3月,卒業生にとっての最後の授業を行った。
(担任ではないのですが)
「命の授業」である。

「願いをかなえて!」
 参考資料
「教育トークライン」NO104向山氏の巻頭論文
「Make a Wish Japan」のホームページ

1 教え子の死を語る
1993年6月12日,この日は私にとって生涯忘れられない日となりました。 この日,私の教え子のKくんが鹿児島大学付属病院で亡くなりました。わずか11年の生涯でした。
病名は急性白血病です。
彼は修学旅行から帰ってきた次の日に緊急入院し,それから1週間後に亡くなりました。私はその間毎日病院へ行き,彼が元気になることを祈りました。
しかし,彼には既に意識はなく,私の励ます言葉は届かなかったのです。そして,6月12日に家族や親戚に囲まれて天に召されました。
私はその時の場面を今でもはっきりと覚えています。頭の中に映像として記憶しているのです。
彼が亡くなった瞬間,周りにいた家族や親戚はどのような状態になったと思いますか。想像できますか。みんな同じ状態になりました。もちろん私もです。想像したことを発表してください。

  全員膝をついて泣きました。いや,膝をついたというよりは腰が抜けたといった方がいいでしょう。叫びにも近い泣き声でした。親や親戚,教師にとって子どもを失うのはそれだけつらいことなのです。
  私は今でも思います。たとえ助からない病気でも彼に意識さえあれば,彼を励ますためにいろいろなことをしてあげられたのにと。

2 今回の授業の目的を述べる
そこで,今日は次のことについてみんなといっしょうに考えてみたいと思います。死寸前の方や重い病気で苦しんでいる方,心の病に苦しんでいる方に,私たちはいったい何ができるでしょうか。

3 自分なら何ができるかを考える
発問1 自分の大切な人が末期ガンになり,精神的にも肉体的にも苦しんでいるとします。あなたはその人を前にしてどんなことを考えますか。
指示1 どんなことでもいいです。考えたことをノートに書きなさい。

発表させる。
みなさんやさしいですね。すばらしい考えだと思います。

説明1 ところで浜松医科大学の永田先生は心療内科においては全国的に有名な方です。そのような患者も持ったときの永田先生次の方針は決まっています。それは,「絶対に,絶対に,絶対にあきらめない 」ということです。

発問2 あなたが医者なら,その後どのような治療をしますか。肉体的にも精神的にも大きな苦痛をかかえている人に,どんなことがしてあげられますか。  

指示2 どんなことでもいいです。考えついたことを3つノートに書きなさい。

発表させる。

  お医者さんしかできないことないこと,私たちでもできること、それぞれたくさんの意見が出されました。

説明2 永田先生は治療方法として3つの基本方針をもっています。
    第1は,痛みをとってやるということです。
    第2は,体力をつける薬を投与することです。
    この2つは医師でなければできません。しかし,ガンそのもの治療は行っていませんね。大切なのは,次の3つ目なのです。これは医師でなくても誰でもできることなのです。

発問3 この3つ目は何でしょう。あなたでもできることなのです。ヒントは,患者に生きる希望を持たせるにはどうすればよいかということです。

指示3 考えたことをノートに書きなさい。

発表させる

説明2 それは,病気が治ったら何をしたいのかということを本人と一緒に考えるのです。

そして,今できることを行動にうつすようカウンセリングすることなのです。この治療でガンが治った人がいます。永田医師は80歳の末期ガンのおばあちゃんを治療しました。その後,おばあちゃんは弟が死んだということもあって生まれて初めて北海道を旅しました。今までいがみ合ってきた人と楽しく暮らすようにもなりました。
こうしておばちゃんは優しい表情の人格に変化していきました。こうすると,「エンドルフィン」という脳内モルヒネよりもっとすばらしい「体内 モルヒネ」が生産されるのだそうです。死の寸前で体中にガン細胞が転移していたおばちゃんはどうなったのでしょう。
なんと,8年半も生きたのだそうです。しかも充実した人生を送りながら天寿を全うされたそうです。人間の可能性ってすごいですよね。 
             
4 「Make A Wish」を考える
 
実は,永田先生と同じような考え方で,難病と戦っている子どもたちに生きる希望をもたせたりや夢をかなえてあげたりする組織があります。その組織の名前は「Make A Wish」です。

説明3 「Make A Wish」の活動等の紹介

Make A Wishのはじまり。
アメリカのアリゾナ州にクリスという7歳の子がいました。クリスの夢は、警察官になることでした。しかし、その夢を叶えるには時間が足りなかったのです。
クリスは、白血病という病気だったのです。この少年の話を聞いたアリゾナ警察の警察官は、クリスを名誉警察官に任命することにしました。 (警察官のユニフォームを着たクリスの写真を提示)その5日後、クリスは亡くなりました。
クリスの夢の実現に関わった人は,他にも,大きな夢を持ちながら,残された時間が限られているために,夢の実現を見られない子どもたちがいるに違いないと考えました。
こうして設立されたのが「Make A Wish」なのです。
「Make A Wish」を日本語にすると,「夢をもつこと」「願いごとをすること」
という意味になります。
「メイク・ア・ウィシュ」で夢を叶えた4人の子ども達の写真を提示し、どんな夢を叶えたか説明する。
    
発問4 この20年間で、「メイク・ア・ウィシュ」で願いを叶えた人は、何人いるでしょう。
  (1)600人 (2)6000人 (3)60000人(答えは3)

発問5 「メイク・ア・ウィシュ」の日本支部で、この6年間に夢
    を叶えた子どもは、何人いるでしょう。
    (1)100人 (2)500人 (3)1000人(答えは3)

「Make a Wish」は,日本ではまだ根付いていませんね。私たちもアリゾナ警察の方のように,難病で苦しむ子どもたちのために,その夢や願いがかなうようなお手伝いができたら、どんなにすばらしいことでしょう。  
きっと君たちにもできることがあると思いますよ。

4 自分の一言が相手を助けることについて考える。

以上のように,死寸前の方や重い病気で苦しんでいる方,心の病に苦しんでいる方に 対して,病気が治ったら,悩みが克服さたら,何をしたいかという強い希望を持たせることができたら,相手はどんなに救われることでしょう。
私は,もしもKくんに意識さえあればひょっとしたらと思い,大変悔しいです。みなさんは,私と同じようなことに遭遇したら,ぜひ相手を励まし続けてください。絶対にあきらめないで

発問4 最後に,もしもあなたの大切な人が末期ガンとなり死の寸前であるとします。その人はもしも自分の病気が治ったらあなたと一緒に旅行にいきたいと言っています。その人に対して,あなたはどのような励ましの言葉をかけますか。
    
    発表させる。
   
    さすがみなさんです。これから多くの人を助けてくれることでしょう。