2007心理療法カウンセリング講座
講師 安川雅史(全国Webカウンセリング協議会理事長・心理学者)
 主催 全国Webカウンセリング協議会
http://www.web-mind.jp/
                        
平成19年12月2日(日)13:30〜16:00
              会場  名古屋港湾会館 5F
この記録は、土井によるメモから作成したものです。従って、誤字脱字や主観的な解釈、誤解もあり得ます。文責はすべて土井にあり、学校や講師には一切責任はありません。そのため、引用や転載はご遠慮ください。また、問題の箇所は修正しますのでお知らせください。    

ネットいじめの実態
(見出しは土井が便宜的に付けたものです)
 
 今若者の間で何が起こっているかを話す。
 ネットでのいじめが急激に増えている。ネットとは携帯のこと。メールによるいやがらせ、掲示板への書き込みだ。
 なぜメールでいじめが起きるのか?大人と子どもは違う。大人は電話の道具として使うが、子どもは電話は使わない。メールで済ます。ご飯食べながらでもメールを打っている。トイレでも、寝るときでもそばに置いている。勉強中も部屋で90分勉強したとしても、実際はメールの時間の方が長い。それだけメールに縛られている。風呂でも着衣所においてあり、着信音が鳴ると途中でも出てくる。
 こうして暗黙のルールが出来上がる。それが5分以内ルール。返信して当たり前で、遅れると、しかとされるケースもある。そうすると、逆にメールによるいやがらせが始まる。
 メールによる嫌がらせの問題点は、存在を明かさないことだ。違法ソフトをダウンロードすると、他人のアドレスでメールを送ることができる。仲の良い二人でも、相手になり済ませて悪口を書き込める。そうして、二人の中を裂くことができる。
 サブアドレスもある。検索するといろいろと出てくる。多い子は一人で20個、30個は持っている。悪いことに使われるとわかっている。
 嫌いな子がいたら、いろんなアドレスでメールを送る。時間を予約しておけば、ばらばらに時間を指定して自動的に送ることができる。
 送られた方は、中傷メールが30通も来ると、「あの子か、この子か。」と考え、学校に来るのがいやになる。
 なり済ましメールは拒否できる機能がある。ソフトバンクは、なり済ましメールを拒否するというコマンドがある。
 サブアドは広告で成り立っている。メールの後ろに広告がつくので、URL付のメールを拒否すれば安心だ。
 チェーンメールはメールの不幸の手紙だ。犯罪でも使われる。こんな例があった。
 トイレの中でグループで大声で話す。一人がトイレで誰かが用をたしているところの写真を撮る。大声はシャッター音を消すためだ。そこで撮った画像を添付してて、サブアドで送る。5人に送れ、送らないとおまえの画像も流すぞ。これでねずみ算式にあっという間に広まる。簡単にできるし、だれに送ったのかもわからない。しかも、画像は半永久的に残る。
 なぜ広まるのか?自分で止めたことがばれたらどうしようと思うからだ。しかし、安心して欲しい。自分で止めたとしても、今のシステムでは、実際に名前はわからない。
 チェーンメールは犯罪だ。中高生に教えないといけない。もし来て、自分で止めるのが嫌なら、迷惑メールの 転送先があるのか、そこへ送ってほしい。
 
