U 学校の管理運営
  
1 校長の権限

(1)校長が所属教職員に対して職務命令を出すことができる根拠規定を挙げてください。また,教頭も職務命令を出すことができますか。法令上の根拠を示しながら説明してください。
 
【 解 答 】
  職務命令とは,教職員に対して指揮監督する権限を持つ上司から発せられる職務に関する命令をいう。また,職務の遂行に関連して必要な身分上の命令を含む。
【 法的根拠等 】
○ 学校教育法第28条第3項(小学校の規定)
  「校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する」
○ 同法第40条 上記規定の中学校への準用規定
○ 同法第51条 上記規定の高等学校への準用規定
○ 同法第51条の9 上記規定の中等教育学校への準用規定
○ 同法第76条 上記規定の特別支援学校への準用規定
○ 同法第81条第3項 上記規定の幼稚園への準用規定
  この規定により,「学校運営上必要な一切の事柄は,学校段階においては校長の責任と権限に基づいて処理されなければならず,また校長は,上司として所属職員に対し校務を分担させるとともに校務の処理の仕方について必要に応じ指示するなど職務命令を発することができるのである。」(第四次全訂 新学校管理読本 p35
○ 地方公務員法第32条
  「職員は,その職務を遂行するに当たって,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の(中略)定める規程に従い,且つ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」
○ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第43条2項
  「県費負担教職員は,その職務を遂行するに当たって,法令,当該市町村の条例及び規則並びに当該市町村教育委員会の定める教育委員会規則及び規程(前条又は次項の規定によって都道府県が制定する条例を含む。)に従い,かつ,市町村委員会その他職務上の上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」
 
【参考・判例等】
○ 国家公務員法第98条第1項
  「職員はその職務を遂行するについて,法令に従い,且つ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」
 
【教頭の職務命令】
  教頭は、校長を補佐する立場から校長の命を受け、職務命令を出すことができる。
【 法的根拠等 】
○ 学校教育法
  第28条第4項
  「教頭は校長を助け,校務を整理し,及び必要に応じ児童の教育をつかさどる。」
  第28条第5項
  「教頭は,校長に事故があるときはその職務を代理し,校長が欠けたときはその職務を行う。この場合において教頭が二人以上ある時は,あらかじめ校長が定めた順序で,その職務を代行し,または行う。」とあり,教頭の職務権限を規定している。
 
【解説】
  「校長を助ける」とは校長を補佐するという意味であり,当然,校長の職務権限の行使について直接補佐できると解釈できる。よって,教頭は校長の命を受け,所属職員に対して職務命令を出すことができる。
 「校務を整理する」とは,校務分掌の総合調整,校内人事の調整などの管理上の調整作業を行うことであり,教頭は校務を整理する立場から,所属職員に対して指揮監督を行うことができる。
 「校長に事故があるときはその職務を代理する」とは,校長が海外出張時や重病のときに,教頭は校長の職務権限を代理して行使できるということである。
 「校長が欠けたときその職務を行う」とは,校長が死亡した場合等に教頭が職務権限を行使するということである。(第四次全訂 新学校管理読本 p3738
 
【参考】
@ 職務命令は権限のある上司から発せられたものでなければならないが,市町村における県費負担教職員の場合,職務上の上司とは,服務監督権者である市町村教育委員会,教育長,校長,それを補佐する教頭等であると考えられる。
A 職務命令の手続き及び形式については,何ら制限はなく,口頭により行うこともできる。その命令に,教職員は忠実に従わなければならないという法的拘束力があり,従わない場合は,地方公務員法第29条に基づき懲戒等の処分を受けることとなる。
 

(2)給与が市町村負担である事務職員が,自分は市町村税から給与を払われている立場にあるので,市町村が処理すべき関係事務にのみ従事するものであると主張した場合,校長は,都道府県が負担する教職員の給与費等の取扱いについて職務命令を発することができますか。また逆に,県費負担である事務職員に対して,市町村が費用を負担する物品購入に関する事務を行うように命令することはできますか。 
 
【 解 答 】どちらもできる。
 職務命令とは,職員に対して指揮監督する権限を持つ上司から発せられる職務に関する命令をいう。
 学校教育法は,「校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する」(第28条第3項,第40条,第51条,第76条,第81条第3項)と規定しており,校長の校務に関する一般的かつ包括的な権限と責任を明らかにしている。したがって,学校運営上必要な一切の事柄は,学校段階において,校長の責任と権限に基づいて処理されなければならず,校長は上司として,その給与が市町村負担であろうと県費負担であろうと,所属する全ての職員に対し,職務命令を発することができる。
 また,校務とは,学校の仕事全体,すなわち学校が学校教育の事業を遂行するに必要な全ての仕事を指し,給与の取り扱いや物品購入等の会計事務に関するものも含まれる。さらに市町村立学校に勤務する県費負担事務職員は市町村の公務員であり,市町村の教育の事業の遂行に奉仕する義務を負っており,市町村が費用を負担する物品購入に関する事務を行うことも当然の職務である。
 併せて,職員の職務命令服務義務については地方公務員法第32条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律第43条第2項に規定されている。
 
【 法的根拠等 】
  以下のような校長の職務上の権限,事務職員の職務,及び職員の服務規程から,職務命令を出すことができる。
 @ 校長の権限の根拠規定
○ 学校教育法第28条第3項
  「校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。」
○ 学校教育法第40条 上記規定の中学校への準用規定
○ 学校教育法第51条 上記規定の高等学校への準用規定
○ 学校教育法第51条の9 上記規定の中等教育学校への準用規定
○ 学校教育法第76条 上記規定の特別支援学校への準用規定
○ 同法第81条第3項 上記規定の幼稚園への準用規定
 
 A 事務職員の職務
○ 学校教育法第28条第9項
  「事務職員は,事務に従事する。」
○ 学校教育法第40条  上記規定の中学校への準用規定
○ 学校教育法第51条  上記規定の高等学校への準用規定
○ 学校教育法第51条の9 上記規定の中等教育学校への準用規定
○ 学校教育法第76条 上記規定の特別支援学校への準用規定
○ 学校教育法施行規則第22条の5第3項
  「事務主任は,校長の監督を受け,事務をつかさどる。」
○ 学校教育法施行規則第55条   中学校への準用規定
○ 学校教育法施行規則第56条の3第3項   
  「事務長は,校長の監督を受け,事務をつかさどる。」
○ 学校教育法施行規則第65条の10第3項   中等教育学校への準用規定
○ 学校教育法施行規則第73条の16  特別支援学校への準用規定
 
 B 職員の服務規程
 ○ 地方公務員法第32条
  「職員は,その職務を遂行するに当たつて,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共 団体の機関の定める規定に従い,且つ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」
 ○ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律第43条第2項
  「県費負担教職員は,その職務を遂行するに当つて,法令,当該市町村の条例及び規則並び に当該市町村委員会の定める教育委員会規則及び規程(前条又は次項の規定によって都道府 県が制定する条例を含む。)に従い,且つ,市町村委員会その他職務上の上司の職務上の命 令に忠実に従わなければならない。」
 
【参考】
 新学校管理読本 P33〜37,P51〜P54
 

(3)担任等の校務分掌は,誰が定めるのでしょうか。また,校務分掌の意義は何でしょうか。法令上の根拠を示しながら説明してください。
 
【 解 答 】
  校長が定める。
  校務分掌は,法令上,校長による職務命令である。
 
【法的根拠等】
○ 学校教育法 第28条第3項                 [要覧 P.104]
  「校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。」〈準用規定;学教法第40条(中学 校),第51条(高等学校),第51条の9(中等学校),第76条(特別支援学校),第8 1条第3項(幼稚園)〉
○ 地方公務員法 第32条                   [要覧 P.1088]
  職員は,その職務を遂行するに当たって,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共 団体の機関の定める規定に従い,且つ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
○ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第23条第5号  [要覧 P.3510]
  教育委員会は,教育に関する事務で,「学校の組織編制,教育課程,学習指導,生徒 指導及び職業指導に関すること」を管理し,執行する。   
○ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第43条第2項  [要覧 P.3512]
  県費負担教職員は,その職務を遂行するに当たって,法令,当該市町村の条例及び規則並 びに当該市町村教育委員会の定める教育委員会規則及び規定に従い,かつ,当該市町村教育 委員会その他職務上の上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
 学校教育法施行規則 第22条の2              [要覧 P.143]
 「小学校においては,調和のとれた学校運営が行われるためにふさわしい校務分掌の仕組み を整えるものとする。」〈準用規定:学教法施行規則第55条(中学校),第65条(高等学 校),第65条の10(中等教育学校),第73条の16(特別支援学校)〉    
 
