第10回エネルギーシンポジウムIN名古屋(2000.1.30)報告

 参加者は,土井,高橋(木東小),吉田(古西小),吉田,佐竹,江口,奥村(藤里小)〔敬称略〕でした。

 まず,名工大教授の犬飼英吉氏より「エネルギーと環境問題」という題目で講演がありました。

・ 現代はトリレンマである。すなわち,経済発展と,資源・エネルギー・食糧問題と, 地球環境問題というのは相互に密接に絡み合っており,どれかを解決しようすると,また新たな問題が発生するという構造になっている。
・ 日本のエネルギー自給率は20%(うち原子力12%),実質8%

1 世界のエネルギー資源はどのくらあるのか
・可採年数
石油   46年
石炭  231年
天然ガス 65年
ウラン  43年
高速増殖炉でプルトニウムのリサイクルをすれば,数千年

2 世界は膨大なエネルギーを消費している
・1997年に世界で消費されたエネルギー(原油換算で)
 85.1億トン,一人当たり約1.4トン
・日本は5.1億トン,一人当たり約4トン(世界の年間消費量の6%)
・戦前の1年分は現在の1週間分に相当,現在の1年分は戦前の約40〜50年分

3 エネルギーの大量消費によって生じる地球環境問題
・オゾン層の破壊 ・地球温暖化 ・酸性雨 ・有害廃棄物の越境移動 ・海洋汚染 ・野生生物種の減少 ・熱帯林の減少 ・砂漠化 ・開発途上国の公害問題
・この中で対策が急がれるのは地球温暖化と酸性雨
・どちらも化石燃料の大量消費が原因。
・温暖化で一番心配されるのは,急激な環境変化に対応できない農業生産の低下による食料飢饉。(日本の食糧自給率は約30%)
・CO2対策の困難さは,「物を燃やして熱エネルギ−を得る」という発想を転換しなければならないところにある
・今できることは省エネ,原子力発電

4 新・省エネルギー技術はどの程度期待できるか
・NEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)による研究
@ 太陽光発電 2,000万kw(晴天時,直射日光下で日本の全戸の屋根に太陽電池を設置) 全国の15%程度。設備費が500〜600万円。今後の研究開発の余地
A 風力発電  名古屋のテレビ塔を利用しても,風速毎秒15mで4000kw程度。希薄,        間欠的なエネルギー。大規模発電には向かない 。
・新エネルギーを量とコストの点から比較して,現在,石油に代替するものはない。
・省エネは必要不可欠だが,温暖化対策の決め手にはならない。
5 まとめ
・今や日本はエネルギーの安定供給と地球環境問題から,原子力発電を抜きに考えること はできない。
★「原子力」に対する風評と誤認
・(例)「もんじゅ」の事故 ナトリウムもれ,放射線はもれていない
・放射線の量が問題 
自然の状態 1年間に1ミリシーベルト
 広島,長崎では一瞬のうちに,7,000ミリシーベルト
 JCO事故では,12,000ミリシーベルト
・チェルノブイリ原発事故
 死者31人

◆原子力発電のメリット
 ・二酸化炭素,硫黄酸化物,窒素酸化物を出さない
 ・97%リサイクルが可能
◆原子力発電のデメリット
 ・放射性廃棄物を出すこと

 次に,6人の方より授業実践報告がありました。
基調授業発表として,JCO臨界事故を題材にしたもの。放射能と放射線の違いを子どもに知らせ,簡易放射線測定器を用いて,身の回りの放射線を測定し,それが普通に存在することを学習していました。その後で,JCO事故の原因と概要を知らせ,最後に原子力発電の原理と役割について学習します。
 他には「世界の中の日本」の単元で,インターネットを活用した授業。「温暖化防止京都会議」の日本の公約(温室効果ガスの値を1990年の値から6%削減)について考えさせ,その実現にはどんなエネルギーに頼っていけばいいのか調べさせ,話し合って自分の考えをまとめるもの。自分たちの生活が化石燃料によって成り立っていることを知り,各発電方法の長所・短所を調べて,最後に自分のできることを考えるもの。人類がいずれ手にするであろう「核融合エネルギー」までのつなぎ役としてどんなエネルギーが有効か考えさせるもの。小学校3年生を対象に,ダイナモを使って電気を起こす体験活動を取り入れたり,家の中で電気を使っているものを調べさせたりする実践などがありました。