研修11日目 3月8日(木)                             


研修講師となるための基礎技術

    
教員研修センター研修企画課  山口 宏氏

研修の目標
研修の目的
1 知識・理念・概念等の理解
2 技術・スキル等の習得
3 問題解決能力の向上
4 行動・態度等の変容

  ここから目標(参加者がどのような状態になればよいか)をつくる。
  ※ 目標は状態(最終行動・最終状態)
      〜できる。 など

〈目標の例〉
 ・ 個に応じた指導法を理解できる
 ・ 学習意欲を高めるための具体的な手だてを理解できる。
  ↓
目標の細分化
  ↓
 レジュメ

 目標を細分化し、必要な説明や事柄を入れるとレジュメとなる。


研修プログラムの作成 
  教授ー学習の7段階
  (米心理学者 ロバート・ガニエ)
   @ 提示    − 提示することによって、学習者が何を学ぶかを認識する。
   A 動機付け − なぜ学ばなければいけないかを認識し、自覚する。
   B 注意    − 学ぶポイントとなることを学習者に提供する。
   C 習得    − 学習内容の習得の段階
   D 再現    − 練習問題を行ったり、事例研究を行ったりして、学習の定着を図る。
   E 転移    − 実際のケースで学習を深める。
   F 強化    − できばえを見る。評価。これによって強化される。

効果的な研修プログラムの配列
  認識レベルの配列
   @ 総論から各論へ
   A 抽象から具体へ
   B 既知から未知へ
   C 基礎・基本から応用へ

 習得レベルの配列
   @ 理解する;わかった
   A 納得する;なるほど
   B 実践する;できる
   C 応用する;成し遂げる

グループ活動
  研修が長期にわたる場合
   集団の成熟度に応じて次のように配列する
  第1期
    個人中心・一斉学習
  第2期
    集団相互、集団学習
  第3期 
    集団と個人、集団学習
  第4期
    個人中心、個別学習

効果的な研修プログラム
  @ 講義と演習等とのバランス
  A 参加型研修への工夫
  B 変化と楽しさ
  C 主体性と気づきの重視
  D 午前と午後を考慮する
  E 研修技法は目的ではない

主な研修技法

 1 講義法
 

@ 参加人数に関係なく、一つの場所で実施することができる。
A 短時間で多くの知識や理論、概念等を伝えることができる。
B どのようなテーマを対応して活用することができる。
C 参加者に内容をまんべんなく伝えることができる。
D 講師による話が主のため事前準備が比較的容易である。

 2 多人数討議法
  (1)シンポジウム ;公開討論会。一つのテーマに対し数人の講師が意見を述べる。

@ 参加者は同時に複数の専門家の意見や考えを聞くことができる。
A コーディネーターが、シンポジストの考え等を引き出していく形で進めることにより、テーマについてより深く追求することができる。
B 参加者はシンポジストに質問や感想、意見等を述べる形で討論に参加することができる。

  (2)フォーラム ;公開討論会。特定のテーマに対して情報を提供し、全体討議を行う。

@ 一定の情報提供の後、全体討議に発展させることによって、テーマについて広く情報交換し理解を深めることができる。
A 必要に応じ情報提供の仕方を工夫し、いろいろな形式のフォーラムを行うことができるため、研修に変化をもたせることができる。

  (3)パネル・ディスカッション ;代表討議法。

@ テーマに対して異なる考えや意見等を複数のパネラーから聞くことができる。
A それぞれのパネラーが発表した後、パネラー同士の討議によってテーマに迫ることができる。
B 参加者は、パネラーに質問や感想、意見等を述べる形で参加し、理解を深めることができる。
C パネラーを選定すれば、比較的容易に討論会ができるため、講義と併せて行うことによって研修内容を深めることができる。

 3 少人数討議法

@ 発言の機会が多く、自ら参加できるよさがあり、研修意欲を高めることができる。
A 参加者の相互交流が図れる。
B 自分の考えや意見を率直に述べることによって、情報や発想、価値観等の共有ができる。
C 話し合いの中から新たな課題等が見出され、新たな気付きが生まれる。
D 参加者の過去の経験や実践等を生かすことができる。
E 研修内容にかかわる考えや意見等を述べることによって、内容の理解を深めることができる。

