教育ルネサンス名古屋フォーラム 
 平成18年2月4日13:00〜 

土井が印象に残った言葉を書き留めてみます。

1 ビデオ上映 現役先生の「優れた授業を見てみよう」
(1)水上尊雄先生(岐阜県立大垣南高校、岐阜県指導教員)小学校英語
 ゲーム&クイズで楽しみながら、知らず知らずのうちに英語に親しませる授業。「教師自身が楽しんで、わかってもらえる喜びをかみしめながら、一生懸命さで補う。」という言葉が印象的。

(2)植松浩二郎先生(愛知県小牧市教育委員会指導主事)
 実験の結果を明日以降に伝えるには記録するしかない。図と言葉で、よく見て、濃い鉛筆で、一本の線で書く。「概念づくりを目標にしている。概念は個々の現象を言葉にしたもの。だから言葉にこだわった。」見たものを言葉で伝える表現力へのこだわりが印象に残った。

(3)神戸和敏先生(愛知県小牧市小牧中学校) 
 学校力とは、一人ができるのでなく、みんなができることが大事。数学科で話し合っていたことなのでまねしてみた。
 子ども同士やりとりできるためには何が大事か?グループを作るときに、男子同士が対角線になるようにする。関わり合いを作るには座席の工夫が大事。
 教師は講義をするのではなく、子どもの言葉をつないで聞く。
 生徒が詰まったときに、教師がすぐに手を貸さない。なぜ?教師が答えを言うと、他の生徒の意見を聞かなくなる。待ちもあるし、生徒に返すこともある。それをコントロールするのが教師。先生がおいしいところを持っていかない。
 やらなければかわらない。見なければ変わらない。学校でどう取り組んでいくか、それがシステムづくり。
 
2 達人の授業を見てみよう
(1)中学校国語(一宮市立中部中学校、伊藤彰敏先生)☆ 深い教材研究と言葉を大切にした授業
 五感と対比を読み取りの方法と考えている。読む方法を授業の中で教えていく。はじめに言わせて、書かせた。おさえたいことは、各自に書かせる。○をつけていったのは、この1時間で意識づけたいこと。印象批評ではなく、書いてあることを根拠にして読む子を育てたい。事前の教材研究は、この俳句のことをすべて目を通す。実際にシミュレーションして、つまずきの場を見つける。
 
(2)小学校算数(豊田市立堤小学校、和田裕枝先生)
 テンポがよい。声の強弱、引きつけ、乗せる力は抜群。
 繰り返しの中で基本を押さえている。
 「人の授業が再生できるかどうかがポイント。再生できるようになると、授業のレベルが上がる。(志水)」
 小学生の場合は、挙手だけが子どもの声ではない。大人でもそうだが、手がうごたり、表情も子どもの声。4月に絶対みんなを見ていると約束。首を傾げるのも、うなずくのも、手を挙げるのと同じ立派な発言。授業で子どもが発したもの、無駄はない。無駄にするのは教師。無駄にしないようにすれば、素直に出力する。
 イメージから抽象化への道筋をつけられるのは教師だけ。
 教材教具は完成していないものを使う。時計は円を書く。ないものを教えて?というといろいろ言ってくれる。未完成型を出して、子どもたちと 言うようにする。2週間で仕上げる。今年の先生は何言ってもいいと2週間で思わせる。
 教師主導だが子どもの脳は常に動いている。何を言っても、すぐにほめてくれる安心感を与えている。
 今日で最もインパクトがあった。
 
3 パネル討論
「大村はま国語教室の会」事務局長 苅谷夏子氏    
愛知教育大学教授 志水 廣 氏
NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事 大西貞憲氏    
コーディネーター 勝方信一

勝 優れた授業は生徒にとってなんなのか?

