「食を考える月間」シンポジウム 
1 期 日 平成17年1月30日
2 会 場 ウィルあいち4階「ウィルホール」
3 テーマ 「食卓から始まる食育入門−すこやかな心を食卓から−」
4 内 容
主催者挨拶 
 吉田岳志 東海農政局長
  現在、新しい食糧のあり方を考え、農業基本政策を作成している。そこには、農業のこれからの
担い手、経営対策、農地や水路、環境などに論点整理されている。その過程で、多くの意見をもらう。
「日本の食糧自給率は40%。どうなってるんだ?」「担い手というが、食糧供給ができるのか」「小規模農家を切り捨てるのか」といった意見である。
 わたしたちは、自給率は、2つの方法を同時にとる事で改善すると考えている。
 @ 農業の構造改革、食生活を変える事
 構造改革は、消費者のニーズにあったものを安定的に安全に質の高いものを作ること。片手間ではだめ。意欲と能力のある後継者に集中する。規模の小さな人は、その担い手に農地を預けたり、集まって寄せ集めて生産をゆだねる。法人として安定した経営をする。
 A 食生活を変える事
 孤食は大きな問題である。また、集まっていても個食、固定化した食、小さい食。これらも「こ食」
この4つの「こ食」は、小さい頃から食育をするしかない。
 食育月間にはいろいろやってきた。今日は締めくくりの会だ。みなさんで食の現状と改善について考えていただきたい。
 
渡辺文雄 食生活情報サービスセンター
 食を考える国民会議とは、基本法作成のために7年前に調査会を作った。そのメンバーで作ったのがこの会。現在1000名の会員。それぞれの立場で考えている。
 問題はおおきく3つある。
1 食物と健康 生活習慣病を減らそう
2 食の安全と安心 BSE
3 食糧自給率 先進国中最下位位 
 これらをクリアするために、食と健康について全国でシンポジウムなどを開いている。
 アメリカでは、政府が肥満対策などで国民の食生活に介入を始めた。比較的健全であった日本でも心配になってきた。がんの原因は食生活と喫煙である。日本でも、やっと、食と健康について考えるようになった。今日は半日、食について考えたい。
 
基調講演
「食とこころ」吉岡 忍(心療内科臨床心理士・東京都スクールカウンセラー)
 
 所沢から来た。巨人ファン。名古屋の第一印象は広やか。名古屋は経済回復が一番早かった。底力がある街である。
 今日は、一つは主婦・母として、もう一つは法務省に36年間勤務した中で10数年単身赴任経験したが、その単身赴任生活をどう切り抜けたか。そして3つ目は、矯正施設(少年院、鑑別所、刑務所、拘置所)に36年間勤務した。特に非行少年犯罪者に対する臨床心理学の専門家として、この3つの立場からせまりたい。
 3つのことについて話す。
 1 食はおもしろい
 どうしても食は提供する側、提供される側に分かれる。提供する側はつらい。しかし、「食はおもしろい」と思い始めるとしめたものだ。大事な食事を準備したいと思うと人間は動ける。
 さらに、2 食を大事にすることはそれのみで子育てOK
 そして、3 食は豊かな関係性を築く要。関係性は、人に、物に、自然にふれて感じる中で生まれるものである。関係性は、長年の経験に裏打ちされたものだ。
 41年当時に比べて、非行少年は変わった。でも変わったのは非行少年だけではない。人はみんな変わったのに、それではなぜ、なぜ非行少年が目立つかというと、こういった変化は最も弱い部分に影響ができるからなのである。
 人間性が希薄になった。今の子は貧しい関係性しか築けない。それが最初に崩れるのが、非行少年として表れる。豊かな関係性を築くことは大事なのだが、しかし、今は求めにくい。IT、携帯…
 この時代にどう関係性を築くか、それが「食」なのである。
 以上のような話しをしたい。
 
 なぜ、食に関心を持ったか。
「食」の心の側面を考えてみたい。
 エピソード1
 23歳青年。問題が多く集団生活ができない。仕事に出ると喧嘩しクビになる青年だった。言葉で気持ちを伝えられない。カウンセリングでは月に1回、どうでもいい話しをした。それまで話したくなかったのだろう。
 ある日、食事をしながら突然話し出した。食事中、女が、「何で怖い顔しているのか」と言った。その青年は、食べるときになるとそれまでとは人が違ったのである。「だから俺は対人関係が下手なんだ」と言う。
 それから、彼は急に生育歴を話し出した。父はアル中。母は蒸発。祖父母が作り、彼が2階へ持って上がって一人で食べる生活が続いた。彼は食事は人と食べるものとは知らなかった。食事は生きるためだけに食べていたのだった。
 「生い立ちと食」はおもしろいと思った。
 
