農業進歩路有無 [も・う・か・る 農業をめざして・・・」



浜井 
『それではただ今から、パネルディスカッションを開会させて戴きます。コ−ディネ−タ−タを務めますのは、ただいまご紹介を戴きました静岡県議会農林水産委員長の浜井でこざいます。どうぞよろしくお願い致します。
 先程、浜松ホトニクスの晝馬社長さんから基調講演を戴きました。現代科学といいますか、サイエンスが、やっとこの”心と命"というものに着目を始めた。しかし農業という分野においては、農業に携わってきた人たちが、そのことを明確に意識しないまま、もう既に"心と命"というものに取り組んできていたということでありました。そういう意昧で、「農業も先端産業」である。と意を強くされた方もあったと思います。
 本日のこのシンポジウムのテ−マは、お配りしてある冊子にありますように「も・う・か・る農業をめざして…」としてあります。儲かる農業では余りに直接的過ぎるとして
「も」は、もう少しユトリを持って農業を…しよう。
「う」は、うらやましがられる農業をしていこう…。
「か」は、カルチャ−、文化としての農業…。我が国の農業は二千年の農文化を作り上げてきた。しかしこれからもっと新しい農文化を創造していこうということです。
「る」は、ルンルンと楽しく取り組める農業を目指そう…。
という意味を込めて、このタイトルをつけました。
 今日のディスカッションが、お集まりの皆さま方に夢と希望を与えるような、そういう方向性を示して戴ければこの企画の目的が達せられると考えています。
 それではまず、趣昧と実益を兼ねて県下の農山村を、隈なく取材等で回っておられます、ゆとり研究所の野口所長さんから、ゆとりと農業について、あるいは社会生活の中で余暇とか、ゆとりということを追及、研究する立場から農業に何を見てきたか。また農業に何を期待するか等について、お話して戴きたいと思います。』

 ◆ 余暇とは休息・気晴らし・自己開発

野口 
『野口です。コンニチハ。私は余暇コ−ディネ−タ−という仕事をしておりまして、今ご紹介戴きましたようにゆとり研究所というのもやっております。ですから、普段、皆様方の余暇をどうするか、または、どうすればゆとりが創造できるのかといったことを、、」提案申しあげたりとか。余暇の過こし方について、こうしたらイイヨああしたらイイヨ、みたいな五提案を日々やっていて、私自身ゆとりがなくなっちゃってるという日
常なんです。最近は非常に農業の場に呼ばれるケ−スが多いんですネ。農業という中に段々、ゆとりとか余暇とかいうものが入り込んできてるナという実感です。このことばかり考えている人間なんで、こうなったらいいなというリクエストの話をしたいと思います。 アノ、一つの例なんですが、余暇とかゆとりって何でしょう?と聞かれた時に、余暇とは、「休息・気晴らし・自己開発」であるという三つの答が出てきますネ。
 つまり休んで・遊んで・学ぶことというような形で表現されるんですが、そういう余暇が楽しめる農業。これは職業としてではなく、これは労働としての農業の中に、もっとゆとりをとか、もっと休日をというよりもむしろ、農業としての新しい可能性を求めて、余暇とかゆとりという業界に農業が一体化しようとする動きなんじゃないかと思っているんです。
 ディスカッションの会場や講演会場など、いろんな所へ出掛けていくと、その業界のゆとりの具合が私には何となく分かるんですネ。
 こうして今日、ここに座って眺めていて、今日は結構、皆さんゆとり度が高いのかなと思います。そのように、すごく体がリラックスしながら、これからの農業をどうしようか、と考えられる状態に自分を置けるということが、ゆとりがあるなって思えるんです。
 まずは、集まってらっしゃる皆さんはゆとりがあるなって思います。そういう中から考えられる、これからの農業って、何だろうと思うんですが、私は、もともとソフトというのか、農産物においての余暇価値を探すというのが、チャレンジできる分野じゃないかと思うんです。農産物に余暇価値を発見したり、また、農業そのものを余う時暇価値の高い産業として、楽しむ時代が来ているのではないかと思うんです。』

 … 軽石とワサビのコンビネ−ション …

野口 
『余暇を「休息・気晴らし・自己開発」という視点から考えて見ますと、中伊豆に天城の軽石ができるところがあります。その軽石を植木鉢のようにして、ワサビを植え込んだ盆栽を送って頂いた時には驚きました。今までであれば、ワサビは農産物として食べて終わりだったけれど、楽しみ方が変わってきます。ワサビの葉の緑を見て形を見て、苔を兄て安らぐ。つまり休息が取れる。鉢植えのワサビを楽しむことができる。それを抜く時には、家族皆んなで集まってワサビ抜きイベントとしてお刺身パ−ティなんかをやれば、ワサビを中心に全話がはずんだりすることができる。それを通して遊ぶことがてきるんです。
 そしてもう一つ、ワサビがどうやって生えているか。どういう環境て育っているかを知らない子供たちが、冷たいお水がなきゃダメだとか、カンカン照りのお日様に当てちゃあダメだとか、この盆栽を世話しながら理解していくことで子習する。それを通して自己開発ができる訳です。
一つの農産物という商品から「休息・気晴らし・白己開発」という余暇価値の3要素か吸収できる訳です。

 … 余暇価値をつけた農業の展開 …

 それがつまり、農産物に余暇価値をつけた作業だと思うんです。そういう視点から農業をやっていきますと、一つまた新しい可能性が見えてこないかなということなんです。
 今まではモノを買うだけ、つまり買い物という作業だけを皆んながしてきた時代でしたけれども、これからは買い遊びだったり、買い学びだったり、買い季節だったり、買いコミュニケ−ションだったりする訳です。
 いって見れば、そのワサビを育てる時間が、良い時間を買い物したことになりますネ。そういう形での商品への付加価値ではなく、余暇価値づけができるようになりますと農産物が非常におもしろくなります。
 今、いろんな企業がユトリとか余暇ということを探っています。それぞれ業界で、白分の業界の余暇価値をつけようと自分たちが作っている商品に"ゆとり価値"や"余暇価値"をつける作業をしている訳ですが、農業の分野で、余暇価値をつけていくという作業はつまり、企業的なセンスで農業をやっていくということになるんじゃないかと思います。』