【解説】(「新学校管理読本」P.33,34) 
 学校は,一つの組織体である。したがって各学校においては,校務すなわち学校としてなすべき仕事を適正かつ効果的に処理するため,各教職員が仕事を分担し,その仕事を一定の秩序の下に処理する仕組みが整えられなければならない。
 校務分掌とは,このような観点から,校務を処理するための組織を整え,個々の教職員に校務を分担させることをいう。したがって,各学校においては,教育委員会が定める学校管理規則に基づいて校内規則の一種として,校務分掌規則あるいは,校務分掌規程といったものが定められ,これに基づき校務分掌の組織が整えられるとともに,各教職員に対し個々具体に校務分掌の組織のどこに位置付けられどのような仕事をするのかが定められるのが通例である。
 校務の処理にあたっての学校における最終的な責任と権限は校長が有するのであるが,多岐にわたる校務の一つ一つを校長が直接判断することは,実際上困難であるとともに,組織体としての効果的運営といった面からみても問題がある。したがって,校務の処理の内容に応じ,校長が直接判断するものと校長以外の者に判断を任せるものとを区分することが必要である。
なお,後者については判断する者,その際の拠るべき判断基準を事前に明らかにしておく必要がある。
〔校務とは〕       
  @ 教育課程に基づく学習指導など教育活動に関するもの
  A 学校の施設設備や教材教具に関するもの
  B 教職員の人事に関するもの
  C 文書の作成処理や人事管理事務,会計事務など学校の内部事務に関するもの
  D 教育委員会などの行政機関やPTA,社会教育団体などとの連絡調整に関するもの等
 

(4)校務分掌の具体的な担当者を定めるに当たって留意すべき点を,あなたの学校の校務分掌を参考に具体的に説明してください。
 
【 解 答 】
校務分掌を適切に行い,学校全体として校務分掌組織が有効に働くようにすることが必要である。教務主任,学年主任,生徒指導主事などの重要な主任が本来の趣旨に沿って適切に任命され,有効に機能しなければならない。主任はいわゆる中間管理職ではないが,適材適所の校務分掌が行われるべきであり,いやしくも主任が持ち回り的に教員の話し合いで決められたりすることがあってはならない。学校の組織を生き生きと活性化するためには,本人の能力,適性,経験,年齢などを十分考慮した適切な主任の任命など校務分掌が適切に行われなければならない。[新学校管理読本 P.546]
校長が自らの権限として責任をもって処理すべき事務,例えば,校務分掌の決定・・・に関することは,部下である一般教職員の協力を得て決めることはあっても,対等の立場にたって,交渉などによって決められる性格のものではない。[新学校管理読本 P.200,201]
 
 校長は,効果的かつ効率的で,調和のとれた学校運営が行われるよう,学級担任,教科担任をはじめとする様々な校務を,教育目標や地域の実情に応じて分担する必要があるが,具体的な担当者を定めるに当たっては,以下のような留意点が挙げられる(参考:中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方」(H10.9.21)P.39)。
 
 @ 教職員一人一人の専門性を生かして,その能力を最大限発揮させること。
  ・ 校務分掌の決定については,教職員の専門性やこれまでの経験を考慮し適材適所に配   置し,調和のとれた校務分掌を確立する。
  ・ 特定の教員に過度の負担がかからないように配慮する。
  ・ 教職員のコミュニケーションが図れるよう配慮する。
  ・ 教職員としての新たな力量が発揮・開発されるようにするため,校務が固定化したり,   偏ったりしないよう配置する。
 A 学校が地域の信頼を確保し,特色ある教育活動を展開するために,明確な教育方針の下  に組織的,一体的な教育活動を展開すること。
  ・ 校長は教育方針や学校経営の具体策を明確にし,教職員が組織の一員である自覚をも   たせる。
  ・ 学校経営上の努力点や具体策と関連を図った校務分掌を勘案し,各学年から配属する   など,全校的な体制を整備し,実態や効果等を定期的に検証しながら,教育実践の改善   を図るようにする。
 B 今日の学校が抱える様々な課題に対して地域や子どもの状況に応じて柔軟に対応するこ  と。
  ・ いじめや不登校など学校が抱える今日的課題や危機管理について,適正かつ柔軟に対   応できる組織体制を確立し,適任者を配置したり,スタッフを増やしたりするなどして   重点化を図る。
  ・ 外部関係機関や保護者,地域住民と適切に連携を図る担当者を位置づける。
 C 学校の裁量権限の拡大に対応して,学校の管理運営の一層の適正を確保すること。
  ・ 校長のリーダーシップのもと,学校運営を組織的・機動的に行うため,学校評価等を   活かし必要に応じて校務分掌の見直しを図る。
  ・ 学校の中核的存在としてリーダーシップが発揮できる主任を配置する。その際,本人   の意欲・意向・経験等を把握する。
  ・ 教職員にできるだけ権限を委譲し,権限と責任のバランスをとりモラ−ルを高める。
 

(5)校長が各教室の授業を見回ったり,教員に指導案を出させることができるか,法令上の根拠を示しながら説明してください。
 
【 解 答 】
  校長が各教室の授業を見回ったり,教員に指導案を出させることができる。
  学校教育法第二八条第三項には,「校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。」と規定されている。これにより,校長は,学校段階における最終的な責任と権限を有する者として学校運営上必要な一切の仕事についてみずからの責任と判断によって処理するとともに,上司として所属職員に対し校務を分担させ,また校務の処理の仕方について必要に応じ指示するなど職務命令を発することができるのである。
(新学校管理規則P40)
  このような校長の責任と権限に照らせば,校長が,個々の教員の職務の中心である授業が適切に行われているかを視察することは,何ら法的に問題はなく,教諭の行う教育活動に関しても指導助言は勿論のこと指示命令を行うこともでき,必要あれば,その方法や内容について改善を指示するなどの具体的指示を行うこともと当然の権利として行うことができる。
  また,指導案は,学校の教育課程を具現化し,指導のねらい,教材の時間配当,教授方法等を統一的に立案した授業に望む計画であり,現実の授業場面では,重要な役割をもつものである。校長は,学校の長として,教育活動が適切に遂行されているかどうかを常に把握する必要があり,しかも指導案の作成は,教育活動を実施する上でその必要があると判断すれば教員に対して指導案の提出を命じることができる。ただ,教員の自主性や創造性が尊重され,生き生きとした教育活動が展開されるような配慮が必要である。
  このことは,一方で,児童生徒や保護者・地域に対して説明責任を果たすことに繋がることになる。
 
【 法的根拠等 】
● 学校教育法
(職員)
第二八条(第四〇条,第五一条,第五一条の九,七六条,第八一条 準用する。)
B 校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。
● 学校教育施行規則
  (教育課程の編成) ※第五三条(中学校)
第二四条 小学校の教育課程は,国語,社会,算数,理科,生活,音楽,図画工作,家庭及び体育の各教科,道徳,特別活動並びに総合的な学習の時間によって編成するものとする。
● 学校教育法施行規則 ※第五四条(中学校)
(授業時数)
第二四条の二 小学校の各学年における各教科,道徳,特別活動及び総合的な学習の時間のそれぞれの授業時数並びに各学年におけるこれらの総授業時数は,別表第一に定める授業時数を標準とする。
● 地方教育行政の組織及び運営に関する法律
(服務の監督)
第四三条
二 県費負担教職員は,その職務を遂行するに当たって,法令,当該市町村の条例及び規則並びに当該市町村委員会の定める教育委員会規則及び規程(前条又は次項の規定によって都道府県が制定する条例を含む。)に従い,かつ,市町村委員会その他職務上の上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
● 地方公務員法
(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)
第三二条 職員は,その職務を遂行するに当たって,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。 
 【参考】
   ・ 新学校管理読本(P33〜P37,P40,P53〜P55,P543〜P547,P595)
 