 エピソード2
 女子の刑務所での話。所長として、施設の管理をしたこともある。
 覚醒剤の主婦が刑を終えた。夫と子が待っていると期待して帰る。しかし、夫と子は、これまで社会に残された生活を繰り返していた。期待していた家庭への思いの落差があった。
 家庭で待ちに待った食事を作った。しかし、だれも来ない。呼びに行ってやっと集まった。ところが、全員がすわったら自分が座るところがないのである。それまでの日常を繰り返したから。
 その話を聞いて、食卓はおもしろいと思った。
 自分は今までと違うところに座った。ぎくしゃくして不安になる。不安をぶつけるためにおしゃべりになる。当然、宙に浮いた会話になる。そんなきくしゃくした生活が1ヶ月続いて、覚醒剤を使ってしまった。そして、また刑務所に戻ってきた。
 彼女の社会復帰は、食卓で失敗したのだ。その原因は、居場所か?
 社会復帰とは、「自分の居場所をみつけ、他との関わりを回復すること」だと思った。
 
 エピソード3
 3つめは、八王子少年鑑別所の話。私は、食事を配るのが大好きだった。
 私は施設を見る時、まず収容者にどういう食事を提供するかを見る。なぜなら、食事まで配慮がされていれば、他の面でも配慮されていると考えるからである。ある意味で、食事は、施設のシンボリックな存在なのである。
 いつも検食をするのが私の仕事だった。彩りが良くて、盛りつけもおおむね良い。
 その施設では、個室に入る人が多い。配色をして、個室の前に立って、「ごはんだよ」と叫ぶととてもうれしそうにする。廊下全体に暖かい雰囲気がかもしだされる。私は、一人一人に配って歩いた。
 そこでは、鍵を開けないで小さな窓から配った。10人いれば10人のさまざまな表情を見ることができた。小さな飯台に置く。
 「せっかくの食事だからきれいにして食べよ」と軽く声をかける。これだけで、家庭における雰囲気が伝わってくる。いただきますをするが、一人ずつ目を合わせてする。「いただきます」はいい言葉であり、日本の文化である。それを受け止める人がいなければ、いただきますをしなくなる。
 「お母さんが作ったと思って食べて」と言うと、ほとんどの子が表情をゆるめる。
 少年鑑別に送られるのは全体の7,8%で、かなり重い。家族との関係は深刻な問題を抱えてくる。
 しかし、非行の原因は、必ずしも家族との関係ではない。いろいろの諸事情でおこる複合線だ。ただし、少年が立ち直るときに家族は絶対に必要なのである。
 彼らにとって、食事は楽しい思い出ばかりではないはず。
 食事を配るだけの30秒もかからない関係だが、後日、会ったときに、人間関係の距離がちぢまっている。
 
 3つのアプローチがある。幼少時の食事体験を聞くようになった。その後の生き方にどう関わるかを聞いた。食行動の特徴について観察するようになった。さらに食卓状況の面接をするようになった。
1 食行動の特徴
2 食卓
 食がある側面にのみ包括され、ある観点にだけ関心が示されることは、食の原点が見えにくくなる。食の原点は生きるために食うと言うこと。
 食糧難に生まれた。リンゴ といわれて がぶっとやったら大根だった。
 今の時代は、グルメ、安全といった、本質以外の部分に関心が集まり、食の力が見えなくなる。
 生理的欲求のための食が原点だが、見えにくくなる。
 もう一つ理由がある。
 食はプライベートなもの。食は秘儀性が高い。その情報を得るのは難しい。しかし、権力を使うと集めることができる。その上で、事例を集めた。
 特別な状況ではない。そうして集めた情報から、私が関わってきた人における行動から、食の機能を5つにまとめた。
 
食の機能。5つ
1 食べることへの関心が高くなる。特に量。量に敏感になる。
 そのエピソード。初めて女子の施設長。巡回した。シーンとしていた。時間もあるし、楽しそうに食べてほしい。1杯目は全員ある。2杯目もある。3杯目は、みんながほしいが、気を使い会って結局残る。そこで、どんぶり飯にした。一人一人のグラム数が決まっている。決まり通り配色したら、残さないようになった。食事の量が決まっていて、あらゆる楽しみが失われると、食への執着がすごくなる。
 