浜井
『付加価値じゃない余暇価値という言葉は、今日初めて聞きました。国の新農政、つまり農業の新しい政策の中で、法人化の推進がうたわれています。そこでは、自己が生産する以外の農産物の加工を認めるとする考え方も人ってきましたので、今の野口さんの余暇価値なる新語は、単なる言葉として聞き流すんではなく、誠に時宜を得たものだと思います。
 さて次に、既に法人化を果たされている杉山さんです。この方は駿東郡清水町でバラ園「エル・ロ−ザ」を開園され、早くから有限会社という形で、バラの栽培を始めフラワ−アレンジメントとか、いろんなことにチャレンジしておられます。杉山氏のキヤッチフレ−ズは、「情報発信と高付加価値農業の展開」。その意昧で今、野口さんが言われました企業的経堂、あるいは今日のテ−マでもあります"うらやましがられる農業"を展開している杉山博一さんにお願い致します。 経歴を拝見しますと束京農大を卒業と同時に、バラの世界に飛び込まれたということですけれども、大学卒業後すぐ農業に飛び込むことに逡巡はなかったのか。そして実家はバラ栽培を手がけてなかったということですが、いきなりバラに入った動機についてもお聞きしたいと思います。』

 ◆ ”都市型農業への挑戦”

杉山
『バラを選んだ動機は、実は卒業論文で、バラに関する研究をしたことです。当時、珍しく一生懸命に勉強するうちに、もしかしたらバラは、生き抜いていけるんじゃないかと感じたんです。バラは日持ちがしないとなれば輸人は難しい。実際には今日輸人されてはいますが、16年くらい前はそう考えていた。
 それにランに比べれば少し下かなと思ったんですが、咲いている数でいけば、日本の花の中で一番高い花ではないかなと考えてバラを選択しました。
 それ以上に、私の住んでいる清水町という土地柄も動機の一つになっています。というのも清水町は農村地域がなく商業地域が殆どです。そんな中で農業をやっていくには、普通の考え方ではイカンじゃないかという考えがありました。
 私がこれまでやってこれたのは、この地域環境に負けないという意地もありました。今もなお都市型農業が、この地域でどこまで創造出来るか、どこまで考えられるかやってみようという気持ちでいます。そんな中で最近気がつきましたのは、この地域もあと数年のうちにビルが立ち並んでくるでしょう。そんな中で農業を続けていくためには、やはり地域の皆さんと一緒に生きていかなければならないという気持ちになっています。
 第3農場”エル・ロ−ザ”のテ−マは、バラの情報文化発信基地ということになっています。やはり農業の中に文化が存在しなければ厚みが出ないような気がして、意識的に文化を取り入れています。
 しかし、本当のところ”エル・ロ−ザ”の目的は、お客様からの情報収集基地です。やはりお客様の情報を如何につかむかによって、戦略が違ってくると思います。
お客様のニ−ズを捉えて、いろんなことをした結果、私の農場の伸びは、昨年末で前年比135%位になります。
 最初、農場を作る時は、ただ単に生産だけを考えて、何とか1番の花を作り続けようと考えていたんですが、数字的には良くありませんでした。

 … 試行錯誤の中の農場経営 …

 そこで、営業戦略的なものの必要性を感じて、今いろいろな分野で思考錯誤の連続中です。何とか街の中で、地域の皆様に農業を理解して戴きながら、自分の夢を実現させたいと考え、農場の中に多目的ホ−ルのようなものをつくってみました。ここで昨年暮れにはディスコ・パ−ティ−を催したり、春にはバラが咲き乱れますから結婚式場に利用してもらったり、夏場にはビァ−ガ−デンなんかも考えているところです。
 しかし私は、こうしたことで儲けようとは考えていません。いかにして地域の人に来てもらうか、白分の農場を知ってもらうか、また農業を理解してもらうか、これがポイントだと思います。そして来られたお客様は逃しません。デ−タとして整理させて戴き、次の仕事に結びつけさせて戴こうと考えています。』
浜井
『国への最初の計画書では、情報発信という言葉を使っていましたけれども、お話話では情報収集のウェイトも高い。双方向で上手に機能させていってますね。』
杉山
『やはり情報というか文化の形態を農場から発信しないとお客様は来ません。折角来て戴いたお客様には楽しんでもらうことが必要です。楽しい経験をすることができると今度は人が集まってくる。楽しい経験を積み上げて戴きながら、白然にうちの農場のお客様になって、例えば住所、氏名、年齢、血液型まで登録できるようなコンピュ−タ−も用意してあります。』
浜井
『アメリカで一番生産量の多い花の生産者の話を思い出しますが、彼はいつもホ−ムセンタ−へ出かけていって、消費者、お客さん、つまり顧客がどんなものを望んでいるかを知るべきだと言っているんですね。そういう意味で、野菜をつくっている人は八百屋さんへ行って、或いはス−パ一の野莱売り場へ行って、果物をつくっている人は果物屋さんへ行って、お客様がどういうものを好んで求めているかを知る努力が、これからの農業では必要なのではないかなということを、今、杉山さんのご意見を聞いていて、ふと思い出しました。
 次に先程、実行委員長としてご挨拶を戴きました。今、平成12年を目途とする県の農林水産業ビジョンと、昨年の6月に出された国のいわゆる新政策、そして農協中央会における系統農協3ヶ年計画という3つの施策がありますが、これらに共通していることは、経営感覚を持った優れた先進的な経営体を育てていこうとしていることです。
 そうした組織、経営体の育成に対して、これから農協がどのようにかかわっていくのか。あるいは本県農業をどのように構築していこうとしているのか。或はまた農業そのものが大型化を目指しているわけですけれども、県の農林水産業ビションの中には、農協による組織的な生産というようなことも入っているんですが、こうしたことについてはどのような計画をお持ちなのかを、県の農協中央会の鈴木会長さんにお聞かせ戴きたいと思います。』