  (1)自由討議法

@ 自分の考えや意見を自由に述べることができる。
A 幅広く意見等の交換ができ、話し合いに広がりや深まりをもたらす。
B 縛りがなく、リラックスした雰囲気で話し合いがなされる。

  (2)課題討議法

@ 当面する課題を討議のテーマとすることによって、課題解決の糸口を発見したり、方策を見つけたりすることができる。
A 課題意識を高め、実質的な問題解決能力を培うことができる。
B 参加者の知識や経験を生かして、課題解決策等を見つけることができる。

  (3)問題解決討議法

@ 日常の問題意識を高めることができる。
A 自ら問題を発見し、解決していく力を培うことができる。
B 様々な角度から考える発散思考の力が培われる。
C 簡潔にまとめ上げる収束思考の力が培われる。

  □ ブレインストーミング法
  □ ブレインライティング法
  □ KJ法
  □ 特性要因法(フィッシュボーン図) 
  
  (4)役割討議法 

@ 複数の役割から討議することによって、多面的な見方、考え方ができる。
A 役割に即した発言をすることによって、新たな気付きが生まれる。
B それぞれの役割や立場を理解することができる。
C グループ内での多様な意見交換ができ、討議の深まりや広がりが期待できる。

  (5)バスセッション

@ ブレインストーミング同様、四つのルールを守り、多くのアイディアを出すことができる。
A わいがや(わいわいがやがや)方式で自由に意見交換ができる。
B 参加者全員が発言し話し合うことによって参加意識が高まる。
C 少ない討議の時間でも有効かつ効果的に活用できる。

  (6)ポスターセッション

@ 発表内容が模造紙やパネルなどにまとめられているため、視覚的に捉えられる。
A 発表者は、聴衆との距離が近いため、理解されるまで何度も説明できる。
B 聴衆は、発表者との距離が近いため、質問しやすい。
C 発表者と聴衆の間で忌揮のない自由な意見交換ができる。

  (7)ディベート

@ 論理的思考力を培うことができる。
A 根拠に基づいた判断力を培うことができる。
B 情報収集能力を培うことができる。
C 考えや意見を伝えるプレゼンテーション力を培うことができる。
D 相手の考えや意見を聴き、理解する論理的な傾聴力を培うことができる。

  (8)対向討議法

@ 肯定側と否定側に分かれて話し合うことによって、議論が白熱し討議が深まる。
A 対面して討議するため、発言者の意見や表情に注目しやすい。
B ディベートと異なり双方の意見を尊重しながら話し合いを進めることができる。

 4 事例検討法(ケーススタディ)

実際の事例の場面に遭遇したときの当事者意識をもつことができる。
問題発見、問題分析、意思決定などの問題解決能力を培うことができる。
自分の経験をもとに討議することができる。
グループ討議や全体討議を通して、ものの見方や考え方についての理解を深める
ことができる。
自分の過去の対応等について振り返ることができる。
講師の助言等により適切な対応の仕方を身に付けることができる。

 (1)実例による検討法

@ 実例のため当事者意識が高まり、実質的な研修ができる。
A 問題発生の背景や原因を直接理解することができる。
B 過去の事例を扱うことから、適切な解決策や対応を学ぶことができる。

 (2)作成した事例による検討法

@ 事例を作成することによって様々な研修テーマに対応することができる。
A 意図的に問題場面を設定することができる。
B 問題分析等の問題解決能力に加えて、問題発見力や情報収集力を培うことができる。

 (3)インシデント・プロセス法

@ 事例提供者の資料の作成が容易である。
A 事例提供者に質問にしなければ必要な情報を得ることができないため、問題へび積極的なかかわりが期待でき、情報収集力も培うことができる。
B 原因究明や問題解決に必要な情報を、限られた時間の中で、質問によって得なにればならないため、的確な質問力を培うことができる。

 5 体験学習法

@参加者一人一人が直接体験を通して学ぶため、研修への能動的な態度が培われ、主体的な取り組みが期待できる。
A研修内容を易しいものから難しいものへと順次ステップアップしていくため、研修内容の定着度が高い。
B即活用できる実践的な内容を体得することができる。