2 早食い
 自分も早食い。戦時中に生まれた6人兄弟だから。毎回、自分が少ないと思っていた。真ん中に配色されたものはすぐに食べる。離乳食の頃から早く食べさせてきたから。
 赤ちゃんの存在は生きること。赤ちゃんがすべてをかけた食の行動。それがその後の行動につながる。
 食の心理学。そこにどんな意味が生まれるか?
 大平 健『精神の科学』には次のように書かれている。
「人の食は相互に食べさせ会う交流性、同じものを食べることによる一体感、生物を口に入れるという攻撃性、その死を体内に入れざるを得ない非攻撃性、こう言った多義性をもつが故に単に食物を入れるという一つの行動に表された」
 赤ちゃんがそう。静かな中であのおっぱいをふくませる。飲み始める。母なるものが移動する。交流性に富む。母そのものが一体化している。赤ん坊も一個の生物体。酵素で食物をかみ砕いて吸収する。これが食の攻撃性。食物はすべて命。そうした、食物の死を通して自分もいずれ死んでいく非攻撃性。これらが食の多義性。
 
 話を戻す。なぜ早食いか?
 好んでその場にいるのではない。隣の人もそう。施設からの食事はやむなく得るもの。交流性が薄い。生きるために食う。
 「食べる」が交流性。「食う」が攻撃性。施設の子は食う作業。これは動植物に死を与える攻撃性。
 一人で食事をとるときは、攻撃性。まさに食っている。きれいになんて気にしない。
 食う攻撃がいやだから、たまらないから共食しようとする。それが文化。
 
3 甘い物志向が強くなる。
 施設内である売春婦が、クリスマスでチョコをもらった。しかし部屋に持っていくと、弱い人から強い人へ移動する。3が日だけは自分の部屋で食べていいことになっている。
 つまり、ああいった特殊な環境では、その部屋の中で相関図ができるぐらい食べ物が移動する。それぐらい食が力を発揮する。特に甘い物には顕著だ。
 1ヶ月に1回。甘いしゃりがでる。その時は事故が少ない。集団で食べると、弱い人は3粒食べる、強い人は全部食べる。そして、皿ごと取り替える。これが喝食。食が力を発揮する。
 なぜ甘い物が力を発揮するか。
 精神障害の患者が、自分と人の境目がわからない。昨日の自分と今日の自分がつながらない、自分の中に他人がいると怖い、そのときに怖いと思ったり暴れたりする。そうして自分を守ろうとする。
 治療を受けると軽くなっていく。そのときに、甘い物を欲するようになる。そうすると楽になっていく。
 
 買い物をしていて、「俺はこんなに甘い物が好きだった?」と気づくことがある。これが味覚の退行で、味覚が赤ちゃんんがえりする。母乳は微妙にあまい。
 甘味は国際的な味。不安な経験をして、自分を取り戻そうとしたときに、味覚から取り戻そうとする。まず、甘味から。味覚の退行現象。味覚は、生物体としては別の機能を持っている。甘い物が出ると感謝される。
 
4 食べる行為を通して人間性が固定する
 窃盗の少年がいた。いつも親が悪いと言う。いつも人のせいにしていると、カウンセリングが深まらない。ある日こう言った。
 「じぶんが広い部屋にたった一人でいる。天井にあんパンがぶら下がっている。」
と言った。自分で状況を受け止めなくてはならないと言うことが彼にはできなかった。       自由がない。そのような中で、最後に残った物はあんパン1個。せめて食だけは、せめて甘い物。
食が心を表している。
 食い意地が張っている子は、処遇困難者が多い。不安が食にこだわることに現れる。食にこだわることは格好が悪い。食うことだから。それを越えてもこだわること。鬱病になると食べなくなる。
殺生な行為だから、露出することをさけようとする。食の行動を見ると、人間性が露出する。本質的な食への欲求がその人のエネルギーを表す。
 一人の新任職員が入ってきた。昼御飯を一緒に食べた。エネルギーを発散しながら食べた。「いける」と思った。しなやかな、しかもしっかりした仕事ができた。食事は、マナー等を取っ払うと、生きる意欲がわかる。人間性が現れる。
 