 ◆ 国内の農業の位置づけの変遷

鈴木
『戦後、日本の経済の陰の部分を農業生産で賄った時代が10年程ありました。経済復興の元であるという時代が続き、更に国の期待を受けて農業基本法ができました。選択的拡大、当時はミカン、畜産、果樹などの将米魅力ある農業になるであろう、しかも農業の構造を変えていこうということでの改善も行われてきました。
 当時を振り返ると、国全体の社会計画の中にあっても、農業は大変高い位置づけと評価があったように思われます。
 それが今日、日木は大きな社会変化を遂げ、工業化社全、国際化社会或は情報化社会へと転化していく中で、農業の相対的な位置はドンドン下がってくる。そして更に都市化が進み、その一方で過疎化が進行してきますから、地域農村や農業の置かれている環境は、激変しているわけです。
 今、問題になっているのは、農業の後継者が少ない。担い手が高齢化してきているということです。農村の優秀な頭脳と労働力が、都会へ出ていってしまって、他産業を維持している。まさに農業、農村が見拾てられていくという危機感がある。そういう中で日本の国全体の社会経済というのは、工業や商業、そういうものと農業とのバランスが巧く取れて、共存していく国家をつくろうということです。国の政策というのもそういう面に視点を当てて、新政策を出してきているし、県の農林水産業ビジョンも21世紀の農業のある
べき姿を描いてはいる。ただいろんな絵やデザインが描かれても、具体的にそれをどうやってやるか…。そこまでまだ手が届いていないと思っています。

 … 農業の後継者を求めたい …

 そこで一つには、農家の後継者ではなくて農業の後継者をぜひ求めていきたい。それは農家の一人であっても嬉しいし、他産業からの方であってもいいと思います。
 ただし、そういう人達が進んでやれるような環境づくりをやっていきたいと考えています。もう一つは、そういうことも含めまして、先程、晝馬先生からお話がありましたように、幸福の女神の後ろから追うんじゃなくて、前に回って前髪をつかむ。やっばり時代の先取りをしていくという施策或はそういうものに意識を持った若い人達をどうするか考えていきたい。例えば信用事業、共済事業、経済事業、販売事業などやっていますが、ただ画一的な事業をするんではなく、それぞれのヤル気のある人達の多.様なニ−ズに答えるきめ細かな施策を展開していきたい。
 県の統計によれば、木県には兼業農家を別として先進的な選択的な大変熱心な農家が、約7千戸くらいあるとされています。農業にもベンチャ−・開発・挑戦ということがあってもいいんじゃないかと思うんです。
 幸い今、農協合併が進んでおります。県下の74農協が17農協になるわけでして、私どもは農協の指導体制の再構築を連めています。行政、試験研究機関、或は農林事務所等とタイアップした農家の指導に収り組みたいと思っています。

更に、農協で持っている指導者も今後は、野心的な経営をめざす若い人達に対応できるように再教育していきたいし、高度な勉強をした新規採用職員を入れながら、私ども系統農協全体の実務として職員を育てていきたい。これが新しい時代に対応できる農協の基礎づくり、体制づくりにつながっていくと思っています。
 もう一つ、今度の新政策の中で、予算案もでてきましたし、税金問題や新規設立法人への助成対策等もでているようですが、農協としても受入施策だけでなく、県と相談しながら、自らも問題提起していくことも考えていきたいと思っています。国の政策も決まり、県の政策も決まったからといって、農業が自然的に振興できるはずがありません。まず農協系統全体が自らが、本県の農業はどうあるべきかということの使命感を持ちながら努力していきたいと考えています。
 最後に農協の法人が、農業生産をしていくことについては、まだ制度的な面で問題があるようです。一般企業法人が、農業に参画するという問題と合わせまして、農家を守るという立場の農協が、生産までやってしまうと、今の農家を圧迫してしまう、という意見も若干あるようですので、農協が自ら生産沽動に携わるということはもう少し研究をしていきたいと思っています。』

浜井
『農業後継者は必ずしも農家の後継者でなくてもいいとのお考えでした。本日ここにお集まりの皆さんは、ある程度農業の下地ができている方ばかりだと思いますが、そうでない全くの素人の方が農業に参入しようとする場合の受け皿というようなことについては、どうお考えですか。』

…感覚感度が良ければ新規就農も可能…

鈴木
『私の近くで、35才位のサラリ−マンをやっていた方は、農業には全く関係がなかったんですが、今、花なんかをつくっています。技術の問題とかは試験場とか我々が、ある程度指導できます。むしろ私は、経営感覚とか農業を単に実業としての農業ではなく今一般のどんな職業にしても親の仕事を継ぐばかりではなくて、いろんなところへ職を求めている訳でありますから、何もその農業の専門の学校を出なくても、感覚、感度の問題で、この方が私は大事だと思っています。』

浜井
『ありがとうこざいます。さて 晝馬社長さんは今年の年頭の仕事始めのご挨拶の中で"今年は楽しく仕事をしよう""愉快にやろう"とお話されたと、新聞で読ませて戴きました。愉快にやるという言葉の根底にあったものを、お聞かせ願いたいと思います。またそれを農業という産業に置き換えて見れば、今日のテ−マにあります「ルンルンとやる農業」と同義語になっていくのだろうと思います。そういう意味で、楽しい農業とか面白い農業を展開するとすればどういう農業があるとお考えなのか一つ外野席にいる科学者としての 晝馬社長さんにお聞きしてみたいと思います。』

◆ せめて仕事は愉快にやろうツ

晝馬
『愉快に仕事せィって言ったのは今年は不景気で、給料もあんまり上がりそうにない。従って頑張れって一言ったってそうは巧くイカン。けれども、せめて愉決にヤレヤっていう程度の話だったってことです。ただ、ひねくって考えますと仕事をヤルってのは愉快じゃない面白くもない。だから会社に来て仕事するっていうのは、給料貰って女房子供の世話をするとか、或は夕方終ってからチョット一杯飲んで、カラオケ歌って楽しかったと思えればイイ。そうすりゃイヤな課長の顔睨んでたって、マァこりゃしょうがない、カネのためならというのが、マスコミあたりが好んで書いてくれるサラリ−マンの仕事なんです。
 そういう奴が愉快に仕事しろって言われたところで、そりゃしょうがないじゃないか。会社で愉快になる仕事くれるのか。会社で一粒飲めば愉快だツしようがないツてなるような薬でもくれるのか。マァそういうことになりがちなんですが、私はやっばり己というものの存在価倣という…。マァ話が長くなりますが、先程時間があったらもうチョット話したかったのは、人類にとって一番大切なことは何だろうか。或は個人にとって何が一番人事なことだろうか。

