平成18年度丹葉地区第5回初任者研修会
                            平成18年7月24日(月)
                            犬山市福祉会館
 
授業で役立つ指導の技術と考え方48
                                    土井 謙次
 
みなさんはプロの教師です。今回の研修で実際に使った(使いたかった)、プロ教師として必要な指導の技術と考え方をまとめてみました。追試して、自分なりの手法を確立してみてください。
 
1 怒らなくてもよい授業の技術を身につけよう!
 授業中に怒っても解決しない。現象は一時的に止まるがまた復活し、さらに前より悪くなるのが普通である。
 土井は、怒るときは「人命にかかわるとき、人権侵害のとき」だけと決めている。それ以外は、指導技術でカバーする。
 そもそも怒らなければいけないような状況にするスキをつくった教師の責任であることが多い。子どもを授業で夢中にさせれば怒る場面はなくなる。
 また、たとえ短所が多く長所が少ない子でも、長所を褒めていれば短所が徐々に減っていくものである。
 同様に、自分の力量不足を、子どもや家庭のせいにしないことも重要なポイントである。謙虚な教師が伸びる。
 
2 説明は数字を使う
 「これから3つ話をします」などと説明に数字を使うと、論点が整理され、話し手にも聞き手にもわかりやすい。聞き手を集中させる効果もある。
 また、統計データなどの数値は説得力を増す。ただし、生活実感としてとらえにくい数字は、具体的に何かに例えると効果的である。
 さらに、数字は子どもを動かす力をもっている。「教室のゴミを拾いなさい。」と「教室のゴミを3個拾いなさい。」で比べてみてほしい。具体的な指示は動きやすい。
 
3 指導技術の多くは集中化のため
 集中化とは、意識を一点に集めること。ここで紹介する指導技術の多くは、子どもを集中させるためのものである。逆に言うと、集中力を維持させられる教師は技術が高いということである。
 
4 うまく使おう、フラッシュカード
 カードは効果がある。集中させることができ、キーワードとしての押さえにもなる。配置によって、構造的に理解しやすくできる。よく使う用語はあらかじめ作っておくとよい。
 ただし、研究授業だけ突然使い出すのは逆効果。子どもはよく見ている。
 
5 「わからない」・誤答を大切にする
 子どもにとって「わからない」は飛躍のチャンス。大切にしてあげよう。誤答も責めてはいけない。「わからない」・誤答を大切にすると、子どもが安心して授業を受けることができる。
「間違えてくれてありがとう。これでみんなが伸びるよ」という気持ちで受け止めてあげよう。
6 子どもの心をもった大人に
 子どもは知的好奇心たっぷりでやってみたがり。そのような純真さ・遊び心をもつ教師こそが子どもを引きつける。子どもの目線で話をすることができ、子どもの気持ちを理解しやすい。
「子どもの心を忘れた大人」は子どもが離れていく。
 
7 「全員起立、○○できた人から座りなさい」
 一斉授業では大変効果的な指示である。子どもが集中する。進度がわかる。体を動かすことで、脳が活性化する。そのため眠気が覚める効果もある。
 時々、できていないのに座る子がいるので、その後指名して聞いてやることも大切な支援である。
 座るのが遅い子は真面目にやっている子なので、決して否定的な言葉をかけないこと。どうしてもできなければ、そっと肩をふれて小声で「座っていいよ」と言い、後ほど個人指導してあげよう。
 
8 発言の約束3つ 
 今回は、学校名と氏名を述べる。みんなの方を見て話す。一番遠くの人が聞こえるように話す、の3つを約束にした。
 「みんなの方を見て話す」は授業観の大きな転換になる。
 発言は、教師とのやりとりではなく、子ども同士のやりとりが基本。「遠くの人が聞こえるように」という指示も意識づけになる。
 発達段階によっては、「はじめに結論を述べて、その後にそう考えて理由を言いなさい。」などの約束も必要となろう。
 
9 聞く人の約束3つ
 発言者を見る、うなずく・もしくは首をかしげる(反応する)、拍手をする。
 発言者を見るためには、体の向きを変えさせてもよい。「話す人にはおへそを向けましょう」の指示がよい。うなずく・首をかしげるは、その後の教師の授業づくりに重要で、よく観察をしたい。拍手は、内容の賛否にかかわらず、その子なりに真剣に答えたものならすべてに送りたい。
 これで学級の雰囲気はよりよくなる。
 