5 食べることが自己主張の手段になる。
 たべて「ほめて」と言う子がいる。ブルフという学者は「肥満は情緒障害である」と言う学者。
赤ちゃんは食べることで主張する。施設では、拒食もある。食べ過ぎはないが。
 殺人した少年。思春期の非行は自分で自分の動機を語ることはほぼ不能。内面の葛藤を、葛藤として自分と向き合い、社会的に許容される行動が出きれない猪田が、できないときに非行に走る。
病気になるか、非行になるか。その少年は 「ごはんに毒が入っている」と言った。ひどく妄想。
ご飯を洗って食べるようになった。弱ってきたのでふつうの少年院に移送した。
 しかし、その途中で駅弁をぺろっと食べた。彼は、食による一体化を拒否した。状況を拒否した。それを食を通して訴えた。拒食は簡単。食べないだけで、全体を動かすことができるから。
 
 以上、5つにまとめた。食の原点が見えたでしょうか。その食をとりまく食卓はおもしろい。
 
 食卓状況面接の事例を一つ。誰がどこに座るかを紙に書くだけ。
 13歳の女の子。1週間食べない。母は面会に来ない。生い立ちも話さない。食卓状況を聞いてみた。4人で食事をした。父は家を出た。母は好きな物を食事を作ってくれた。おいしかった。お母さんが作った物しか食べない。お母さんの手伝いもよくやった。4年をすぎてからお母さんが働き初めて、家に帰ると食事が作ってあった。その女の子は、お母さんが帰ってくるまで食べなくてもいいと思った。食を通してお母さんをたぐり寄せていた。
 そのうち父の実家に預けられた。父と住むようになった。母は来なくなった。そこではうまくいかない。そこで、母に引き取ってもらったら新しいお父さんがいた。赤ちゃんがいた。
 父はその子に暴力をふるった。昼には母だけと食事をする。この日も早くお母さんに会いたいのでバイクを盗んで家に帰ろうとして捕まった。
 いっしょに食事をすると、「泣いていい?」「泣いていいんだよ。」
 このときに、なんて食ってすてきだと思った。食はメッセージを持っている。
 ならば、食を通してメッセージを届けることができるのではないか?と思うようになった。それ以来、面接で事例を集めた。
 「一緒に食事をしたらどうですか」と勧める。不登校の子には、ごはんをたべてみたら、それで戻ってきた子もいた。
 食の肯定的な原風景があるこは、土台があるということ。原風景を作り上げると言うことが成長する上での土台。
 関係性をつなぐものは食事。
 ある子の日記(母の食事に関する詩を書いた)を読んだ。それを読んで、彼は大丈夫だと思った。
 食とはおもしろいものだ。
 
 
 
 
 
 
パネルディスカッション
コーディネーター
小川宣子(岐阜女子大学家政学部教授、東海地域食育推進協議会座長)
パネリスト
伊藤敦志(名古屋市立白金小学校教諭)
鳥居ヒナ子(JAあいち女性部)
中島章裕(社会法人明照保育園長)
福田靖子(名古屋女子大学家政学部教授)
 
小川 吉岡先生のお話を聞いた。
食事と食卓、心の関係は
食の関係性
食の原風景
いただきます といわれたら 目を見てどうぞ している。
 
食と心と生きる力
小さい頃からの書奥井区の必要性
 
昨年末、食と健康、心をさぐる で実施。
   食と心についてシンポジウムを開催 
 
食育について これまでの流れ 
 食生活指針 
               以下プリント
2枚
中島
保育園での取り組み
 
大きい保育園
包丁を使わせる
現きっこびでお
行事食 充実
時計ご飯
園児も体調と呼ぶ
プレゼンが魅力
 
学童もやっている
乳幼児期だからこそきめ細やかな調理室が必要
 
 
 
伊藤
私と食育との出会い
給食研究実践校 k人間関係をの希薄さを解消
日々給食指導を対sつにしている。
 
学校にも食卓がある
 教室でつくえをよせあう
  互いに向き合う給食
集団かいしょくあgとくしょく
コミュニケーションの場
人との関わり方を学ぶ
交流会食
 
体験・学習の場
食をとる実体験
食べることの期待感、意欲、喜び
 
栽培のつまずきや試行錯誤、苦労 食べることの喜び
 
バケツ稲、観察記録
  東海農政局
お米博士 学習中の疑問
 収穫した米を自ら飯ごうで調理
愛地球博 特別献立
            食を扱う単元
達成感充実感を味わえる。
 
総合でも、子どもとの人、物、こととの関係性を深めていく
 
鳥居さん
食を豊かな関係性のもと
兼業農家が多く、女性もJA離れしている。
日本の食料自給率40%、ちさんししょう14%
三世代大豆づくりをやった。
 
福田