(6) 次の権限は誰が有していますか。法令上の根拠を示しながら説明してください。
   @ 学校における教育課程を編成すること

 
【 解 答 】
 権限は校長が有する。
 教育課程の意義については,「学校教育の目的,目標を達成するため,教育内容を児童生徒の心身の発達に応じ,授業時数との関連において,総合的に組織は配列した学校の教育計画である」ということができよう。
 小,中,高等学校の教育課程については,教育基本法及び学校教育法に示された学校教育の目的,目標に従って,文部科学大臣がその基準を定めるものとされており(学教法二〇,三八,四三,五一の七,七三,七九),学校教育法施行規則で教科の種類,授業時数の標準等が定められているほか,教育課程の基準として各学校種別ごとに学習指導要領(幼稚園にあっては幼稚園教育要領)が公示されている。
 学校においては,この文部科学大臣が定める基準及び公立学校につい員会等が定める基準(地教行法三三)等に従って,地域や学校の実態及び児童生徒の心身の発達段階と特性を考慮して,適切な教育課程を編成することとなる。
(新学校管理読本P740〜741)
 学校において教育課程を編成するということは,法令において「校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。」(学教法第二八条第三項及び第四〇条)と規定されていることから,学校の長たる校長が責任者となって編成するということである。もちろん,これは権限と責任の所在を示したものであり,学校は組織体であるから,教育課程の編成作業は,当然ながら全教職員の協力の下に行わなければならない。
        (小学校学習指導要領解説総則P19,中学校学習指導要領解説総則P25)
【 法的根拠等 】
● 学校教育法
(職員)
第二八条(第四〇条,第五一条,第五一条の九,七六条,第八一条 準用する。) 
B 校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。
● 学校教育法
(教科)
第二〇条 小学校の教科に関する事項は,第十七条及び第十八条の規定に従い,文部科学大臣が,これを定める。
● 学校教育法施行規則
(教育課程の基準)
第二五条 小学校の教育課程については,この節に定めるもののほか,教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する小学校学習指導要領によるものとする。
● 小学校(中学校)学習指導要領 第1章総則 
第1 教育課程編成の一般方針
  1 各学校においては,法令及びこの章以下に示すところに従い,児童(生徒)の人間として調和のとれた育成を目指し,地域や学校の実態及び児童(生徒)の心身の発達段階や特性(等)を十分考慮して,適切な教育課程を編成するものとする。
● 地方教育行政の組織及び運営に関する法律
(教育委員会の職務権限)
第二三条
五 学校の組織編制,教育課程,学習指導,生徒指導及び職業指導に関すること。
● 地方教育行政の組織及び運営に関する法律
(学校等の管理)
第三三条 教育委員会は,法令及び条例に違反しない限度において,その所管する学校その他の教育機関の施設,設備,組織編制,教育課程,教材の取扱その他学校その他の教育機関の管理運営の基本事項について,必要な教育委員会規則を定めるものとする。(以下省略)
● 学校管理規則
 U 教育活動
 (教育課程の編成)
第二十条 教育課程は,学習指導要領並びに教育委員会の定める基準により,校長が編成をする。
2 校長は,前項の規定により教育課程における授業時数を定めるときは,別記様式第14号の2により教育委員会に届け出なければならない。授業時数の変更についてもまた同様とする。
 

  A 夏季や冬季の長期休業中における補助教材を決定すること
 
【 解 答 】
  権限は教育委員会にある場合(承認)と校長にある場合(届出)とがある。
  教材とは,教育の目的に応じて学習させる必要を認められる教育内容を直接表してい
る教科書,副読本,学習帳,映画等の教授及び学習の材料をいう。(新学校管理読本P747)
  児童生徒の実態に応じ,教科書を補うものとして補助教材が有効に使用されるときは,教育内容を豊かにし,充実させることになる。このため学校教育法二一条第二項は,「教科用図書以外の図書その他の教材で,有益適切なものは,これを使用することができる。」と規定している。しかし,これには法的な制約がある。すなわち,地方教育行政三三条二項は,「教育委員会は,学校における教科書以外の教材の使用について,あらかじめ,教育委員会に届け出させ,又は教育委員会の承認を受けさせることとする定めを設けるものとする。」と規定する。この規定に基づき各教育委員会は,学校管理規則等で補助教材の使用の扱いについての定めをするが,この規定は,補助教材のすべてについて,必ずしも教育委員会の承認や届出を要請するものではない。
  一般的には,学校管理規則では,補助教材の選定の基準を示すとともに,重要な補助教材(たとえば,教科書の発行されていない教科や科目などの準教科書)の使用については承認制をとり,副読本や夏休み帳などについては届出制をとるなどの定めをしているものが多い。
  学校管理者として特に留意を要することとは,教育の中立性の確保である。教科書は検定において教育の中立性に反しないか十分チェックを受けているが,市販の補助教材の中には,この点についてときに問題となるおそれのあるものがある。文部省の通達でも「学校における補助教材の選択に当たっては,その内容が教育基本法,学校教育法,学習指導要領等の趣旨に従い,かつ児童生徒の発達段階に即したものであるとともに,ことに政治や宗教について,特定の政党や宗派に偏った思想,題材によっているなど不公平な立場のものでないよう十分留意すること」(昭和49年9月3日,初中局長通知)が指摘されている。
  
【 法的根拠等 】
● 地方教育行政の組織及び運営に関する法律
(教育委員会の職務権限)
第二三条 教育委員会は,当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で,次に掲げるものを管理し,及び執行する。 
  六 教科書その他の教材の取扱に関すること。
  ● 学校教育法
    (教科用図書その他の教材の使用)
   第二一条 (第四〇条,第五一条,第五一条の九,第七六条 準用する)
     小学校においては,文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。 
A 前項の教科用図書以外での図書その他の教材で,有益適切なものはこれを『使
用することができる。
  ● 地方教育行政の組織及び運営に関する法律
    (学校の管理)
   第三三条 教育委員会は,法令又は条例に違反しない限度において,その所管に属する学校その他の教育機関の施設,設備,組織編制,教育課程,教材の取扱その他学校その他の教育機関の管理運営の基本的事項について,必要な教育委員会規則を定めるものとする。
   2 前項の場合において,教育委員会は,学校における教科書以外の教材の使用について,あらかじめ,教育委員会に届け出させ,又は教育委員会の承認をうけさせることとする定めを設けるものとする。
  ● 学校管理規則
   U 教育活動
    (教材の使用)
   第二三条 小中学校は,教育活動の一環として使用する教科書以外の図書,その他の教材(以下「教材」という。)で有益適切と認めるものについては,進んでこれを効果的に使用し,教育内容の充実を図るものとする。
    (教材の承認)
   第二五条 小中学校において教科書の発行されていない教科の主たる教材として教科用図書を使用しようとするときに又は道徳の教材として図書を計画的かつ継続的に使用しようとするときは,あらかじめ教育委員会の承認を受けなければならない。
   2 校長は,前項の承認を受けようとするときは,教育委員会が特に認める場合のほか,承認申請書に当該教材の見本を添えて使用しようとする日の30日前までに教育委員会に提出しなければならない。
    (教材の届出)
   第二六条 小中学校において次の各号に掲げる教材を計画的かつ継続的に使用しようとするときは,校長は,あらかじめ教育委員会に届け出なければならない。
     1 副読本,解説書,資料集,その他参考書の類
     2 各種ワーク・ブック(学習帳,練習帳及日記の類)
   2 前条第2項の規定は,前項の届出をする場合に準用する。この場合において「承認を受けようとする」とあるのは「届出をする」と,「承認申請書」とあるのは「届出書」と,「30日」とあるのは「7日」と読み替えるものとする。
 

  B 台風等の災害の際に休業とすること
 
【 解 答 】
  権限は校長が有する。
【 法的根拠等 】
  ● 学校教育法施行規則
   (非常変災等による臨時休業)
   第四八条(第五五条,第六五条,第六五条の十,第七三条の十六 準用する。)
        非常変災その他急迫の事情があるときは,校長は,臨時に授業を行わないことができる。この場合において,公立小学校についてはこの旨を教育委員会に報告しなければならない。
 

  C 性行不良の児童生徒の出席停止をその保護者に対して命ずること
 
【 解 答 】
  「性行不良による場合」は教育委員会が権限を有する。
【 法的根拠等 】
  ● 学校教育法
    (児童の出席停止)
第二六条 (第四〇条 準用する)
    市町村の教育委員会は,次に掲げる行為の1又は2以上を繰り返し行う等性    行不良であって他の児童の教育に妨げがあると認められるときは,その保護者    に対して,児童の出席停止を命ずることができる。
    1 他の児童に傷害,心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為
    2 職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為
    3 施設又は設備を損壊する行為
    4 授業その他の教育活動の実施を妨げる行為
A 市町村の教育委員会は,前項の規定により出席停止を命ずる場合には,あらかじ  め保護者の意見を聴取するとともに,理由及び期間を記載した文書を交付しなけれ  ばならない。
B 前項に規定するもののほか,出席停止の命令の手続に関し必要な事項は,教育委  員会規則で定めるものとする。
C 市町村教育委員会は,出席停止の命令に係る児童の出席停止の期間における学習  に対する支援その他の教育上必要な措置を講ずるものとする。
 
 
2 校長の裁量権限の拡大

(1)あなたの地方公共団体では,中央教育審議会答申で提言されたような学校予算の在り方に関する工夫が講じられていますか。また,すでに講じられていれば,その内容を紹介してください
 