10 隣同士で答えと理由を言う
 共に学び、共に高め合うことは、学校教育の真髄だ。単に知識を得るだけの場なら、学校の存在価値は薄い。共に学ぶ力を育てるためには、そのためのスタイルをとってやることが必要だ。隣同士説明し合うのは、最も簡単で、誰もが参加できる有効な方法である。毎時間、1回は取り入れたい。 
 「じゃんけんで負けた人が勝った人に説明しなさい」と言う指示は、中学生でも喜んでやる。
 
11 最後まで指示してから子どもを動かす
 子どもは同時に二つのことはできないと思った方がよい。動き出したら、指示をしても聞いていないものだ。指示は最後まで言ってから子どもを動かすべきである。
 そのためには、「○○しなさい。次に○○しなさい。」ではダメ。「しなさい。」に反応して動いてしまうからである。
 こう言う時は、「○○します。できた人は、その次に○○します。それができたら、○○して待ちましょう。それでは・・・・・・始め!」  
 終わったらどうするかの指示まですることも、とても大切なポイントである。
 
12 じゃんけんで発言者を決める      
 遊び心(ゲーム性)は教師にも子どもにも必要。授業に乗せるための重要な技である。
 授業日に、その番号の子を当てるのはよくない。当たる子が予想されて、他の子の緊張感をなくしてしまうためである。
 
13 授業の前半にできるだけ多くの子に発言させる
 カラオケで一度歌うとまた歌いたくなるように、授業でも一度発言すると、参加意欲が増す。授業の初めは簡単な問題で多くの子(中でも授業への関心の低い子)に発言させたい。
 子どもの意見をいちいち復唱する教師がいる。これはやりすぎると、教師の復唱だけ聞いて友だちの意見を聞かなくなってしまうしテンポも悪くなる。聞き取りにくい時、分かりにくい時、方向付けたい時に復唱してやろう。それ以外は、「なるほど」とうなずけばよい。
 
14 全員起立、小さな声で、(  )回読んだら座りましょう。
 ここでは、「小さい声で」というのがポイントである。「黙読」は、実際には読まない子が出る。悪気がなくても、文字をとばしてしまうことも多い。音読は、逆にうるさくなり思考をさまたげる。 
 たとえば「右を向いて1回、後ろを向いて1回、左を向いて1回読んだら座りなさい」と言う指示では、進度がよくわかる。子どもも喜ぶので一石二鳥である。
 子どもたちにズルする状況をつくらないのも大切な支援である。その方が、教師も子どもも幸せである。
 
15 立った声で、メリハリをつけて
 教師の声は、出来ることなら小さめがよい。その方が子どもが聴くようになる。逆に、大きすぎるのは子どもの集中力をなくす。時と場合によって、メリハリをつけたい。
 いわゆる「立った声」は、声量が小さくても良く通る。正しい口の形、呼吸法がポイント。正しい発声は教師の基礎・基本である。 
 
16 子どもを乗せるためにはゲーム&クイズ!
 今の子はテレビ&ゲーム世代。興味・関心を高める手段としては、ゲーム&クイズがとても有効である。知的な関心の向上は、その後で目指せばよい。まず、全員を土俵に上げることが私たちの仕事の第一歩である。ゲーム&クイズは右脳が活性化する。
 
17 時間を計る
 何事に於いても、時間を意識することは重要なことである。時間を計ると子どもの集中力が増す。ストップウォッチは、センスある教師の必需品である。
 
18 授業は見る&見てもらう
 授業がうまくなりたかったら、うまい授業を数多く見ること。そして、追試し、だれかに見てもらうこと。これにつきる。何でもそうだが、よいイメージをもつことが上達の第一歩。うまい授業を数見ることでセンスは養われる。
 また、そこで得たものは、自分でやってみてはじめて力になる。ぜひとも、誰でもいいから見てもらいたい。
19 力量よりも向上心
 初任者は教師としての指導技術が低くて当たり前。でも、子どもは、教師の力量よりも、前向きな向上心により惹かれる。指導力が多少弱くても若い先生が人気のある理由は向上心。気持ちのベクトルがどちらを向いているかは人の価値を決定づける。
 
20 「自信がない人からやってみよう」というと手が上がりやすい。
 なかなか意見が出ない時の指示。「自信のある人は後から聞くね。まず自信がない人から聞いてみよう。」と言うと急に手が上がる。もちろん、答えが間違っていても否定的な言葉がけをしてはいけない。手を挙げたことについて褒めてあげよう。
 
21 ロールプレイは具象化のための有効な手法
 ロールプレイの効果は多様だ。道徳などで多く見られるのが、当事者の役割を演技することで、心情を理解する手助けにするものである。また、プレゼンテーションとしても具体的で理解の助けになる。なにより授業に活力が生まれ、遊び心が入る余地があるのがよい。 
 