… 大切なのは健康だ …

 考えてみますと私は"健康"じゃないかと思うんです。で、健康って言いますと、大体すぐに健康保険ってのが頭にきますから、病気のことを考えて病気を治すとか病気でないっていうことが健康であると考えがちになります。世界保健機構、WHOというのがありまして、そこに健康憲章ってのが出ています。それを読んでいて実は愕然としたっていうか、やっばり保健っていうのをしっかり考える人がいるんだなということを、改めて見直した訳です。その文句は逐一覚えていませんが、要するに健康っていうことは、病気でないとかという意味でなくて個人的にも、社会灼にも申し分のない状態を健康というんだと…。
 従って、その私どもの光の技術を開発しながら、何をねらっていくかというのは、世界に今50億、60億いる人間を皆んな健康にしちまエ。そうするにはどうするかという問題。これは単に病気にならんとかいうことじゃなくて、エネルギ−問題をどうするかとか。
環境閉題をどうするか。或は教育閉題をどうするか。また人間そのものの生きざまとかがどうあるべきか。…という問題が全部含まれている。その意味からすれば、健康とは大変な大きなテ−マではないのか。われわれの企業の当面の問題として、宇宙の果ては何んであるかというようなことをハワイのテッペンに作った天文台で見てみたい。ついてはそれについて、いろいろ難題をふっかけられているんですが、そういうようなことを通じまして我々の日々の中で起きている現象を良く見ろ。それを良く見ながら、今の問題を自分としてどうアプロ−チしていくかというものを持てョ。見つけてくれョ…。そういうことが生きざまだッ。:己の存在価値だ…ということになってきます。
 よく冗談としていうんですが、特に研究の連中なんてのは何かぺ−パ−書くだけで、ロクに金儲けやってない訳ですネ。"オマエらこれから毎日会社に来た時に、入り口のところで千円ずつ払え。入園料だ。遊ばせてやってるじゃないか"って言ったら"千円はヒドイッ。せめて五百円にしてくれッ"って言うもんですから、マァ五百円でも悪くはないナと思ったままになっています。(笑)それはともかくとして、人間の生きざま、己の存在価値を発揮する生き方をする。自分は何かやってるんだという存在価値を感じた時には、人問愉快ではないのかなと思うんです。会社へ来て何か訳の分からんことをやって、チャップリンのモダンタイムスじゃあないけれども、コンベァ−の脇で訳の分からんことを、毎日朝から晩までやって、肩が痛くなったり、足が痛くなったりしながら1日に幾ら貰うというのが什事じゃあないんだと…。

…農業は答が見える…

 そういう意昧では農業の方ってのは、牛や馬を育てるとか、或は作物を育てるというふうに、ちゃんと目に見えて答が返ってくるわけです。皆さん方は、イヤイヤながら義務感で仕事をやるんじゃなくて、自分はここで"米"を作っている、或は"豚"を飼っているけれども己の存在価値を意識して、白分の狙いとするのは、こういうことをしたいんだ。これは世界の人が誰もやってないことを俺は狙ってるんだ。そうすることによって世界の人を健康にするってことに仲間入りしようじゃないか。というふうなことを考えてもらって朝に星をいただき、タベに月を…だったかというような一ダカラ、オマエ古インダト イワレテイルンデスが、例えばそういう生活をしても愉快だろうと私は思うんです。
 それが朝9時に出かけ、午後12時に帰って来て、後は仕事がないからノンビリしてりゃあ、それで金になって、“シャンジャン儲かるゾ。そういう仕事がいいんだっていうことになればウマイなあって気がするけれども、なってみたらこれ程つまらない人生はない。
やっばり己の存在価他はどうなんだ。世界の中のいち 晝馬輝夫として俺はコレだけはやっていきたい。コレだけはヤロウよ。コレだけはできそうだと思うから、マァここで浜井さんにイヤイヤながら引っ張り出されて喋っている訳です。
 それで幾らか貰えるから、なるべく早く帰ってもう寝ちゃおうってんなら、あんまり喋んない方が得なんです。マァここらでやめときましよう。(笑)

浜井
『どうもありがとうこざいました。パネリストの緒先生方から一通りこ意見を戴きました。このディスカッションは、双方向性を目指すというコンセプトが最初からありましたから、ここで会場の皆さまからご意見やご質問などがありましたら承りたいと忠います。
どうぞこご鉢右舷をお願い致します。

参加者青木さん(静岡市)
『私は、水稲と野菜を主体に農業を展開しています。先ほど、 晝馬社長さんの基調講演を聞かせて戴いて大変参考になりました。その中で、経営者には、係数管埋は当然のこととして、思想哲学も大切だと教えられたように思いますが、哲学者としての 晝馬社長さんに、哲学とサイエンスと農業を、どう考えていったら良いのか、教えて下さい。』
浜井『ハイッそれでは、哲学者 晝馬社長さんにお答えを願います。』

 ◆ 英語のサイエンス 即科学ではない

晝馬
『サイエンスという言葉を日本語に直しますと科学といいます。ですが、どうも科学っていう言葉から受ける感じと、向こうの外人と話してるサイエンスということが違うなという気がするんですね。それで、大分昔のエンサイクロペディア・ブリタニカが、私の書斎にこざいましたんで、それを引っ張り山してサイエンスという項目を引きますと、サイエンスというのを一言でいうのは大変難しいとある。サイエンスというのは、芸術のような宗教のような、哲学のようなものだっていうんですね。本当のことは何んだ。真理は何か。言い方を変えれば、神様は木当にいるのか。いるなら何処にいるのか。というようなことを他人にも言えるような方法で追っかけていくのがサイエンスだというふうに書いてある。日本の科学というのは、そんなことじゃなくて知識、分類別に分けた知識ということになっている。それは何故かというと、日本では明治以来、外国の文化・文明を輸入してきた。で、科学を持ってきた。それで便利だ。言葉の問題ですから、時に科学という意昧をサイエンスという形で使う人もいるだろうと思いますが、大体そういうことになっちゃってるんです。だから今、農業を通じて科学的な経営をしなさいよって言いますと、既に分かっている知識を使って経営せよってことになっちゃう。そうじゃないんだと。自分は、水稲やっている。水稲というのは、どうしてこれが育って、何故うまい米ができるのか。或は何故まずい米ができるのかということをお掴みでしょう。親もやってきてるんであれば、何かしらん、または言えないような、或は言うのにかえって難しいようなコツをもってらっしゃるんじゃないか。で、そういうことを核にしながら仕事をしたらどうなのかな。横に鈴木会長さんが座っていて、こういう話も何ですけど、今の農業の問題点というのは、何でも皆んな同じように、画一的に取り扱われてしまうところに問題がある。

