれません。その際はご指摘ください。訂正いたします。
 
学習公開1(10:00〜10:45)
4年3組社会科
 クラス合唱で体を揺らして歌っている。児童の指揮者が最後に評価をして終えている。
 1分前に、係の子が「きりかえて」「姿勢を正しましょう」と声をかけている。
 当番の児童だろうか。前で「今日は発表をがんばりましょう」「大きな声で発表しましょう」「これから2時間目の社会の学習を始めます。」に続き「始めましょう」と続く。
T「ほうれん草の勉強をしているんですが、何月から何月までだった?」「この時期に はまずいことなかった?」
C「雨が多くて150ミリ以上降るとうまくできない」
 というやりとりを経て、学習問題が「どうして中谷さんは雨が多くてほうれん草が作りにくい清見で夏取りほうれん草を作り始めたのだろう。」になった。これは、あらかじめ板書されていた。
T「交流しましょう」の指示で、一斉に手が上がる。
C「雨に弱いからハウスで守っていると思います」
C「僕の家にはハウスがあるからわかるんだけどお、ピンピンに張ってある」
T「どこの資料でわかった?」
 根拠づけた意見を言うための社会科の基本の指示だ。
C 前に出て「この資料から」
T「何がいいの?」
C「病気にならないように」
 手が次々と上がる
C「私は夏はハウスの横をあけて涼しくして冬なはハウスを締め切って温度を上げてい ると思う」
多「よくわかりました。」
 この反応が、毎回違うものが自然に出てくるのがすごい。
C 前に出て「この資料からわかったのだけど、清見町は 温度の差が12度、岐阜市 は7度。なぜこんなに差があるのかというと、山が多いから。差が多いと甘いほうれ ん草ができる」
 核心をついた意見が出てきた。というより、教師は個々の意見を掴んでおり、意図的に指名しながらねらいに迫るように誘導していると思われる。
 教室の掲示資料はすばらしい。
 ただ、すべて教師がわかりやすく加工した資料(二次資料と呼ぶ)である。しかし、現実社会にあるもの(一次資料とよぶ)はそうではない。ある学校では、子どもたちが授業の中で、資料集や電子辞書、書籍、新聞記事などの一次資料を駆使しながら発表していた。長良東の子どもたちが、そういった一次資料をどこまで使いこなせるかを見てみたい。
 
1年2組 算数に移動。
C「前に出ます。お話ししてもいいですか。」
多「いいですよー」
 間の長さが1年生らしい。教室前面には考え方が張ってある
 学習課題をそれぞれが言っている。一人を指名すると、「いくつから引けない計算の仕方を考えようでどうですか」「いいです」というやりとりの中で課題が決まっていった。
 1年生である。しかし、スタイルは6年生と変わらない。自分の言葉で、しっかりと答えている。1年生から、学びの姿勢はすでにできている。
 
1年3組 生活科
 「ながらのあきとあそぼう」というテーマで、ドングリを使ってコマややじろべえ、笛をつくっている。
 単に遊びになりがちの内容だが、どう「学び」につなげるかが興味深い。
 
5年4組 理科
 「てこのはたらき」
 若い女性教師だ。子どもたちの反応の良さはここでも共通している。全員が友達の意見をしっかり聞いていることが目で見て分かる。その姿を見るだけで気持ちがいい。
 「ちょっと違う」といいながら手が上がる。「ぼくは違って、〜と予想したよ」と自分の考えを述べていた。意見が分かれて面白くなってきた。
 
2年2組 国語
 肩を組んでほほえましいが、めずらしく全員が集中していたわけではない。一部であるが、注意散漫な子がいた。正直、ほっとした。公立小学校にはいろいろな子がいる。だからこそ共に生きる心が育つのである。
 