22  小学校(  )年生の子に説明するつもりで、説明してください
 「力をつけるためには誰かに教えればよい」とよく言われる。教えるためには、自分がわかっていないとできないからである。しかも、むずかしいことをそのまま伝えたのでは本当にわかっているかどうかがわからない。そこで、「小学生( )年生の子に説明するつもりで説明してください。」という指示が有効なのである。学年は、質問の内容によって変えればよい。
 
23 意図的指名には意味がある
 指名には、偶発的指名(じゃんけん・さいころ・番号など)、意図的指名(教師による指名)、立候補者指名がある。それぞれの長所を組み合わせて意図的にバランスよく使い分ける必要がある。
 なかでも意図的指名は、授業を構成する上での骨格をなすものである。事前に誰がどのような考えをもっているかを把握して、子どもの発言により学級全体の思考が深まるような順に意図的に指名していく。これが授業の醍醐味である。うまくいったときは教師冥利に尽きる。
これが授業のマネジメントである。
 意見を言いたくても勇気がなくて言えない子もいる。その子は指先や目など、必ず体の一部が反応する。見つけたらこちらから指名して発言できたら褒めてあげよう。
 
24 概念は教えられない。徐々に形作られる。
 概念は、言葉ではない。定義を暗唱しても、理解した(わかった)とは言えない。多くの事例や、操作を通して徐々に形作られるものなので、時間がかかる。焦ってはいけない。
 「知る」と「理解する」の間には、大きな距離があることを教師は理解しておこう。
 今回では、生涯学習のイメージをもち、ふくらまし、言葉を定義し、さらにクイズ、歴史的意味と、概念づくりの段階をいくつも踏んだ。そうして概念は作られていく。
 
25 大事な資料は事前には見せない
 いわゆるネタバレ状態では関心は低くなる。授業の中心資料は、見せ方、タイミングも大切な授業技術である。せっかくの資料である。最大の効果をねらいたい。
 「今から○○のヒミツを見せます」「これから見せる写真に答えが隠れています」などと言って見せるとさらに効果的!
 
26 資料は一部を隠してて提示する
 資料はいきなり全部見せるとそれで終わり。しかし一部を隠すことで、いっきに思考が働き出す。例えば詩なら題名を隠す、キーワードを隠す。統計資料なら、単位を隠す、タイトルを隠すなどで、子どもの脳みそが動き始める。知的好奇心を呼び起こす仕掛けをつくろう。
 このほか、「意外性」も子どもの興味を惹きつける。 
 
27 「指でなぞってみよう」
 動作化は集中化の技術の一つ。さらに体で学ぶとより定着しやすい。
 また、教師から全員の子どもの観察が容易である。たとえば、「多賀城を地図帳で探しましょう」と言う指示では探せたかどうかがわからない。「多賀城の上に人差し指をのせてごらん」で全員が探せたかどうかが7秒で確認できる。漢字の書き順は、全員で空書きすれば、間違いがすぐにわかる。
 動きのある授業は子どもを夢中にさせる。
 
28 資料は1枚をみんなで見て共通の土俵に乗せる。その後、個々で考える。  資料は個々に見るよりも、1枚の資料を全員で見る方が集中させられる。学級の一体感が生まれるとともに、全員の理解度を観察しやすい。指示も徹底する。
 ただ、個々の活動に移る時は個別の資料がよい。進度も見る観点も異なるからである。目的によって使い分けよう。
 
29 配布物を配るときは「どうぞ」「ありがとう」という習慣をつける
 プリントは最前列の人に渡し、後ろへ送るのはよく見る光景だ。そのとき、前の子には「どうぞ」、後ろの子には「ありがとう」と言わせたい。ちょっとしたコミュニケーションの場を生活のあちらこちらに仕組むことが雰囲気作りの秘訣である。
 
30 全員の目が集中してから指示を出す
 土井が授業を見る時の最初で最大のポイントがこれ。教師が話す時に、全員が教師に集中していることが、基本中の基本である。これは、全校の前で話す時も同じ。全員を語りで引きつけられるようになって一人前である。
 語りは、落語や漫談、政治家の演説などをいろいろ聴いて勉強してほしい。
 
31 指示は全員に出す
 30の他にも、指示の技術は多い。「指示は全員に出す」は、質問に来た子にいちいち答えていては収拾がつかなくなることがある。そのときは、一度活動を止めて、全員に指示した方がよい。その他、「手にものを持たせない」、「指示は1回で短く」、「指示の追加・言い換えはしない」などは、向山洋一氏の有名な指示の鉄則である。
 