  … 農業者はノウハウを簡単に教えてしまウ…

 このことは、水稲栽培に興昧を持っているうちの社員に聞いてきたんですが、非常に驚いたことは全部教えてくれるんです。うちの会社にも随分と多くの見学の方が来まして"俺も知りたいから教えろ"というのがいます。"冗談じゃネィ。そんなモン教えるもんか。百万のカネでも持ってくりゃ別だけども"って言ってやるんです。
 農業の人っていうのは、お茶の一杯も出しながら皆んな教えちゃう。それはいいんですけども、儲かるって話にしたらですね、仲問だったらいいんですけど、誰でも来たら教えちゃうよってのは、儲からないんじゃないか。(笑)
 だからその哲学的な、というよりモノの思想とか、技術とか、或は経営とか金の勘定とか、どれが大事かということですが、実はそういうモノは、ワンセットなんです。
金勘定なんてのは、訳のない話でして、私の経験では金儲けってのは単純な算数で、そんな難しいモンじゃない。一日に100円稼いで99円使ってりゃ、1円ずつ残る。
それを確実にそういうことをヤレルかだけの話なんです。で、そういうことをするために何が必要なんだというと、何処かに特徴のあるヤツを何に使って、どうやって、どこに売るんだということが経営努力なんです。後は、本当に儲けてるか、損してるかどうか分るようにしておかなくちゃいかん。いい加減な対応は駄目ですから、アナタの疑問は、その辺が一つ徹すれば、自ら片づいてくるんじゃないかと思うんです。
農業に継験のない人間が言ってってますから、マルッキリ間違ってる可能性もありますけれども…。』(笑)

浜井
『ありがとうございました。さて野口所長さんは余服コ−ディネ−タ−ということですが"ゆとり"とか"生大国"とか、近年打ち出されてきた国の施策を、それをマア、一つの職業に仕上げちゃった沢ですね。ゾコをめざしたということについて、今のコトと多.少関連があると思いますが、そこら辺のお話をお願いします。』

◇ わくわく・ドキドキする仕事をやり続けてきた。

野口
『目指した訳でもないんですよネ。マァ、めざした訳じゃないってとこがミソなんです。恐らく皆さんがこれから農業やっていかれる時に、自分は何なんなのかということを何度も考えることがあると思うんです。それは私も同じでして、自分がもし名刺を作る時に、自分の職業や職種を何と書いたか、その時々で違っていたんですネ。昔はインテリアテキスタイル、デザインコピ−ライタ−、エディタ−そしてプランナ−を経て、それから自分の会社を作りました。その後、余暇に関連することもやり始めまして、余暇情報コ−ディネ−タ−と名乗り、今は余暇コ−ディネ−タ−といってる訳です。日木では、まだ私一人ですから、どんな職業ですかと聞かれますと説明するのに非常に時間がかかります。要するに時代というものを自分が受け止めて、こういうことをやりたいナ。こういうこと好きだナ。こういうことをやってるとワクワク・ドキドキするナ。というようなことを常にただやり続けてきただけなんです。で、それをやる時に、どういう仕事なんですかと聞かれるんで、こういう仕事ですと名前をつけてきたというのが本当のところなんです。白分がそれをやることでワクワク・ドキドキする。で、ワクワク・ドキドキするついでに、自分の生活を営んでいける。やってるコトは日々変わっていって当然ですし、咋日と同じことはしたくない。去年の私とも違うことをやりたいと思いますと肩書きなんかも変わってくるんですネ。お隣にいる杉山さんは、多目的ホ−ルのあるバラ園をやってらっしゃる方なんですけれども、来年あたりはカラオケスナックをやってるかもしれないんです。そういう方がドンドン肩書きを変えていく方だと思うんですが、そういう形の農業があってもイイナと私は思います。』

浜井
『ありがとうこざいました。他にご意見、こ質問がありますか。』

参加者菊地さん(清水市)
『杉山さんにお尋ねしますが、これからもバラにこだわっていきますか。それと農地の拡大について都市的地域の中でどうしようとしているのか、教えて下さい。私は、清水でランの植物園をやっていますが、私が借りられる土地は3反が限度です。私は、この他に野菜や果樹、お茶などを少しずつ勇気栽培でやっていこうと考えていますが、健康に貢献する農業について、どのように考えていますか。』

 ◆ 街中てカッコイイ農業をしたい

杉山
『バラには、ある程度こだわっていきたいと思っています。でも本当にこだわっているのは、都市の中でどこまで農業が続けられるかなんです。先租申しあげたことは、生き延びるための手段として考えています。今、私の農場の横は、後継者がいなくて田んぼが空いています。何とかお惜りして、そこにハ−ブガ−デンを作ってみたいと思っています。
その次にその横には、有機好菜の農場をつくってみたいと思っています。私は街の中に農業のグリ−ンのスペ−スは絶対に必要だと考えていますが、残念ながら商業地域で占められている我が街には、もしかしたらそのビションが無いのかもしれません。でも、村起こしとか地域振興に対して、本当に力になれるのは、私は農業者じゃないかと思っています。街中で生き残り、そして儲かる農業を目指して、一つグリ−ン地帯を築き上げてみたいと思っています。今は、健康、環境といったことが大事な時代ですから、そこを狙っていけば生き残れる道があるんじゃないかと思っています。それを実現させるためには、地域の理解といいますか、農業以外の方に農業を良く知ってもらうことだと思っています。ですからとりあえずバラを通して来て戴ける方に、土の良さ、農業の良さというものを知ってもらう農業って羨ましいナ。格好イイヨッっていう状態にして、街の中で農業を維持していきたいというのが私の考えです。』

浜井
『ありがとうこざいました。さて、環境問題といえば時代のキ−ワ−ドになっています。農業という分野は、ある意味では環境に優しい産業でもあると思うんです。そのことと、生産性ということについて農協中央会の立場で、鈴木会長さんにお尋ねしたいと思います。』