苅谷 大村はまがすぐれていたのは、優れた価値を伝えることを全身を持って請けあってくれた。学ぶことのとおもしろさ、おもしろさを日々与えてくれた。学ぶことのレベルが深い。表層で請け負うのではなく、一生の芯になるような力があった。国語は、どんな子でも一人前にはなせる。だから、かえって難しい。教師が教師として示せるのは、神髄を示すこと。そうではないとついてこない。要所要所で、言葉を飲み込む体験をすると、よしという姿勢ができてくる。言葉を学ぶ器ができてくる。
 「〜しなさい」でなく、自然に子どもが動くような働き掛けができて、はじめて教師の技。
 作文指導では、A〜Gを生徒が作文に書く。教師はそう思ったら、○で囲む。そう思わなかったら、チェックを入れる。Gの時、教師生命をかけて、自分の意見を書く。熱い熱で請け負うのではなく、技の問題。熱意とは別に、クールな教師の技を同時に持つ。

志水 大村は教えることは教える。学力観は揺れているが、本来、授業は変わらない。セミナーで技術を学び、不安を解消したい。  

勝 簡単に、なぜ、今教師力なのか?

志水 不安がある、どうすれば身に付くのかわからない。習熟度別では、平等に教えてくれるのか?文句が出ないのか。だから、個々の教師力が大事。
苅谷 教師の相対的価値が下がっている。そこで、教師力が重要になる。

志水 一瞬をとらえて、受容的に肯定できるか。それが今の教師はできない人が多い。想定外のことが起こったときに固まる。子どもの発言に価値付けできない。

大西 価値づけるときの価値観がなければしゃべれない。子どもの授業参観でもあった。ライブでどう切り返すのか、どう育てたいかの明確な価値観がなければ子どもは育たない。

勝 どんな子どもを育てたいか

苅谷 言語活動全般は国語教師が育てる。言葉の力は、人の一生の宝で力、武器、なくてはならないもの。国語力は一生。守備範囲を責任を持つのが教師としての力。 

志水 自分で考える子を育てたい。

大西 答えがわからないところで、自分で答えを見つけるのが生きる力。失敗から学べる力。人から学ぶ力。勝 教師にどういう力が求められるのか、どうすればいいのか?

苅谷 大村はなくなる4日前まで教材研究をしていた。月に3万円の本を買って読み続けていた。その姿は、必ず伝わる。勉強するしかない。出版不況といわれた。最大の客は教師だった。その層に本が動かなくなった。それが問題。どんな力が役に立つかわからない。泥臭い努力。自分の足で切り開いて問題を解決する子を育てたい。その前にはずせない基礎がある。勉強の我慢の部分を先生が一緒に背負ってあげないといけない。独自なことをする前に、しっかりと勉強しろ。基礎なしで、上に積めない。おもしろいと言える前のつまらない所を勉強する。どうやって有意義に積ませることができるか
志水 授業力の定義
 授業力 = {教材は握力 × 子どもは握力 × 指導技術力}× 精神エネルギー 精神エネルギーが高い人 きちんと受け止めることができる人=毎日の授業が楽しい
 教師は20年やってもうまくならない。工夫し、変わったことを自覚し続けなくては。
1 ○付け方法は一瞬で情報をつかみきり返す力で訓練すれば伸びる。そうしないと机間散歩。
2 再生能力 「なるほど、○○なんだね」
 それぞれの教師が個性豊かにやったほしい。その前に技を身に付けてほしい。それをセミナーでやる。

大西 きれいな言葉でなく、具体的にしてほしい。子どもががんばるのではなく、どうやったらがんばっていると思うか。ほめていない。具体的に100個ほめたいことをまず書く。こうなってくれたらうれしいことを具体的に言う。それから授業。9割5分失敗するが、失敗しながら力を付ける。
 
4 質疑応答 
Q 想定外の子がどういう風に引っ張っていくか。指導力不足の教師に当たったときの対処。
A ADHDとかの子に対しては、参加できるところから始める。すぐにできる子には、だれとだれの違いを比べて言いなさい。まとめて言いなさい。それをほめる。たった1回の意見だけど、10回分の価値があるね。とほめる。
 子どもを受容する方法で、1秒でもいいから数学のことを考えてほしい。
 時間数は限られている。減った分は密度を上げればよい。そうしなければ、土曜日や夏休みにも授業することになる。まずい料理はいくら食べてもだめ。共通は、授業で勝負。

苅谷 言葉が子どもの胸に沈むためにかかる時間がある。テンポで引っ張れない授業もある。文学の授業は、シーンという瞬間があっても当たり前。緊張感のある沈黙。鉛筆も動かさないが、頭が動いている授業も見とれるようになってほしい。 

志水 教師を育てたい。そのためのシステム作り。  

大西 がんばればいいのではない。無駄な努力はいくらやっても無駄。子どもに届いているかをふりかえってほしい。