 子どもの中では、いたずらから始まるいじめがある。ちょっと太っている子がいると、ダイエットの広告メールを送る。
 「8時間で10sやせる。」
 絶対にありえないが、気にしている子は、つい見てしまう。そして登録してしまう。本名、住所、電話番号を書いてしまう。それが名簿屋に高値で売られる。売らないとしても、個人情報が漏れている。
 たとえばプロフにアドレスを載せたりする。裏のサービスがあり、メールアドレスだけで、本名がわかってしまう。画像を載せるだけで、ストーカー被害にあったりする。
 広告メールは利用規約があるが、子どもは読まない。だから、翌日から一斉に広告メールが届くようになる。
 いろんな罠がある。最近は、プロフの相談が多い。
 見ているのはロリコン系の大人が多い。
 書き込む方も自己PRを書き込む。大人が読むとわかって。
 「差4.5 佐1.2」の意味がわかる人?
 NGワードは書き込めないことになっている。「援交」などがNGワード。それにひっかからないように、隠語を使う。「差」はサポートのこと。「差4.5」は、「付き合いますから4.5万円援助してください。」ということだ。
 「死ね」は使わない。「氏ね」「市ね」と使う。
 他に、他人のプロフサイトを勝手につくる。出会い系サイトに、勝手に他人のメールアドレスを書き込んでしまう。
 知らないところでアドレスを書き込まれた子は、援交をやっていることになっていまう。大人から卑猥なメールが届くようになる。
 「ホストラブ」などは広告で成り立っている。その広告とはほとんどが風俗産業。日頃からそういった広告を見ているうちに、知らないうちに洗脳される。そして、将来風俗で働くようになる。それが目的なのだ。
 自殺サイトにもすぐに入れる。
 学校裏サイト。今の子がつくる裏サイトは、パソコンからは見れないしくみ。個人名が出ない。しかし、アドレスが載る。その人のプロフサイトに飛ぶ。裏サイトを削除する方法もある。
 書き込みを注意する文を先生が書いてはいけない。とたんに情報を集めて、家族を攻撃していくる。そして先生の精神状態を不安定にする。
 まずは管理者と連絡をとること。またはプロバイダに削除依頼をする。削除以来は毎日大量に来るので、具体的に言わないと削除してくれない。
 プロフを確認する方法もある。今日はこれぐらいに。
 
いじめに遭っている子のSOSを見逃すな!
 いじめに遭っている子はSOSを出している。佐世保の事件もSOSが出ていた。
 図工の時間に絵を書いていると、その絵が急に変わってくる。幼稚園児のような絵になる。色も赤が増える。そうなるとSOSだ。神戸の酒鬼薔薇もそうだった。赤一辺倒になると、怒りが抑えられない状態だ。
 
 子どもは、新しい着うた、着メロを手に入れると大音量でならす。また、子どもは自分のメールで会話が終わるのはいやだから、最後に?をつける。
 ところが、ネットでいじめられると、親の前でメールを見なくなる。着うたを鳴らさなくなる。顕著な特徴だ。
 また、いじめられるとのどが乾く。急に炭酸飲料を飲みだすとSOSだ。
 トイレに入って15分以上出てこない。これもSOS.
 微熱。平日の午前中に出る。休みの日は出ない。風邪の熱は急に下がらない。しかし精神的なものは急に下がるし、汗もかかない。
 子どものSOSは体に出る。
 
 家庭内の環境も大切だ。夫婦関係がぎくしゃくしているとよくない。
 実験してみるとわかる。水の入ったペットボトルを3本おいて、右の水にはよい言葉を、真ん中の水には何もしない。左には腹立つ言葉を投げかける。
 どの水が腐り始めるか?
 実は、真ん中の水だ。夫婦喧嘩をしている方がまだよい。会話がなくなったら、ピンチだ。無視すると腐り始めるということだ。
 言葉の力はすごい。会話がないことがいけない。夫婦が認め合っていなくて、愚痴ばかり言ったり、悪口を言ったりすると、奥さんの方が子どもの方に目が行く。中学生ぐらいで親が子に目がいきすぎると、朝起こしてしまう。何でも親が判断してしまう。あれしなさい、これしなさい。これをやってしまうと、小学校の低学年ならまだうまく行く。なんでも「うん、いいよ」
 高学年になると、いじられキャラになる。プロレス技をかけられたり、お金を借りるが返さなくなられたり。そうすると親の財布に手を出す。
 お金と人の裸に興味を持つのは思春期の特徴。男女に関係なく。同姓でも脱がされ、写真を捉える。昔は、現像という過程があったので、写真屋でガードできた、今はデジカメはとり放題。周りからはじゃれているように見えるから始末が悪い。また、こうしたいじめはちくらない。だからよけいに見つけにくくなる。
 過保護はまた違う。
 作った食事を「食べたくない」というと、また作り直す。こうなると、子どもも変わってくる。家の中で言っているわがままが学校でも出てしまう。
 自分中心の話題が出てきて、周りの子が話をしていても、自分の話になってしまう。だんだん周囲がむかつくようになる。そうすると聞こえないふりをする。居づらくなる。一人でご飯を食べるようになる。ほとんど残したままで、i-Podを聞いている。その後は、廊下をうろうろ歩き回るようになる。それがまた噂になる。
 これが、不登校になる。過保護な親は不登校を許すから、よりなりやすい。
 初めはよいが、次第に攻める言葉が出るようになる。子どもがしてほしくない話題に触れるようになる。そうすると部屋にこもるようになる。
 