32 座席表、4色ボールペン評価法
 評価は難しい。よく指導案には、「意欲的に○○できたか(観察)」などと書かれているが、書いた以上は全員を評価しなくてはならない。また、授業中の評価は極力短時間で行わないと授業の流れを止めてしまう。あなたはできるか?
 土井は、授業中は座席表を欠かさない。そして、4観点を4色のボールペンで印をする。
赤は関心、黒は知識などと観点の色を、各欄の上部がA、中央部がBなどと評価を決めて、ほとんど座席表をさわるだけである。何を見るかにもよるが、記録だけなら40人でも30秒とかからない。
33 授業を再現してみよう
 プロの棋士は、終えたばかりの棋譜を再現することができる。授業の名人も、子どもの発言を含めてその日の授業を再現できるという。しかし、土井はどうしてもできなかった。子どもの発言をその場ですべて記録するのは授業に支障をきたす。録音してテープ起こしするのも毎日では続かない。
 ところが、座席表にわずかでもメモをすると、授業を再現できることを発見した。発言順とキーワードをメモするだけよい。授業では座席表は手放せない。
 
34 授業構想は板書計画と座席表で
 毎時間指導案を作成するのは時間的に難しいときは、まず板書計画、主発問を考えよう。授業の骨格が見えてくる。
 授業の組み立ては、子どもの実態をもとに、座席表で構想しよう。「この子にこの意見を言わせたい。」「前時につまずいていたこの子ができるようになればOKだ。」これらが授業を評価する指標になる。
 
35 机間指導の基礎・基本
 座席表は机間指導の必須アイテム。机間指導の目的は?と聞かれたら・・・
・点検と診断・・・学びの準備や実態を把握する。ようするに1次評価。
・指導と助言・・・個々の実態に応じて個別的に言葉かけをする。主にC→Bにする。
・激励と評価・・・より高いレベルに上げるために励ましつつ、全員の実現状況を記録する。
         主にB→Aにしつつ、2次評価を記録する。
 目的意識を持って行うことが重要だ。
 
36 説明・指示は短いほどよい
 説明・指示は短いほどよい。長い説明は有害で、かえって定着度を下げる。よい授業は教師の話が短くテンポがよいので、この観点でも他の授業を見てほしい。
 
37 百聞は一見にしかず、百見は一体験にしかず
 これは子どもの課題でもあり、教師自身の課題でもある。子どもは聞いたことは忘れるが、見たものはある程度記憶に残る。しかし、一度体験したことはおそらく一生忘れない。授業には、効果的に体験的活動を組み入れてやりたい。 
 教師にとっても、体験したことは子どもに伝える力が違う。人生経験が豊かな人ほど、説得力のある教師になれる可能性が高い。生涯学習型教師はここが違う!
 
38 実物を見せる
 提示資料として、最も力のあるのが実物である。写真より模型、模型より実物がより真実を伝えるのは明白だ。メッセージ性の強い資料と言える。
 以前、日本石油(現 新日本石油)は、原油や重油・タービン油・軽油・ガソリンなどがビンに入った石油製品のサンプルを無料でくれた。原油に触れたり、臭いをかぐことで、学習への姿勢が全く変わったことが強く印象に残っている。 
 また、子どもたちには、できるだけ生のもの、本物を数多く見せてやりたいものだ。
 
39 何も見ない、何かを見せる
 もともと、子どもたちが調べたことを発表する時の約束としたのが「何も見ない、何かを見せる」である。
 「何も見ない」ためには、自分で理解しなければいけない。理解を超えるようなことは、調べ直すか、除外するよう指導すべきである。国語の苦手なゲーム好きな子が、そのゲームのおもしろさを何も見ないでスラスラ教えてくれた。だれでも、理解さえすれば、何も見なくても話せるようになるものなのである。子どもには原稿をもたせない方がよい。
 「何かを見せる」のは、集中化・具体化のためである。子どもの説明はどうしても教師ほどの要領を得ないため、聞く子を集中させ、わかりやすくするための手だてが必要だ。
 これらは、教師にも必要なことで、原稿を読むような話は、なかなか聞いてもらえない。
聞く人の目を見ながら語りかけることで、はじめてメッセージは伝わる。そして、時々何かを見せることで意識を集中させることができる。
 