2年4組 図工
 絵はのびのびしている。酒井式をもう少し自然にした感じである。下絵に黄色を使うところがポイントか。
 
5年3組 家庭科
 男性教員による家庭科だ。お楽しみになりがちな調理実習を「学び」にしているところがさすがである。個人研究のプライドを感じる。
 
3年生5教室 算数少人数
 多くが教え合い、説明し合っていた。随所に指導レベルの高さを感じた。
  
4年3組 社会科に戻る
 5分間交流。後ろの二人が書けない。「難しいね」と言いながら二人で話し合っている。課題の意味が分かっていないような言葉も出たが、それでも話し合おうとするところに子どもたちの底力を見た。
 前で話し合っていた子が席に戻り、二人にヒントを言う。答えを言わないで、考え方を言うところがすごい。日頃の授業が表れている。最後には、「中谷さんになり切れ」と言った。これはすごい発言だ
 話し合いは、清見の良いところを全部生かしてほうれん草を栽培していると言うことになった。それは、中谷さんの「清見が好きだったから」という思いにつながった。
 思ったことで、Sさんは、「予想とは違ったけど、特産物は町のいいところ取り込んだものを作っている人がたくさんいると思いました。山仕事がいいと思っていたけど、清見の良いところを詰め込んだほうれん草をつくろうと思ったと思いました。」で結んだ。ねらいは彼女については見事に達成した。
学習公開U(11:05〜11:50) 
3年1組 社会科「事故や事件が起きたら」
T「こちらの資料を見てください。事故を見たり事故にあったりしたところが赤いところ、ひやっとしたところが青いところ。山口さんは6回パトロールしている。」
 山口さんのパトロールコースがビニールに書いて重ねてある。これはグッドアイデアだ。
 「どんな遠くへ行っても、この道を通っている。どうして山口さんは長良天神西の交差点を何回もパトロールしているのだろうか」という課題になった。
 正直、おや?これでこの子どもたちが満足するかと思った。この課題なら「交差点が危険だから」でも終わってしまう。それ以上追求するのは、社会科を越えている。
 「前に出ます。」みんな一斉に前へ出る。「道がせまい、見にくい…」と言う交差点の構造についての意見になる。当然であろう。課題を誤ったとしか思えない。 
 
5年1組 道徳
 昨年感動した小木曽先生の授業である。資料を読んで線を引くのは昨年と変わらない。全員が黙々とやっている。
 10分後にもう一度訪れると、一人の子が自分の意見を語っていた。その時の他の児童の集中力、すなわち聞く力はすごいものであった。しっとりとしたあたたかさと、張りつめたような緊張感が共存していた。
 他のクラスでも感じたが、あたたかく高め合う心の育成は、いじめ問題への最も積極的な対応策だと思う。
 
3年2組 音楽
 合唱のグループ練習中であった。ここでの学び合いも見事である。中学生でもここまではできない。
 歌い終えると、すぐに意見が飛び交う。声量のバランスが悪いのでメンバーを換えたり、問題を指摘し合ったりしている。そしてもう一度繰り返す。教師なしで、ここまで工夫できる子どもたちをどうやって育てているのだろう。
 






2年1組 算数 
 学び合いの場面だった。問題を解き終えた子同士が二人集まって説明をし合っている。
どのクラスでもできるところが長良東小学校の力だ。
 
1年4組 体育 
 この時間で上達した子をみんなの前で紹介し、祝福していた。「○○さんは何回もチャレンジして素敵だなと思いました。」あたたかい。
 前半は、危険を感じたり、やや指導の甘さを見受けたりする場面もあったが、子どもたちの動きを見ているとそのような思いも吹っ飛んでしまう。
 特に片づけの場面は圧巻であった。素早い。1年生とはとても思えない。それぞれが自分のやるべきことを自覚している。
 
《全体を通して》
 浅く広く見させていただいたが、子どもたちの集中力は、年々レベルアップしているのではないかと感じた。河井先生や渡辺先生など、カリスマ性を感じる先生方が異動されても、なおレベルが維持されているのは、個の力を越えた「学校力」と言えるだろう。
そこには創立以来変わらぬ理念、OB会の存在、地域の力もあろうが、やはり職員間の高め合う雰囲気が文化として、システムとして根付いていることが第一の要因ではないか。
 具体的に言うと、1年生から授業のイメージはできあがっている。個人研究を柱としているために、細かな枝葉の技術はそれぞれ個性的だが、幹の部分、子どものあるべき姿のイメージはどのクラスでも共通していた。その部分は、毎回述べることだが、日本でもトップクラスの学校だと思う。
 私たちが長良東小学校から学びたいものは明確だ。子ども像でありシステム作りだ。問題は学ぶ方法だ。
 犬山南小や草井小などの実践により、長良東小の良さが少しずつ浸透しつつある。しかし、これはまだまだ一部だ。丹葉地区のもっと多くの先生方にこの子どもたち、先生方を見ていただき、学び合い、高め合いのイメージを持ってもらいたいものである。
 社楽の会では、今後も長良東小学校を追い続けていきたい。