ひきこもりへの対処法
 最近は学校にどなりこむ親が増えてきた。ヒステリーに言って伝わるか?伝わらない。怒って言っても、相手に伝わらない。それが続くと子どもは部屋にこもる。
 カーテンも引きっぱなし。自分の悪口をいわれている気がするからだ。対人恐怖は何が怖いというと、評価が怖い。妄想が聞こえる。
 午前中の太陽の光を浴びていないので、これが子どもにとってマイナスだ。人間は太陽の光を浴びて、24時間のリズムができていくる。昼夜逆転の子は、25時間サイクル。明るすぎる蛍光灯を浴びていると、キレやすくなる。カーテンをしめて昼からずっと蛍光灯を浴びていると、昼夜逆転になるにきまっている。
 どんな子でもこれではいけないことはわかっている。精神状態がおかしくなる。
 よくわかったような人が、「生活のリズムを直しましょう。」と言うが、それでは解決しない。そうなった根本の原因が解決していないからだ。
 どのようにしたら改善できるか。子どもは、お腹がすく。トイレにも行く。歯磨きと風呂はしない子もいるが、トイレは必ず行く。茶の間にも行く。人間は表情を見ればわかる。
 
 みなさん、最高の表情をしてください。その程度ですね。(笑)
 無理して笑っている。こめかみのあたりがピクピクしている。(笑)この笑いはすぐにわかる。作り笑いはすぐにばれる。
 目は嘘つけない。本当に関心があるものを見ると、瞳孔が広がる。瞳孔から笑う練習をしましょう。
 やってみましょう。両腕を組んで、上に挙げる。そのまま後ろにもたれる。後ろの人の顔が見えるくらいまでもたれましょう。そうしたら舌を鼻につける。つかなくても努力しましょう。これでいい表情になる。(笑)
 いい表情をすると、子どもも話をしたくなってくる。
 話題に無理をしていると表情が固くなる。無理して話そうと思うと表情に出る。
 会話には努力も必要だ。例えば子どもが野球が好きだとしよう。子どもが好きな球団と同じ球団に興味を持つ。野球のルールも知らないで、話を合わせようとしても、「だめ?あっそう。」で終わる。親も合わせて興味を持つこと。それが、会話のキャッチボールになる。
 