【 解 答 】
 講じられている。
〈広島県福山市の場合〉
  個性や特色ある学校づくりが推進できるよう,本市では,特色ある教育推進事業(平
成13年から4年間)教育研究支援事業(平成17年41日から施行)を実施し,各
学校に予算を措置している。
○ 事業の趣旨
 学校が学校評価自己評価表に地域や実態に応じて設定した4つの重点目標(確かな学
 力・豊かな心・力量ある教職員・市民から信頼される学校)を達成するための研究推進
 に必要な経費を措置するものである。研究内容は,各教科・道徳・特別活動等や教科等
 外の領域・教育活動における,指導内容や指導方法の工夫改善,指導と評価の一体化,
 教科等外の領域・教育活動のあり方等である。
○ 事業の流れ
@ 各学校は,研究主題・設定理由・研究計画,予算要望等を記入し教育研究支援事企
画書を作成する。
A 教育委員会は企画書の内容を検討し,昨年度の実績(研究内容,予算執行実績)も
 参考にして,報償費・旅費・需用費を配分し各学校は計画に従って執行する。
 ○ 成果
研究公開等を実施する中で,その取り組みの過程や成果を広く発信し,研究成果等
  を市内全校に還元し,本市教育の質が向上している。
 
 

(2)多くの都道府県教育委員会の人事異動方針において,同一校に,一定年数以上在職する者は積極的に転任させる旨の規定が置かれています。このような計画的な人事異動は何を目的として行われているのでしょうか。
 
【 解 答 】
  平成10年の中央教育審議会答申で,教職員人事について,次のようなことが提言された。
 教職員人事については,学校間に異動が停滞し,学校ごとの教職員構成が偏ったものと
なっていたことなど人事のひずみを解消するため,年齢構成,経験年数,同一校勤務年数等に配慮した人事異動基準を設けるなどにより,計画的な人事異動が行われてきた。しかしながら,今後,校長が自らの教育理念や教育方針に基づいて教育活動を展開することを推進するため,教職員の人事異動に関する校長の意見ができる限り採り入れられるよう,人事異動基準やその運用について見直しを図る必要がある。
 
 本県の場合,今日の教育課題に的確に対応し,開かれた学校として県民の信託に応える
公教育を確立するため,校長を中心とした責任ある組織的な学校運営態勢を整備し,新た
な「新教育県ひろしま」の創造に向けさらに是正の徹底を図るとともに,教育改革を推進
する必要がある。
 こうした観点から,教職員の職能成長を図るなど人材育成を積極的に推進するとともに,
 それぞれが意欲を持ち,特性や能力を十分に発揮し,組織として機能する学校づくりに向 け,全県的視野に立って計画的に適材を適所に配置し,人事の刷新を図る。
 具体的な方針は次のとおりである。
 @広域人事の推進
全県的な視野に立って,適材を適所に配置し,広域にわたる人事異動を推進し,異動
した教職員が,新たな地域で新風を吹き込み,地域の方々と交流しながら,地域に根
差した教育活動を展開するするとともに,教職員の職能成長を一層図る。
A同一校在職期間の適正化
・ 同一校勤務10年以上の者は,特別な事情のない限り配置換する。
・ 同一校勤務6年以上10年未満の者は,積極的に配置換する。
 B人事交流の推進
  ・小・中・高等学校等の校種間異動,複数校兼務などを積極的に推進する。
  ・国・他県及び広島市の学校並びに行政機関との交流を積極的に推進する。
 C新規採用教職員の計画的配置及び異動
  ・新規採用後,同一校に4年以上勤務する者については,原則として他市町へ計画的に
   配置換する。
 
【 法的根拠等 】
 ○ 教育基本法 第16条第3項(教育行政)
    地方公共団体は,その地域における教育の振興を図るため,その実情に応じた教
   育に関する施策を策定し実施しなければならない。
 ○ 地方公務員法 第17条(任命の方法)
    職員の職に欠員を生じた場合においては,任命権者は,採用,昇任,降任又は
   転任のいずれか一つの方法により,職員を任命することができる。
○ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第23条(教育委員会の職務権限)
    教育委員会は,当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で,次に掲げる
ものを管理し,及び執行する。
   3 教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関するこ
と。
【参考】
 ○ 中央教育審議会答申(平成10年9月21日)「今後の地方教育行政の在り方について」
   第3章2 教育委員会と学校の関係の見直しと学校裁量権限の拡大
○ 平成19年度広島県公立学校教職員人事異動方針
 
 

(3)上記平成13年の「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」の改正はどのような趣旨でなされたものでしょうか。上記の中央教育審議会答申に示された基本的な考え方を参考にしながら,説明してください。
 
【 解 答 】
  この改正は,教育委員会と学校の関係を見直し,教職員の人事に関する学校の裁量権限
を拡大させることにより,学校の自主性・自立性を確立し,特色ある学校づくりを実現し
やすくするという趣旨でなされたものである。
校長の教育方針に基づく特色ある教育活動を展開できるようにする観点から,所属の県費
負担教職員の人事について,校長の意見具申ができる限り取り入れられるように工夫を講
じることが提言されたこと等を踏まえ,県費負担教職員の人事について,@任命権者であ
る都道府県教育委員会が,実際に教職員の服務を監督している校長の意見を考慮してより
きめ細かな人事を行うことができるようにするとともにA校長のリーダーシップの発揮の
観点から,校長の意見を一層反映できるようにする趣旨で改正が行われた。
 校長は意見具申権に内申の手続き上の重み付けがなされた趣旨を十分にふまえて,適切
な人事異動を心がけなければならない。そのことが,各学校の充実した教職員の整備につ
ながることになる。
 
【 法的根拠等 】
○ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第36条(所属職員の進退に関する意見の申出)
    学校その他の教育機関の長は…その所属職員の任免その他の進退に関する意見
を任命権者に対して申し出ることができる。
  ○ 同 第37条(任命権者)
    市町村立学校職員給与負担法第1条及び第2条に規定する職員の任命権は,都道
府県委員会に属する。
  ○ 同 第38条(市町村教育委員会の内申)
    都道府県委員会は,市町村委員会の内申をまって,県費負担教職員の任免その他
の進退を行うものとする。
  ○ 同 第39条(校長の所属職員の進退に関する意見の申出)
    市町村立学校職員給与負担法第1条及び第2条に規定する学校の校長は,所属の
県費負担教職員の任免その他の進退に関する意見を市町村委員会に申し出ること
ができる。
 
【参考1】「教育委員会と学校の関係の見直しと学校裁量権限の拡大」
  「今後の地方教育行政の在り方について」(中央教育審議会答申)
  教職員人事については,学校間の異動が停滞し,学校ごとの教職員構成が偏ったも
 のとなっていたことなど人事のひずみを解消するため,年齢構成,経験年数,同一校勤
 務年数等に配慮した人事異動基準を設けるなどにより,計画的な人事異動が行われてきた。
しかしながら,今後,校長が自らの教育理念や教育方針に基づいて教育活動を展開する
ことを推進するため,教職員の人事異動に関する校長の意見ができる限り採り入れられる
よう,人事異動基準やその運用について見直しを図る必要がある。
具体的改善方策(教育職員人事の在り方の見直し)
  オ 校長の教育方針に基づく特色ある教育活動を展開できるよう,「地方教育行政の
  の組織及び運営に関する法律」第36条及び第39条に基づく意見具申ができる限り取
り入れられるよう,人事異動の方法・手続き等に工夫を講じること。
 
【参考2】「教育を変える17の提案」(教育改革国民会議報告)平成121222
    学校や教育委員会に組織マネジメントの発想を取り入れる。
  学校運営を改善するためには,現行体制のまま校長の権限を強くしても大きな効果
 は期待できない。学校に組織マネジメントの発想を導入し,校長が独自性とリーダーシッ
 プを発揮できるようにする。組織マネジメントの発想が必要なのは,学校だけでなく,教
 育行政機関も同様である。行政全体として,情報を開示し,組織マネジメントの発想を
 持つべきである。また,教育行政機関は,多様化した社会が求める学校の実現に向けた
 適切な支援を提供する体制をとらなくてはならない。
 