 (1)実習・見学・訓練

実習・見学・訓練は、いずれも体験学習法の基本的なものであるから、それぞれの特徴、効果及び実施上の留意点を簡単に述べることにする。
@ 実習
 実習は、調理実習、絵画実習など実技を伴う教科別研修で多く行われている。最近では、教員が社会体験研修に参加し、実務経験を多く体得する機会もある。このような実習を伴う研修では、参加者が一定の手順に従って実技を体験することによって、実質的な研修ができるという効果がある。そのために、実習を行うに当たっては、いつ、どこで、どのような実習をどんな手順で行うかを前もって十分に検討しておく必要がある。社会体験研修などで、安易に受け入れ先にすべて任せるようなことは避けるべきである。
A 見学
 見学は、一見主体性がなく、物見遊山的であるが、参加者を集合研修から解放し、研修内容と関連する事物を実際に見聞することによって、研修効果を高めることができる。効果としては、講義や討議に関わる内容を、実際に確認することができ、実質的な効果が得られる。但し、その効果を得るためには、見学の目的を明確に示したり、何を見て、どのように感じたかなどを問うシートを用意しておくことが必要である。
B 訓練
 訓練は、実習の習得を高めるために何度も繰り返し実技等を行うことである。習熟を図るという意味では効果は大きい。しかしながら、参加者にとっては、多少の負荷を強いることが必要なため、目的や趣旨を十分に理解させることが肝要である。

 (2)フィールドワーク

@ 直接現地で調査、観察、体験することによって、より確かなデータや資料を得ることができる。
A 見て、聞いて、触れることによって、事象や事実の確認ができる。
B 現地での人々とのかかわりによって、意識や行動の変容が期待できる

 (3)プロジェクト法

@ テーマに対して、企画→実施→評価の一連の体験を通して企画力や問題解決能力を培うことができる。
A 自ら作成した計画を実践することにより、より実践的、実質的な研修ができる。
B 実践した結果を自らが評価することにより、新たな課題発見につながる。

6 シミュレーション技法

  (1)ローププレイング

実際に演じることによって
@ 理解していることを行動に移すことの難しさを知ることができる、
A 実質的な行動訓練を行うことができる。
B 当事者の考えや思いに共感することができる。
C 相手の気持ちや立場が理解できる。
D 演技者の自発性・創造性が高まる。
E 新たな気付きが期待できる。

ロールプレイングを観察することによって
@ 新たな気付きが期待できる。
A 今後の行動改善の手がかりをつかむことができる。
 ※ 行動や態度等の変容だけでなく、判断力等の問題解決力を培うことができる。

  (2)教育ゲーム

@ 楽しく、変化に富む研修にすることができる。
A 参加者に喜ばれ、意欲的、主体的な参加が期待できる。
B ゲームを通した擬似体験をもとに話し合い考えることにより、理解を深めることができる。
C ゲームを通して参加者同士の直接的なふれあいがあり、コミュニケーションを図ることができる。

7 その他の技法

 (1)理解促進テスト法(CC法)

@ テスト方式のため、参加者が緊張感の中で主体的に取り組むことができる。
A テスト方式ではあるが、個人で解答後、グループやペアで話し合し合いをするため、キーワードや重要事項に対しての意識を高めることができる。
B 研修内容の重点化を図り、確かな理解と習得につながる。

 (2)診断テスト・チェックリスト法

@ 研修テーマに関わる問題意識を高めることができる。
A 研修テーマに関わることや参加者自身を客観的に捉えることができる。
B 研修テーマに関して、具体的に考える視点や振り返る視点を明確にすることができる。
C 研修当日だけではなく、研修後の活用も容易であり、還元に役立てることができる。

 (3)キーワード法

@ 参加者が研修内容のキーワードを挙げることによって、参加者の全体的な理解状況が把握できる。
A キーワードに対する感想等を記述することによって、参加者の理解状況が把握できる。
B 事務局側でキーワードを示すことによって、参加者が研修の重要事項を把握することができる。
C 研修の振り返りに効果的である。