 昼夜逆転をしている子がいると、食卓にご飯をおいて寝てしまう親がいる。それはまずい。
食品だから痛み安いし、冷たい感じがする。
 大切なことは、手紙を書くこと。それも、名前を呼び掛けること。それで距離が近づく。名前を書くことだ。ラップにかけて冷蔵庫に入れておく。「○○くん、食事は冷蔵庫に入っているからね。」
 着替えをしない子も、手紙を書いておく。着替えなくても、いつまでも置いておくのはいやがらせ。手紙をそのままおいておくのは、手抜き。同じ内容でもよいから、毎回書く。
 親が外出している間に、シャワーを浴びるもの。だから親がずっといるのは逆効果になる。必ず、家を2時間は抜けること。大切なことは、帰宅時間を伝えること。そうしないと、いつ帰ってくるかわからないので、わずかな音に怯える。
 家を空け、帰宅時間を伝えることで、子どもは一歩踏み出せる。
 手紙を書いておくと、例外なく言葉が出てくる。はじめは、「こうなったのはおまえらのせいだぞ」「土下座して謝れ」というようなものが多い。
 なかには、「おまえが悪いから退職金よこせ」という子のいいなりになって、1週間で全部使われた親がいた。
 出るのは暴言。親もうろたえる。急にそわそわすると、「聞いているのかこのやろう。」と言う。聞くという姿勢をとっていないと怒らせる。延々と3時間、4時間言い続ける。それが続く。
 こんな時はどうすればよいのか?暴言でもよいから、気持ちを伝えたくて言うのである。坐って話をしてほしい。
 学校の椅子は木の椅子。これは寝させないため。教室の椅子をソファにすると、午後はみんな寝てしまう。木の椅子は本音を吐き出さない。ソファがよい。
 また、距離が近すぎると話づらい。医者と患者もそう。
 よく教育相談で学校の先生がする間違いは、腕組、足組、ふんぞり返り。(笑)これはだめ。
 相手は対角線上に座らせる。特に相手を左前に坐らせるとよい。カッ!となっている人には相手の右脳に話し掛ける。それは左耳だ。右半分の顔は作った顔。左半分の顔が本音が出る。
 例えば、プロポーズするときに、どちらの耳にするのがよいのか?昼間に右耳に言うのはまずだめ。夕方、左耳にプロポーズすると、OKの意思が出る人はほぼ100%でる。
 相手を左前に座らせた方が話やすい。ちょっと前かがみぐらいの方が、真剣に聞いているよという感じになる。
 うなずきも大事。ただ、スーパーで奥さん5人がうなずき合って話しているの。あれはだめ。
アナウンサーを見ていてほしい。最初のうなずきは大きいが、2度目以降はずれていく。あれは、先のことを考えているので、時間を気にしたり、次の話題を考えたりしているので、半分聞いていないから。だから、うなづき方がづれている。
 人の話を聞くときは、一つずつうなずくこと。悪いと思ったら謝ることと。 
 カットなったとき、とんでもないことを言ってしまう。それを間に受けないこと。死ねといわれて死ぬか?それだけ怒っているということを理解すればいい。受け止めてあげればいい。
 