40 自分に投資しよう。月に5000円は教育雑誌、教育書等に使おう!
 研修とは「研究」と「修養」のこと。研究は子どものためにするが、修養は自分のため。
 生涯学習型教師は、日々修養を積む。特に若い時、自分のお金を自由に使える時には、自分に投資しよう。少なくとも、教育雑誌や自分の専門誌に、最低月5,000円は使いたいものだ。プロとしての必要経費と言える。
 旅行や各種講座、研究会への参加費も投資と考えればよい。
 
41 情報源をもつ
 「思考」とは、情報をつなぎ合わせること。思考力を高めるとは、良質の情報を増やし、それらを結びつけるバリエーションを増やし、最適な方法を選択するということだ。
 そのためには、日常的に幅広い最新の情報を得られることが必要だが、今の世の中、ネットを使えば、無料で、簡単に情報を手に入れることができる。その中から、必要な情報を取捨選択し、消化して、自分のものにすることが大切である。
 土井の情報源の一部を紹介するので、自分の情報源を作ってみていただきたい。
 
42 仲間をつくれ、ネットワークをつくれ
 人間一人ですることには限界がある。しかし3人集まり、それぞれが得たものを交歓し合うだけで、3人分の情報を得ることができる。その3人が、別のグループから得た情報を交換し合えば、ねずみ算式に増えていく。それがネットワークだ。
 かつては郵送で情報を交換し合っていたが、現代はネット社会。日本中にネットワークを張りめぐらし、日本中の情報を手に入れることもたやすい。
 自分の学校だけや丹葉だけに留まらず、日本全体に目を向けてほしい。異業種の友人をもつこともプラスになる。 
 
43 よき地域人に!
 PISA型学力観は、学習したことを家庭や地域で将来にわたって生かすことを前提としている。子どもたちをよき地域人に育てたい。そう考えると、学校と家庭・地域との協力は今後ますます必要である。ぜひとも子どもたちと地域をつなげる仕掛けを考えよう。
 また、生涯学習型教師は、学区住民とのコミュニケーションを大切にすると同時に、自分の居住地域のよき地域人でなくてはならない。地域の団体(スポーツや芸術など)に所属すると仲間づくりも広がる。生涯学習は、生き方だ。
 
44 人間、楽(らく)したくなった時が分岐点 
 人間、楽な方が良いに決まっている。
 初任者のうちはそんなことを考える暇はないが、少し慣れてくると楽したいと考えるようになる。ここが教師力が伸びるかどうかの分岐点だ。
 単に「楽しよう」ではなく、「楽して子どもの力を付けよう」と考えよう!そこに、技術向上の余地が生まれる。
 教育技術が身に付くと楽になる。その分余裕が生まれるので、もっと工夫しようと思う。そうして教師力はついていく。
 
45 子どもを伸ばす教師のあいうえお
 あ;明るく   … 文字通り、明るいこと。
 い;生き生きと … 活動的、行動的と言うこと。
 う;美しく   … 無駄がなく、スマートというニュアンス。
 え;笑顔で   … これは大切。
 お;おもしろく … 遊び心と工夫
 これが、子どもを伸ばす教師のあいうえお
 かきくけこになると
 堅い、厳しい、苦しい、権威的、こわい  「子どもを萎縮させるかきくけこ」になる。 
 
46 授業にはふり返りが必要
 授業の最後には「ふり返り」を行いたい。初めは、次のような型に当てはめて書かせればよい。短時間で行いたい。
 「私は、〜という課題について、初めは(  )と思っていましたが、今日の授業を受けて
(  )つわかりました。一つ目は、〜。…」
 教師は、そのふり返りを把握し、最低1人、できれば2人指名したい。最後には、よく理解している子を指名することで、全体のまとめとしたい。
 
47 延長授業は子どもの権利を奪う
 延長授業は、そのほとんどが失敗授業。しかも、子どもの休む権利を奪っていることを自覚するべきである。
 そのためには、チャイムが始まる前に教室で準備をし、チャイムと同時に授業を始める。常に時間を意識し、時間をかける部分とそうでない部分のメリハリをつける。最低5分前にはまとめに入り、ふり返りを行う。できれば、チャイムが鳴る前に授業を終える。そこにプロ教師としての美学がある。
 
48 時間はつくるもの
 1日は24時間しかない。その時間をつくり、有効に使うのも教師力(人間力?)である。
 事務仕事や文章作成は、自分のスキルを高めれば大幅に短縮できる。浮いた時間を自分の幅を広げるために有効に使おう。
 ビジネス書には、時間を有効に活用する術が書かれたものがいろいろとある。参考にしたい。
 
 以上です。十分にかみ砕いて、9月以降の授業に生かしてください。