鈴木
『農業というのは、美しく或は文学的にきれいという見方もあるかもしれませんが、今の一般のこの経済がそうであるように、農業も競争の中で生き残らなけれはならない。そうすると一人の人間の力には限度があると思うんです。杉山さんや 晝馬さんがおっしゃったように社長さん一人じゃなくて大変複雑な全社経営の組織があり、いろんなスタッフがいて、全体の力として伸びていく。個々の人の能力をどう旨く使うかということの中で、生存競争に勝っていく訳でこざいますが、農家ってのは一人じゃなかなかできません。
一人で社長もやり、技術者となりセ−ルスもやるという訳にはいきませんから、そういう面で何か皆さんには特徴を持って戴いて、足りない分を私どもがサポ−トしていくことが必要だと思っています。 例えば市場調査だとか、情報収集だとか、或は技術開発などについて、いろんなお手伝いの方法があると思っています。
そういうことについて今まで私どもの組織というのが、皆さんのような企業的な農業というか野心的な農業というか、そういう特徴のある農業に対しての対応が充分でなかったと反省しています。画一的なごく一般的な指導というのは、お手伝いしてきましたけれど、これからはそういう面にもっと力を入れて、木県農業の重要な生産を皆さん方にやって戴くためのお子伝いをしていきたいと思っています。』

浜井
『ありがとうこざいました。他にこざいますか。』

◆ 農地流動化と農器具のレンタルについて

参加者中村さん(浜松市)
『私はUタ−ンして、浜松で梨の栽培をしています。今後は、もう少し規模拡大をしていきたいと考えていますが、農地の流動化をどうしたらいいか教えて下さい。それと農器具のレンタル制度を考えて戴けないでしょうか。』

浜井
『それではこれは専門的になりますから…。農用地の利用増進については、市町村と農業委員会、それと農協と、おおきく分けると2系統あると思うんですけれども、鈴木会長さんにその辺のところをお答え戴きたいと思います。』

 ◆ 行政との協力て農地バンクをつくりたい。

鈴木
『農地の流動化でこざいますが、今の国の新政策、県のビジョンもそうでこざいますが、農地を従来の農地法のような形の中で固定化することは、規模拡大のかえって妨げになるんではないか。そこでこれは7年、8年前から農地流動化の手法が開発されてきました。国あるいは行政等でそれをやっている訳でありますが、どちらかといえば今までは、兼業農家やお年寄り農家で耕せなくなったんで、誰か耕してくれる人を捜したいという、前向きというより後追いのような形が多かった気がします。今度の新政策では、例えば農地集積をして、一つの経営体当たり10ヘクタ−ルとか20ヘクタ−ルにしよう。そういう農家を5万戸つくろうといっていますし、私どもも行政と協力して、農地バンクのようなも
のも創設しながら新しい農業に取り組んでいきたいと思っています。
 それから農機具のレンタルですが、例えば日本の田んぼなんかは、いっぺんに始まってしまいますので必要なときには皆んな同時に必要になってしまいます。畑作のように年間を通じて農機の使い方があるとレンタル事業もできるんですが、今のところそこまでいかない状況です。それに資本も相当かかるというころで、従米の農協の中ではできなかったのですが、全体の中で特に専業農家やこれから意欲のある農家を中心にレンタル事業というのも考えなくてはいけないかなと思っています。ご意見を研究させて戴きます。』
浜井
『そういうことでよろしいでしょうか。他にどなたかありませんか。はい、後ろのその方どうぞ。』

参加者神尾さん(函南町)
『私は、農業士会の神尾です。13年も農業をやってきましたが、私が農業を開姶するに当たってのテ−マは、好きで楽しむ農業、そして結果として儲かる農業を目指してきました。咋年の6月に国の新政策が出されましたが、この新政策で、日本の農業さらに本県の農業がどう変わると思われますか。』

浜井
『新政策については、パネリストの先生方も、マァ、恐らく晝馬社長さんは、全くの門外漢ですから、一読もしてないだろうと思いますし、野口さんも新政策は見たこともないだろうと思いますね。八ケタ農業を目指そうということについては、花と畜産と野菜の分野では、もう到連している農家もある訳ですから、いってみれば、米対策というようなこと、これははっきり謳ってはいませんが、私はそこにその新政汲の狙いがあるとみております。鈴木会長さんに、いまのご意見をどうお考えになるかお答え戴きたいと思います。』

◆ 新政策は農業のデザイン、とりわけ水稲経営のデザインだ。

鈴木
『アメリカの農業というのは、何千ヘクタ−ルもの⊥地で、メキシコ人とかの大変安い労働力を使い、更に物凄い機械を使ってやってる訳ですから、それがたかだか10ヘクタ−ルとか20ヘクタ−ルとかの農地集積してやっても、まともな競争はできないよ…と。
 ただ日本の農家が、兼業中心で戦後から今日まできている訳です。本県の農業のあり方というものを振り返ってみると、ミカンや掛川の茶とか、米以外の分野の中では高所得でしかも大変効率的な経営をやっている農業もある訳です。本県の農業というのは、米以外の商品作物で、かなり高いレベルの水準に達している。ところが、米というもの、特に米作地帯の東北、北陸、北海道で、もし米が無くなったら、地域経済、農家経済というものが破産しちゃう訳です。食料の国内需給という一定のレベルを確保するということも含めて国内で他の産業とのバランスの中で、一定の規模水準を確保するには、今度の新政策で示したような農業のデザイン、水稲経常のデザインというものを示して、それに向かっての努力をしよう。こういうことだろうと思います。そういうことによって、全て日本の農業が明るくなるということではありませんが、一つの突破口として、米を中心としながら他の分野でもいろんな取組が為されていくものと思っています。
 この前、束京における会議の中でお米のことは確かに分かったが静岡のような、お茶とかミカンとか温室メロンをどうするのかという質問がありました。そういう作物については、これからいろいろ考えていくんだと…。まずお米をべ−スにして新政策のスタ−トを切ったということなんです。今の質問に対する全ての答にはなりませんが、こんなことで私の考えを伝えておきます。』

浜井
『どうもありがとうこざいました。まだ手が上がっておりますけれども、時間の方が残り少なくなってしまいました。残念ですが後の予定も詰まっておりますので、会場からのこ質問はこの位で打ち切らせて戴きます。シンポが終了した後に、それぞれの先生方に個別にこ質問して戴きたいと思います。
 それでは、早くも予定した一時間半が過ぎようとしていますが、最後に本日のパネリストの皆さま方から、全場の新規就農者、新たにこの農業という産業分野に参入してきたこの若者たちに、一言ずつエ−ルを、励ましの言葉ですね、激励の言葉、頑張れヨッ、という言葉を贈って戴きたいと思います。まず肝□さんからお願いします。』