 
3 主任制度・職員会議
  
 中央教育審議会「今後の地方教育行政の在り方について(答申)」(平成10年9月21日)において,次のように述べられています。〔30,39,40,41頁〕
○ 学校運営等に関わる現行制度やその実際の運用の在り方については,校長を補佐する
 学校の運営体制が十分ではなく,校長の権限と責任に基づく適正な学校運営が行われな
 い場合があるとの指摘がある。
○ 学校運営は,校長を中心としてすべての教職員がその職務と責任を十分に自覚し,一
 致協力して行われることが必要である。
○ 校務分掌については,各学校において,(@)教職員一人一人の専門性を生かして,そ
 の能力を最大限発揮させること,(A)学校が地域の信頼を確保し,特色ある教育活動を
 展開するために,明確な教育方針の下に組織的,一体的な教育活動を展開すること,(B)
 今日の学校が抱える様々な課題に対して地域や子どもの状況に応じて柔軟に対応するこ
 と,さらに,(C) 学校の裁量権限の拡大に対応して,学校の管理運営の一層の適正を
 確保することなどの観点から,学級担任,教科担任をはじめとして様々な校務を分担す
 る組織体制を整備し,効果的かつ効率的な学校運営を行う必要がある。
○ 主任制はこのような趣旨から導入されたものであるが,(中略)教職員団体等の強い
 反対運動があり,その後の主任手当の拠出運動などを伴って主任制に反対する運動が長
 い間継続されてきたことから,多くの学校で定着するまでにかなりの時間を要した。
○ 学校運営における職員会議の位置付けやその運営の在り方の現状については,(中略)
 (@)その運営等をめぐる校長と教職員の間の意見や考え方の相違から,職員会議の本来
 の機能が発揮されていない場合があること,(A)職員会議があたかも学校の意思決定権
 を有するような運営がなされて,校長がその職責を十分に果たせない場合があること,
 (B)校長のリーダーシップが乏しい,職員会議が形骸化して学校全体で他の学年や学級,
 教科などに係る問題を話し合うような雰囲気に乏しい,あるいは,運営が非効率的であ
 るなどの運営上の問題点が指摘されている。
  職員会議は,校長が主宰することとし,教員以外の職員も含め,学校の実情に応じて
 学校のすべての教職員が参加することができるようその運営の在り方を見直すこと。
 
具体的改善方策
(主任制の在り方)
ア 主任制については,学校の裁量権限の拡大に対応し,その責任体制を明確にするとと
 もに,学校がより自主的・自立的に教育活動を展開し,組織的,機動的な学校運営が行
 われるようにする観点から,校長を支えるスタッフとして全国共通に置くことが適当な
 ものと,学校の種類や規模,地域の状況等に応じて各学校ごとに置くことが適当なもの
 とを改めて整理し,その在り方を抜本的に検討すること。
(職員会議の在り方)
イ 学校に,設置者の定めるところにより,職員会議を置くことができることとすること。
ウ 職員会議は,校長の職務の円滑な執行に資するため,学校の教育方針,教育目標,教
 育計画,教育課題への対応方策等に関する教職員間の意思疎通,共通理解の促進,教職
 員の意見交換などを行うものとすること。
エ 職員会議は,校長が主宰することとし,教員以外の職員も含め,学校の実情に応じて
 学校のすべての教職員が参加することができるようその運営の在り方を見直すこと。

(企画委員会等の活用)
オ 各学校の実態に応じて企画委員会や運営委員会等を積極的に活用するなど組織的・機
 動的な学校運営に努めること。
  その後,平成12年4月に,「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令」が施行され,
 職員会議が法令上明確に位置付けられました。
 
 【参考】学校教育法施行規則
  第二十三条の二 小学校には,設置者の定めるところにより,校長の職務の円滑な執行に資
 するため,職員会議を置くことができる。
  2 職員会議は,校長が主宰する。
 (注) この規定が中学校,高等学校等について準用されている。(第55条,第65条等)

(1)主任の命課は,法令上どのような性質を有していますか。また,誰が命ずる権限を有していますか。
 
【 解 答 】
 @ 主任の命課については,教諭に対して校務分掌を命ずる職務命令という性質を有してい  る。
 A 命ずる権限については,服務監督権者である教育委員会ないし校長にある。
 
【 法的根拠等 】
 ○ 学校教育法第28条第3項
   「校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。」
 ○ 学校教育法施行規則第22条の2から第22条の6の各項
                       (小学校における主任設置に関すること。)
 ○ 学校教育法施行規則第52条の2,52条の3,第55条
           (中学校における主任設置に関すること。小学校の規定を準用する。)
 ○ 学校教育法施行規則第56条の2,56条の3,第65条1項
          (高等学校における主任設置に関すること。小学校の規定を準用する。)
 ○ 学校教育法施行規則第56条の2,56条の3,第65条1項
 (盲学校,聾学校,及び養護学校における主任設置に関すること。小学校の規定を準用する。)
 ○ 地方公務員法第32条(法令等及び上司の服務上の命令に従う義務)
 ○ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律第14条第1項
   「教育委員会は,法令または条例に違反しない限りにおいて,その権限に属する事務に    関し,教育委員会規則を制定することができる。
 ○ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律第33条(学校等の管理)
 ○ 山口県下松市公立学校管理規則第20条の1〜第23条の1
   「第21条及び第21条の3から前条までに規定する主任等は教諭のうちから,第21    条の2に規定する主任は教諭又は養護教諭のうちから校長が命じる
   「校長は,毎年度校務分掌を定め,所属職員に分掌を命じ,委員会に報告しなければならない。
【参考】
 主任の任命は,学校教育法施行規則第22条の2の規定に基づき,校務分掌として校長が所属職員に命じ,責任を明らかにする法令に規定されている校長としての職務の一つである。したがって,法令上,主任は校長の任命行為として行われるのではなく,教諭に対し,校長の発する校務分掌を命ずる職務命令としての性質を有するものである。
 主任の命課については,教育委員会が地域の実情等を踏まえて学校管理規則で定めることとされており,これは,主任の設置等が学校の「組織編制」に属し,学校の管理運営の基本事項に該当することから,主任の設置,職務命課方法等については,学校管理規則で定める必要があるからである。
 発令方式としては次の3形態が認められている。
  @校長の意見を聞いて教育委員会が命ずる方法
  A教育委員会の承認を得て校長が命ずる方法
  B校長が命じ,教育委員会に報告する方法
 これのいずれの方式をとるにしても,主任を命課するのは,県費負担教職員の任命権者である県教育委員会ではなく,服務監督権者である市町村教育委員会ないしは校長であるが,主任等の選任については,それぞれの職務を担当するにふさわしい専門的な能力をもった適格者が選ばれる必要がある。このため,主任等の選任は,最終的には調和のとれた校務分掌の確立の観点から,校長の権限と責任において決すべきものであり,職員会議にその責任をまったくゆだねたり,単なる持ち回りとするようなことは不適当である。
 

(2)主任制度及び主任手当の趣旨について説明してください。
 
【 解 答 】
 @ 主任制度の趣旨は学校の組織運営の実態に即して,調和のとれた学校運営が行われるよ  うふさわしい校務分掌の仕組みを整え,その職務内容を明確化することで,教育活動を活  発にし,教育水準の維持向上を図ることにある。
 A 主任手当の趣旨は,教諭として児童生徒の教育の職務のほか,各種の教育活動について  「連絡調整及び指導助言」という重要な職務を付加されることに鑑み,その職務の重要性,  困難性を給与上評価したものである。主任手当は,人材確保法に基づく教員に対する優遇  措置としての給与改善の一環として設けられ,昭和52年12月に成立した給与改正法に  より,昭和52年4月1日から特殊勤務手当として教育業務連絡指導手当(いわゆる主任  手当)の支給が適用され,業務に従事した一日につき200円が支給されている。
 
【 法的根拠等 】
 ○ 学校教育法施行規則第22条の2から第22条の6の各項
                       (小学校における主任設置に関すること。)
 ○ 学校教育法施行規則第52条の2,52条の3,第55条
           (中学校における主任設置に関すること。小学校の規定を準用する。)
 ○ 学校教育法施行規則第56条の2,56条の3,第65条1項
          (高等学校における主任設置に関すること。小学校の規定を準用する。)
 ○ 学校教育法施行規則第56条の2,56条の3,第65条1項
 (盲学校,聾学校,及び養護学校における主任設置に関すること。小学校の規定を準用する。)
 ○ 学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別   措置法(人材確保法)第3条(優遇措置)
 ○ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律第33条第1項(学校等の管理)
 ○ 一般の職員の給与に関する法律第13条第1項(特殊勤務手当)
    「著しく危険,不快,不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務で,給与上特     別の考慮を必要とし,かつ,その特殊性を俸給で考慮することが適当でないと認め     られるものに従事する職員には,その特殊性に応じて特殊勤務手当を支給する。」
 ○ 一般の職員の給与に関する法律第13条第2項
    「特殊勤務手当の種類,支給される職員の範囲,支給額その他の特殊勤務手当の支給     に関し必要な事項は,人事院規則で定める。」
 ○ 人事院規則9−30第26条の2
 ○ 山口県一般職の職員の特殊勤務手当の支給に関する条例
    特殊勤務手当の支給に関する規則第20条第1項 (教育業務連絡指導手当)
【参考】
 従来から,学校現場においては,校務分掌の連絡調整や指導・助言を行うに当たって,先輩教諭がリーダーシップを発揮し,学校運営組織に大きく貢献していた,いわゆる「主任」が自然発生的に設置されていた。
 このような学校現場の実態を踏まえ,「各学校が校長の指導と責任のもとに,いきいきとした教育活動を組織的に展開できるよう,校務を分担する必要な職制を定めて校内管理組織を確立すること」という中央教育審議会の答申(昭和46年6月11日 第22回)を受けて,昭和50年12月,主任の全国的な制度化のため,学校教育法施行規則の一部が改正され,昭和51年3月1日から施行されたことにともない制度化されたものである。
 主任は,いわゆる中間管理職ではなく,それぞれの職務に係る事項について,教職員間の連絡調整及び関係教職員に対する指導,助言に当たるものであり,当該職務に係る事項に関して,必要があれば,校長及び教頭の指示を受けてこれを関係職員に伝え,あるいは,その内容を円滑に実施するため必要な調整を行うことがその職務である。
 『中央教育審議会答申』(平成10年9月)
 「主任制については,学校の裁量,権限の拡大に対応し,その責任体制を明確にするとともに,学校がより自主的・自律的に教育活動を展開し,組織的,機動的な学校運営が行われるようにする観点から,校長を支えるスタッフとして全国共通に置くことが適当なものと,学校の種類や規模,地域の状況等に応じて各学校ごとに置くことが適当なものとを改めて整理し,その在り方を根本的に検討すること」
 