ひきこもりの事例
事例を出す。
 M君。21歳で人との付き合い方が苦手だった。父親は学校の先生。
 中学校から教室に入れなかった。保健室登校が多く、学校行事は全然参加していない。試験は保健室で受けていたが、点数はそこそこ取れる。
 高校受験は、父母と先生で決めた。これがいけなかった。
 受験は行けたし、見事合格した。入学式には行ったが、翌日から1日目を休んだ。
 2日目。「今日は生きなさいよ。」の声に「うるせいぞ、くぞばば!」と暴言。それ以後、起きてくるのは昼ぐらい。退学届けを出した。
 その後中学浪人予備校へは通えた。そこは3人しかいなかったから。
 翌年、別の高校を受けた。ここは自分で決めた。ランクが上で、過年度生だからまず落ちるだろうと思ったが、本人が希望するので受けさせた。
 本番は高得点で、見事に受かった。本番で点数をとれた。面接も徹底的に練習をした。面接の模範回答は予備校の先生がつくった。おかげで合格できた。
 今度は合っていると思われた。ところが、夏休み以後、休み始めた。また始まった。親も退学届けを出しに行った。10月末に学校をやめ、12月末まで家でごろごろしていた。
 1月、突然反応がなくなった。彼の表情が消えた。それが5年間続いた。この間、1回も風呂に入っていない。着替えもしていない。歯も磨いていない。髭も伸ばしっぱなし。完全な引きこもり状態になった。
 両親もいろいろなところへ相談にいったが、解決策が見つからずそのまま5年間すぎた。
 この間夫婦関係もぎくしゃくしてきた。母は旦那の朝食も作らなくなった。旦那は、帰りも居酒屋で、家で食事をとらなくなった。土・日曜日も外食ですますようになった。
 4歳下の妹がいた。兄と同じように高校をやめた。上が引きこもると、だいたいそうなる。それぞれ、一人でご飯を食べる。家族がばらばら、崩壊状態だ。何度も言うが、会話がなくなるのが一番危険だ。
 午後8時になると、M君が降りていく。その音を聞いて、妹がM君の顔に殺虫剤をまく。
 M君は食事を立って食べる。誰かがきたらすぐに逃げられるようにしているのだ。その方が、気持ち的には楽なのだろう。
 母は、音がしない方が楽だと思ったこともある。死んでいるかもしれないとも。M君が歩くと、頭をかきながら歩くので、ふけが落ちて道ができる。その道を見て、母は「生きていてくれた。」と思う。まさに地獄絵図だ。母も、何度も「死んだ方が楽かしら。一緒に死のうかしら。」と思ったという。
 ある日、母が私たちのカウンセリング講座の広告を切り取って、旦那に見せた。「行ってみない?まただめかもしれないけど…。」「そうだな。だめだと思うけど。」「じゃ、一緒に行こうか。」久しぶりの会話だ。
 講座が終わって、個別に相談を受けた。緊急性を感じたので、翌日からも続けた。奥さんは昼間。旦那は仕事が終わった夜。
 最初は子どもの話題だった。しかし、奥さんとは2、3回からは旦那の話。旦那とは奥さんの話ばかりになった。悪口の言い合いだ。
 続けていると、だんだん、お互いの気持ちが見えるようになってきた。家でご飯を食べるようになってきた。娘を交えて、3人で食事を取れるようになってきた。
 母は、1日の中で時間を決めて、帰る時間を伝えて外出するようになった。置き手紙もやってくれた。夫婦でだんだん話せるようにようになってきた。テレビも一緒に見るようにした。一緒にいる時間、同じことを共有できるかがポイント。これがいい状態だ。
 土曜日の夜の10時は、夫婦で漫才を見るようにした。ある日、おもしろい場面で2人で心から大笑いしたことがあった。その時に、2階のドアが開いた。兄が降りてきたのだ。ビデオを1本置いて、また上がっていった。2人は呆然として、「Mの顔見るの、5年ぶりぐらいだよね。」2人で、子どもが持ってきたビデオを見た。
 8,9年前のものだった。彼は、自分の部屋に、右からおもしろいと思った順にビデオを並べていた。自分が面白かったビデオを見てもらいたいと思ったのだろう。翌日に降りてきて、別なビデオを持って降りてきた。お礼を言いながら、昨日のビデオを返した。
 そのころには、母とは電話カウンセリングになっていた。
 「夢みたい。毎日降りてきてくれて。情けないですね。顔を正面から怖くて見れない。よってきただけで臭い。髭も髪も伸びっぱなし。自分の子だから見たいけど見れない。でも、表情が、最近、柔らかくなってきたような気がする。」
 母は、毎日外出する。「今日は○時に帰るからね。」と必ずM君に声をかける。
 母も対人恐怖症だった。ゴミ出しの日は、朝の3時に目覚まし時計をかける。買い物も、買うものを決めて、最短で回る。喫茶店も入れない。
 近所にいることができない。近所の目が気になるので、遠くへ行って時計とのにらめっこだ。北海道だから、吹雪いている中を、2時間歩いている時もある。
 家に帰る。着替えを見る。着替えてはいないが、ひょっとしたらという気持ちで見る。
 ある日、いつものところに下着がない。ごみ箱か?と思ってみたが、ゴミ箱にもない。
 風呂場のかごの中をみた。はがしたものが出ていた。5年間、一度も着替えていないので、皮膚とくっついてしまっている。文字通り、はがしていた。
 シャワーを浴びていたのだ。
 「笑っていいとも」を見ていたら、昼間M君が降りてきた。ハサミを持っていた。殺されるのか?と思ったら、「髪切ってくんない?」と言った。5年ぶりに言葉を話したのだ。
 夢かもしれないと思った。床に新聞を並べて、座らせて、首にバスタオルをまいて、霧吹きで濡らして、切り始めた。家庭用のハサミなので、うまく切れない。涙が止まらない。
 切ったあとに、M君は「今までごめんね、ありがとう。」と言って、そのままお風呂に湯をためて、風呂に入り始めた。
 母は、ソファに座って、「長かった、死ななくてよかったな。」と思った。「お父さんに教えよかな。待っていようかな。」とも思った。2時間後、シャワーの音がしなくなった。
 不安になった。「ありがとう。」は、この世の最後の言葉なのかもしれないと思った。
 「あの子は変わろうとしたのだから、私が変わらないとどうするの。だいじょうぶ、だいじょうぶ。」心配だったが、平静をよそおってソファに座っていた。
 3時間後音がした。顔を正面から見れた。歯も何十回も磨いて、髪も何十回も洗って、髭も剃って、その後1時間お風呂に入っていたのだ。
 それ以後、いっしょに食事をとるようになった。夜も、4人で食べるようになった。
 その段階で、「もう一度高校へ行こうかな。」と言った。私は、「まだ早い。」と止めた。
 高卒認定の勉強から始めた。その後、最初は非常勤、今は正社員として働いている。
 あきらめないこと、一歩一歩だ。
 