 ◆ ユトリとは、選択が多いこと…

野口
『冒頭、皆さん結構ユトリがあるんじゃないかと、そんな雰囲気を持ってらっしゃると言いました。それでこれから農産物に余暇価値をつけて行かなきゃいけないという話をしたと思うんですけれども…。
 ユトリがあるというふうに見えるというのはですね、そのままノホホンとしてれば良いというのじゃなくて、本当の意味のユトリというのは、ノンビリしようと思えばできる。また本気で何か経営しようと思えばできる。何かやろうと思えばできる。そういった選択することが沢山あるっていうことがヤッパリ、一番のユトリだろうと思うんですネ。
 で、そうした中で、自分のユトリライフをどのように設計していくか。そうした視点から見えてくる余暇価値を、農産物にどう生かしていくか。ということが、これからの課題になっていくと思うんですが、その為に私としては皆さんに、良質のユトリマンとしてのライフスタイルを育てて欲しいナと思います。
 横にいる杉山さんは、多目的ホ−ルを展開していくに当たって、これからいろんなアイデァ出さなくちゃならないと忠うんです。ホ−ル経常をするとすれば、そこのイベント企画というものも考えなくちゃいけませんネ。例えばそこに集まる人達がもしも女性であれば、女性は今どんなことに興味を持っているのかを考えなくちゃいけないし、コンピュ−
タ−管理も当然必要な技術ですよネ。
 地域に目を向ければそこには、外国の人達も大勢いらっしゃる。英語が喋れて当たり前の農家ってものが、当然という時代になるかもしれません。コンピュ−タ−を使い、英語が詰せて、おしゃれなライフスタイルを持って、当然女性のライフスタイルにも詳しい…。
 そこでイベント展開するとしたら音楽とかいろんなものに詳しくなかったら、個性のある農業って、できなくなると思うんです。
 チョット、杉山さん立ってもらえますでしょうか。アノ、例えばですヨ、昔の農家の万のイメ−ジでしたら、皆さんのおじいさん位の方でしたら、こういう格好でここには山ていらっしゃらないと思うんです。こう髭を生やして奇麗に揃えているとか、櫛目が奇麗にピュ−っと決まってるんですネ。体格がいいという理由もありますけど、ダブルのブレザ−もバシっと決まってるでしょう。杉山さんにあう時は、いつも上から下まで迫力ありすぎる程のお酒落で決まっているんですネ。ドウモ、スミマセンお座りになってドさい。

 ・ 自分のライフスタイルを確立する…

 それから杉山さんが持ってらっしゃるのは、システム手帳なんですネ。使ってらっしゃるボ−ルペンも凄くお酒落なものです。このしかもキンキラの時計までしてらっしゃるんですが、こういう形でのライフスタイルを白分の中に意識的に育てていると思うんです。 もしかしたら、こういう方はヨットに乗られたり、英語はもちろんフランス語も喋るとか…。最近は、抹茶の稽古もしてるとか。ダンスを踊らせたらもの凄く上手だとか、ビオラなんかも演奏できるとか、バラの文化には凄く詳しくて、バラに関する本の蒐集については県下一だとか、多面的な活動を通して農業をやってらっしゃるんじゃないかと思うんです。
 これからの農家の方は、是非杉山さんのように、本当の意昧でのユトリマンのライフスタイルを持ち続けて戴きたいと思う訳です。もう一つ大事なことは、杉山さんの手が凄くあれているんです。こんな格好いい杉山さんなのに、きっとバラの刺のせいだと思うんですけれど、傷だらけなんですヨ。そういう点では、外には山せない苦労もしてこられたと思いますし、日夜、人知れず頑張ってる部分が沢山あると思うんですネ。
 ですから本当のユトリマンというのは、手に傷を負いながらも自分のやりたいことを一生懸命にやって、しかも髭なんかたくわえてニッコリしてるってとこにあるんじゃないかと思っています。こんなライフスタイルを是非つくって欲しいナというのが私のエ−ルです。』

浜井
『はい、ありがとうこざいました。エ−ッそれでは野口さんの本日の素材になってしまった感が致します杉山さんに、お頗いしましよう。」

 ◆ 今のままの方法では 農業は潰れる!

杉山
『エ−ッ 大変優しい野口先生のエ−ルでしたが、私は学生時代応援団でしたのでエ−ルは得意とするところです。正直言いまして、今日は非常にきついエ−ル送ろうかなと思います。パネラ−になって、言いたいことはいっぱいあったんですが、時間的に制限されてますからエ−ルに含めて言わせてもらいます。
 農業は、今の状態でいったら完全に潰されます。おそらく他の企業から潰されるでしょう。野口先生は優しいから、ユトリがありますねという言い方をした。そうじゃないんです。危機感がないんです。農業考にッ。これから農業をやる方、今農業をやってる方もそうだ。危機感持って下さい。さっき私は清水町だということで、都市型農業の夢を言いました。でもこれは日本の農業の縮図だと思っています。やっばり危機感を持たなければ、新しいものは絶対生まれない。明確に言います。今の状態でいったら必ず殺されます。ひどい言い方ですけど、そう思って下さい。
 先ほど、チョット言いたかったことがアル。農業政策。私は農業守ろうと思ってます。経営者として守ろうと思ってます。その中で新しい政策が出た。いいでしょう。いいところは利用しましょう。いいところはいっぱい利用して何とか農業守りましょうヨ。それでいいんじゃないかと思う。

 … 危機感て切り抜ければ百姓はトレンドになる …

 何が悪い、これが悪いっていったらキリがない。でも悪い状態にしているのは、経営者である我々自身だと思います。私の回りで起こる全てのことは、私の責任だといつも考えています。危機感を持って下さいツ。絶対にヤバイ状態だツ。しかし、この状態を切り抜けた人問は、21世紀はキラキラになるでしょう。本当に21世紀は、百姓がトレンドになるよツて言い方をいっもしてます。今を乗り切れたものは、非常に大きな、非常に強力な農業経営者になれると思っています。工ーツ、若い方、是非頓張って下さい。チョットキツイエ−ルでした。』