 

3)職員会議の法的性格とその根拠を,学校教育法施行規則の文言に即して説明してください。
 
【 解 答 】
 職員会議は,法的には,校長が職務を遂行するに当たって,それを補助する機関として位置付けられるべき性格のものである。
 
 <法的根拠>
 ○ 学校教育法施行規則第二十三条の二
  第1項 小学校には,設置者の定めるところにより,校長の職務の円滑な執行に資するため,職員会議を置くことができる。
  第2項 職員会議は,校長が主宰する。
 ○ 学校教育法施行規則第五十五条(中学校への準用規定)
 ○ 学校教育法施行規則第六十五条@(高等学校への準用規定)
 
  ・設置者の定めるところにより
    学校教育法施行規則を受け,職員会議に関する事項については,設置者(学校教育法第二条)の裁量にゆだねることとしている。そこで,地方公共団体においては,都道府県教育委員会,各市町村教育委員会が,学校管理規則に職員会議の設置を規定している。
 
  ・校長の職務の円滑な執行に資するため
    校長は,校務をつかさどり所属職員を監督する責任と権限を有しており(学校教育法二十八条B,第四十条,第五十一条,第七十六条,第八十一条B),学校運営上必要な一切の仕事は,学校段階においては,最終的には校長の責任と権限に基づいて処理されなければならず,また校長は,上司として所属職員に対し校務を分担させるとともに,校務の処理の仕方について必要に応じ指示するなど職務命令を発することができる。
 
  職員会議は,このような校長の責任と権限を前提として,その職務の円滑な執行を補助するものとして位置付けられている。
 
  ・校長が主宰する
    校長は,職員会議に職員を招集するだけでなく,自らの権限と責任において職員会議を管理し,中心となって運営するものであると規定されている。
 
【注】
  ○ 「職員会議の位置付けとその運営のあり方」第四次改訂版 新学校管理読本p48-50    文部科学省初等中等教育局 2004 
  ○ 学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について
    中央教育審議会答申「我が国の地方教育行政の今後の在り方について」(平成一〇年九月二一日)に基づき,「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令」(以下「改正省令」という。)が,平成一二年一月二一日文部省令第三号をもって公布され,平成一二年四月一日から施行された。
    その趣旨は以下の通りである。





 

 これからの学校が,より自主性・自律性を持って,校長のリーダーシップのもと組織的・機動的に運営され,幼児児童生徒の実態や地域の実情に応じた特色ある学校づくりを展開することができるよう,校長及び教頭の資格要件を緩和するとともに,職員会議及び学校評議委員会に関する規定を設けるものである。
 
    改正の趣旨として,特に,職員会議関係については,次のように示されている。










 

 職員会議は,校長を中心に職員が一致協力して学校の教育活動を展開するため,学校運営に関する校長の方針や様々な教育課題への対応方策についての共通理解を深めるとともに,幼児児童生徒の状況等について担当する学年・学級・教科を超えて情報交換を行うなど,職員間の意思疎通を図る上で,重要な意義を有するものである。しかしながら,職員会議についての法令上の根拠が明確でないことなどから,一部の地域において,校長と職員の意見や考え方の相違により,職員会議の本来の機能が発揮されない場合や,職員会議があたかも意思決定権を有するような運営がなされ,校長がその職責を果たせない場合などの問題点が指摘されていることにかんがみ,職員会議の運営の適正化を図る観点から,省令に職員会議に関する規定を新たに設け,その意義・役割を明確にするものであること。
 
【 法的根拠等 】
 学校教育法
  ○ 学校教育法第二十八条 B「校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。」
  ○ 学校教育法第四十条 (中学校への準用規定)
  ○ 学校教育法第五十一条(高等学校への準用規定)
  ○ 学校教育法第七十六条(盲,聾,養護学校への準用規定)
  ○ 学校教育法第八十一条 B 「園長は,園務をつかさどり,所属職員を監督する。」
  ○ 学校教育法施行規則第二十三条の二
  ○ 学校教育法施行規則第五十五条    (中学校への準用規定)
  ○ 学校教育法施行規則第六十五条    (高等学校への準用規定)
  ○ 学校教育法施行規則第六十五条の十  (中等教育学校への準用規定)
  ○ 学校教育法施行規則第七十三条の十六 (盲,聾,養護学校への準用規定)
  ○ 学校教育法施行規則第七十七条     (幼稚園への準用規定)
【参考】
 職員会議録の扱いについて
 ・職員会議が法的に位置づけられたことによって,職員会議録は公文書となる。
 ・会議録の公開請求については,地方公共団体の定める情報公開条例による。
 
 

(4)学校教育法施行規則の規定上「校長が主宰する」とありますが,「主宰」とはどういう意味か,「招集」との違いを考えながら説明してください。
 
【 解 答 】
 この場合,「主宰する」とは,議事を整理し,会議を進行させるほか,更に議事を進めるに必要な一切の処置をとる権限をもった校長が,みずから会議を管理しながら,議事を整理し運営していくという意味で用いられている。
 「招集」は,一般に,人を呼び集めることを言い,その意味は,構成員に集合を求める手続きをさすだけで,「招集」したものには,議事を進めるに必要な一切の処置をとる権限があるわけではない。
 主宰及び招集の法律用語は,「法令用語辞典第7次改訂版(高辻正己以下8名の共編)学陽書房 平成12年」によると,以下の通りである。
 
 ○ 「主宰」
 (1) 合議制の機関について,議事を整理し,会議を進行させるほか,更に議事を進めるに必要な証人,参考人,その他の関係人を喚問しこれらのものに質問し,又は資料を提供させる等,その機関の運行について必要な一切の処置をとる権限があることを表す用語である。
  (2) 自ら経営するあるいは自ら管理するという意味に用いられた例もある。(p360)
 
○ 「招集」
    一般に,人を呼び集めることを言う(自衛隊法70・71)。合議体を成立させるため,その構成員に集合を求める手続きをいう場合に多く用いられる。
現行法上,皇室会議(皇室典範33),地方公共団体の議会(地方自治法101・102),協同組合の総会(消費生活協同組合法34〜37,農業協同組合法34〜36等),社団法人の総会(民法61・62),株式会社の株主総会(商法231〜237)債権者集会(破産法176)等について,その例があるが,国会については特に,「召集」という用語が用いられる。(p382) 
 
  また,平成12年1月21日の文部事務次官通知文教地第244号(学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について)によると,主宰については以下ように記され
 ている。

三 留意事項
 (職員会議関係)
(四) 職員会議は校長が主宰するものであり,これは,校長には,職員会議について必要   な一切の処置をとる権限があり,校長自らが職員会議を管理し運営するという意味で   ある。
 
【 法的根拠等 】
  ○ 学校教育法第28条 B 「校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。」
  ○ 学校教育法第40条   (中学校への準用規定)
  ○ 学校教育法第51条  (高等学校への準用規定)
  ○ 学校教育法第76条  (盲,聾,養護学校への準用規定)
  ○ 学校教育法第81条 B 「園長は,園務をつかさどり,所属職員を監督する。」
  ○ 学校教育法施行規則第23条の2 2「職員会議は校長が主宰する。」
  ○ 学校教育法施行規則第55条    (中学校への準用規定)
  ○ 学校教育法施行規則第65条    (高等学校への準用規定)
  ○ 学校教育法施行規則第65条の10 (中等教育学校への準用規定)
  ○ 学校教育法施行規則第73条の16 (盲,聾,養護学校への準用規定)
  ○ 学校教育法施行規則第77条     (幼稚園への準用規定)
 