 みなさん、今から言う数を覚えてみてください。「5、4、2、7、9、1」
 言ってみましょう。「5、4、2、7、9、1」言えましたね。
 それでは、もう一度、「3,6,1,9,6,3,4,2,7,9,8,2」」
 言ってみましょう。「3,6,1,9…」
 あれっ?みなさんは6桁は覚える力があったのですよ。でも2回目の12桁の時は、6桁も言えなかった。人間はこんなもの。目標が大きすぎると、本来の力が出せない。一歩一歩、自分の現実に合わせてすすむことが大事。だから、彼にも、高校は進めなかった。
 彼は、前の時は、翌日になると起きてこれなかった。それは、裏切っているのではない。「行こう」と「行く」は、それぐらい大きな開きがあるということなのだ。
 
問題のある子の対処法
 問題のある子の対応をはなす。まず、できるだけ個室で対応すること。
 最近リストカットが多い。足を切ることも多い。方法はいろいろある。
 大切なことは、時間設定すること。「会議があるから、3時55分まで話そうね。」と言ってから話を聞く。時間に制限があるから、相手も要領よくしゃべる。これを言わないと、永遠と続くことになる。
 学校以外で相談に乗ったらアウト。個人情報を聞き、平気でメールしてくる。家まで乗り込んでくる。そうなると、先生が恋人になる。教師が恋愛感情を抱くと教員は失格だ。最もまずい状況になる。
 そこまで行かなくても、他の生徒と話していると「私の先生とられた。」という気になる。復讐するなる。先生にカッターを借りて、そのカッターで自分の手首を切るようになる。
 時間設定が大切だ。
 私は、裏紙をたくさん置いておく。初めに、切りたい場所に赤いマジックを引かせる。厚い紙を束ねて、力いっぱい不安を殴り書きをさせる。書かせた上で、不安が見えなくなるまで、真っ黒に塗らせる。その後で、相談にのる。
 相談に乗る時、メモをとると、表情が見れない。聞くときはボールペンを置く。どうしてもメモが必要な時は、合間にさっと要点のみ書く。
 ボールペンを置いてみてください。(それぞれが置く)
 とがった先を相手に向けない!置く時は、先を自分の方に向けて置く。リストカットするような子は、これだけで気になる。自然と耳に入ってこない。
 相談が終わってからは、一緒に立ち上がり、後ろ姿が見えなくなってからドアをしめる。これが大事。時間にしてたった20秒だ。心配するなら、一緒に立って、見送る。メモは後。これができなければアウト。
 