浜井
『ありがとうこざいました。バラの刺のようにキッイエ−ルでしたけれども…。
それでは、鈴木会長さんにお願い致します。』

 ◆ 21世紀に生き残るには自助努力が大切 

鈴木
『農業の停滞がいわれて、担い手がいない。後継者がないっていわれて大変久しいんですが、今日ここにいる皆さん、今、これから農業やろうとする人達は、本物になると私は思っています。
 今、杉山さんが言われたように、もう落ちるものが全部落ちちゃって、残ったものがシッカリやる。そういう自分の存在というものを認識してもらって、自信を持ち、自分の可能性を信じながら、皆さん、うんと勉強して下さい。いいものが、天から降ってきません。自ら努力して、勉強してそして21世紀まで、生き残ってもらいたい。』

浜井
『ありがとうこざいました。次に晝馬社長さん、よろしくお願い致します。』

 ◆ 知識と知恵を使って燃えるものを持とう

晝馬
『先程、どなたかから、金儲けだけが目的なのか…というお話がありましたが、これは全産業について言えるんですね。今何故バブルなんていう話になったかというと、我々人問は、金儲け、いわゆる銀行に貯金を増やそう、それが人間の生きざまだっていうふうに思っちゃってる。それがウソなんだと、私どもが気がついたのは、高柳健次郎の話からですね。今一番大事なものは、新しい真の知識だ…と。それをつくれ。その為に金が婁る。だから、金を儲けなくちゃいかん。ただそこで、うまくいくかどうかは、新しい知識を自分で悩んで、その知識を使って儲けられるかどうかだ。更にその儲けを使って新しい知識をつかむ。で、世界中の奴が知らないような知.識をつかんでそれを実践する。
 知識を使うことをこれを知恵という。だから知識と知恵を使ってそれで金儲けをして、更にそれを注ぎ込んで自分は何処へいくんだ、俺は何をやろうかっていうのは、一人一人が自分で見つける。
 高柳健次郎が、校長から最初に3千円貰った時、校長に彼が何と言ったかというと、自分はテレビの研究をやらせてもらえば、一生その研究をやって死ぬまでできなくても後悔しないと言った。おそらく、一生できなければ後悔だらけの人生を送っていたんだろうと思いますが、それから、3年目に、テレビができちゃった。
 だから、皆さんには、俺はコレを追っかけるんだッというような燃えるモノを是非特って戴きたい。以上です。』

 ◆高齢化と後継者不足は競争相手が減ったと思えばいいッ。

浜井
『はい、どうもありがとうこざいました。時間がたつのは早いような気がします…。今日は限られた時問の中で、それぞれのパネリストの光生方から、そして会場の皆さんからもこ意見を頂戴して参りました。
私のまとめということになりますけれども、H・D・ベイカ−という人がその著書の中で、人類の食料の90パ−セント以上は、人間の手によって育種・改良された不自然の所産であると述べています。農業の歴史というものが、言いようによっては、研究開発型という道を歩んできたというようにも思える訳です。
そういう意昧で、晝馬社長さんのこ講演にありましたように、農業も先端産業だという自負心を持ってもいいんではないかと私は思います。
 碓かに農業就農人口ってのが、昭和36年に農業基本法が制定されて以来、ずっと減り続けていることは、紛れもない事実です。その一方で、高齢化が進んできているということは、いってみれば競争相手が少なくなっていることだろうと思います。
狭い狭いと言われている日本の中に住んでいる1億2千万人余の国民は、その8割以上が中流意識を持っています。世界で最右翼の経済力と購員力を持った国民が、私たちの周囲にいるということを考えますと、ただいま晝馬社長さんは「知識と知恵で碩張れ」とエ−ルを送られましたけれども、私は生活産業として、あるいは頭脳産業としての農業をこれから続けていかれる皆さんに、「知識と知恵」と同時に「意欲とアイデァ」を持って、頓張っていって戴きたいと思っています。そういう皆さん方の努力に対して私も県議会の一員として、行政と一緒になって、精一杯努力をさせて戴く…と申し上げまして、本日のパネルデスカッションの結びにさせて戴きたいと思います。どうもありがとうこざいました。

『農業進歩路有無』開催!!

 平成4年、私は当時の小林三弘農林水産部長(故人)と鈴木正男農林水産部次長と合い計らって、本県農業の後継者としての青年達に、次世紀につながる「夢」を持ち続けていけるよう、「農業の未来」を模索するシンポジウムを開催する予算を農林水産業部のしのばせておいた。
 そして平成5年5月議会で、農林水産委員会委員長に就任した私は、早速この企画を実行に移した。タイトルは単なる「農業シンポジウム」ではなく、現「農業」に「進歩」の可能性はあるのかという思いを込めた私の主張を通して「農業進歩路有無」とさせていただいた。
 そして、21世紀を担う農業青年との意見交換を通じて、本県農業の活性化を図ると共に、農業青年に未来産業としての激励メッセ−ジを送るため、静岡県と静岡県農業協同組合中央会並びに(社)静岡県農業振興基金協会の三者が共同して実施する企画は、このシンポジウムが最初となった。
 会場となった静岡県総合福祉会館は、新規就農者を始め、農協青壮年連盟、青年農業士、JAフレッシュミセス、四Hクラブ、農林短期大学生、普及関係者、JA営農指導員、農協中央会、経済連と行政関係者など会場いっぱいのおよそ380人が参加して、大変な盛会となった。
オ−プニングは、主催者として静岡県央業況同組合中央会会長の鈴木脩造実行委員長の挨拶の後、第一部として、光技術において世界の最先端をいく浜松ホトニクス代表取締役社長 晝馬輝夫氏による基調講演「農業も光産業だ!」で、ユ−モアあふれる話術とその内容に会場は沸きに沸いた。
第二部として「農業進歩路有無」を実施。サブタイトルは「も・う・か・る農業をめざして…」である。パネリストは、 晝馬輝夫氏、鈴木脩造氏、独自の農業を展開する杉山バラ園代表取締役杉山博一氏、それに、ゆとり研究所所長で「余暇コ−ディネ−タ−「として売り出し中の野口智子氏、コ−ディネ−タ−は、もちろん企画者としての私である。 第三部は、西部から西部青年農業士会会長で、野菜栽培をしている宇藤政幸氏、中部からは中部青年農業士会果樹部会長の内藤好彦氏、東部からはクレマチス栽培を通じて全国展開をしている渡辺園芸取締役の渡辺ひろみ氏が、それぞれ成功している農業の実情を新規就農者へのメッセ−ジとしておくっていただいた。