 

(5)ある教員から「学校運営に関して職員会議を通じて民主的に決定していくべき」という意見が出されたとき,あなたはこの教員に対してどのように説明しますか。
 
【 解 答 】
 《説明するための環境づくり(職員の意見についての掌握,説明の場の設定)》
  1 意見を出した職員の考えを確認する。(意見についての意図,民主的に決定されて    いないと考える具体的な事例,他の職員の意見等)
  2 本件に関する教頭及び教務主任の考え方等を聞く。必要に応じて,本件に関する教  職員の意識調査を実施する必要も考えられる
  3 本件に関して,校長が説明する場を設定する。
   校長からの一方的な説明の押しつけにならないように配慮するためにも,「職員研    修」等の場を設定し,研修目的や職員の討議等の場も踏まえた取組を計画していく。









 

〈職員研修(25分間を設定した場合)の進行例〉
 @ 教務主任が本研修の意義と目的を説明する。(5分)
A 「職員会議の法的な位置付けや機能・役割について」,全教職員が法規 等を確認の上,その内容を発表し,併せて感想や意見を述べる。(10分)
       (学校教育法,学校教育法施行規則,鹿児島市立学校管理規則)
 B 教頭が学校教育法施行規則の規定に基づき「職員会議の法的性格」及び
  「職員会議の機能」について図解を交えて説明する。(5分)
C 校長が「職員会議の運営」についての自身の考えを説明する。(5分)
 
《校長の説明内容》





































 

 本校教職員の皆さんにおきましては,かねてから,本校の学校経営方針に基づき教育目標の実現を目指し,法令等を遵守しつつ,一人一人の創意を生かし,教育活動の充実及び生徒指導,保健指導,施設・設備の管理等,それぞれの校務分掌の担当はもとより,学校運営全般にわたり,適正かつ円滑な執行を心掛けた職務の遂行に務めていただいておりますことに深く感謝いたします。
 さて,本日は,皆さんの中から出ました「学校運営に関して職員会議を通じて民主的に決定していくべき」との意見を受け,「職員会議の法的な位置付けや職員会議の機能・役割」について,校長としての考え方を説明いたします。
 本校の学校運営に当たり,御理解いただきたいことは,皆さんの力をお借りし,皆さん個々の力や本校の組織力を最大限に発揮する中で進めていく教育活動等の学校運営すべてについて,最終的な責任と権限を全うすることが本校の経営責任者としての校長に課せられた職務であるということであります。
 その際,すべての事柄につきまして,校長一人で判断・決定することは到底不可能であるし,もしそのようなことをした場合に,校長自身の問題にとどまらず,職員の皆さん,そして何よりも子どもたちの教育にとって不利益な事態が起こらないも限りません。
 そこで,校長自身の意思決定をより適正なものとするために,皆さんの意見を伺ったり,議論を重ねたりする必要が生じる場合が考えられるわけです。そのような場合に,「学校教育法施行規則」及び「鹿児島市立学校管理規則」の規定に基づき,校長としての私の権限と責任を前提とし,職員の皆さんの意見を伺うなどして職務の円滑な執行を補助していく上から,職員会議を主宰するわけであります。その他にも,教育委員会からの指示や連絡事項,校長の職務上の判断や方針等を伝達し,皆さんにその内容を十分に理解していただく必要がある場合や,各校務分掌担当から校務についての報告,情報交換,諸行事の調整等の必要がある場合にも職員会議を主宰してきているところであります。
 ところで,職員会議で協議した事柄につきましては,その時々の情勢や法令等に基づき,最終的には校長自身の判断により決定しなければならないこともあります。そのことも十分御理解いただきたいと考えます。
学校において子どもたちは,一人一人が主役であり,かけがえのない存在です。そのかけがえのない子どもたちにとって,かけがえのない教職員たる皆さんが教育に携わるプロとして,それぞれの分掌の役割やその場その場の適切な判断のもとで教育活動等を豊かに創造してこそ本校教育が成り立っているのです。だからこそ,組織が一体となり,私も含め教職員一人一人が崇高な志とゆるぎない気力,信頼という固い絆で職務に専念していくことが最も重要です。
 今後,更に学校運営をより適正かつ効果的に遂行する上から,本校の教育方針,教育目標,教育計画,教育課題への対応等につきまして,職員会議において,建設的,創造的な議論を深めていただきますよう,御理解・御協力をお願いいたします。

 
【 法的根拠等 】
○ 学校教育法第28条
 B校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。
○ 学校教育法施行規則第23条の2(平成12年1月21日の省令により平成12年4月1日より施行)
  小学校には,設置者の定めるところにより,校長の職務の円滑な執行に資するため,職員会議をおくことができる。
  2 職員会議は,校長が主宰する。
   * 中学校等については以下により準用が定められている。
    ・ 学校教育法施行規則第55条…中学校
    ・ 学校教育法施行規則第65条…高等学校
    ・ 学校教育法施行規則第65条の10…中等教育学校
    ・ 学校教育法施行規則第73条の16…盲学校,聾学校及び養護学校
    ・ 学校教育法施行規則第77条…幼稚園
○ 鹿児島市立学校管理規則(職員会議)
  第42条 学校には,校長の職務の円滑な執行にするため,職員会議を置く。
  2 職員会議は,校長,教頭,学校栄養職員及び事務職員(学校事務職員を含む) をもって組織し,校長がこれを招集し,主宰する。
  3 前項の規定にかかわらず,校長が必要と認めるときはその他の職員を参加させることできる。
 
【例規】
 ○ 学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について
                     (平成12年1月21日文部事務次官通知)
  1 改正の趣旨〈職員会議関係〉
 職員会議は,校長を中心に職員が一致協力して学校の教育活動を展開するため,学校運営に関する校長の方針や様々な教育課題への対応方策についての共通理解を深めるとともに,幼児児童生徒の状況等について担当する学年・学級・教科を超えて情報交換を行うなど,職員間の意思疎通を図る上で,重要な意義を有するものである。しかしながら,職員会議についての法令上の根拠が明確でないことなどから,一部の地域において,校長と職員の意見の相違により,職員会議の本来の機能が発揮されない場合や,職員会議があたかも意思決定権を有するような運営がなされ,校長がその職責を果たせない場合などの問題点が指摘されていることにかんがみ,職員会議の運営の適正化を図る観点から,省令に職員会議に関する規定を新たに設けその意義・役割を明確にするものであること。
  2 改正省令の概要〈略〉
  3 留意事項〈職員会議関係〉
(1) 今回省令において規定した職員会議は,学校教育法第28条第3項等において, 「校  長は校務をつかさどり,所属職員を監督する」と規定されている学校の管理運営に関  する校長の権限と責任を前提として,校長の職務の円滑な執行を補助するものとして  位置付けられるものであることに十分留意すること。
(2) 職員会議においては,設置者の定めるところにより,校長の職務の円滑な執行に資するため,学校の教育方針,教育目標,教育計画,教育課題への対応方策等に関する職員間の意思疎通,共通理解の促進,職員の意見交換などを行うことが考えられる。
(3) 職員会議を構成する職員の範囲については,設置者の定めるところによることとなるが,教員以外の職員も含め,学校の実情に応じて学校の全ての職員が参加できるようその運営の在り方も見直すこと。
(4) 職員会議は校長が主宰するものであり,これは,校長には,職員会議について必要 な一切の処置をとる権限があり,校長自らが職員会議を管理し運営するという意味であること。
(5) 学校の実態に応じて企画委員会や運営委員会等を積極的に活用するなど,組織的, 機動的な学校運営に努めること。
 