 カウンセリングは人間関係。相手に伝わらなければだめ。
 不登校の子と連絡を取りたい。その時に、「あと何単位だぞ。」なんて言ったら、もう電話に出ない。失敗する。
 私はアンケートをとっていた。手書きで書く。人間性が伝わる。そこで自己紹介をする。
 まず自分のことを話して、私の趣味はこう、みんなは?テレビはこれを見るけど、みんなは?と聞く。メルアドや携帯も聞く。しかも、子どもはすぐに変えるから、通じなくなる場合も多い。毎週アンケートを書かせている。
 手紙を書いた場合は、封も開けないが、おもしろい。メールは見る。メールは個人を救う手段になる。だたし、送るのは学校のパソコンから。
 興味ある内容は、アンケートでわかる。その話題から振る。興味を持ったことには反応したくなるもの。凝ったメールがくる。
 絵文字には絵文字で、顔文字には顔文字で対応しよう。子どものなかでは、うまく絵文字が使えないと浮く。
 先生もそのまま返したほうがよい。すぐに返信が来るようになる。やりとりの数は信頼関係に比例する。本音が出れば対応策はとることができる。
 ただし、顔が想像できるまでは、電話はだめ。よそよそしくなる。言葉はパワーがある。電話は耳に全神経が集中している。今までに感じなかったことが聞こえるようになる。カウンセリングの電話でもわかる。
 みなさん、子どもに電話をかける時は、それだけに集中してほしい。パソコンをしながらではだめ。そして、相手の名前を何回も呼び掛けること。
 
退行に気をつけよう!
 次は、退行の話。赤ちゃん返りを起こす。ひきこもりになると、いろいろ出てくる。
 退行を起こす家庭に共通していることは、べたべたする。べたべたすることが愛情ではない。愛情は、言葉。心の通った会話ができていれば、退行は起こさない。
 言葉だ。向き合って話をすればだいじょうぶ。身体接触をすると、家庭内暴力に発展する可能性がある。家庭内暴力は、退行がなければ起こらない。
 退行で、母が子どもを包み込んで性交渉に発展した例もある。危険だ。足りなかったのは、会話であって、ひざの上に載せることではない。
 ひきももりが始まると、退行が起こる。散らかすようになる。善悪の判断力が甘くなる。壁に穴を開けるようになる。そして、家庭内暴力に発展する。
 愛情を散り違えてはいけない。握手はよい。これで安心する。今日だけよと言っていっしょに風呂にはいるなどはだめだ。
 困ったことがあったら相談してほしい。講演依頼も受けている。
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次に、校長日記より紹介します。

南風あったかげん記−273−より
☆★☆ 心理療法カウンセリング講座 ☆★
 今日は、名古屋港湾会館で「2007心理療法カウンセリング講座」を受講してきました。講師は、全国Webカウンセリング協議会理事長・心理学者の安川雅史氏。話術と中身の濃さで、休憩もない150分間があっという間に感じました。会場の約300名の受講生は、学校の教師のほか、不登校やひきこもりのお子さんを持つ保護者の方も少なからずいたそうです。
 内容は、ネットいじめの実態、子どものSOSを見逃すな、ひきこもりへの対処法と具体的事例、問題のある子への対処法、不登校と退行などの話でした。
 ここでは、安川氏の著書より、どんな学校・クラスにいじめが多いのか?20のチェックポイントを自戒の意味を込めて紹介します。5つ以上当てはまると、何らかの問題がある可能性が高いそうです。
○ 担任が生徒の人気取りをする馴れ合い教師
○ 担任が特定の生徒だけをひいきする
○ 教師たちが威圧的
○ 学校生活への不満を感じている生徒が多く、授業中も騒がしい
○ 担任がほとんどの時間職員室で過ごしている
○ 担任が生徒を注意することが出来ない
○ 教師が生徒といっしょになって特定の生徒の悪口を言ったり、冷やかしたりする
○ 生徒数が少なく、クラス替えのない学校
○ 教師同士の関係がギクシャクしている
○ 授業より自習時間が多い
○ 問題があるとすぐに隠蔽したり、責任逃れをする学校
○ 担任が生徒のことを真剣に考えないで教育にあたってる
○ 過去に校内暴力で問題になったことがある
○ クラスの中に言いたいことが言えない雰囲気がある
○ 担任が保護者の相談を親身になって聴いてくれない
○ 担任が精神的に弱く、よく体調を崩して休む
○ 担任がいじめの重大さを理解していない
○ 学校内で横の連携ができていない
○ 生徒のプライバシーに関することや、生徒からの相談を他生徒にばらしてしまう
○ 教室内がいつも散らばっている
 どうぞ、南中をじっくりと見ていただき、気になることがあればご相談ください。
【毎日更新!校長日記】 2007-12-02 18:34 up!