【判例】
○ 職員会議は,校長の補助機関にすぎない。(平成5年3月22日福岡高裁宮崎支部判決)
 「校長は,右の全校的教育事項につき,意志決定するに際し,職員会議を自ら主催し,教員間における十分な討議を経ることが望ましいといえるが,校長が右の手続きを経ないでこれを決定したとしても,右決定が当然に違法・無効のものとなるものではない。その意味において,職員会議は校長の補助機関にすぎないということができる。」
○ 職員会議は校務の運営について最終決定する権限も有していない。(平成8年2月22日大阪地裁判決)
  「職員会議は・・・(中略)校務の運営について最終決定する権限も有していないのであって, 校長はその職を行うに当たって職員会議の意見を尊重すべきではあるが,これに拘束され るべきものとまでいうことはできない。」
○ 職員会議は法令上の根拠があるものではなく,決議機関ともいえず,校長の校務遂行上の補助機関と解すべきである。(平成10年4月14日横浜地裁判決)
 「学校において最終的な意志決定を行い,これについて,最終的な責任を負担するのは, 校務をつかさどる校長であって,職員会議は法令上の根拠があるものではなく,決議機関 ともいえず,校長の校務遂行上の補助機関と解すべきであるから,校長が校務を行なうに 当たって職員会議の意見を尊重することが望ましいとはいえても,その意見は校長を拘束 するものではなく,校長の校務として国旗を掲揚する権限に影響を与えるものではない。」
【答申】
 ○ 中央教育審議会答申「今後の地方教育行政のあり方について」〈平成10年9月21日)
  第3章 学校の自主性・自立性の確立について
  4 学校運営組織の見直し
 職員会議については,校長を中心に教職員が一致協力して学校の教育活動を展開するため,学校運営に関する校長の方針や様々な教育課題への対応方策についての共通理解を深めるとともに,子どもの状況等について担当する学年・学級・教科を超えて情報交換を行うなど,教職員間の意思疎通を図る上で,重要な意義を有するものであり,学校には職員会議が置かれるのが通例となっている。
 しかしながら,学校運営における職員会議の位置付け及び運営の在り方等については,法令上の根拠が明確でなく,学校管理規則における位置付けも都道府県,市町村によって異なるほか,次のような指摘がなされている。(@)その運営等をめぐる校長と教職員の間の意見や考え方の相違から,職員会議の本来の機能が発揮されていない場合があること,(A)職員会議があたかも学校の意思決定権を有するような運営がなされ,校長がその職責を十分に果たせない場合もあること,(B)校長のリーダーシップが乏しい,職員会議が形式化して学校全体で他の学年や学級,教科などに係る問題を話し合うような雰囲気に乏しい,あるいは,運営が非効率であるなどの運営上の問題点が指摘されている。このため,職員会議の法令上の位置付けも含めて,その意義・役割を明確にし,その運営の適正化を図る必要がある。
 
 
 

(6)あなたの学校における職員会議の運営状況を紹介してください。また,職員会議を適正かつ効率的に運営するために,どのような工夫・改善を行っているか,具体的に説明してください。
 
【 解 答 】
 《本校における職員会議の運営状況》
 
 












































 
事前の
教頭・教務との打合せ
・ 職員会議資料等の作成を指示
・ 職員会議の議題及び議事進行について の事前打合せを行う。(校長の考え,指 示等について共有する。)
・ 企画委員会の進行についての打合せ
○ 職員会議資料の作成を依頼  (前の職員会議で次回予告)
○ 職員会議資料を各主任を通し て,教務主任が集約し,校長・ 教頭と打合せを行う。


企 画
委員会



 

・ 職員会議の円滑な運営を図るため,事 前に議題や協議内容についての打合せを 行うために校長が招集する。(司会:教頭)
・ 校長,教頭,教務主任,生徒指導主任, 保健主任,各学年主任により実施。議題 によっては,提案者となる担当が要旨等 の説明を行う。

○ 各議題に関する担当主任の考 え方等を聴取する。また,各学 年での実施等に向けての課題等 について検討する。
○ 職員会議の円滑な進行を図る ための議事進行について打ち合 わせる。
設定



 
・ 定例の職員会議:原則として毎月1回

・ 臨時の職員会議:随時

 
○ 年度始,各学期末,年度末に 当たる月には2〜3回程度招 集する場合もある。
○ 懸案によっては緊急に招集す る場合もある。
時間
 
・ 定例:月曜日15:30〜17:00(90分)
・ 臨時:随時
○ 定例の場合は翌月の行事関係 が主となる場合が多い。
出席者

 
・ 市立学校管理規則42条の2に基づく職員
  (必要に応じてその他の職員も参加)
○ 定例は,校長,教員,学校栄 養職員及び事務職員の出席
 
会場
 
・ 原則として職員室
 
○ 学年毎に着席し,必要に応じ バズセッションも可能。
内容



 
・ 協議事項
・ 各分掌からの伝達,報告,連絡事項
・ 校長の指示,伝達事項
・ その他
 
● 各担当からの説明が長くなり すぎる場合がある。
● 建設的な意見交換ができず, 形式的な伝達で終わることもあ る。
司会



 
・ 教頭



 
○ 会議内容を周知し,会を円滑 に進行していくためにも,教頭 が司会を行うようにしている。
○ 校長の判断による決定事項の 確認が明確にできる。
     
記録
 
・ 原則として学年輪番制(週番の学年)
 
● 要点筆記がなされていない  こともある。
課題





 
○ 設定時間の厳守
○ 議題設定
○ 会議を開催する適切な会場の設定
○ 提案及び提案理由の説明の在り方
○ 発言の質の向上(建設的,創造的な意見を簡潔に発言)
○ 司会の在り方(効率的な運営)
○ 記録の在り方(要点筆記:学校評議員制度や情報開示請求の面から)
 
《適正かつ効率的な運営のための工夫・改善内容》
 1 事前打合会,企画委員会の充実を図る。
   事前打合会,企画委員会の役割や機能についての共通理解を図る。
   (効率的に,しかもしっかりとした審議ができる会の在り方を探る。)
 
 2 教職員の創造と提案を促す
  (1) 「今まで通り」の考え方・内容・方法ではなく,新たな考え方・内容・方法を積極的に取り入れた企画案の提唱
   (教職員に「自らも学校経営の一参画者」であるという意識を醸成していく。)
  (2) 子どもたちの実態や地域の実情に即した「創造」(教職員の抱いている教育活動改善 への思いや願い,アイデア)を「提案」(改善に向けて創造したことを実践に移すために,具体的なプランを全体に示すこと)していく体制を整えていく。
 
 3 教職員の一体感や所属感を醸成する。
  (1) 所属教職員の協力体制と協働体制を確立する。 
    職員会議は,学校教育の改善・充実を目指し,一つ一つの目標を実現したり,課題を解決したりする機能をもっている。目標や実現や課題の解決のためには,所属教職員の 協力体制と協働体制の確立が不可欠である。
    (協力体制:教職員相互の心情的な協力,協働体制:教職員の実働的な協力)
  (2) 研究授業を通して互いに苦労しながら協力したり,教育活動の中で新たな発見の喜びを味わったりすることにより,教職員自身が,共通体験を通して自他のよさや教師としての成長を自覚する場を設定していく。
 
 4 教職員の職員会議に対する意識を改革する。
  (1) 毎年,年度はじめに全教職員に職員会議の性格についての基本的な理解を図る。
  (2) 「校内職員会議運営規程」を新たに作成する。
    
   
    
    
(職員会議の運営規定に含む内容)
 規程制定の趣旨,職員会議の主宰者,職員会議の意義及び機能,職員会参
 加者の構成,定例会及び臨時会,運営(司会者,記録者),議案の上程手続 き,提案書の体裁,発言や会議参加の際の心得,議事録の整備,その他
  (3) 教頭は校長の指示のもと,議案の調整に当たる。また,教務主任は提案者から
   提案書の整理に当たる。
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
    
・ 会議の運営に関する研修の充実を図る。
・ 議案については,校長からの指示または教頭と相談のうえ,1か月前ま でにA4判1枚程度の「提案書」に提案内容をまとめる。なお,提案書に ついては,提案,提案理由(現状の分析,課題の設定,期待される効果具 体的な実施方法及び実施効果の評価方法等を明らかにし,必要に応じ,補 足資料を添付する。また,提案書及び補足資料については,所属学年や分 掌における審議を経た後,開催2週間前までに教務主任に提出する。
・ 一議案の提案5分以内,協議時間は15分以内を目指す。提案資料づくり に当たっては,概念図や写真やイラストを挿入するなど,「見やすく,分 かりやく」を心掛ける。
・ 発言については,質問と意見の区別をはっきりさせる。意見について, 冒頭で賛成,反対の意思表示をし,その理由や根拠を簡潔に述べる。
  「1発言につき1内容を1分以内で簡潔明瞭に発言」を心掛ける。
・ 時間厳守に努める。
(4) 司会は,教頭とし,記録は学年主任による輪番制とする。
(5) 教頭は,会議終了時に校長の判断による決定事項等の確認を行う。
(6) 議事録を整理するとともに,保護者や地域社会に対しても積極的な情報提供に努 める。
 
 
 
 
【参考】
 
〈職員会議の役割〉
 
 
 
 
 
 
 
 
〈校長の職務遂行上の補助機関としての役割〉
   1 縦の連絡調整機能
    ・ 教育委員会の指示・連絡事項を職員に伝達し理解させる。
    ・ 校長の決定・判断・方針等を職員に伝達し理解させる。
   2 横の連絡調整機能
    ・ 各職員担当の校務の報告,情報交換,諸行事の調整等を行う。
   3 校長の行う意思形成への参加機能
    ・ 校長の意思決定をより適正なものとするため,職員の意見を聞く等。
                             (新学校管理読本P50)